ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
八十四話:ピエールの素顔
「お待たせ!さあ、戻ろうか!」
お風呂で体はスッキリしたし、モモとビアンカちゃんの脳内フォルダを散々解放して満ち足りたし!
心も体も、すっかりリフレッシュされました!
すっかりツヤツヤになって、廊下で待ってた面々に声をかけましたが。
「……あれ?なんか、疲れてる?」
スラリンは別にいつも通りですが、ヘンリーとピエールが。
なんだか、ぐったりしてるような。
「……もしかして。また、来たの?」
特に、騒がしい様子は無かったと思うけど。
妄想に浸り過ぎて、気付かなかったのかも。
と、思わず不安を顔に出して聞いてみると、ハッとした二人が立ち直って。
「いや、それは無い。大丈夫だ」
「昼間の兵士のことであれば、ご心配は要りませぬ。最後にはドーラ様のお名前すら、口に出来ぬようになっておりましたゆえ」
「他の男も、威圧しただけで近付いて来なかったからな。大丈夫だ」
ストーカーの恐怖からは完全に解放されたらしいのはわかったが、なんか別の恐ろしい何かが。
特にピエールさん、あなた一体、何を……。
……知らないほうが幸せなことって、あると思う!
きっと、絶対に、あると思うんだ!!
「そ、そっか。ありがとう、二人とも。スラリンも。じゃあ、戻ろう」
結局、なんでぐったりしてるのかわからずじまいだが。
なんかもう、いいや。
そんな感じで、ひとまず部屋に戻り。
ヘンリーとピエールは交代でお風呂に入ることにしたらしく、まずはヘンリーとスラリンがお風呂に向かいます。
……別に、一緒に入ってくればいいのに。
私にはできない、男同士の、裸の付き合いを!
堪能してきやがれば、いいのに!!
なんて言ったところでこの保護者コンビが私を一人置いていくわけも無さそうなので、そんなことは言わずに。
スラ風号がいるとは言え、ピエールと二人でじっくり話す初めての機会なので、色々聞いてみることにします。
「ピエール、っていうかスライムナイトってさ。魔物なの?」
「魔に属する物、ということなら、そうなりますな。人を襲うということは、本来は種族として積極的に行うものではありませぬが。現在、種族として仕える相手が、そう望んでおりますゆえ。完全に、敵対する形になっておりますな」
「仕える相手って?」
「拙者のような末端の者には、はっきりとした情報は入りませぬが。魔に属する物の王、則ち魔王ということになりましょうか」
「よくわからない相手に、仕えてるの?命懸けで?」
「はい。人の世とて、同じようなものでありましょう」
そうか。
言われてみれば、そうかもしれない。
王様とか、一般の国民が直接知ってるわけじゃないしね。
「そっか。でもそれなら、良かったの?種族を裏切って、私に着いてきちゃって」
邪悪な意思やらの強制力で、無理矢理従わせられてたわけじゃ無いのなら。
私に着いてきたのも種族を裏切ったのも、完全に自分の意志ということになるけど。
大丈夫なんだろうか、それ。
家族とか、気持ちの問題とか、色々と。
「はい。スライムナイトとして生を受けた以上、自らがそうと定めた主に仕えることこそ誇りであり、生きる意味にござります。最初に仕える主は魔の王と、暗黙のうちに決まっておりますが。それぞれに真なる主に出会い一族を離れるのも、多いとまでは言えずとも、珍しいことではありませぬ」
無いことでは無いのか。
なら大丈夫、なのか?
……まあ、ピエールが決めたことだし。
そこの判断については、私が口を出す問題では無いか。
私が決めるのは、ピエールが決めたことを受け入れるかどうかだけで。
それはもう、決めたんだから。
「そっか。ありがとうね。私を選んで、着いてきてくれて。たぶん、ピエールが思ってる以上に大変なことになると思うけど。改めて、よろしくね」
その魔王とやらとも、はっきり戦うことになると思うんですけど。
そこまではさすがに、言えないが。
「こちらこそ。心に決めた主に受け入れて頂けることこそ、望外の幸せにござりますれば。どこまでもお供し、お仕え致す所存です」
「ありがとう」
私がこの先、何を選んでも、どうなっても。
全てを明かせる日はきっと来なくても、それでもきっと、ピエールは一緒にいてくれるんだ。
ありがとうなんて言葉だけで、言い尽くせることじゃないけど。
それでも、感謝の気持ちはいつも忘れないようにしよう。
……と、それはさておき。
ピエールが仲間になってから、ずっと気になってることが。
「ところでさ。兜。……脱がないの?」
正直、顔が気になって仕方ないんですが。
別に仲間に顔面レベルとか求めないけどさ、気になるじゃない!
どんな顔してるのか!
人間に近いのか、人外寄りなのか!
