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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第98話

ギギガガガギギギギ!!!という激しい音と同時に空中に火花が幾つも散る。
麻生と男がスラム街が立ち並ぶ、屋上で人間とは思えない速度で移動し、お互いの刀がぶつかり合っているのだ。
最後にギン!!という音が鳴り響き、二人は通路を挟んでそれぞれの家の屋上に着地する。
お互いが無傷。
打ち合った数は五〇を超える。

「どうやら、思っていた以上に身体能力が上がっているみたいだな。
 あれだけの打ち合いで無傷とはな。」

男は少し嬉しそうな笑みを浮かべながら言った。
対する麻生は表情を変えずに告げる。

「夢幻・二刀。」

すると、夢幻が光り輝きその光が腕を伝って右手まで伸びていく。
その光が右手の掌に集まると夢幻と全く同じの刀が出現する。
そして、一気に男に接近して右手の刀で男に斬りつける。
男はそれを持っている刀で防ぐ。

「せっかちだな。」

「お前と話を楽しむ暇は無いんでな。」

そう言って左手に持っている刀で男の肩に向かって斬りつける。
すぐさま、麻生の右手の刀を弾き、左手の刀を受け止める。
続けて二刀を駆使して男に斬撃の嵐が降り注ぐ。
それを男は刀一本で全て防ぎきる。

「刀に打ち込むので必死だな。
 身体の防御が薄いぞ。」

その瞬間、男の左足が麻生の脇腹を横に蹴りつける。
それをまともに受けた麻生は、ボキボキと骨が折れる音が聞こえ、そのまま横に吹き飛ぶ。
それに追い打ちをかけるように男は地面を刀で斬りつけると、衝撃波が生まれ麻生に向かう。
すぐさま受け身を取ると、麻生も左手の刀で衝撃波を作り、男の衝撃波とぶつかり合う。
ドン!!という音と同時に土煙が巻き上がる。
土煙のせいで男を見失ってしまう。
麻生は周りを警戒した時、土煙の中から影が飛び出してきた。
それを見て男だと判断し、構えをとる麻生だった。
だが、それは男ではなくコンクリートの塊だった。

(囮!?)

それに気付いた瞬間、視界の端で横から男が麻生の首を切断するように横一閃に刀を振るうのが見えた。
首を限界まで横に動かし、身体も無理矢理横に動かす事で頬が斬られるが、何とかかわす。

「いいぞ、良い反応だ。」

麻生は舌打ちをしながら、頬に手を当てる。
思っていた以上に傷は深くまで斬られており、血が止まらない。
今までの麻生なら能力で治療しているが、夢幻に星の力を操る権利を対価にしているので、治療する事が出来ない。
なので、あばらの骨も折れたまま戦っているのだ。

(くそ、痛みで動きが鈍る。
 だが、動きが鈍れば確実に殺されてしまう。)

さっきの不意打ちもギリギリの所でかわせたので、まだ運が良かった。
もし、もう一度同じ様にかわす事はできない。

(相手はまだ余裕を残している。
 対する俺はそろそろ限界が近い。
 勝負に出るしかない。)

両手の刀を強く握りしめる、麻生。
今度は麻生の方が刀で衝撃波を打つ。
それも一発ではなく五発連続。
男はその五発の衝撃波を全て相殺する。
その際にも土煙が辺りを覆い尽くす。
そして、土煙の中から麻生が男に向かって突進する。

(目隠しして反応を鈍らせたつもりか?
 そうだとすると、甘いぞ。
 この程度で狼狽えると思ったか!)

刀を両手で持つと、麻生が突進してくるタイミングに合わせて一気に振り下ろす準備をする。

(これで終わりだ。)

突進してくる麻生の行動を完全に先読みしたと思った男だったが、その予想を裏切る行動を麻生がとった。
突然、両足を使って減速し始めたのだ。
これを見た男は驚きの表情を浮かべる。
ガガガガガ!!という音とコンクリートを削りながら減速する。
その際に、ミシミシという音が足から聞こえたが麻生は気にしている暇がない。
完全にタイミングがずれ、小さな隙が生まれる。
その隙を見逃す麻生ではなかった。

