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カンピオーネ!5人”の”神殺し

作者:芳奈
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クトゥグアとの戦い Ⅱ

 チート。
 『誤魔化し』、『不正行為』などの意味で、主にネットゲームや家庭用ゲームで用いられる単語である。
 プログラム自体を自分の思い通りに変えてしまうことで、製作者の意図しない攻略を行う。レベル上げ、ステータス改竄、アイテム無限、道中の攻略無視など、様々な現象を起こすそれは、ゲーム運営側からは『チート・コード』とも呼ばれ、粛清の対象にもなるほど苛立たしい代物だ。
 ・・・彼らが怒るのも当然だろう。自分たちが長い時間をかけて作った物が、自分たちの手を離れてしまうのだから。

 鈴蘭にそんな名前を付けられた、護堂の始まりの権能【チート・コード】。後に、賢人議会によって正式に【ステータス改竄(チート・コード)】と名付けられるこの権能は、能力はたった一つで単純明快でも、出来ることは無限にあるという、ある意味では鈴蘭の【無限なるもの(The Infinite)】と同種の権能であった。

『この程度の男だったか・・・。』

 必殺とも呼べる蒼炎の攻撃は、地形を大きく変化させていた。
 エトナ火山の斜面は蒼炎によって溶かされ抉られた。大きな半円形の溝が山の斜面を抉り、その傷跡は遥か下の地面すらも貫いていた。何キロ続いているのかも分からないその溝に、今までの戦いで生み出された大量の溶岩が流れ込んでいる。

『・・・後は、現世にてあの女の神殺しも倒せば・・・』

 クトゥグアが、敗者には用はないとばかりにその場を去ろうとした、その瞬間。

 ボコ!

 彼女の足元。今までの攻撃と、彼女自身の熱によって溶けた溶岩が大きく隆起した。驚く彼女の足に、人の手が捕まる。

 言うまでもない。護堂の腕である。

『何だと!?』

「やっと捕まえたぞクトゥグア!!!」

 クトゥグアは油断して気を抜いていた。神殺しであろうと、所詮は人間だと甘く見ていた。

 彼女は、この山を破壊し尽くしてでも、追撃をするべきだった。『絶対に防げない』攻撃など存在しないのだ。
 カンピオーネは常識では測れない。ある意味では、まつろわぬ神よりも理不尽な存在なのだから、キッチリと護堂の死を確認するまで気を抜くべきではなかった。
 もし彼女が追撃をしていたなら、今度こそ護堂は死んでいたかも知れないのに。

 溶岩から飛び出した護堂は、全身に酷い火傷を負っていた。だが、神々とカンピオーネ(彼ら)の基準で言えば、まだまだ軽傷と呼べる程度の傷である。クトゥグアの蒼炎をまともに受けて、たったそれだけの怪我しかしていなかったのだ!

「『耐火』削除、『剛力』装填・・・!・・・吹き飛べ!!!」

 飛び上がった彼は叫ぶと同時に、クトゥグアを全力で殴った。灼熱の体を殴った護堂の右腕が、一瞬にして炭化する。

「ぐ、あああああああああああああ!?」

 予想以上の痛みに、声を殺しきれない護堂だったが、クトゥグアも相応のダメージを受けていた。

『ガッ・・・!?』

 足場がなく、力が入れづらい状態だったにも関わらず、護堂の拳は彼女の体を何十メートルも吹き飛ばしていた。彼女の熱で溶けた溶岩の上を、水切りの石のように何度も跳ねた彼女は、溶けずに残っていた大岩に衝突する。しかし、流石の大岩もその衝撃には耐え切れなかったようで、次の瞬間には崩落を始めた。
 その下に墜落した、クトゥグアの小さな体へと向かって。

 ガラガラと。凄まじい音を立てて、瓦礫が積み重なっていく。だが、相手はまつろわぬ神。あの程度の攻撃で死ぬことは無いだろう。

「フゥ・・・ハァ・・・。『剛力』削除、『治癒』装填。」

 護堂は、呼吸を正しながら体の調子を確かめる。あれ程負っていた怪我は、新たに追加した『治癒』の効果によって癒され始めている。驚いた事に、炭化した右腕すらも修復され始めていた。流石に、焼け落ちた服まではどうにもならないが、これも能力によって強化されていた為に、致命的なほど燃えている訳ではない。

「追撃・・・は、止めておいたほうがいいか・・・。」

 一瞬、今のうちに攻撃を仕掛けたほうがいいのではないかと思った護堂だが、直ぐにその考えを破棄する。

 何故か?

