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ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~

作者:蕾姫
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霜巨人の王

「……来るぞ! 序盤はユイの指示を聞いてひたすら回避!」

キリトの叫び声が響き渡ると同時に、拳に冷たい風を纏ったスリュムがユウキに殴り掛かった

ユウキは余裕を持ってそれを回避するが、着弾地点周辺から生えてきた氷の棘は予測できず、ダメージを受けてしまう

「っ……予想外だったかな」

「スタンプ、来ます!」

顔をしかめながら下がるユウキにスリュムの追い打ちが放たれる
三回連続で放たれたスタンプは先程の拳のようなトリッキーさはなかったためユウキは余裕で回避に成功した

「小型エネミー! 数は十二です!」

スリュムが一声吠えると床が十二ヶ所も競り上がり、人型となる。手には斧と盾を持ち、のっぺらぼうの顔をこちらに向けてきた

「私がやる!」

即座に後方から炎を纏った弓矢が六本飛んできて、向かって右側の氷の兵隊をあっという間に駆逐する

「もう一回っ!」

「ダメです! ブレス来ます!」

はっ、と顔を上げたシノンのが見たのはスリュム軽く胸を張って顔を後ろに反らしている姿だった

「にぃ!」

「わかってる」

俺は黄金の山から巨大なテーブルを鋼糸で引き出し、スナップを効かせてスリュムの顔面目掛けて振り抜く
テーブルはかなりの速さでスリュム目掛けて飛んでいき、ブレスを吐く直前だったスリュムの顔面に直撃。半強制的に顔の向きを変えた。変えさせた

シノンを狙っていたブレスは目標を変え……スリュムの後ろに回り込もうとしていたクラインのすぐ側に着弾した

「ぬおっ!? 危ねぇだろ、リン!!」

「たまたまだ。騒ぐな」

なおをぎゃあぎゃあと騒ぐクラインを視界から外し、スリュムのスタンプを回避する

「キリト、スリュムの拳は止められるか?」

「……やってみる」

俺が得意とする逸らしはスリュムの攻撃に対しては無力だ
逸らしても、近くに着弾させてしまえば、その後の氷の棘に貫かれてしまう

「ぬぅ……小癪なぁ!」

ブレスの邪魔に続いてスタンプ三連を回避した俺が気に入らないようで、俺に向かって吹雪を纏った拳を向けてきた
しかし、そこに割り込む一つの影

「らぁぁぁぁ!!」

キリトの剣とスリュムの拳がぶつかり合う
凄まじい衝撃音とともにキリトのHPが少し減少するが、キリトはしっかりと攻撃を受け止めていた

「キリト、行けるか?」

「少し重いが何とかな」

「なら、正面はキリトとクライン。横から俺、ユウキ、リーファだな」

キリトには多少劣るものの、クラインも脳筋型(物理極)なのである程度は問題ない
逆に俺やリーファ、ユウキは多少なりとも魔法に振っている上に速度重視のスピードアタッカーだ

「ブレス系を使うってことは仕込みが無駄にはならなさそうだな。それはそうとユイ、見つかったか?」

「はい! 位置座標をにぃのマップに送信しておきます!」

スリュムの攻撃に当たらないように少し後ろに下がるとメニューを開き、マップを呼び出す
金色の山の中央付近にあるのを見て、鋼糸を操作する

「……見つけた……」

きらびやかに光る山の中でより格の違う輝きを見せる金槌。とりあえず柄に鋼糸を巻き付けておく
万が一、これで俺の知る神話と違っていた場合でも投擲武器として使えるだろう

「ユウキ、リーファ、待たせた」

「ううん、大丈夫。何かはわからないけど重要なことをやってたんだよね?」

「その重要なことを教えて欲しいんだけどね。なんか、知ってるような気がしてモヤモヤする」

ユウキがスリュムの踝に連撃を撃ち込みながら弾けるような笑顔を見せてくる
リーファは攻撃をしながらもユウキとは対照的に、先程から記憶を掘り返しているようで苦い顔だ

「まあ、この戦闘中にわかると思うぞ」

そう言いながら目の前になる毛皮のレギンスに包まれたスリュムのアキレス腱に一撃を加える

「……堅いな」

スリュムのHPバーの一段目の一パーセントも減っていない
今のところ一番ダメージ効率が良いのは後方から放たれるフレイヤの雷撃系魔法だろう
やはり、フレイヤがパーティ内にいること前提で調整されているようで、決定打というほど高くはないものの、雷が落ちる度に確実にHPが削られていくのはありがたい

