とある星の力を使いし者
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第94話
触手に貫かれた腹部を右手で押え、もう片方の手で右肩を押える。
(やはりラファルの風の魔術を受けた時と同じだ。
治癒魔術が全く効いていない。)
麻生は能力でガーゼを創り、傷口を押える。
「さっきの口調からして私が貴方に接近する事を分かっていたように話していましたね。
なぜ、分かったのですか?」
まだ完全に触手の本体が燃え尽きていないのか、女性の声が聞こえる。
しかし、身体のほとんどは消滅しているので話すだけしかできないようだ。」
「お前の口調から性格を予想しただけだ。
あの時の発言も嘘だってわかっていた。
だが、ああでもしないとお前に近づけないからな。
お前は俺の知らない魔術をまだ隠し持っている可能性もあるからな、接近して確実に仕留めたかった。
まぁ、分の悪い賭けだった。
おかげで怪我をしたが、お前を倒す事ができた。」
「さすがは星の守護者と言うべきでしょうか。
ですが、私の本体は別の所にあります。
貴方が此処に来るころにはお友達の実験後の姿を拝見する事になるでしょう。」
「それともう一つ理由が合ってな。
その触手本体に触れないといけない事情があった。」
傷口を押えながらゆっくりと立ち上がる。
「お前はこう言ったよな。
この本体とは意識を共有しているだけだって。
それは何らかの魔術を使っているという事になる。」
「まさか・・・・」
「そうだ、触手の本体に触れた時に干渉させてもらった。
俺の知らない魔術が使われていたら無理だったが、どうやら意識共有の魔術は俺の知っている魔術だった。
お前がどこにいるかなんて既に逆探知済みだ。
第一九学区のスラム街。
そこにお前と拉致した生徒達がいるだろう。」
「・・・・・・」
麻生の問いかけに何も答えない。
だが、その沈黙が肯定の意味を表していた。
最後まで何も答える事無く、触手が蒼い炎によって完全に消滅した。
麻生は包帯や薬品などを創ると、簡単な応急処置を施す。
触手が消滅すると麦野達が麻生に近づいてくる。
「捕まった時はもう終わりだなって思ったけど、あんたって強いんだね。
私達は「アイテム」っていう暗部の組織なんだけど、入ってみる?」
「悪いが、俺はそっち側に興味はない。
それよりも、お前らが協力してくれている暗部の組織だな。
学生が拉致されている居場所が分かった。
すぐに向かうぞ。」
「でも、車もないこの状況でどう向かうって訳?」
「簡単な事だ。
無いなら創ればいい。」
そう言った瞬間、何もない空間から突然キャンピングカーが出現した。
「・・・・・・貴方は一体超何者ですか?
さっきの戦闘といい、何もない所から車を出現させたといい、普通の能力者とは思えません。」
「ただの一般人Aだ。
それより、早く乗り込め。
時間がない。」
麻生はそのまま運転席に乗り込む。
絹旗はまだ疑問が残ったままだが、とりあえず後ろに乗り込む。
それに続いて、麦野やフレンダや滝壺も乗り込む。
ちなみに麻生は運転免許など持っていない。
だが、運転の仕方などは知識として持っているので何の心配もない。
制限速度などお構いなしに限界までスピードを上げていく。
運転中に海原の携帯電話に連絡する。
拉致された生徒達の居場所を教えると、海原達もそちらに向かうとの事。
此処から第一九学区まではそう遠くはないが一応、警備員に見つかると面倒なので、道路整備されていない道を通っていく。
「そうだ、あの気持ち悪い生き物って何だったって訳?