『く、ククク・・・。ハハハハハ!!!』

 膨大な呪力が、吹き荒れ始めたからだ。楽しそうな声が、彼女はまだまだ戦えると宣言している。ここで不用意に攻撃を行って、反撃を喰らうような愚は避けたいところだ。

 肉が焼けるような音を立て、積み重なっていた瓦礫が溶けていく。

『フフフ・・・そうだ!そうでなくてはならん、我が敵よ!我が宿敵を横から攫ったのだ。奴以上に強くなくてはならん!貴様を倒して漸く、我は奴との決着を付けることが出来るのだ!!!』

 護堂に殴られたダメージは中々大きいようだったが、瓦礫は意味がなかったようだ。そのダメージすらも無視して、彼女は叫ぶ。

「そっちの都合なんか知るか。迷惑なんだよお前。俺は、俺の都合でお前を倒す。」

 彼の怪我は、ほぼ修復されていた。カンピオーネの出鱈目な肉体性能でも説明がつかないほどに異常な回復速度。それを見て、クトゥグアは首をひねった。

『我の蒼炎を耐え、神の如き膂力を持ち、更に自己修復までする。中々多芸な権能を持っているようだな。』

「ハッ!自分の権能をバラす訳無いだろうが。」

『それもそうだな。』

 権能の効果を推察するのも、神々の戦いでは重要なファクターである。絶対の自信を持っていても、どういう手段で攻略されるか分からないからだ。今の護堂のように。少しでも情報を出してくれればこれからの戦いも有利になるのだが・・・と、クトゥグアは内心で舌打ちした。

『では、色々と試してみるか。』

 彼女が呟くと同時に、周囲に展開する蒼炎の弾。先程のような巨大さはなく、大きさは十センチ程に圧縮された蒼炎だが、その数は段違いだった。

『これも受けきれるか!?』

 凡そ五百。
 それ程の数の蒼炎が、まるでレーザービームのように次々と発射される。それはまるでマシンガンのような連射速度で、その弾幕の壁は、とても回避出来るような物ではなかった。

「クッ・・・!?」

 当然、護堂が取れる行動も限られてくる。彼は先ほどと同じように両腕を顔の前に回し、吹き飛ばされないように前のめりになり叫んだ。

「『回復』削除、『耐火』装填!」

 ガガガガガガガガガ!!!

 凄まじい音を立てながら、彼に当たり続ける蒼炎は、しかし彼の防御を抜くことが出来なかった。幾らかのダメージを与えてはいるようだが、決定打にはなりえない程度の物ばかりだ。

 ・・・だが、今更自身の攻撃を防がれたからといって、動揺するクトゥグアではない。

『フム・・・。溶岩をほぼ無傷で泳いだかと思えば我を殴っただけで重傷を負う。それなのに、この攻撃には耐えるのか。ならば次はこれだ。』

 蒼炎の弾幕を撃ち続けながら、彼女は炎の精(The Fire Vampires)を多数召喚した。フサッグァがいないのがせめてもの救いだろう。流石に、彼らの司令塔の役目を負うフサッグァまで、すぐには再生出来なかったようである。

「くそ、またそれかよ!?」

 護堂が毒付くのを尻目に、彼女は命令する。

『さぁ、まだ仕事は終わっていないぞ配下共!その神殺しを殺し尽くせ!!!』

 彼女の号令と共に、火の玉たちは動き始める。
 ・・・しかし、先ほどまでとは攻撃方法が変化していた。

「ぐ、あああああああああ!?」

『ほう・・・これは効くのか。』

 先の炎の精(The Fire Vampires)たちは、ただの熱線で攻撃していた。しかし今は、その体から刃物が突き出ていた。その刃物は片刃の剣で、象牙らしき柄が付いているが、鍔は存在しない。ソレを持ち、炎の精(The Fire Vampires)たちは護堂へと特攻したのである!!!