「ソードスキルを使いたいんだけど、使おうとするとすぐに蹴りが飛んでくるから……」

「……試してみるか」

「何を?」

剣を正眼に構え、足に向かって振り下ろす
今度はスリュムのHPを一段目の五パーセントほど持っていった

「……何をやったの?」

「鎧通し。久しぶりにやってみたが、意外と覚えているもんだな」

「リン君の経歴が凄い気になるよ……」

「凄い! 漫画の登場人物みたいだね」

俺がやったのは防御の高い相手に有効な手であり、内臓にダメージを与えたり、防具の上なら内部に直線衝撃を与えたりする、割と知名度の高い剣技である鎧通しだ
剣術の師がおもしろ半分に教えてくれたのだが、まさかゲームの中でも使えるとは思わなかった

何はともあれスリュムに有効打が与えられてよかった

「ねぇ、リン。教えて欲しいんだけど……」

「別にいいが、とりあえずスリュムを倒してからな?」

「うん、わかったよ!」

ユウキのテンションが上がり、心なしかユウキの剣速も上がる

時折放たれる蹴りを流麗な動きで回避する様はまさしく、蝶の様に舞い、蜂の様に刺す、である

「攻撃パターンが変わるぞ! 全員注意!」

いつの間にか一段目のHPを削り切っていたらしい
動きを止めたスリュムを見て後ろからキリトの叫び声が飛ぶ

「羽虫共め。よくも儂の手をここまで煩わせてくれたのぅ。よかろう。儂の息吹で吹き飛ぶがよいわ!」」

そう言うとスリュムは先程までのブレスの時とは比べものにならないほど顔を後ろに反らすと、俺達が吸い寄せられるほどの勢いで空気を吸い込み始めた

「マズっ……!」

リーファがとっさに吸引力を弱めるための風魔法を唱え始めるが、結構高位の魔法のため詠唱時間は長い
間違いなく間に合わない

故に俺は金色の山に仕掛けていた仕込みを発動させる
粗く張り巡らせていた鋼糸、言うなれば簡易的な笊の様なものを重さに耐え切れず、何カ所かちぎれるのにも構わず、一気に引き上げる

そして、宙を無数の金色が舞った

地面に合ったときは風に当たる面積が狭く、影響は極めて少なかったであろう
しかし、宙を舞っている今、その面積は増加している
つまり、何が言いたいのかと言うと、止まっている人間でさえ飛びそうな風に、すでに初速が与えられている金銀財宝が吸い寄せられないはずがないということだ

「うぐっ!? ゲホッゲホッ……」

「チャンスだぜぇぇ!」

景気よく吸っていたスリュムは喉に異物が入ってきたためにその行為は途中で中断せざるをえなくなる
これを好機と見たクラインが真っ先に鬨の声をあげて突っ込む
もちろん、好機だと思ったのはクラインだけではない
クラインから遅れること一呼吸。前衛が全員スリュムに向かって突っ込んだ

俺は突っ込むのに邪魔となる宙にある鋼糸を回収してからスリュムに向かって走り出す

「羽虫の分際でよくも、よくも……よくもぉぉぉ!!」

息を整えたスリュムは攻撃しているキリトたちには一切目もくれず、俺だけを見据えて激昂した
そして、両手に息を吹き掛ける
すると巨大な氷でできたバトルアックスがスリュムの手に生まれた

「まずは貴様から潰してくれよう。そして永遠の苦痛に満ちた冥府の海に叩き込んでくれるわ!」

「……目茶苦茶嫌われたらしいな」

スリュムがバトルアックスの調子を確かめるように頭上で振り回している間にバックステップで後ろに下がる

「ぬぅん!」

気づいた時には目の前でスリュムがバトルアックスを振りかぶっていた

「なっ……!?」

逸らせたのはこれまで鍛えに鍛えた反射神経の賜物だろう
移動スピード速すぎてテレポートしたかのように見え、振り下ろす際のスピードも見えるとはいえ先程までとは段違いで、バトルアックスが霞んで見えた

「どうした羽虫。儂を殺すのではなかったか? ンン?」

答える余裕はない
スリュムは軽口を叩いているがバトルアックスのスピードはさらに増していっている

そして、とうとう俺の手にあった剣は弾き飛ばされてしまった 
 

 
後書き
蕾姫です

今回はスリュム戦の前半でした
スリュムに余計なスキルを付けました。名前は憤怒。効果は大技を阻止された際にスピードが五倍になるというものです
リンの動体視力を振り切るとは……一体何フーリンなん(ry

原作とは違いバトルアックスが変身前に出てきましたが、あれを出さないとリンが死んでしまう。拳とか逸らせないし
強くなったはいいが弱点をついていた前の方がよかったっていう
スリュムさん、バカですねー

次回は後編です
感想その他お待ちしています
ではでは 
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