八花螳楼(はっかとうろう)!」

二刀の刀を振るい八つの斬撃が男に襲い掛かる。
しかし、男はタイミングをずらされ、隙を生んだにも拘わらずその八つの斬撃を全て防ぐ。

「惜しかった「まだだ。」・・・ッ!?」

裂閃爪(れっせんそう)!」

たて続けに今度は閃光の如き爪の斬撃が八方向から襲い掛かる。
だが、それすらも男は防ぎ切る。
その時、麻生は男に向かって右手の刀を投げつける。
防ぎ切り、一瞬の硬直状態を狙い、投げつける。
さすがに防ぐ事はできないと思ったのか、身体を捻り飛んでくる刀をかわす。
そして、今度こそ麻生は男に向かって最大速度で突進する。

「良い手だが、我はまだ対応できるぞ。」

麻生の方を見て、余裕の笑みを浮かべた時だった。

「来い。」

その麻生の言葉が聞こえた。
男の耳にはっきりと聞こえる。
風を斬り裂く音と同時に何かが男の背後から飛んでくる事を。
確認しなくても何が飛んできているのか分かった。
麻生が先程投げた刀だ。
あの刀の夢幻の力で作られた刀だ。
夢幻の力が継続される限り、麻生は操る事が出来る。
迫り来る音を聞いて男は一瞬で考えた。

(このまま星の守護者に斬りかかれば、紙一重で早く刀が我の身体を貫く!)

次の行動は決まっていた。
身体を無理矢理動かし、後ろへ振り向き迫り来る刀を弾き飛ばす。
それは麻生に完璧に背を向けたという事。
先程の小さな隙とは違い、完全な大きな隙だ。
麻生はこれを狙っていた。
今までの攻撃は全て防がれると予想していた。
なので、裏の裏の裏をかく作戦を考えた結果がこれだ。

「これで終わりだ!」

夢幻を両手で持ち、男の背後から斬りかかろうとした時だった。
男の言葉が聞こえた。

「いや、実に惜しい。
 あと、一歩の所だったな。」

麻生は見た。
後ろから迫り来る、刀を弾いた時に男は片手で刀を持っていた。
空いている手は空間から出ている刀の柄を掴んでいた。
次の瞬間、男の身体は麻生の視界から消え、胸に横一閃に傷ができ血が溢れだす。
突進していたが、一気に膝が崩れ前に倒れる。
ドクドク、と胸から血が流れ出す。

「この我がもう一刀の刀を抜かせるとはな。
 お前が初めてだぞ、星の守護者。」


そう、この男の本来の武器は二刀を扱う剣士だった。
こちらに歩いてくる足音が聞こえるが、麻生は動く事が出来ない。
意識も朦朧とし、立ち上がる事すら困難な状況だ。
男の足音がもう目前まで近づいていた。

「実に楽しい死合いだったぞ。
 最後だ、その命は貰い受けるぞ。」

刀の剣先を麻生の心臓に向け、振り下ろそうする。
その瞬間、蒼い光が男に向かって飛んでくる。
それを見た男は後ろに跳んで、その光をかわす。
その光は麻生の顔の横で止まると、何やら形を作っていく。
朦朧とする意識の中だが麻生はその形に見覚えがあった。
それは猫だ。
麻生に何度も意味深な言葉を残したあの猫だ。

「そこまでだ。
 去れ、去らぬというのならこの私が相手になろう。」

「ほう、貴様は確かフレアの報告にあった猫か。
 面白い、できれば相手をした頂こうか。」

男は二刀の刀を持ち、構えをとる。
座っていた猫も腰を上げ、男の睨みつける。
両者の殺気がぶつかり合う。
一触即発の雰囲気だったが、そこにブクブクと地面から泡が噴き出してくる。
泡が一つ潰れると声が聞こえた。

「アンファル、まだ戦っているのですか?
 すぐにそこから退避してください。」

それはあの女性の声だった。
その言葉を聞いて、男は殺気を出すのを止めて泡に話しかける。

「理由を聞こうか?」

「色々と報告がありますので、貴方も幹部の一人なら戻ってきてください。
 これは教皇様の命令でもあります。」

それを聞いてむっ、と声をあげる。
少しだけ時間が開くと、分かったと告げる。
それを聞いた泡はパチン、という音をたてて消える。
二刀の刀を空間の歪みに差し込み、猫に背を向ける。