 クトゥグアの蒼炎と炎の精(The Fire Vampires)の斬撃攻撃。その両方に晒された護堂には、その斬撃を防ぐ術が存在していなかった。辛うじて急所だけは防御に成功したものの、体の至る場所へと剣が突き刺されていく。更に恐ろしいことに、護堂の体内へと侵入したその剣に触れている場所が、発火し始めたのだ!

「あ、アアアアアアアアアアアアア!?」

 コルヴァズの剣。
 これは、『カウントダウン』という作品で登場したアーティファクトである。
 この剣は、炎の精(The Fire Vampires)の炎で鍛え、刀身に炎の精(The Fire Vampires)を封印した片刃の剣である。象牙の柄があるが、鍔はない。この剣は、『あらゆる可燃物に刀身で触れるだけで燃え上がらせることができ、また不燃物であっても焦げ付かせることができる』という、非常に凶悪な能力を持っている。
 ・・・ただ、クトゥルフ神話において、邪神や旧支配者たちの武具が『ただ強いだけ』な訳が無く、強力な効果に見合った、極悪なデメリットが存在する。
 それが、『使う度に炎の精(The Fire Vampires)に近づく』というものである。この剣を使う者は、振るうたびに正気を少しずつ喪失していく。そして、正気が完全に失われた時に、使用者の身を焼き滅ぼし炎の精(The Fire Vampires)へと転生させ、未来永劫クトゥグアに仕えさせる。

 そんな狂気の武器に深手を負わされ、想像を絶する激痛に叫ぶ護堂。しかし、この間にも彼女たちの攻撃は休まらない。痛みに呻いている暇などないのだ。

(だ、ダメだ!物理攻撃まで出してきた以上、防戦一方なのはマズイ!!!)

 護堂の権能は、一対一(タイマン)ならばかなり有利に戦えるが、今回のように敵が複数になると、途端に使い勝手が悪くなる権能だ。どれに対処するのか、その選択を強いられるからである。
 今の状況は非常に危険。そう判断した彼は、状況を打開すべく、強引な手段に訴える事にした。

「『耐火』削除、『神速』装填!!!」

 その瞬間、護堂以外の全てが停止した。
 護堂が、神速を発動したのである。彼は迫り来る蒼炎とコルヴァズの剣を交わし、一直線にクトゥグアへと走り寄った!
 クトゥグアは闘神ではない。当然、心眼など会得している訳がなかった。伸びた時間の中でクトゥグアの数メートル手前まで走った彼は、神速を解除する。神速は、早すぎて正確な制御が出来ないのである。

「ゴ、フ・・・ッ!」

 途端、今までの怪我と、神速が体へ掛ける負担により吐血する護堂。しかし、彼は止まらなかった。

『な、に・・・!?』

 突如として目の前に現れた護堂に、言葉を失うクトゥグア。一瞬の後、その驚きを振り払って迎撃しようとしたが・・・その一瞬は、彼らの戦いでは非常に大きな隙となる。

「オオオオオオオオオオ!『氷結』装填!!喰らいやがれクトゥグア!!!」

 護堂の振りかぶった拳が、突如として凍った。・・・否、氷の鎧を纏った。精緻な細工のガントレット。それからは恐ろしい程の呪力が迸り、これが権能によって作られたのだと言うことを如実に示していた。
 対するクトゥグアは、二重の驚きによって完全に動きが止まっていた。先ほどからコロコロと変わる護堂の力の数々に、意識が追いつかなかったのである。

 ドゴ!!!

