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銀河転生伝説 ~新たなる星々~

作者:使徒
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第14話 アルフォルト星域会戦


――銀河帝国 新帝都フェザーン――

先日行われた3つの戦いの戦闘詳報がシュトライト大将によってアドルフの元に届けられたのは、7月24日になってからのことであった。

「3方面すべてが成功していれば――あれ? 何故だ!?――残ったケンプ、ファーレンハイト艦隊で以って一気に制圧するつもりだったが――お、成功成功――それは少し虫が良すぎたか」

「ですが、これでロアキアの残存戦力にチェックを掛けました。1個艦隊の損失は痛かったですが、戦略的目的は達したかと」

「ああ、残っている――よしキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!――戦力を掻き集めたところでその数は2個艦隊にも満たんだろう。――よっしゃ、『ニートの剣』get――既にケンプ、ミュラーの後任としてクナップシュタインがロアキアに着任しているし、アルトリンゲン、カルナップ、ハルバーシュタットの艦隊も――やべ、ミスった!――数日後新天地へ向け出立する。――ちょ、このボス強過ぎだろマジで――ルフェールでもしゃしゃり出て来ない限り奴等に防ぐ術はないさ」

「重要な案件なのでゲームは後にしてもらいたいのですが……というか、よく両立できますな……。コホン、そのルフェールに動きが見られます」

「ほう?」

ゲームをいったん止めたアドルフが興味深そうにシュトライトの方を見る。

「どうも、ゼデルニア、ラミアムの2国に自陣営を離れて共同体に加盟するよう秘密裏に働きかけているようなのですが……」

「なるほど、足手まといを切り捨てたか」

「どういうことです?」

「少し考えれば分かる事だ。ゼルゼニア、ラミアムがルフェール陣営に所属したままだと我が国がその2国へ攻め入ったとき無理にでも援軍を出さねばなるまい。だが……」

「自陣営から放逐してしまえば無駄な負担を負わなくてよい……と?」

「表立っては出来んことだがな。ロアキアと銀河の覇権を争っていた頃ならともかく、今はルフェールにとっての辺境13国は我が国に対する防壁……いや、防波堤でしかないのだよ。防波堤を守る為に己の身を張る輩がこの世界の何処にいる?」

「所詮は都合の問題……ということですか」

「そういうことだ。他には?」

「ルフェールの市民の間で同じ共和制国家であるエルダテミア共和国に援軍を送ろうという動きがあるようです。また、最近のルフェールは軍備の増強に余念が無く、元々彼の国は10個艦隊の実戦部隊を有していたのですが、新たに2個艦隊が編成中とのことです」

「そんなことが可能なのか?」

「ルフェールは領土の広さこそロアキアに劣りますが、人口ではロアキアのそれを上回ります。むしろ、今までが過小な軍備態勢だったと言えるでしょう」

今まで、ルフェールとロアキアの国力はほぼ同等であり、両国が直接矛を交えたのは数度しかない。
つまり、ルフェールが国家存亡の危機に晒されたことは無かったのである。

だが、銀河帝国が現れロアキアの大半を併合したことで、ルフェールは猛烈な危機感を懐いた。

銀河帝国の国力は、得た情報から分析して最低でもルフェールの2倍以上。
今はまだ辺境13国という盾があるから良いが、遠くない内に旧ロアキアの平定を終えた銀河帝国が辺境13国を撃ち破り、ルフェールへとその触手を伸ばしてくるのは明白であった。

「なるほど、今までのロアキアとの争いは『陣取りごっこ』というお遊びだったわけか……いずれにせよ、此方としても予算の都合上今年はもう動けん。オリアス等の殲滅とエルダテミアの制圧は来年になるな」


* * *


宇宙暦808年/帝国暦499年。

銀河帝国では宇宙艦隊司令長官アルベルト・フォン・グライフス元帥と副司令長官ハンス・ディートリッヒ・フォン・ゼークト元帥が退役。
空席になった宇宙艦隊司令長官にはオスカー・フォン・ロイエンタール元帥が、副司令長官にウォルフガング・ミッターマイヤー元帥が就任した。

また、本土へと帰還するケンプ、ファーレンハイト、ミュラー、パエッタ艦隊に代わりオットー、ガーシュイン、ゴシェット、ドロッセルマイヤーの4個艦隊が新天地へと派遣される(当初は3個艦隊の予定だったが、アドルフの夢の中に『4』という数字が浮かび上がったため、縁起を担いで4個艦隊となった)。

「くくっ、これでロアキアの残党やエルダテミアとかいうエセ国家の命脈も尽きたな。だが、その前に……」

年明け早々、クナップシュタイン上級大将の艦隊12000隻がオリアスを討つべくロアキアを発ち、それにアルトリンゲン、カルナップ、ハルバーシュタットの各艦隊が合流。
その総勢は36000隻に達した。

これに対し、オリアスはベトラント星系とレンヴァレル星系との間にあるアルフォルト星系で残存の艦艇すべてを以って迎え撃つことを決める。

アルフォルト星系は小規模な小惑星帯を複数形成している無人星系であり、ロムウェのあるレンヴァレル星系へ辿り着くには、ベトラント星系、レイスナティア星系のどちらのルートを通っても必ずアルフォルト星系を経由する必要がある。
つまり、ここを抜かれると遷都先のロムウェを直撃されてしまう。
故に、このアルフォルト星域こそがロアキア軍の最終防衛ラインであった。

