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久遠の神話

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第五十二話 重力の剣その七

「これは自衛隊、そちらのお国の軍でも同じだと思いますが」
「そういえば」
 工藤を知るい上城がここで気付いた。
「工藤さんもそうです」
「海軍、いえ海上自衛隊の方ですね」
「そうです、あの方も」
「軍人は帽子を被るものですがそうでない時もあります」
 今のスペンサーの様にだ、短く刈っている髪があるだけだ。
「そして今は被っていない、そういうことです」
「そうですか」
「ではお話も終わりましたし」
 そして戦いも終わった、それならだった。
「これでお別れとしましょう」
「そうだな。まただな」
「はい、またお会いしましょう」
 スペンサーは踵を返してそのまま姿を消した。広瀬も彼の背が見えなくなるのを見届けてから上城、そして中田に対して言った。
「じゃあ俺はこれでな」
「ああ、またな」
 中田が軽く笑って広瀬のその言葉に返した。
「今度飲みに行くかい?」
「それは遠慮する」
「何だよ、付き合いが悪いな」
「敵同士で飲んでどうする」
「結構面白いと思うがね」
「俺は興味がない」
 こう言う広瀬だった。
「白けるだけだからな」
「それでなんだな」
「そう思っている、俺はあんた達とは飲まない」
 広瀬は中田とは対象的に厳しい顔で告げた。
「それではまた会おう」
「まあそういうことでな」
「しかし。俺達は今は力が尽きている」
 広瀬は帰ろうとしたところでふと足を止め上城を見ながら中田に対して問うた。
「それでもあんたは何もしないのか」
「まあ今仕掛けたら俺が勝つよな」
「それでもしないのか」
「俺は剣道家だからな」
 それでだというのだ、その軽い笑みで。
「正々堂々、相手が戦える状態で戦うんだよ」
「そういう考えか」
「武士道っていうんだな」
 この言葉も出す。
「そういうことだよ」
「武士道か」
「ああ、剣道をやってたら普通は身に着くな」
 無論例外もいる、あの暴力教師の様に。
「心のない力、下種なやり方はしないんだよ」
「それでだな。わかった」
「背中は安心してくれ、そこから狙うことはもっとないからな」
 戦うこともしないしそれはさらにしないというのだ。
「じゃあまたな」
「ああ、わかった」
 広瀬は中田の言葉に頷きそして彼も去った。後に残ったのは中田と上城だけだった。
 中田はその上城に顔を向けてまずは笑顔でこう言った。
「じゃあな」
「はい、それではですね」
「お疲れさん、帰るか」
「そうしますか」
「そういうことでな。俺の家に寄るかい?」
「中田さんのお家に」
「ああ、丁度晩飯作ろうって思ってたんだよ」
 上城に笑いながらこうも言う。
「だからな。どうだよ」
「じゃあ」
「ちなみに作るのはな」
「何ですか?」
「オムレツだけれどな」
 それだというのだ。
「中に色々入れたな」
「普通のオムレツじゃなくて」
「そうだよ、中にハンバーグ入れるのもいいな」
「ハンバーグをオムレツの中に」
 このことを聞いて首を捻る上城だった。 
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