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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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役者は踊る
  第四四幕 「ベター・パートナー」

 
前書き
2/13 結構誤字があったから修正 

 
前回のあらすじ:簪が邪悪の化身シャル!!に攫われてしまった。囚われの姫を救うため、二人の戦士が立ち上がる・・・!!


「待って織斑君!私とタッグを・・・待てっつってんだろうが無視すんなやゴルァァァァァァ!!!」
「アタシと組みなさいよ!アタシが組めって言ってるのよ!?どうして組まないの!?そんな織斑君いらない・・・!!」
「だ・め・だ・よ、逃げたりなんかしちゃさぁ!」
「怖ぇよお前ら!!碌に喋ったこともないのによくもまあそこまで言えるな!?」

今、俺はマグロになっている。止まったら死ぬ的な意味で。そういえばハチドリも常に餌を探してないとあっという間に死ぬらしいが今それは重要な事じゃない。問題は今俺の足が止まれば命がないかもしれないということだ。
迫りくるどこか常識を逸した同級生から逃げるために全力で手足を動かす。元々身体能力は高い方なので一応追い詰められてはいないが、追跡者たちの執念たるや少しでも油断すれば金縛りでも食らいそうな勢いである。

(ユウを追いかけるのは分かる・・・あいつは男の俺から見てもいい男だ!モテても何もおかしくない!だが、なぜ俺の方にも来る!?俺の何所にお近づきになりたい要素があるんだ?!)

そしてこの安定感である。自分が世間一般から見てイケメンであることにも、ましてや彼女たちの好意すらいまだに正しく認識できていないというのはある種の才能である。ある種の学習障害とも言えるが。

まぁどちらにしろ後ろに広がる光景がホラーであることに変わりはないので今はいったんその疑問を片隅に追いやり逃げる。しかしどうしたものか・・・タッグを申し込む相手は数人候補がいるが、これではその人の下に辿り着くこと自体が大変である。ユウは窓の外に飛び降りるという荒業で突破していたが、流石に俺には同じことをする勇気はない。せめて誰か協力者がいれば・・・

と、逃走を続ける一夏の目に見覚えのある人物が歩いているのが映る。あの伝説のスーパー同級生、佐藤さんである。
その瞬間、一夏は焦る頭脳でとある作戦を閃いた。行き当たりばったりで稚拙な手だが、それを実行すれば一先ず追跡を退けることが出来るはずである。既に精神的余裕がなかった一夏はすぐさまその作戦を実行した。

「佐藤さ~~~~~ん!!」
「ほぇ?何・・・いやマジで何用!?」

ヌーの大群の如く凄まじい数の生徒達が押し寄せてくる光景に思わず二度見する佐藤さんの背後に素早く回り込み、肩を掴んで盾にするように前に突き出す。
いきなりのスキンシップに「え?何?セクハラ?」と混乱する佐藤さんを前に大群が何事かと足を止める。

「俺、実は佐藤さんと組む約束してたんだ!!だからごめん皆、諦めてくれ!!」
「「「「!?」」」」
(え?何それ私聞いてない)
(取り敢えず口裏合わせてくれ!頼む!)

小声で囁く一夏に、ようやく一夏の置かれた状況を把握できた佐藤さんは、自分が原作のシャルポジになっていることに若干の不安を覚えながらも適当に合わせる事にした。・・・しかしこの光景、いつぞやのベルーナ着せ替え事件のラストとよく似た構図である。

「あ、あーそういえばそんな話したね?」
「という訳で、な!?ここは大人しく引き下がってくれ!!」

いきなりそんな付け焼刃の子芝居を見せられて納得する彼女たちではない・・・かと思いきや、皆驚くほどあっさり矛を収めた。

「むむむ・・・佐藤さんじゃ仕方ないなぁ」
「何せ佐藤さんだもんねぇ・・・」
「・・・帰って寝る」
「皆の中での私の扱いって何さ!?」
「「「「何って、佐藤さんとしか・・・」」」」
「もはや概念と化してるの!?」

