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久遠の神話

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第五十二話 重力の剣その三

 だがそれでもだというのである。
「他の感覚、それに第六感もですね」
「それがありますから」
「かわせた」
「使える感覚は全て使う」
 スペンサーは二人の前に降り立っていた、そのうえでの言葉だった。
「そういうことですね」
「そうです、そうしてです」
「俺達はあんたに勝つ」
「貴方を。止めてみせます」
 上城はスペンサーにこう話したのだった。
「戦いを止めます」
「俺は違うがな」
 広瀬は戦いを止める考えはなかった、戦いを行う考えだった。
 だからここでこう言ったのである。
「あんたも。この子もだ」
「今は共闘していてもですね」
「俺は全ての剣士を倒して望みを適える」
 そうするというのだ。
「その為にもあんたは倒す」
「そうされるのですね」
「覚悟しろとは言わない」
 広瀬はスペンサーを見続けていた、そのうえでの言葉だった。
「あんたは相当な強さだからな」
「少なくとも自信があります」
「だからだ、こうして二人であんたと戦ってだ」
「私を倒しますか」
「その為に戦っているからな。ではまた来るな」
「重力の使い方は一つだけではありません」 
 スペンサーは着地してからも構え続けている、そのトゥーハンドソードを今度は前に突き出した、二人から間合いはかなり離れていて剣はとても届かないが。
 それでその剣からだった。重力を槍の様に出してきたのだ。
 それは上城に迫っていた、上城は咄嗟に身体を右に捻ってかわした。
 重力の槍はそのまま後ろに付き抜けそこにあった木に当たった。木は槍の衝撃を受けてそこから真っ二つに砕けて落ちた。
 その木を見て広瀬が言う。
「凄いものだな。受けたら終わりだな」
「そうですね。太い木なのに」
 人の倍程の大きさの巨木だった、その巨木が。
 真っ二つになって倒れていく、巨木が前に落ちようとしていた。
 その木に広瀬は己の剣を向けて一閃させた。すると。
 木は倒れる動きを止めてビデオの撒き戻しの様に元に戻っていった、そして槍に砕かれる前の生きている姿に戻っていた。
 上城はその一部始終を見て驚きの声で広瀬に言った。
「今のは」
「木を生き返らせたことか」
「はい、倒れる途中だったのに」
「木には木だ」
 彼のその力を注ぎ込んだというのだ。
「そうしてそれでだ」
「木を元に戻したんですか」
「俺の剣は相手を倒すだけではないらしいな」
「活かすことも出来るんですか」
 この場合は復活になる。
「それも」
「そうみたいだな。あくまで草木だけだがな」
「木を使う、木の命を」
「君も水を出せるな」
「つまり木を使うから」
「木を蘇らせることもできる」
 そうだというのだ。
「中々有り難いことだ」
「ううん、僕が水を出すのと同じですか」
「そうなるな。とりあえず木は助かった」
 今のでだというのだ。
「倒れる木に巻き込まれずに済んだな」
「すいません」
「謝ることも感謝することもない」
 そのどちらもいいというのだ。
「俺は君の敵だからな」
「だからですか」
「今は一時的に手を結んでいるだけだ」 
 それに過ぎないとも言う。 
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