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俺がDIO?

作者:DIE
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喪失編
  六話

 
前書き
やっと戦闘に入った~ 

 
異変を感じた魚人達が次々と現れた。
それを魚人ゾンビに相手をさせ、俺は奥へと進む。

「.....拍子抜けだな」

眷属は順調に集まっていた。

それもその筈だ。
魚人ゾンビ達が噛みつく度に、他の魚人に感染し、ゾンビとなる。
俺が手を下さずとも後少しで全ての魚人は眷属と化すだろう。

「見つけた」

当初の目的の魚人、アーロンは簡単に見つかった。
アーロンはプールのような場所の手前で魚人ゾンビ相手にノコギリのような巨大な剣、キリバチを振るっていた。
振るう度に魚人ゾンビ達の体が三枚下ろしにされていく。
魚人ゾンビでは分が悪いか。

「ロビン」

「何かしら?」

「俺はアーロンの相手をしよう。お前は後の雑兵を頼む」

「....どうせ止めてもあなたは聞かないわよね。分かったわ。精々死なないでね」

返事と共にロビンは未だに抵抗を続けている魚人の元に走った。
それを見送り、俺はアーロンの元へと向かう。

「アーロンだな?」

「人間.....てめぇ、俺の同胞達に何しやがったァ!」

アーロンは瞳孔を開き、俺にキリバチを降り下ろしてくる。
速いが、何の芸もないやり方だな。

それを少し横に飛び、かわすと腰のナイフをお返しに投げる。

「そんなオモチャが通じるか!オラァ!」

再び振るわれるキリバチを大きく跳躍して、かわす。
そして、無数のナイフを手当たり次第に投げる。
アーロンもそれに応戦するようにキリバチで俺のナイフを落としていく。

「下等な人間が俺に勝とうなんざ無理な話なんだよ!てめぇをなぶり殺した後は、あの女もなぶり殺しにしてやるっ」

「それはない。お前は俺には勝てない」

「負け惜しみいってんじゃねぇっ!!」

キリバチが再び降り下ろされる。
ワンパターンだな......これ以上戦っても何の成果も得られそうにない。
戦闘では何かを学ぼうとするが、学べるモノがないのならそれは意味の無い戦い。
そろそろ終わらせるとしよう。

「ザ・ワールド」

「グハァ!?....なん、だ、コイツは」


世界の拳がアーロンの脇腹に突き刺さり、キリバチを落とした。
戦闘中に武器を手放す、それ事態命を捨てる行為に等しいが。
殺しはしない、半分は、だが。

「終わりだ。ザ・ワールド」

俺の声に呼応するように、世界の腕が交互にアーロンの体に物凄いスピードで叩き込まれていく。
突然の事にアーロンは防御もとれずに、されるがままになっている。
格下と思っていた相手にアーロンは完全に蹂躙されていた。

世界の連打が止むとアーロンの体は傷だらけになり、ゲホッと血を吐いて、コンクリートの地面を転がる。
命の駆け引きもない呆気ない幕切れだ。
圧倒的強者によるできレースのように、最初から勝ちが決まっていた。

「ゲホッ.....この、俺が下等な人間、に......!」

アーロンは憎々しげに憎悪の視線を顔だけをこちらに向け、放つ。
正確には後ろの世界にもだが。

所詮は価値観の違いだ。
この魚人のように人間=弱者、魚人=強者。
こんな考えを持っている相手は大抵世界の広さを知らない愚者か、本当の強者かのどちらかだろう。

「下等なのは、人間にも魚人にも存在しているだろう。現に個で言えば俺、世界で比較すればお前よりも強い人間は多く存在している。そうは思わあないか?」

「........」

アーロンは答えず、ただ歯を食い縛っている。
.......敵に答える義理もない、か。

このアーロンは前者に当てはまる。
だから、人間は弱い、魚人は強いと決めつけ、簡単にランク付けできる。
世界は一つの常識が全てではない、アーロンの言うような常識もあれば、逆もまた然り。

だが、少なくともこの魚人は圧倒的強者ではない、が一般的な強者の地位に居るのは確かだ。
だからこそ、これが相応しいだろう。
俺は憎悪の視線を投げ掛けてくるアーロンの額に肉の芽を埋め込んだ。

「恨むなら己を恨め。無力を、弱さを」

世界はいつの時も強者に優しく微笑み、弱者に厳しく怒りを向ける。
だからこそ理不尽に怒り、もっと憎むといい。
悪人であれば、有るほどより強くなれるのだから。



アーロンの眷属化を終えた後、ロビンと魚人ゾンビの元へ戻ると丁度ロビンが幹部と言っていたタコのような魚人を拘束していた。
見た所、それがゾンビ化していない最後の生き残りのようだ。

「あら?早かったわね、DIO。アーロンはどうだったのかしら?」

「問題ない、既に眷属にした。それよりもその魚人が最後か?」

「ええ、やたら腕がたくさんあるから拘束に少し時間が掛かっちゃったけど」

「別にそれはいい。早くゾンビ達に噛ませろ」

俺の言葉にタコの魚人が暴れ始めた。
といっても、頭だけだが。

「ちょっ、ちょっと待ってくれよ~!降参、降参する!」

情けなく身をよじるタコの魚人。
生かしておく義理はないが、眷属はもう充分だ。
なら....

