misfortune
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第一部
SlumⅡ
人が死ぬまでに受ける幸、不幸は計算すると皆同じだと言うけれど、そんなの嘘だ。現に私は生まれてから14年一度も幸せと感じたことがない。スラムに生まれてスラムで育ち、ドブネズミと呼ばれる。兄妹も居なければ、唯一の肉親さえも幼い頃に死別した。毎日汚い服を着て、生きるために盗みを働かせる。苦痛にも空腹にも耐え、一日を過ごす。眠る時は寒さに肩を震わせる。毎日横目で死んで往く人たちを見ては「次は自分の番かな」なんて考える。そんな日々を幸せと感じれる訳がない。
こうして私は、幸せを知らぬまま今日もこのスラムで生きる為にもがくのだった。
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