魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~
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Chapter-3 Third Story~Originally , meeting of those who that you meet does not come ture~
number-24 meeting
前書き
会議。
この場合は、高町なのは。フェイト・テスタロッサ。八神はやて。神龍雅。アミティエ・フローリアン。リンディ・ハラオウン。クロノ・ハラオウン。三桜燐夜。
リンディとクロノが何やら通路の方で話しているのを休憩室のソファーにもたれかかり、両脇にはなのはとフェイトが腕を抱き枕として寝られながら、燐夜は聞いていた。
あの話を聞いて、燐夜はあの時にたまたま出会って一戦交えただけの人間が自殺していたことにショックを受けていた。しかし、それ程引きずる事でもなかった。彼の両親は燐夜のことを恨んでいるかもしれない。でも、燐夜は自分の全力で粗相の無い様に迎え撃ったのだ。文句の言われはない。
ただ、燐夜が勝って、彼が負けた。
それだけの話なのだ。
もちろん、勝者が敗者にかける言葉などない。勝った者が何を言っても、それは負けた者にしてみれば嫌味などにしか聞こえないからだ。それも最低限の礼儀でもあったりする。
燐夜にはもう一つ、今度は驚いたことがある。11歳――――つまり、この時代の燐夜はDASSに参加していて、もう2連覇を果たしていることだった。9歳――――つまり、この時代に何時の間にかいた燐夜は、DASSに参加しようとは考えていたが、まさか未来の自分が参加しているとは思わなかった。そして、すでに参加2年目にして世界大会2連覇。
これなら別に参加しなくてもいいかなと思う。ただそう思っただけだ。
実際は、参加する気満々でいる。なぜなら、大会2連覇というのは今はいない11歳の燐夜が打ち立てたものであって、今この場にいる燐夜はそのような偉業を成したわけではないのだから。
もしかしたら負けるかもしれない。もしかしたら簡単に勝ち上がっていくかもしれない。その不確定な未来。それが一番面白いと燐夜が感じるものである。決まりきったものなんてくだらない。故に必然や運命などといった未来を確定づけているような言葉は嫌いなのだ。
そう考えているうちに燐夜は深い思考の海に沈んでいた。
ただ、すぐにその海から浮かび上がってくることになる。何故なら――――
「……ぜ…………何故、お前がここにいる……!」
「んあ? 誰だぁお前」
一方的に向こうの方が燐夜のことを知っているようだったが、燐夜は目の前にいる少年を全く知らない。というよりは、見たことすら接触すらない赤の他人でしかない。
だからだろう。言葉が気怠そうで、まるでお前なんかには興味がないといった雰囲気を醸し出しているのは。
そんな態度、雰囲気から相手は何を思ったのかいきなり切れて、殴りかかってきた。燐夜は何もする気はなく、別に殴られても構わなかったのだが、クロノが束縛魔法でその少年を捕獲した。
先ほど、力を込めすぎて切った唇はそのままであった。
そして今更ではあるが、燐夜はリンディとクロノに連れられてやってきた一人の少年と一人の少女……いや、女性を見る。
少年の方は、燐夜と同じ銀髪で瞳の色が左右で違っていた。それほど気になるというわけでもなかったが、平均より低めの身長の方が目立っているのではないのだろうか。見た目からして常に自分がトップでないといけないのだ的な感じがする。背の順で並んだら絶対前だと馬鹿にしてやりたい。
女性の方は、活発そうに見えてどこか大人しい。騒がしさよりも静かさをどちらかと言えば好みそうな雰囲気を持ち、所在なさげに佇む青い服を身に纏っている。
――――あまりにも遠慮なしに見過ぎていたのか、女性が燐夜の視線に気づいて近づいてくる。慌てて目を逸らそうとするも、もう遅い。
「さて、自己紹介からしてもらいましょうか」
話しかけられたくないとなんとなく思っていた燐夜は、リンディにここで初めて感謝した。しかし、それも表に出すことはない。リンディに何されるかわかったもんじゃないから。
まずは青い服を身に纏った女性からのようだ。
ちなみにもうすでになのはとフェイトは起きている。詳しく言うのであれば、少年が来る数分前には起きていた。
「えっと、初めまして。アミティエ・フローリアンと申します。親しい人は私のことをアミタと呼びます。ぜひそう呼んで下さい」
そう簡潔にまとめられた自己紹介だった。
次は少年の方である。だが、なのはとフェイトはその少年の方を見ようともしない。初対面ならそれは失礼なため諭そうとするが、どうやら初対面でもないようで、むしろよく知っている奴で同じクラスの嫌われ者なのだそうだ。
「…………神、龍雅」
そう少年は、苦虫を噛み潰した様なそんな苦々しい表情でか細く自分の名前だけを言った。
そして、その後燐夜を睨みつけると再び口を開いていった。今度は先ほどよりも大きな声で。
「俺は、俺と同い年のお前なんて認めない。だから、さっさと帰ってくれないか」
言い方にやたらと棘があった。まるで薔薇の茎のように棘しかなかった。けれども、燐夜は何も反応を示さなかった。今の発言を聞いたうえで無視して、リンディに先に進めるよう促したのだ。
当然、少年――――龍雅は憤りを隠そうとせずに燐夜に殴りかかろうとする。しかし、それをクロノが止めるのだ。結果、龍雅は燐夜に何一つ手を出すことはできない。
