ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
六十三話:モンスター使いに開眼
「では、始めるぞよ!ドーラちゃん!これからわしのことは、師匠と呼ぶように!」
「はい!師匠!」
キリッと宣言するじいさん改め師匠に、私もキリッと答えます。
「うむ、よし!わしの指導は厳しいが、ドーラちゃんには特別に、優しく教えて進ぜよう!とは言え、甘い道では無い!着いてこられるかの?覚悟は、あるのかの!?」
「はい、師匠!覚悟は、できてます!」
ノリノリで問いかける師匠に、私もノリノリで答えます。
隣でヘンリーが、
「また、適当なことを……」
とか呟いてますが、いいんだよ、こういうのは。
ただの、ノリだから。
「モンスター使いの心得、その一!まずは、馬車じゃ!何はなくとも、馬車を、手に入れるのじゃ!」
「はい、師匠!質問です!」
「なんじゃ、ドーラちゃん」
「どうして、馬車が必要なんですか?一体や二体くらいなら、無くても連れ歩けるのでは?」
「うむ!いい質問じゃ!」
あ、やっぱり無いとダメなんだ。
そして、いい質問なの?
「モンスター使いは馬車を使うものと、ガイドラインで定められておる」
ガイドライン!?
何、その前世的な響き!
「宿屋協会との協定でのう。モンスター使いが連れておる魔物が宿泊を拒否されることは、基本的に無いが。人型の魔物ならば全く問題無いが、極端な異形のもの、例えばドロヌーバなどは、一般の客室を使わせることで、宿や他の客に著しく迷惑となる場合がある。専用の客室を用意できる宿も、多くは無いでの。そのような特定の魔物に関しては、宿に立ち入らせずに馬車で休ませるものと、定められておるのじゃ」
「そうなんですね!」
聞いてて良かった、師匠の言葉!
これは知らなかったら、かなり不味い感じだったわ!
「一般の客室に宿泊可能な魔物については、宿屋側でも把握しておるはずじゃが。リストを渡すゆえ、目を通しておくように。例外的に通してもらえる場合もあるゆえ、設備が整った宿であるなら、都度確認すると良いの」
「わかりました!」
私のいい返事に重々しく頷き、再び師匠が口を開きます。
「では、次じゃ!モンスター使いの心得、その二!愛じゃ!愛を以て、戦うのじゃ!」
「はい、師匠!質問です!」
「なんじゃ、ドーラちゃん」
「特に愛は無かったし、戦いもしなかったのに、魔物が従ったことがあるのですが。それでも、愛と戦いは必要なんですか?」
「なんと!」
師匠がカッと目を見開き、驚いてます。
怖いです、顔が。
「戦いにより己の力を見せ付け、愛を以て邪悪な心を祓い従えるのが、モンスター使いじゃが。戦わずして、その愛のみを以て邪悪な心を祓い、魔の支配から解放できる力を持つ一族がかつて居たとは、聞いたことがあるが。愛無くしてというのは、初耳じゃのう」
「あ、そうですか」
やっぱり無いんですね、普通は。
実はあれが標準だなんて夢を、ちょっとだけ。
ほんのちょっとだけ、見てたんですけど。
「何故じゃろうかのう……。ドーラちゃんが、それほどに強い能力を持つのか。或いは、戦わずして力を見せ付けるなどということが、もしや可能なのか。愛すら無いとなれば、何か、愛に代わるもの。例えば強き意志などが、魔を祓うのじゃろうか……」
「いや、いいです。大丈夫です、次に行きましょう」
女王様気質なんて結論にでもなったら、泣く。
言っても無いのにドーラ様とか、呼ぶな。
私は、呼ばせて無い。
「む、そうか。では次、これで最後じゃ!モンスター使いの心得、その三!真のモンスター使いたるもの、モンスターと心を通わせてこそじゃ!心の目を開き、モンスターと心を通わせるのじゃ!」
「わかりました、師匠!具体的に、どうすればいいですか!」
「うむ!今から、ドーラちゃんの心の目を開くゆえ!わしの目を、見るのじゃ!」
「はい!」
言われた通り、師匠の目をじっと見詰めて集中します。
師匠も真剣な瞳で見詰め返し、その奥に宿る何かが、見えかけて
「おいこら。じじい」
ヘンリーの言葉に集中が途切れて、そちらを見ると、何故かヘンリーが私の前に体を割り込ませており。
イナッツさんが、師匠の手を握っておりました。
「何しようとした、今」
「おじいちゃん、ダメよ。それは、シャレにならないわよ。犯罪よ」
え、何?
