とある星の力を使いし者
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第84話
九月二〇日。
大覇星祭二日目が始まった。
麻生は欠伸をしながら街の中を歩いていた。
昨日はナイトパレードの中、打ち止めが散々騒いだりしていたので結構疲れていた。
もし、愛穂達が居なければ今感じている疲れ以上のモノを感じている筈だ。
ナイトパレードが終わって麻生はすぐに自分の部屋に戻り寝たのだが、今欠伸したように完全に疲れはとれていない。
大覇星祭二日目になると、自分の学校に集まりそこで全校放送を聞いてそこから大覇星祭は始まる。
二日目になっても父兄の人数は減るおろか増えているように感じる。
麻生は遅刻ギリギリの時間に学校について、自分の教室に向かう。
教室に入ると、まず一番に制理が言った。
「遅い!!
今何時だと思っているんだ、貴様は!!」
朝一番に制理のお怒りの言葉を聞いて麻生はだるそうな顔をする。
「何時って、八時二九分だけど。」
「遅刻ギリギリじゃない!
こういうのは五分前行動が基本でしょうが!!」
「あ~、分かった分かった。
次から気をつけるから。」
適当にあしらって自分の席に座る。
制理はまだ言い足りないのか何か言おうとしたが、ちょうど小萌先生が入ってきた。
それに気づいた制理は何か言いたそうな視線を送りながら自分の席に座った。
ちなみに教室に上条と土御門と姫神やそれ以外の生徒の姿は見えない。
その事について小萌先生が説明してくれた。
姫神は明日退院できる。
既に意識は回復しているので競技には参加できないが車椅子で見学する事はできる。
土御門は何やら大怪我をして現在姫神と同じ病院で入院しているらしい。
これに関しては明日か明後日には退院できるらしい。
上条の方も怪我はしているが今日にでも退院は出来るらしい。
その三人以外の生徒について小萌先生は少し困ったような顔をした。
「実はですね、その生徒さん達については先生は何も分かっていないのです。
もしかしたらお寝坊さんかもしれないです。」
困ったような笑みを浮かべながら言う小萌先生。
確かに昨日はナイトパレードが終わっても騒ぐ生徒達はいた。
それはこのクラスの生徒も例外ではなかった。
元々、こういった祭りが好きなメンバーだ。
欠席している生徒も夜遅くまで騒いでいたメンバーの一部だ。
その後は今回の大覇星祭の種目を確認してホームルームが終わった。
制理は欠席している生徒の事で頭が一杯なのか、麻生に小言を言うのをすっかり忘れている。
それをわざわざ言う麻生ではないのでさっさと教室から出て行く。
その廊下で愛穂に出会った。
「おっ、ちゃんと朝から来てるじゃん。」
「遅刻ギリギリだっただけどな。
今日も警備員の仕事か?」
「そうじゃん。
そうだ、恭介が参加する競技はどれ?」
愛穂はパンフレットを取り出し種目表を見せてくる。
麻生は自分が出る種目を教える。
「これなら、ちょうど休憩の時に見に行けるじゃん。」
「え、お前見に来るのか?」
「・・・・・何、その嫌そうな顔は。」
愛穂の言葉を聞いてますますさぼれなくなってきた。
一気に疲れたような顔をする、麻生。
「そうだ、愛穂。
お前のクラスも何人か欠席している生徒はいるか?」
「確かにいるけど、どうして知っているの?」
「いや、俺のクラスでも同じだったからな。
そっちもそうなのかなって思っただけだ。」
「欠席した生徒も昨日の夜遅くまで騒いでいたじゃん。
来たらとりあえずは説教じゃん。」
腕時計を見た愛穂はもうすぐ警備員での集合時間が迫っているなどと言って走ってどこかへ行った。
とりあえず、外に出た。
前にも言ったが麻生は必要最低限の競技しか出ない。
そうなると時間が余りに余ってしまう。
誰かと大覇星祭を回る訳でもない。
これは寝直すか、と考えた時だった。
麻生の携帯の着信音が鳴り響く。
画面には土御門元春と表示されていた。
「お前は今は病院だろ。
病院で携帯を使っていいのか?」
「開幕からちっさい事を言うなにゃ~。
病院の中でも携帯を使える場所があるから問題ないぜよ。」
麻生はそのまま近くの壁に背中を預ける。
「それで何の用だ?」