「お前を助けたとして、俺に何のメリットがある?」

俺がそう言ったのは、この魚人が自分の命と引き換えにそれ同等の物を出せるかを確かめるためだ。
対価によっては、逃がしてもいい。
俺はDIOとは違うのだ。

「な、ならおでが隠していた財宝庫に案内する!そこにたくさん金や宝がだから助けてくれ~!」

「財宝か....」

そう言えばこの世界の通貨を俺は一円たりとも持っていない。
船を探せば、少しは出てくるかもしれないが、その額はたかが知れてる。

金は持っていて、損はない。
俺はタコの魚人の拘束を解くようロビンに言う。
タコの魚人の体から手が消え、前向きに倒れる。

「では、案内をしてもらおうか。アーロン」

「分かった」

「あ、アーロンさん?どうして敵に!?」

驚くタコの魚人にアーロンは軽く手でこずき、無言で進むよう告げる。

「無駄口を叩かず、手早くそのアーロンに案内しろ。お前の仲間みたいに成りたくないなら」

「わ、わかったよ~.....」

タコの魚人はアーロンと共に海に潜り、何処かへ消えた。
俺は数体のゾンビだけを残し、アーロン達が戻ってきたら財宝を運ぶのを手伝うようにいい、ロビンと共に船に戻った。



「この島にいる意味はもうない。出港する」

朝方、魚人ゾンビは日の当たらない船倉に行かせ、俺は海を眺めながら言った。

「そうね、あの魚人もちゃんと財宝を持ってきてくれたし、今日はパーティーでもしましょうか?」

ロビンは軽口を叩き、俺の横に並んで立つ。
あの後、特に問題もなく、タコの魚人とアーロンが宝を抱えて戻ってきた。
この世界の宝の価値がどれ程のモノかは知らないが、当分金に困る事は無いだろう。

「それよりいいの、DIO?村の人達に話しに行かなくて?」

「何故?そんな義理はない。称賛や羨望などにも興味はない」

「そう....ねぇ、聞いてもいいかしら、DIO?」

「答えられる範囲なら」

一拍の間の後、ロビンが天気を聞くような軽い口調で言った。

「なぜ海賊をしているの?」

「海賊になったつもりはない。俺はただ敵の船を奪って、旅をしているに過ぎない」

「じゃあ、なぜ旅を?」

ロビンの問いに俺は海から目線を外し、ロビンを見た。
そして、小さくも大きくもない声で答えた。

「理由などない。ただ力があるからこうしている。ただそれだけだ」

ロビンが無言で俺を見返す。
そう、明確な目的など在りはしないのだ。
記憶を失い、気付けば化け物になっていた、力を持った、この戦いのある世界にいた。
俺はただ世界に従っている。

「だが」

「何?」

記憶さえ戻れば。
そう思い、言葉に変換しようとする。
だが、なぜか言えない。
言葉が出ない。まるで言葉を忘れたかのように。

そしてまるで.....

「いや、何でもない」

何よりその言葉に言い知れない恐怖を感じていた。
思い出してはいけない。
不意に脳裏にその言葉がよぎった。



後日、風の噂で魚人に支配された島が一夜にして魚人が消え去ったという話が流れた。
何があったかを知る者はいなかったが、その村の駐在の話によれば魚人が消える直前、男女の二人組がその魚人の元に向かったという。
アーロン一味唯一の少女も解放され、全ては丸く収まった。

「あの男、よくも私の財宝を!.....おいっ、似顔絵は出来たかっ!」

「は、はい!中尉」

鼠のような顔の男は半ば奪い取るように似顔絵の紙を取ると意地の悪い笑みを浮かべた。

「よし!すぐに海軍本部へこれを送れ!」

ただ1人、鼠のような顔の海軍を除いて.....

「.....ねぇ、DIO?」

「何だ?」

「これを見て。面白い事が載っているわよ」

ロビンが楽しそうに笑みを浮かべながら賞金首のリストから一枚を引き抜いて、俺に渡す。
そこには似顔絵で書かれたDIOの顔と4000万ベリーの数字が書かれていた。








 
 

 
後書き
書けた~
 
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