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八条学園怪異譚

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第四十一話 百物語と茶室その十一

「とにかく御飯にかけるのはふりかけでしょ」
「日本酒はないんですね」
「そっちは」
「二人はどうなの?」
 茉莉也はあらためて二人に尋ねた、今度は御飯の上にかけるものの話だ。一旦大きな茶室を後にして外から小さい茶室に向かいながら話をしている。茶室の外は綺麗に整えられた日本の庭園だ。草木も石も丁寧に置かれている。
 月明かりの中に照らされたその庭を見ながらだ、茉莉也は二人に微笑みながらそのうえで話を続けている。
「帝国陸軍みたいに白い御飯ばかりだと脚気になるわよ」 
「いや、脚気は流石に」
「今は殆どない病気ですよ」
 今の時代ではそうなっている、脚気も克服された。
「今時ビタミンBを摂らないっていうのは」
「ちょっと」
「まあね、それはね」
 茉莉也もわかっていることだった、このことは。そのうえでの問いである。
「けれどやっぱり白い御飯だけで食べてないでしょ」
「普通におかずで食べてますよ」
「私もそうです」
 二人はこう茉莉也に答えた。
「なかったら、お漬物とか」
「それか佃煮か」
「ふりかけじゃないのね、まあとにかくね」
 茉莉也は二人の返事を聞いてからさらに話した。
「御飯だけじゃ食べないのね」
「おかずは必要ですよね」
「お漬物にしても佃煮にしても」
「でしょ?私もおかずかそれがなかったらふりかけをかけてね」
「御飯はそうして召し上がられてるんですね」
「そうされてるんですね」
「そう、普通にね」
 そうしていると話してだ、茉莉也は御飯の上に日本酒をかけて食べるという食べ方についてはあらためてこう言った。
「それはしないから」
「そうなんですね」
「それはないんですね」
「そう、したことないわ」
 大酒飲みの茉莉也でもそれはしないというのだ。
「御飯にはそういうので、お酒は普通のおつまみとね」
「和菓子ですか」
「それもなんですね」
「私的には結構合うのよ」
 その和菓子と日本酒の組み合わせもまた、というのだ。
「だから今日もって考えてるのよ」
「和菓子でしたらお茶を」
「それがいいんですけれど」
 二人は酒ではなくこちらだと推した。
「それでいいですか?」
「出来れば」
「まああんた達がそれでいいのならね」
 構わない、茉莉也はこう答えた。
「泉をっ確かめてからね」
「それから、ですね」
「あらためて」
「ええ、私のお家に帰って」
 そしてだというのだ。
「飲むわよ」
「わかりました」
「それじゃあ」
「そしてその前にね」
 今回のメインの話に戻る、とはいってもどちらがメインなのかどうにもわからない感じではあるが。
 その小さな茶室の入口に来た、茉莉也はその人が這って入る様なその入口の前に来て二人にこう言った。
「それでここがね」
「若しかしたらですね」
「泉かも知れないんですね」
「そう、若しかしたらね」
 可能性は少ないといった見方だがそれでもだというのだ。
「中に入ってね」
「そして、ですね」
「確かめるんですね」
「そうしよう、今からね」
「はい、それじゃあ」
「いよいよ」
 二人も茉莉也の言葉に応えてだった、そうして。 
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