交わした約束を忘れないように目を閉じて確かめてみたが、そもそもワンサマーと約束なんてしていなかったんだ。押し寄せる不安が振り払えない佐藤さんだが、おおむね一夏の思惑通り追跡者たちはタッグを諦めて散り散りになっていった。


一難去って額の汗をぬぐう一夏に佐藤さんは不満げな視線を投げつける。不満の理由はもちろん彼女たちを追い払うためのダシにされたことである。ここぞとばかりに言葉の棘を突き刺す。

「・・・女の子の善意を利用して盾にするなんてサイテー」
「ふぐっ!?」(グサッ)
「ベル君の件と言い、実は私を都合のいい女として利用してるだけなんじゃないの?」
「あがぁ!?」(グササッ)
「織斑君って自己中で考えなしだよねー。私の意見とか一切無視だもんねー」
「おぅふ・・・」(ドブシャッ)

なまじ勝手なことをしたという自覚があった一夏は棘に串刺しにされてうつ伏せに倒れ込んだ。フェイタルケーオー!ウィーン、ミノリィ!パーフェクト!まぁ別に本気で責めているわけではないのだが、正面切って言葉の棘を刺された経験があまりないのかワンサマーは未だに床で殺虫剤を食らった黒光りGのように悶えている。

「それはそれとして・・・織斑君」
「ぅうぁ・・・な、何?」
「非常に言いにくいんだけど・・・これ、見てみ?」

一夏は自身の眼前に差し出された佐藤さんの携帯端末を言われるがまま覗き込んだ。それは1年生のタッグトーナメントのパートナー届を既に提出した生徒の名前が載っていた。結章・鈴音ペア、セシリア・つららペア、シャルロット・簪ペア、箒・ラウラペア・・・と、そこに来て一夏は佐藤さんの言わんとしてることに気付く。

「・・・あ!?お、俺がパートナー頼もうと思ってた人がほぼ全員エントリー済みだって!?」
「そうなのよね・・・私もまさかこんなに短期間に埋まっちゃうとは思わなかったよ」

ガバリと勢いよく起き上がった一夏は焦った顔で何度も何度もリストを見直すが、見直したところで書いてある内容が変わることはない。付き合いのある専用機持ちメンバーが全員登録済みというのもそうだが、一番当てにしていた箒がいつの間にかラウラと組んでいた事にも驚きが隠せない。

一夏はほぼ無意識に結章・鈴音ペアに目線をやった。大会で戦うと約束した親友と、優勝の暁には付き合うと約束した親友の二人。2対2だからサシの勝負ではないが、専用機同士のコンビであることからも彼らが本気で勝ちを取りに来ていることは理解できた。なればこそ、こちらも少しでも勝率を上げられるように頼れるパートナーを見つけようと考えていたのだが・・・

(どうする?そもそも俺の知り合いで頼めるのはもうベルとも会のメンバーしかいないが・・・皆実力は五十歩百歩の差だったはず。のほほんさんは・・・悪いけど争い向きには見えないから・・・)

自分の知り合いで、実力があり、尚且つまだパートナー申請をしていない人など・・・ん?

「そういえば佐藤さんは誰と組んでるんだ?」
「私は誰と組む予定もないなぁ・・・余ったメンバーはランダムで相方を決められるらしいからそれ待ちだよ」
「・・・佐藤さんって千冬姉にISの腕前褒められてたよな?」
「まぁ、不本意ながら・・・」
「なぁ、佐藤さん・・・」
「あーはいはいもう何が言いたいか分かっちゃったなー・・・お前は次に『佐藤さん、俺と本当に組んでくれないか!?頼む!!』と言うッ!!」
「佐藤さん、俺と本当に組んでくれないか!?頼む!!・・・・・・はっ!?」

本当に言い当てられてマジビビリしている一夏を眺めながら佐藤さんは嘆息する。別段組む気はなかったし、正直自分までお鉢が回ってくることになるとは思わなかった。だが、ここで断って他のモブ子と組んだ結果VTシステムで全員あぼんなんて展開がないとも言い切れない。
なにせ前回の事件も日にちと顛末こそ違えどコト自体は原作通り起きているのだ。何かしら起きてもおかしくはないだろう。その点自分はそれなりに逃げ回ることはできるから生存確率はモブより若干高い・・・はず。