・・・・・

「敵軍発見、約20000」

1月18日 11時20分。
アルフォルト星域へ侵入した銀河帝国軍のレーダーが布陣するロアキア軍を捉える。

「20000隻か……ハルバーシュタット艦隊を先鋒として、敵に攻撃を仕掛ける。カルナップ艦隊と本隊はそれに続け。アルトリンゲン艦隊は予備兵力として待機。戦況の変化に合わせて臨機応変に対処しろ」

クナップシュタインの策は、攻撃力の高いハルバーシュタット、カルナップの両艦隊を次々とぶつけ、ロアキア軍が消耗したところで兵数の多い本隊が押し潰すというものである。

「敵軍、縦列隊形にて接近してきます」

「敵先頭集団、数8000」

「あの隊形からして、敵の先陣は攻撃力に秀でた部隊と思われますが……」

「ふむ、ならば正面からまともにぶつかる愚は避けるとしよう。中央の防御を厚くし、鶴翼の陣にて待ち受けよ」

オリアスは真正面からのぶつかり合いでは不利と見て、防備を固めて敵の勢いを止めることを選んだ。

「敵軍、我が軍中央に攻撃を開始しました」

「よし、両翼を前進させ敵を半包囲に追い込め」

オリアス艦隊の両翼が前進したことで、ハルバーシュタット艦隊は凹陣の中に入り込んだ形となり、三方向から攻撃を受ける。

「敵は混乱しているぞ! 戦闘艇を発進させ、第二陣が来る前に壊滅に追い込むのだ」

三方向から袋叩きにされるハルバーシュタット艦隊はいったん退いて態勢を立て直そうと後退を始めるが、こうなると困るのは第二陣として突撃する予定であったカルナップ艦隊である。

「カルナップ提督、このままでは後退するハルバーシュタット艦隊と交錯してしまいます」

「……ハルバーシュタット艦隊の救援はクナップシュタイン艦隊に任せ、我々は回り込んで敵側面を突く」

カルナップ艦隊のこの動きは、オリアスの旗艦であるデスペリアスでも確認された。

「閣下、敵の第二陣が左に回り込みつつあります。このまま左翼部隊の側面を突かれ、それに敵の第一陣、第三陣が連動するようなことになれば、我が軍の全面崩壊は免れないでしょう」

「ああ、もう少しいけるかと思ったが……ここまでだな。全艦後退せよ」

明確に目的を持ち、それを達成したら執着せずに離脱する。
オリアスは徐々に名将としての素質を開花させつつあった。

あっさりと退いたロアキア軍に銀河帝国軍の将兵たちが訝しがっていた……その時、小惑星帯に潜んでいたロアキア軍の別動隊が動き出す。

「しょ、小惑星帯より敵軍出現。数、9000!」

「しまった、伏兵か!」

「敵別動隊にアルトリンゲン艦隊の後背を取られました!」

「前面の敵艦隊、再び攻勢にでます!」

「(くっ……このまま手をこまねいていれば、アルトリンゲン艦隊を打ち破った敵別動隊に背後を突かれることになるだろう。逆にアルトリンゲン艦隊へ援軍を出せば、正面の敵艦隊を押さえるのは不可能だ。ならば……)前方の敵軍を牽制しつつ、後退してアルトリンゲン艦隊と合流しろ!」

クナップシュタインは悩んだ末、アルトリンゲン艦隊との合流を優先した。

「装甲の厚い戦艦を外側に配置して密集隊形を採り、艦隊の立て直しを図れ!」

合流した銀河帝国軍は球形陣を敷いてロアキア軍の攻撃に耐えつつ、艦隊の立て直しを図る。

「敵は密集隊形を採りましたな。現在は別動隊との挟撃態勢にありますが、このまま敵を包囲いたしますか?」

「いや、まだ敵の方が数において此方を上回っている。下手に追い詰めて窮鼠と化したら思わぬ逆撃をくらいかねん。ここは半包囲に止めておくべきだろう」

「なるほど、敢えて逃げ道を作ってやるのですか」

「そうだ、逃げ道があれば窮鼠になることはないからな。この一戦で戦いが終わるわけではない。無駄な犠牲は避けるべきだ」

一方、半包囲された銀河帝国軍は懸命に立て直しを図るが、ロアキア軍の攻撃が激しくそんな暇は無かった。

「怯むな! 戦列を維持して、ここは堪えるんだ!」

「閣下、このままでは我が軍は全滅します! 幸い、敵の包囲陣は完成しておりません。ここはお退きになって捲土重来を期すべきです」

「……そうだな、卿の言うとおりだ。ここは退こう」


19時40分。
銀河帝国軍はオリアスが意図的に空けていた穴から脱出して、アルフォルト星域より撤退した。

この会戦における銀河帝国軍の損失艦8510隻。
ロアキア軍の損失艦は1870隻であった。

勝利したロアキア軍も僅かながらもその戦力をすり減らしており、いずれ今回以上の戦力を揃えて襲来するであろう銀河帝国軍に減少した戦力で対抗しなければならない。

だが、この日だけは、誰もがそんな先のことなど考えずに勝利を祝って飲み明かした。





==アルフォルト星域会戦時のアドルフ==

会戦開始時:「……zzz……」

1時間経過:「~zzz~~」

3時間経過:「…zzz~」

5時間経過:「zz……zzz……」

会戦終了時:「zzz……~☆♪≦@」

どうやらずっと爆睡していたようだ………。
 
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