「スライムナイトたるもの、常に有事に備えるのが当然にござりますれば。入浴時などの止むを得ぬ場合を除き、常に武器防具は身に纏うよう習慣付けられております」
食事の時も、外さなかったんですよね。
口元だけ部分的に外せるようになってて、それは人間ぽかったんですけど。
「そっか。……脱いだら、ダメなの?」
「駄目、と申しますか。落ち着かぬと言うか、必要が無いと」
「ダメじゃないんだ。……ちょっと、脱いでみない?」
「は。何故に、そのような」
「いや、ただ、ちょっと。見たいなって」
「見たい?……と、申されますと」
「だから。ピエールの、顔を。……見たいな!」
「はあ。特に、物珍しいものでもありませぬが」
「いやいや、珍しいから!無いから、普通!人間が、スライムナイトの顔を見る機会とか!」
「はあ、言われてみれば。しかし、そう変わったものでもありませぬぞ」
「いいから!見せて!お願い!」
「それは、勿論。ドーラ様のお望みとあらば」
嫌そうでは無いけれども、まさに解せぬ。といった様子で、兜の留め金を外し、脱ぐ準備を始めるピエール。
ああ、結構脱ぐのも大変なんだ。
悪かったかなー、と思ったのも束の間。
さすがに慣れた様子で手際良く各所の留め金を外し終え、勿体ぶることも無くあっさりと、ピエールが兜を脱ぎます。
……って、これは。
「お待たせ致しました。……ドーラ様?」
「……可愛い……」
「は?」
「な、なんでもない!」
しまった、つい心の声が外に。
いくら他種族とは言え、男性に対して可愛いとか失礼にも程がある!
でも、なにこれ、可愛い!
天使だ!天使がいた!
体格的に人間の子供くらいのものだから、まさに天使!
どうしよう、私ショタコンでは無いはずなのに!
これは、可愛い!
ぎゅってしたい!!
ていうかこれ兜を脱がない習慣あって正解だわ、犯罪を誘発するわ。
むしろそのためなんじゃ無いの?その習慣。
大丈夫なんだろうか、一人でお風呂にやったりして。
「ドーラ様?何か、問題でも?」
「いやいや何も問題無いっていうか、ある意味大有りっていうか。……みんな、そんな感じなの?スライムナイトって」
「そんな、とは?」
だからそんな、可愛い。
……って、言えないならどう言ったらいいんだ。
「……ええと。話は変わるけどさ。人間社会に入るスライムナイトって、他にもいなかったわけじゃ無いんだよね?選んだ主が人間なら」
「そうなりますな」
「例えば。例えばの、話だけど。……襲われたりとか、無いの?その……不埒な考えを持った、人間とかに」
「……スライムナイトに、不埒な考えを持つ人間が居るのかは知りませぬが。余程の未熟者で無い限り、問題無いでありましょう。そのような不埒な輩、少々威圧してやれば。尻尾を巻いて逃げて行きますゆえに」
「……ああ。そっか」
他はどうだか知らないが、このピエールさんに限って。
そんな心配は、要らなかった。
「……そうだよね。……私も、練習しよっかなー……。威圧とか」
「必要無いでござりましょう。ドーラ様に近付く不逞の輩は、このピエールが。全て、排除しますゆえに」
いや、そういう面倒をかけたくないから、覚えたいんですけど。
と、また兜を装着しようと手をかけるピエール。
「ああ!待って!」
「は。まだ、何か」
「……あの。あのね?」
できれば、ちょっとだけ。
ちょっとだけ、ぎゅって、させて欲しいなって!
「……ドーラ様?」
「違うの!不埒な考えとか、そういうのじゃ無いの!ただ、ちょっとね!あまりにもね!」
ピエールが、可愛すぎたから!
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ!
ぎゅって、するだけだから!
と、ピエールににじり寄る私の行動を、阻む者が。
「おい。何してる」
「……ヘンリー!」
ちっ、邪魔が入ったか!
あとちょっとだったのに!
腕を掴まれるまで接近に気付かないとは、不覚!!
「ヘンリー殿。戻られましたか。では、拙者も風呂に」
「ああ。行ってこい」
いつの間にか兜を被り直していたピエールが、ヘンリーから部屋の鍵を受け取ると、スラ風号とともに何事も無かったかのように部屋を出て行きます。
ああ、天使が去ってしまった。
「……で。何してたんだ?」
「え?いや、ちょっと。可愛いものを、愛でようと」
「……そうか、お前か。ピエールじゃなくてお前のほうか、危ないのは」
完全にバレてます。
いやいや別に、犯罪とかそういうのじゃ無いですし?
ただちょっとぎゅってして、頭ナデナデするとか、そんな程度の話だから。
「……とりあえず、髪。乾かそっか」
「頼む。その間に、詳しく聞かせてもらおうか」
ええー。
やっぱ、言わなきゃダメ?
下手なこと言うと、ピエールの素顔封印工作とか受けそうなんですけど。
……まあ、仮にそうなっても。
ヘンリーと別れた後なら、ピエールを拝み倒して!
また見せてもらえば、いいか!
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