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久遠の神話

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第五十三話 十一人目の影その十二

「成人病になるわよ」
「何かお姉ちゃんってそういうところは」
「どうだっていうのよ」
「お母さんみたいだね、思い出したよ」
「お母さんみたいになりたいけれどね」
 樹里自身もそう言われて悪い気はせず言うのだった。
「本当に残念だわ」
「癌って怖いね」
「早期発見が遅れたからね。まあこの話はなしで」
 悲しい話になるからだった。樹里にしてもこの話は今は話題にするにはどうしても憚れるものだった。それでだ。
 この話はやや強引に終わらせてそのうえで上城に向き直ってこう言った。
「食器洗ったらね」
「うん、それからだよね」
「酔ってるけれど」
 それでもだというのだ。
「何かして遊ぶ?」
「何がいいかな」
「人生ゲームしない?」
 こう上城に提案するのだった。
「お部屋でね」
「お部屋って村山さんの」
「そう、そこでね」
「面白そうだね」
 上城はにこりと笑って樹里のその言葉を受けた。
「実は僕人生ゲームも好きだし」
「じゃあいいわよね」
「うん、じゃあさ」
 上城は笑顔で零に対しても言った。
「零君もどうかな」
「いえ、僕はいいです」
「いいんだ」
「お二人で楽しんで下さい、ここで飲んでますから」
「そうするんだね」
「特にいいですから」
 こう上城に言うのだった。
「お二人でどうぞ」
「わかったよ。それじゃあね」
「ただ。何ですかね」
 樹里は焼酎をガラスのカップに自分で注ぎ込みながら言う。見ればその焼酎は鹿児島の芋焼酎である。
「二人共ですけれど」
「私も?」
「もうちょっと冒険してもいいんじゃないかって思うけれどね」
「冒険って?」
「それって?」
 樹里だけでなく上城も怪訝な顔を見せる。
「何なの?」
「ここでの冒険って」
「わからなかったらいいです」
 上城を軸に置いての二人への返答だった。
「けれど本当にもう少し進展したら」
「進展って」
 二人はまだわからず首を捻る、樹里はその中でこう言った。
「何が?」
「だからわからなかったらいいから。じゃあ食器洗うんなら」
「手伝ってくれるのね」
「怒られそうだしね。それじゃあね」
「ええ、悪いわね」
 樹里は弟の申し出を受けて三人で食器の後始末をした、それから上城と二人で自分の部屋でゲームを楽しんだのだった。
 二人がそうした穏やかな日常を過ごしている時広瀬は中華街にいた、赤が目立つ賑やかな場所に由乃と共にいた。
 その中で彼はふとこう声に頭の中で言われた。
「あの」
「何だ」
「今は日常の時間を過ごされていますね」
「見ての通りだ」
 こう頭の中にだけ己の言葉を出して声に答える。 
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