「運が良いな。
 その命、まだ預けておこう。
 次に会った時は我も全力で相手をしよう。」

それだけ言って男はスラム街から突然消え去る。
その言葉を最後に麻生の意識も途絶えるのだった。












気がつき、見知らぬ天井が見えた。
麻生は自分の見ている天井が、病院の天井である事に気がつくのに少しだけ時間がかかった。
麻生が意識が目覚めると同時に病室のドアが開く。
そこから入ってきたのは、カエル顔の医者こと「冥土返し(ヘブンキャンセラー)」が入ってきた。

「うん、どうやら目覚めたみたいだね?」

カルテを片手に麻生に近づいてくる。
服装も病院服に着替えており、胸には包帯が何重にも巻かれていた。

「あんたに幾つか聞きたい事がある。」

「何だい?」

「俺はスラム街にいた筈だ。
 なのに、どうして病院にいる。」

「僕に直通で電話があってね、第一九学区に重体患者がいるって聞いたからね?
 それで向かってみると君を含めて、四人(・・)の重体患者を見つけたよ?」

その言葉を聞いて麻生は思わず、ベットから起き上がろうとする。
しかし、胸の痛みが麻生を襲い、結局ベットに倒れ込む。

「どうしたんだい?
 そんなに驚いて?」

「そんな筈はない、あのスラム街には大量の食屍鬼(グール)の死体があった筈だ。」

食屍鬼(グール)
 何だいそれは?」

医者の顔は嘘を言っているように見えなかった。

(誰があれだけの数の死体を処理したんだ?)

最初に考えられたのは海原が処理したのかと考えた。
医者は麻生の容体が安定している事を確認すると、部屋から出て行こうとするが何かを思い出したのか振り返って言った。

「そうだ、これを君に渡してほしいとさ?
 本当なら病室内で電話は禁止だけど今回は特別だよ?」

携帯電話を医者から投げ渡され、医者は病室を出て行く。
それと同時に携帯が鳴り響く。
電話に出ると、その電話の相手は海原だった。

「怪我の方がどうですか?」

「医者が良いから大丈夫だ。」

「それは良かった。
 それで貴方には一応、報告しておこうと思いまして。
 まず、拉致された生徒ですが無事に救出する事が出来ました。
 本人達は何も覚えていないようですが、まぁそれはいいでしょう。」

「俺もお前に聞きたい事がある。
 食屍鬼(グール)の死体を片付けたのはお前か?」

「いいえ、違いますが。
 自分はてっきりあなたが処理してくれたのだと思ったのですが。」

「・・・・・・・そうか。」

「とりあえず、この一件はこれで終わりですね。
 スラム街にいた置き去り(チャイルドエラー)は行方不明になっていますが、これは上層部の方が上手く情報操作するでしょう。
 今回は本当にご苦労様でした。
 次もよろしくお願いしますね。」

「もう二度と手伝わん。」

そう言って麻生は電話を切る。
麻生は窓の外を見つめながら考える。
食屍鬼(グール)の死体は誰が処理したのだと。

(あの男がするとは思えない。
 かと言って、触手を操っていた女が処理したのも考えにくい。
 もしかして、あの猫が?)

麻生は考えるが答えが出る事はなかった。





麻生の隣の病室。
その病室には麦野とフレンダと絹旗が入院していた。
そして、そのお見舞いに滝壺が部屋を訪れていた。

「今日の一件は超おかしな事ばかりでしたね。」

「もう私一生あんな仕事はしたくないって訳。」

「珍しく、フレンダと意見が合ったわ。
 今回の怪我と依頼料が割に合ってないわ。」

三人は思う事を愚痴にして話し合う。
その中で滝壺だけが、考えに耽っていた。

(あの怪物が言った言葉、同胞ってどういう意味?)

自分は人間だ、と滝壺は考える。
あの怪物と似ている所など一つもない。

「滝壺、どうかしたの?」

「えっ?・・・・な、何でもないよ。」

フレンダに呼ばれた滝壺は考えを止める。
その滝壺を麦野は見つめていた。
彼女も彼女であの女性の言葉を考えていたのだ。

(この「体晶」の飲むだけで、神の血が作られるね。
 まさか・・ね。)

くだらない妄言だ、と麦野は考えを止める。
こうして、大覇星祭のもう一つの事件の幕は閉じるのだった。 
 

 
後書き
何故か、螳蜋の蜋が携帯で見ると?になるので変えました。

感想や意見、主人公の技の募集や敵の技の募集など随時募集しています。 
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