久遠の神話
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第五十一話 上からの返事その十
光はそのままスペンサーを襲う。だが。
スペンサーが高代に身体を向けて両手に持つ剣を前に出すと。
重力はバリアとなった。それで光の矢達を防いだ。
そして再び上から下に落ちる重力を浴びせんとした、それも一度や二度ではない。
何度も、それこそハンマーを振り落とす様に重力を落とす、それで高代を潰すつもりだった。
その重力のハンマーを右に左にかわしながら高代は光の、今度は光球を放ち反撃を加える、スペンサーもそれをフットワークでかわす。
両者はせめぎ合う、その中でスペンサーはこう言った。
「お見事ですね」
「貴方もまた」
「私もですか」
「貴方の力も強いですが」
それだけには留まらないというのだ。
「頭脳もありますね」
「意外に思われるかも知れませんが」
「意外といいますと」
「軍人には頭脳も必要です」
それもだというのだ。
「そうなのです」
「そうですね。軍人もですね」
「意外には思われないのですか」
「戦う立場ですから」
それでだというのだ。
「先程のお話通り」
「戦いには頭が必要ですね」
「そうです」
またこの話になる。
「だからです」
「それに貴方は将校ですね」
「はい」
アメリカ空軍大尉である。
「それならば余計にです」
「指揮官に必要なものは何か」
「貴方は先生ですね、学校の」
「はい」
スペンサーはここで問い返し高代も応える。
「その通りです」
「教師に必要なものは何でしょうか」
「統率力、そして生徒を信頼すること」
「そしてですね」
「頭です」
最後にこれだった。
「もっとも頭脳よりも統率力と信頼が大事ですが」
「将校も同じです」
「教師と将校は同じですか」
「はい、同じです」
また言うスペンサーだった。
「これはアメリカでは時折言われていますが」
「日本では殆どありません」
「ですか」
「日本では自衛隊のことがあまり勉強されていないので」
それでだというのだ。
「同じとは考えられていません」
「そうですか」
「そうです。ですが」
「貴方は違いますか」
「八条学園は他の学校とは違います」
彼が学生時代を過ごし今勤めているその学園はだというのだ。
「自衛隊に好意的でして」
「だから軍のことも御存知なのですね」
「そのつもりです」
「それで将校と教師のこともおわかりですか」
「教師も人を指導します」
将校と同じくそうだというのだ。
「指導の際に必要なのは何か」
「地位ではありませんね」
「地位で人を指導するならば誰もついてはきません」
「はい、その通りです」
「ましえや暴力で無理矢理従わせるなぞは」
「そのうち背中から撃たれますよ」
銃社会、とりわけ軍ではそうなっても不思議ではない。暴力を振るう者は暴力によって滅びるのが世の摂理である。
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