『カ、ハ・・・!?』

 殴ったとは思えないほど、凄まじい音が響く。氷のガントレットは、クトゥグアの熱に溶かされることもなく、彼女の腹部へと吸い込まれていった。彼女の肉体は、決して頑丈ではない。肺の中の空気を出し切った彼女だったが、護堂は情けなど掛けずにここで決めるつもりだった。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 左腕にも、右腕と同様のガントレットを作り出した護堂は、ラッシュを開始する。

 ドドドドドドドドド・・・!

 両腕による全力の攻撃は、確実に彼女にダメージを与えている。

(いける・・・!押し切る!!!)

 そう思った瞬間だった。

『調子に乗るなよ・・・神殺し・・・!』

 その声と同時に、護堂の背中に熱線が直撃した。

「あ・・・・・・!」

 炎の精(The Fire Vampires)による攻撃である。クトゥグアが操作しなくても、彼らは動くことが出来るのだ。自身の主の危機を見逃す訳が無かった。

「う、あ・・・。」

 声も出せない。心臓は逸れていたが、熱線は完全に護堂の体を貫通していた。体に力が入らなくなった護堂は、膝から崩れ落ちる。

『・・・見事だった。神殺しよ。』

 地面にうつ伏せに倒れた護堂を見下ろすクトゥグアも、満身創痍であった。護堂の攻撃は、間違いなく彼女を追い詰めていたのだ。

『今までは完全に防いでいた熱線で、体に穴が空いた。・・・貴様の権能の正体が分かったぞ。・・・『自身の能力を書き換える』。それが貴様の権能だな?』

「・・・ぁ・・・。」

 権能の正体を見破られた。護堂は、状況が詰みの状態へと変化しかかっていることを理解した。

 【ステータス改竄(チート・コード)】は、自身の能力を自由に書き換える権能である。装填出来る能力は一つだけ。だからこそ、複数種類の攻撃を同時にされると弱い。

 例えば、先ほどのように、クトゥグアを殴る為に『剛力』を装填したせいで、クトゥグアの体の熱に『耐火』で対抗出来なかった。
 例えば、クトゥグアの蒼炎を防ぐ為に『耐火』を装填しているときは、コルヴァズの剣による物理攻撃を防ぐことが出来なかった。
 『神速』を発動したまま『氷結』による攻撃も出来ないし、『氷結』で攻撃していたから熱線に対応出来なかった。

 万能なように見えて、弱点が丸分かりな権能なのである。同時に、様々な攻撃をするだけで攻略出来るのだから。

『タネさえ分かればどうということはない。』

 そう言いながら、クトゥグアは再度蒼炎を出現させ、いつでも攻撃出来るようにコルヴァズの剣を携えた炎の精(The Fire Vampires)の大群が近寄ってくる。

『・・・今度こそ終わりだ神殺し。』

 だが。

 やはり、クトゥグアは本当の意味で神殺しというのがどういう存在か理解していない。彼らに時間を与えてはならない。勝とうと思うのならば、最初から最後まで押し切らなければならない。ヘタに追い詰めて放置するのは危険なのだ。重傷を負った彼らは、最早誰にも止められない恐るべき怪物と化すのだから。彼に、休息の時を与えるべきではなかったのだ。

「・・・凍れ。」

 ボソリと呟かれたその言葉。決して大きな声では無かったが、その声は彼女たちの根源的な恐怖を思い出させるには十分だった。クトゥグアは、急いで彼の首を刈り取ろうとした。

 ジュッ!

