『曹徳の奮闘記』改訂版
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第百四話
「仲を解散? 倭国へ行く? ……どういう事よ美羽ッ!!」
「言った通りの意味じゃよ雪蓮。魏が蜀に降伏した時から既に決まっていた事なのじゃ。蜀が魏を吸収すれば、いくら仲であろうとも蜀には勝てんと軍師と長門はそう思っていたのじゃ」
「長門が……?」
美羽の言葉に雪蓮が俺に視線を向けた。
「長門は……始めから知っていたの?」
「……あぁ。というより反董卓連合の時から決めていてな、真桜に倭国へ逃げる大型船の建造を密かにさせていたんだ」
俺は雪蓮にそう説明した。雪蓮は一番信頼している冥琳にも視線を向けたが、冥琳も頷いた。
「……それじゃあ……私達がしていたのは何だったの? ただの時間稼ぎだったわけ?」
「……そうなのじゃ。騙して済まなかったのじゃ雪蓮。無論、これは強制はしないのじゃ。蜀に降伏しても構わないのじゃ」
「……はぁ」
美羽の言葉に雪蓮は溜め息を吐いて美羽に近づいた。
「あのね美羽。私達は貴女の部下よ? 私達は最期まで付き合うわよ」
「雪蓮……」
「でもね美羽、せめて私には言っておきなさいよねッ!!」
「あいたたたッ!! 痛いのじゃ雪蓮ッ!!」
雪蓮がコブラツイストで美羽を攻撃しだした。雪蓮の性格からして斬りかかりそうだったけどな……。
「あいたたたなのじゃ……」
「それだけで良しとしなさい」
痛がる美羽に溜め息を吐く雪蓮であった。その後、呉に後退するために準備に移った。
「長門、いるかしら?」
「ん? どうした雪蓮?」
荷物を纏めていると雪蓮が部屋の扉を叩いた。珍しく、雪蓮にしては部屋に入ってくる事はなかった。(よく勝手に来ては俺を搾っていくけどな。え? 搾る? ……察しろ)
「……蓮華? 何で蓮華も……」
扉を開けるとそこには雪蓮の他に蓮華もいた。
「ちょっと御願いがあるのよ」
「……取りあえず部屋に入れ」
俺はそう言って二人を部屋に入れた。
「それで……御願いとは? 雪蓮の事だから嫌な予感しかしないがな」
「それは酷くない長門ぉ」
「大抵事実だろうが」
「まぁいいや。あのね長門、率直に言うと蓮華を抱いてほしいのよ」
「……はい?」
「ね、姉様……」
……は?
「……どういう事だ雪蓮?」
「そのままの意味よ長門」
「そのままの意味って……」
「だ、駄目かしら長門? わ、私も長門の事が……」
蓮華はそう言って顔を赤く染めた。はて? 俺は何時蓮華にフラグを……。
「蓮華、その……何時から意識をしてた?」
「……黄巾族と戦ったあの時、貴方が私を助けてくれた時からよ」
……そういや助けたな。まさかそこからフラグが発生するとはな……。
「けどな……七乃達は許さないだろ?」
「七乃達からはちゃんと許可貰っているわ」
「……そうすか」
流石は七乃と言うべきか……。
「……長門、私も貰ってくれないかしら?」
「………」
蓮華さんの上目使いです、ありがとうございます。
「……判ったよ」
そして、俺は蓮華とも関係を持った。なお、二回戦には雪蓮も加わって三ぴ(おっと、言わせないぞ)もしたのはまぁ当然の事だろうな。
そして仲軍は建業から呉まで後退を始めた。建業の人々は涙を流しながら俺達を見送っていた。
仲軍約二二万は呉に後退して建業は無防備宣言を行った。
――蜀軍――
「何? 仲軍が建業から撤退して無防備宣言をしたのか?」
「はい御主人様。俄に信じられませんが……」
「罠……でしょうか?」
蜀軍の天幕で北郷達が軍儀をしていた。間者からの報告で建業には兵の一人おらず、建業の住民しかいなかった。
更に建業が無防備宣言をした事に北郷達は首を捻っていた。
「……王双は何を考えているんだ?」
「……判りませんね。建業は仲の一番の重要拠点のはずです。それを放棄してまで後退するなんて……」
「……兎に角、建業に入城しよう。仲がいないなら後の攻略は楽になるだろう」
北郷はそう決断した。そして蜀軍は容易に建業へ入城した。
それから三日後、蜀軍は再び進撃を開始して仲軍がいる呉へと目指した。
――呉――
「どうだ真桜? 工事の捗り具合は?」
「もう三日待てば全船が完成するわ。何せ大型船やからなぁ」
呉の造船所では倭国へ渡航するための大型船が建造されていた。全部で五隻の船で、大航海時代の帆船のような船だ。(無論、俺が真桜に入れ知恵したから)
「それと隊長、最近脱走兵が大幅に増えているらしいな」
「あぁ、勝ち目が無い戦だと判ったんだろ。建業を出る時は二二万いた軍勢が十四万に減ったからな。恐らくはまだまだ減るぞ」
「そら辛いなぁ……」
「だな(後ろからやられないよう気を付けておく必要があるな)」
恩情欲しさに武将の首を取る輩が出てくるからな。俺は造船所から出て町の警備に行く事にした。
「……皆、意気消沈しているな」
町では負けているせいか、住民達の表情も暗かった。
その時、女性の悲鳴が聞こえたが……。
「この声……雪風かッ!?」
俺は走った。さっきの悲鳴は路地裏の方向からだから……。
「急がんとヤバイぞッ!!」
俺は両足に氣を送って急いだ。
後書き
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