ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
六十五話:やはりイケメンに限る
オラクルベリーの宿で一夜を明かし、朝になって起きてみると。
ヘンリーがいませんでした。
散歩にでも行ったのか、それとも修業でもしてるのか。
私を放置して散歩とかはしなそうだから、修業だろうか。
誘ってくれても良さそうなものだが、私よりレベル低いの気にしてたしなあ。
怒る筋合いのことでも無いし、男のプライドもあるだろうし。
特に言われない限り、突っ込まないことにするか。
と、対応の方針を決めて。
あんまりヘンリーに迷惑かけないようにしようと昨日決めたところなので、試しにはっきり男装でもしてみるか。
と、着替えを始めると、非常にベタなことに。
ガチャリ。
「……」
「……」
バタン!!
……うん、いい反応だ。
「わ、悪い……!」
閉まった扉の向こうから、ヘンリーの上擦った声。
うん、ノックくらい、して欲しかったかな。
しかし悲鳴とか上げそびれて、なんと言っていいものやら。
「えーと。……見た?」
結構な間があったし、見てないわけは無いだろうと思いつつ、一応確認。
ウソでも見てないと言ってもらえれば、無かったような感じにできないだろうか。
「……」
無理だった。
沈黙で肯定された。
とりあえず、今日の男装は決定ということで。
女らしいのはもちろん、昨日みたいな中性的な感じでも、顔を合わせられない気がする。
ヘンリーが。
着替えを済ませて、ヘンリーを呼びます。
「終わったから、入っていいよ」
無言のうちに扉が開き、ヘンリーが入ってきます。
言うまでも無く、顔は真っ赤です。
反省してないわけが無いから、特に言うべきことも無いんだけど。
私がなんか言わないと、気まずいままだろうなあ。
「ヘンリーくん。とりあえず、そこに直りなさい」
黙って、ベッドに正座するヘンリー。
うん、説教と言えば正座だよね。
そこは、やはりね。
私も自分のベッドの上に正座して、向き合います。
「とりあえず、ノックはしようか」
頷く、ヘンリー。
「わざとじゃ無いってわかってるから、私はいいけど。ヘンリーが困るでしょ?まともに顔とか見れなくなるし」
ガバッと顔を上げたヘンリーが、また慌てて逸らします。
「おま、いいって!それは、ダメだろ!」
おや?
まさかの、説教返しですか?
「だって。わざわざ見せはしないけど、見られちゃったものは仕方ないじゃない。何しても、無かったことにはならないし」
例えばヘンリーを殴っても、記憶は消えないじゃない。
確実に消えるなら、殴るかもしれないが。
「……誰にでも、そう思うのか?」
「いや、ヘンリーだけだけど。今のとこ」
制裁を加えなくても大丈夫と思えるほど知ってる男性は、他にいないし。
「……そうか。わかった、気を付ける。悪かった」
「うん。ところでこの格好だけど。どうかな?少しは、男に見える?」
正視はしないながらも、チラ見で確認するヘンリー。
「……俺には、どうやっても男には見えねえけど。昨日のよりは、それらしいんじゃないか」
「そう。なら、いいか」
「つーか、なんで男装してるんだよ。いいだろ、別に。昨日くらいので」
「色々、思うところがありまして。それに、今日はこっちのほうがいいでしょ」
「……」
さっきのことが、あるからね。
「手、繋いだりとかも、今日はいいから」
「……わかった」
と、お約束的なイベントを終えて、朝食を取り、荷物をまとめて馬車を連れ、宿を出ます。
この町の大きさも、私が動き辛くなる要因な気がするのでね。
あとは買い物を済ませて、カジノをちょっとだけ覗いたら、さっさと次に進むつもりで。
「刃のブーメランは、絶対買うとして。防具は、どうしようかな。試しに鎧を使ってみたいんだけど。ヘンリーもいるよね?」
「金、足りるのか?」
「鎧二着くらいなら、なんとか」
話し合いながら店に向かい。
朝なので人は少な目とは言え、それなりに他人ともすれ違う中で感じる、圧倒的な違い!
……女性の、熱い視線を、非常に強く、感じます!!
なにこれ、なにこの居心地の良さ!
昨日とは、全然違う!
最初から、こうすれば良かった!!
ちなみに男性の反応は、男に対してときめいてしまう自分に物凄く戸惑って挙動不審になるような感じで。
近付いてこようとする感は、全くありません!
なんだ、いいことづくめじゃん!男装!
と、すっかり浮かれながら店に着き、刃のブーメランと鉄の鎧二着を購入して身に着け、カジノを覗いてひと通り眺めて回り、さして時間もかけずに外に出ると。
「すみません!お二人ですか?良かったら、ご一緒しませんか?」
女性二人組に、逆ナンされました。
そうか、そこまで私の男装は完璧ですか!
上がるね!テンションが!!
「お二人とも、すっごく素敵ですね!」
「その鎧、旅人さんですか?かっこいい!」
キャーキャー盛り上がってくれる、女性二人組。
「……悪いけど」
「申し訳ありません。こんなに美しくも愛らしいお二人に、声をかけられるとは光栄の至りですが。仰る通りの旅人で、先を急ぐ身なのです。本当に残念ですが、またの機会に」
ぶっきらぼうに口を開くヘンリーを遮り、立て板を流れる水の如くスラスラと、言葉が流れ出ます。
ああ、楽しい!
イケメン、最高!!
「そうなんですか……。残念です……」
「あ、じゃあ、これ!私の、連絡先です!この町に来ることがあったら、連絡してください!」
「あ、私も!」
可愛いお嬢さんたちの連絡先をゲットし、名残惜しげに見送られながら、町を出ます。
「……連絡。するのか?」
「しないよ。してどうするのさ」
私が男ならともかく。
女にわざわざ連絡してこられても、あっちだって困るだろう。
記念ですよ、ただの。
「あ、ヘンリーは連絡したい?なら」
「いらねえ」
最後まで言わせてくれないかね、せめて。
「ところで、次の目的地だけど」
「サンタローズだろ?」
いや、そこスキップしてラインハットに行こうかと。
「上手くいってれば、無事なはずなんだろ?俺も気になるし、行こうぜ」
ダメだったときのショックが大きそうだから、ラインハットの件を済ませてヘンリーと別れてから、後で一人で行こうかと思ってたんですけど。
無事だったとしたら、ヘンリーのお蔭ということになるしなあ。
気になると言われたら、無碍にもできないか。
「うん。じゃあ、行こうか。サンタローズに」
一人なら、号泣しても問題無かったけど。
ダメでもうっかり泣いたりしないように、気張って行こう。
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