 彼女の放った蒼炎も、コルヴァズの剣の斬撃も、その一枚の氷の盾に防がれる。と言っても、防ぐことが出来たのは、ほんの一瞬だけ。クトゥグアの蒼炎に耐え切れる訳もなく、即座に蒸発した・・・が、

『いない!?』

 そこには既に、彼は存在しなかった。
 氷の盾は目くらまし。彼は、その次の瞬間には、『神速』を発動していたのだ。クトゥグアの攻撃範囲から離れた彼は、言霊を唱える。

「聖なる者も邪悪なる者も我を畏れよ。我は混沌を支配する者。全てを嘲笑い、踏み潰す者也!」

 彼の、正真正銘の奥の手。
 その言霊を叫んだと同時に、彼の体に変化が起こる。鍛えた彼の身体が一瞬にして分解された。その代わりに出現したのは、漆黒の装甲。全身の変質は瞬時に終了し、剥き出しだった頭部には、フルフェイスタイプの装甲が追加された。全身の装甲に走るのは、数本の禍々しく赤い線。

「・・・・・・終わらせようクトゥグア。」

 全てが終了したのは僅か一秒後。今までの護堂とは全く違う、禍々しい戦士は構えを取った。

『・・・馬鹿な。』

「行くぞ!!!」

 護堂は『神速』を装填し走る。クトゥグアへ・・・ではなく、炎の精(The Fire Vampires)の元へ。

「一撃で・・・終わらせる!」

 加速された時間の中で叫んだ護堂は、神速を維持したまま(・・・・・・・・・)、『雷』を装填した。

 護堂の体から、直視出来ない程に眩い電撃が発せられる。神速のスピードで炎の精(The Fire Vampires)たちの周りを走り回った後には、その全てが、強力な電撃によって消滅させられていた。

 何故電撃なのか?それは、炎の精(The Fire Vampires)たちは完全な炎の体だったためである。クトゥグアは、肉体を持っていたから殴れたが炎を殴ることは出来ない。ならばどうすればいいのか?

 1933年に発表されたワンドレイという作家の作品『The Fire Vampires(炎の吸血鬼)』において、人類に襲いかかってきたフサッグァは、超高圧電流によって消滅している。エネルギー生命体は、短絡させることにより殺せるのだ(とこの作品では言っている)。神話に引っ張られる神々や神獣だからこそ、この方法で殺せたのだった。

『なんだと!?』

 体が悲鳴を上げてきたことで、護堂は神速を解除した。恐らく、この戦いの中ではもう使えないだろう。後遺症で動けなくならなかっただけ有難い状況だ。

「やっと・・・一対一だな。もう召喚する余裕なんて与えないぞ。」

『馬鹿な・・・馬鹿な!一つだけではないのか!?二つも能力を付けることが出来るのなら、何故今まではやらなかった!?』

 勝利を確信した直後の大逆転は、クトゥグアの精神に多大な影響を与えていた。これほど強力な力を出し惜しみする理由など少し考えれば分かることなのに、彼女は考えることが出来なかった。

 この姿こそ、護堂の奥の手『黒の戦士(ブラックソルジャー)』モードである。このモードは、デフォルトで耐熱、耐弾、耐刃、耐衝撃の能力が付いている上に、能力を三つまで同時に装填出来る。
 ・・・しかし、その代償は途轍もなく大きいのだ。

 この能力の限界時間は、僅か三分。この時間を過ぎると強制的に能力が解除され、二時間の間【ステータス改竄(チート・コード)】自体が使用出来なくなる。
 使いどころを誤れば、即死亡に繋がる諸刃の剣。それが、この『黒の戦士(ブラックソルジャー)』モードなのだ。

 ザッ・・・と、護堂が一歩を踏み出す。

 それに対して、彼女は反射的に蒼炎を放っていた。もう、意味はない攻撃なのに。

「『耐火』・『耐物理』・『剛力』装填。」

『馬鹿な・・・馬鹿な馬鹿な!!!?』

 精神汚染も、炎も剣も。彼女が持っている全ての攻撃手段を打ち消されて、彼女に勝機が残っている筈も無く。
 この後、凡そ一分後に、クトゥグアは消滅するのだった。 
 

 
後書き
凄く強いように見えますが、実際はそこまで無敵でもないです。確かに万能ですけどね。
例えば、炎を纏ったパンチとか。『耐火』を装填すればパンチのダメージを、『耐物理』を装填すれば炎のダメージを喰らいますし。両方に対抗するなら『黒の戦士(ブラックソルジャー)』を使うしかないですけど、これは本当の奥の手ですから。 
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