そんな二人の様子を知ってか知らずか、リンディは話を進めていく。
その話を纏めるとこうだ。
まず、女性――――先ほどから女性と言っているがおそらく地球でいう女子高生ぐらいの年齢だろう――――が管理局からも管理されていない管理外世界『エルトリア』からこの地球にやってきた。一人ではなく、二人で。彼女が言うには、自分の妹で名前をキリエ・フローリアンというらしい。
アミティエが妹であるキリエとはぐれ、一人で妹とこの地球に来た目的のものを探しながら飛んでいたら、なのはと遭遇。そのまま、保護されたということだ。
これが女性――――アミティエの事情で、次は龍雅に関することになった。
もちろん、この話にはなのはとフェイトの二人は聞く耳を持たなかった。それどころか時々龍雅を睨むものだから、彼はすっかり萎縮してしまっていた。何を言い返さないのを見た燐夜は、過去に何かやらかしてしまったのだろうと、龍雅を哀れんでいた。その視線に気づかない龍雅は、リンディから時々求められる同意に答えていたりしていただけだった。
彼――――神龍雅。年齢は先日誕生日を迎えて10歳で管理局所属一等空士。今からちょうど半年前に問題を複数起こして、二階級降格。それがなければ、今頃二等空尉ないし三等空尉にはなれていた筈の少年。それでも若干9歳にして一等空士はすごいほうだ。
しかし、それを燐夜が言ってしまうとなんの褒め言葉にもならない。なぜなら、燐夜は5歳にして管理局執務官になってしまっているのだから。
5歳の少年が執務官という局の中でも重大な役につくのには当然、反対の声も上がっていた。しかし、当時の燐夜はその否定的な意見をすべて押しのけて数々の功績をわずか半年で上げて見せた。オーバーワークともとれるその速さに心配していたものもいたらしいが、燐夜にとってみればちゃんと休息は取っていたらしい。
思えば4歳の少年に嘱託魔導師試験を受けさせる管理局も問題があるのではないかと感じるが、何か仕事しないといけなかったし、何よりも親のために役に立ちたかった。……まあ、それも6歳の時にすべて壊れてしまったが。
話が何時の間にかずれていた。
リンディが今回龍雅を投入する理由としては、今回の『闇の欠片事件』と名づけられた事件を一刻も早く解決するためにある。それが一番の理由だった。体のいい理由ではあったが、リンディ曰く今回の事件で彼は進退が決まるとのこと。
そして、今回の事件の全容としては、リンディが提示してくれた立体プログラムの画面に映っている金髪の少女砕け得ぬ闇、通称システムU-Dの撃破。この少女には魔力結晶とか言うものが備わっているらしく、アミティエはその結晶、エグザミアの回収のためにこの星にやってきたのだという。
燐夜はここでようやくアミティエ……いや、フローリアン姉妹の目的を理解した。
死触によって失ってしまった自然を、エルトリアの大地を綺麗にしたいだけなのだと。
だから、もう一つのモニターに映っている全体的にピンクにまとめている女性、キリエ・フローリアンは、手段を問わずに探し求めて今は、闇の書の残骸『欠片』から生まれた三人の少女の味方みたいなことをしているというわけだ。
「あっ! 燐夜君!」
燐夜がようやく今回の事件の全容を理解し始めたところでまた、話をややこしくしそうな少女が、より具体的に表現するのであれば、燐夜の両隣にいるなのはとフェイトに被害が及ぶこともお構いなしに燐夜のもとへ駆け寄って飛び込んできた少女。
しかも、お世辞を抜きにしてなのはとフェイト並みの美少女が燐夜の胸に飛び込んできたのだ。
燐夜の胸に飛び込んできた少女の隣にいた銀髪の女性は、燐夜の顔を見て驚いていた。
まるで死んだ者が生き返ったような、そんな驚き方だった。
「あー……君の言う燐夜は俺であってるんだが、違う」
「……どういうことや? 私によぉ分かるように説明してや」
燐夜は目の前の茶髪の少女に、大体の理由を掻い摘んで大雑把だけど分かり易いように説明した。
それを聞いた目の前の茶髪の少女は大方事情を理解したのか、何回も頷いてくれた。それでも燐夜のひざから降りようとはしなかったが。そのせいなのか、なのはとフェイトの機嫌が若干悪い。その証拠に、さっきから抱き着いている腕にかかる力が強くなっている。
それを見て茶髪の少女は勝ち誇った顔をして二人を煽り立てる。
ここまで来て、燐夜はようやく違和感を感じ取った。目の前の茶髪の少女の名前を知らないということに。
「……悪いが、名前を知らないんだ。教えてくれないか?」
「えっ!? ……あちゃー、そうか。今の燐夜君は過去から来た9歳の燐夜君やから私の名前知らんのかー」
一瞬驚いて、すぐに納得した茶髪の少女は身軽に燐夜のひざからひょいと降りて再び燐夜と向き合った。
「改めて、初めまして。八神はやてです、はやてって呼んでな。これからよろしくお願いします」
そう小さく微笑みかける茶髪の少女――――はやてに燐夜は一瞬見とれてしまった。
あまりにも綺麗で、可愛くて、それでいて儚げなはやての微笑みに。
そんな燐夜を見て面白くないのがなのはとフェイトである。
――ギュッ
そんな擬音が聞こえそうなほどに二人は燐夜の両腕を抓る。
それ程痛くはなかったが、燐夜はその痛みを甘んじて受けとめた。
「――――ちょっとお取込み中のところいいかしら?」
燐夜を中心として、何かといざこざが起こっている。そんな中、リンディがそれを割って入るように言った。その声の方に燐夜が顔を向ける。
その場にいた全員が自分の方を見たことを確認すると、リンディは言う。
「緊急出撃よ」
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