「お前に頼みたい依頼がある。」
次に聞こえた声は学生としての土御門ではなかった。
「今は大覇星祭。
学園都市がもっともセキュリティが甘くせざる負えない状況だ。
その隙に乗じて侵入してきた奴らがいる。」
「魔術師か?」
「いや、魔術師関連の事件は昨日のが最後だ。
今回は「外」からやってきた科学側の人間だ。」
「「外」だと?」
「この学園都市は科学側ではトップに位置する。
それを快く思っていない勢力や組織も存在する。
現に「樹形図の設計者」(ツリーダイアグラム)の残骸を巡って、「外」の勢力とこの学園都市の存在を疑いつつある「中」の勢力が組んだくらいだ。」
「それが今回の大覇星祭を利用して「外」から侵入者がやってきたという訳か。」
「それも「中」の後ろ盾もある。」
一通りの内容を聞いて麻生はため息を吐いた。
確かにこの学園都市の事を快く思っていない科学側の勢力などいくらでも存在するだろう。
この能力開発は悪く言えば、頭の改造だ。
それを疑問視する人間がいた所で不思議ではない。
だが、学園都市は規模が大きい。
口先で解体させるにはほぼ不可能だろう。
だからこそ、強引な手段をとるのだ。
このセキュリティの甘いこの時に。
「奴ら「外」の連中だけじゃあ入っても大した事はできない。
だが、「中」の連中のバックアップがあれば学園都市にテロを起こす事が可能になる。」
「どうして俺だ?」
土御門の言葉を遮るように麻生は言った。
「こういった役目はお前じゃないのか?」
「確かにこういった汚れ作業はオレの役目だ。
本来なら何の関係のないキョウやんを巻き込む事など言語道断だ。
だが、今のオレの状態では足手纏いになるし最悪死ぬ。
後、一日猶予があればオレがやる予定だったが、敵さんは悠長に待ってはくれない。」
「別にお前一人がやるのではないだろう?」
「俺の他にも一応同じグループはいる。
そいつらもなかなかの腕だ。
それに他の暗部の組織も協力する手筈になっている。
事が事だからな。
だが、そいつらが確実に「外」と「中」の協力部隊に確実に勝てる保証はあるか?
オレがキョウやんに頼んだのは勝てる可能性を少しでも上げるためだ。
オレはこの学園都市を・・・舞夏を守るためなら何だってする。」
麻生は土御門の言葉を黙って聞いた。
この男の中にある揺るがない信念の言葉を。
土御門と麻生は少し似ているかもしれない。
自分が護りたい者を守るためなら何だってするこの信念が。
「・・・・・いいぜ、その依頼受けてやるよ。」
「助かる、それで報酬の方だが・・・・」
「そんなの必要ない。
前にも言った筈だ。
俺は俺の為に戦う。
俺はただ自分の守りたい人を守る為にお前達を利用するだけだ。」
麻生の言葉を聞いた土御門は小さく笑った。
「そうなると、依頼って言う表現はおかしいぜよ。」
その声は学友の土御門元春の声だった。
「どう思うかはお前の勝手だ。
それで俺はどうすればいい?
適当に動く予定だが。」
「提案をするならオレが提示する所に向かってくれ。
そこにオレと同じグループがいる。
そいつらから情報を貰った方が手っ取り早い筈だ。
それと協力する予定の暗部組織にも一応顔を合わせた方が後々楽になる筈だぜい。
もし出会っても良いように、グループの方には連絡しておく。」
土御門からそのグループのいる場所の位置を教えて貰う。
場所は第七学区のとあるホテル。
そこの一室に集合の事。
「一つだけ言っておく。
俺は例え相手がどんな屑でも殺しはしない。」
「そこまでキョウやんにはさせないぜい。
そっから先はオレらの領分だぜよ。」
「だが、死んだ方がまだましと思わせるくらいの絶望と恐怖を味あわせてやるだけだ。」
そう言って麻生は通話を切った。
土御門は麻生との通話を終えて、一息ついた。
正直、麻生が協力してくれるかは未知数だった。
協力してくれれば儲けもんと言った感じだ。
そして、麻生が協力してくれると聞いた途端に、土御門はこれから出会うであろう「外」と「中」の人間に同情した。
なぜなら、彼らが相手するのは超能力者や聖人クラスの人間を圧倒する人物なのだから。
後書き
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