(何より、ここで降りた結果、万が一にも死人が出たら私のなけなしの良心が痛むし)

恐らくこのへんが自分が“原作”に関わるかどうかの分水嶺(ぶんすいれい)のような気がする。だがこの時私の胸中に不思議と迷いはなかった。もしもこの世界に“原作”があったとして、この群集劇にきちんとした方向性があるのだとしたら、自分は遅かれ早かれ収まるべき役割に収まるのだろう。ならば、そこにたどり着くまでの選択肢くらいは一人の善良な人間として選ばせてもらおう。

「まぁいいよ。但し過度の期待はしないでね?」
「マジでいいのか!?よっしゃー!きた!佐藤さんきた!これで勝つる!!」
「人を盾にする気満々に聞こえるのは気のせいかな!?」


==織斑一夏and佐藤稔 タッグ結成==







かくしてその日のうちにほとんどのメンバーのパートナーが決定する。
トーナメントまで残された時間を目一杯使いながら、ある者は新たな戦い方を模索し―――

「だからスラスターに頼りすぎなんだよ!もっとコンパクトに加速を使わんと的になるぞ、一夏!」
「はい!!」
「・・・佐藤!スナイプのモーションに入ってから照準を合わせるまでの動作をもうちょっと短縮しろ!命中精度はISがある程度補正してくれる!」
「いえっさー!」
(二人同時指導とは・・・教師の立つ瀬がないな、山田先生)
(仕事とられた・・・ぐすん)

またある者は己の技を磨き続けながら――

「うふふ、それでねぇ?第二射にマイクロミサイル!第三射は僕が引き受けるから第四射は簪に任せるね!!」
「う、うん」(もう深夜2時・・・私、いつになったら解放されるの・・・?)
「それでね?このランチャーの発射機構はちょっと特殊で・・・」

様々な思いを交錯させ――

「むぅ、剣道とは難しいな・・・」
「無理に付き合わずともいいのだぞ、ボーデヴィッヒ?」
「何を言うか篠ノ之。相方の戦力、技量、人格を知るのは重要だと教官も言っておられた。自分の背中を任せるものなのだ、これくらいの苦労は屁でもない」
「・・・あの人、ちゃんとしたことも教えていたのだな」


長いようで短い時を経て、やがて決闘の日を迎える。



「お姉さま!投げつけるものが無くなりました!!」
「ですから投げつけずに戦う道具を使いなさいと・・・ああもう!そんなに投げたいなら相手のISでも投げ飛ばしたら如何ですの!?」
「はあっ!?その手がありました!盲点です!セレンディピティです!!」
(・・・あれ?私もしかしてとてつもなく余計な事を言ってしまいました?)

・・・後にIS界を震撼させる全く新しい武術、“ISアイキ”の誕生もこの時期と重なるという説があるが、真相は定かではない。
 
 

 
後書き
作者の見立てではこの小説、恐らく完結に100話以上費やします。
そこまで多くなると後からこの小説を発見した人がとっつきにくいと思うので短縮を図ろうかと考えたのですが・・・

①1話の量を増やす
今までこの小説は基本1話を3000字以上7000字以下にしてきました。個人的に10000字を超えると読むのがだるいから1話をサラッと読める様にとの考えでそうしていたのですが、これを5000字以上9000字以下くらいにすれば一話辺りで消化できる話が増えます。・・・ぶっちゃけその分思い付きで書かなくていい話を隙間にねじ込み始めて何の解決にもならない気がするんで却下になりました。
②ストーリーそのものを短縮する
構想では今発売してる原作文+2,3の話を経てラスト、くらいに考えてますがここから3つほど話を省略して一気に最終局面へ!というアイデアです。後半がかなり駆け足気味になる上にこの作品の裏設定が結構バカなんで読者置いてけぼりの可能性が大きすぎて却下。
③俺たちの戦いはこれからだ!
却下に決まってんでしょうが。この作品は意地でも完結させます。

結局いつもどおりでした。これからもよろしくお願いします。 
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