何か知ってる、運転手さん?」
移動中の間、フレンダが麻生に聞いてくる。
「さぁな、俺もよく知らない。」
「でも、あの声の人はあなたの事を超知っているみたいでしたよ。」
「逆に俺も知りたいくらいだよ。」
「そうだ、まだ自己紹介してなかったね。
私は滝壺理后。
さっきは助けてくれてありがとう。」
麻生は後ろを見ていないが、おそらく滝壺はぺこりと頭を下げているだろう。
「私は絹旗と言います。
あの時は超助かりました。」
「私はフレンダ。
まぁ、助けてくれてありがとう。」
「私は名前を言う必要はないわね。」
滝壺につられたのか、他のメンバーも自己紹介をし始める。
「麻生恭介だ。」
名前だけ教えて、運転に集中する。
数分すると、スラム街の入り口につき、車を止める。
「そうだ、滝壺。
あんたは此処に残っときなさい。
今回はあんたの能力は必要なさそうだし。」
「分かった。
皆、気をつけてね。」
車内に滝壺を残して、四人はスラム街に侵入していく。
スラム街は人の気配が全く感じられなかった。
建物と建物の間が狭く、その間、間にはカーテンのような物がひいてあり、太陽の光がほとんど入ってきていないため少し、薄暗い。
そして、周囲には鉄臭い匂いや獣臭さや腐乱臭を感じた。
「何なの此処。
ものすごく汚いし、ものすごく臭い。」
「此処なら、大人数を隠す事も超可能ですね。」
「滝壺を置いて来て、正解みたいね。」
三人が周囲を警戒しながら話し合っていると、先頭を歩いていた、麻生が急に足を止める。
「どうしたって訳?」
「・・・・・・・・・・・・囲まれているぞ。」
「「「えっ?」」」
麦野達は周りを見渡す。
さっきまでは気配などしていなかったのに、至る所に気配と殺気を感じる。
フレンダはふと、上の窓を見つめる。
その窓の中には赤い瞳がフレンダを見つめていた。
それを確認したフレンダは声をあげる。
「む、麦野・・・何かいるよ。」
「そんな事は分かってるわよ。
ちらほらと、赤い瞳を何回か見かけてるし。」
その時だった。
近くの窓が内側から破壊され、窓から何かが出てくる。
上半身は何も着ておらず、下半身はボロボロのジーパンを穿いている。
手には人間の手ではなく鋭いかぎ爪だ。
足は蹄のような足と、獣じみた顔を持っていた。
人間に似ているがどこか人間ではない、土色の肌をした怪物がそこにいた。
その眼は赤く、どこか血走っているように見えた。
さらに、興奮しているのか息がとても荒い。
「な、何ですか、あの超化け物は!?」
「学園都市が開発した生物兵器か?」
「それにしてこんなスラム街にいるのはおかしいと思うがな。」
怪物は足に力を込めると、一番前にいる麻生に向かって飛び掛かってくる。
鋭いかぎ爪が麻生の顔面に向かって振り下ろされるが、それをかわすと右足を軸にして回し蹴りを怪物の腹に蹴りつける。
数メートル吹き飛ぶ怪物だが、すぐに立ち上がり、こちらに殺気を向けてくる。
それが合図だった。
次々と窓や路地から同じような怪物が何体も現れる。
「囲まれると厄介だ。
走るぞ。」
麻生はとりあえず、前に向かって走る。
麦野達も麻生の後について行く。
麻生が蹴り飛ばした怪物の顔を麻生は右手で払いのける。
横の建物の壁に打ち付けられる。
その間に四人は通路に沿って、走って行く。
しかし、どこを走ろうにもどこからともなく怪物が現れる。
何とかかわしつつ、逃げていると麻生の携帯が鳴り響く。
走りながら、ポケットから携帯を取り出す。
「麻生さんですか?
自分です。
今はスラム街にいるのですが、妙な怪物に襲われています。」
「こっちも同じだ。
お前はあの化け物が何かわかるか?」
「ええ、おそらくあれは食屍鬼と呼ばれる怪物ですね。
ですが、自分の知っている食屍鬼はもう少し人間に近い化け物なのですが、あれは人間とはかけ離れています。」
「結標はどうしている?」
「顔を真っ青にしながら後ろついて来ています。
まぁ、あんなモノを見たらその反応しても仕方がありません。
それよりもさっき麻生さんが話した術者ですが、おそらくこの食屍鬼も操っている可能性が高いです。」
「なら、術者を倒した方が早いか。」
「そうですね。
術者に関しては麻生さんに任せます。
頼りにしていますよ。」
そう言って通話が切れる。
いつもの麻生なら面倒事を押し付けられて、やる気を無くす所だが今はそうも言ってられない。
上の窓から突然、食屍鬼が降ってきた。
そのまま絹旗に向かって、鋭いかぎ爪を振り下ろすが、絹旗に触れる直前でかぎ爪が静止する。
絹旗の能力である「窒素装甲」がかぎ爪を食い止めているのだ。
そのまま右手で拳を作ると、食屍鬼の腹に向かって突き出す。
食屍鬼はそのまま吹き飛び、後ろの建物の壁を貫いて動かなくなる。
「どうやら、見た目だけで他は私達と超変わらないみたいですね。」
「なるほど、それなら・・・・」
麦野は後ろを振り向く。
後ろからは数体の食屍鬼がこちらに向かって来ていた。
麦野の周りに四つの電子線が放たれる。
それを受けた食屍鬼身体は消し飛び、絶命する。
「本当だね。
これなら数の多い、烏合の衆ね。」
「そ、それなら麦野達に任せようかな。
私は後ろで見てるって訳よ。」
「まぁ、フレンダの能力を考えるとその方が超良いかもしれませんね。」
「沈利、俺はこの怪物の親玉を倒しに行く。
そいつらを倒せば、こいつらは自分達から逃げ出す筈だ。」
魔術方面の話はする事が出来ないので適当に嘘をつく。
「ふ~ん、まぁ任せるわ。
私達も適当にその親玉を探す事にするし、危なくなったらとっとと逃げる。」
「そうしてくれも構わない。
じゃあな、また後で。」
「後があったらね。」
そう言って、麻生は麦野達と別れる。
目指すは食屍鬼を操っている魔術師のいる所を目指す。
後書き
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