何されそうになったの、私?
「む、いや、すまぬ。なんというか、つい」
「つい、じゃねえ。帰るぞ、ドーラ」
「え。でも、まだ」
たぶん、まだ終わってない。
「いいから」
ヘンリーに腕を引かれ、立ち上がらせられ。
「待って、待って!ごめんね、ドーラちゃん、ヘンリーくん!ちゃんと、押さえておくから!帰らないで!」
「いや、けど」
「ダメなのよ、ちゃんと済ませないと。ちゃんとした、モンスター使いになれないわ。大丈夫、妙なことしたら、本気で締め上げるから!」
今度は、イナッツさんが怖いです。
笑顔が、怖いです。
師匠が怯え、ヘンリーが渋々座り直します。
私も座り直し、イナッツさんによって罪人のように後ろ手に拘束されている師匠の目を、改めて見詰めます。
色々と気になることはひとまず頭の隅に置いといて、集中すると。
師匠の瞳の奥に、光のようなものが、見え。
いや、視えたのかはわからないけど、確かに光の存在を感じて、次の瞬間には私の心にも、何かが閃いたような。
新たな光が、宿ったような。
そんな感覚を、覚えました。
「……師匠」
「うむ。開いたようじゃな」
相変わらず拘束されたまま、穏やかな表情で応える師匠。
「これでドーラちゃんも、立派なモンスター使いじゃ。仲間が増えて連れ歩けなくなったときは、わしが預かるゆえ。他の町の同業者のところに魔法のネットワークが繋がっておるゆえ、どこででも預けたり、引き取ったりできるでな。他にも困ったときは、わしらを頼るが良い」
「ありがとうございます、師匠!」
拘束されながらも菩薩のような微笑みを浮かべる師匠に、私も感謝の笑顔を向けますが。
「……つまり、もうここには用は無いな」
「そうとも、言えるかしらね」
冷え切ったヘンリーの声と、冷静なイナッツさんの声。
「イナッツさん、悪いけど」
「そうね。残念だけど、仕方ないわね。二人とも、元気でね!あ、私に用なら、他のおじいちゃんに言ってくれれば伝わるから!二人のためなら、出張だってしちゃうかもよ!」
「すみません、イナッツさん」
「いいのよ!二人に会えるなら、私も嬉しいからね!」
なんか通じ合ってる、ヘンリーとイナッツさん。
「よし、ドーラ。帰るぞ」
「うん?そうだね。それじゃ師匠、イナッツさん。お世話になりました」
「いいえ!ほら、おじいちゃん!しっかり、お別れを言って!」
「ああー……嫌じゃー……!ドーラちゃんー!!」
「自業自得でしょ、諦めなさい!」
「後生じゃ、後生じゃから!今度だけ!ほんの、出来心だったんじゃー!!」
「犯罪者は、みんなそう言うのよ!!」
なんかよくわからんことになってる師匠とイナッツさんを置いて、ヘンリーに引きずられるように、モンスターじいさんの事務所を後にします。
「……ヘンリー。あのさ」
「忘れろ。何も無かった」
「……そう」
「いっそ、存在ごと忘れろ」
「それはちょっと」
よくわからんけど、一応お世話になったんだし。
「なら、そこはそれでもいいけど。来るなよ、ここには。二度と」
「うーん……。うん、わかった」
わからないが、逆らわないほうがいい気がする。
まあ、ここにこだわる必要は無いしね。
イナッツさんにちょくちょく会えないのは、ちょっと残念だけど。
「結構、遅くなっちゃったね。武器屋と防具屋は、明日だね」
「そうだな。オラクル屋に行くなら、丁度いい時間か」
「うん。行こうか」
「おう」
ということで、次はオラクル屋に向かいます。
何はなくとも、馬車を手に入れないといけないからね!
正式に、モンスター使いになったんだから!
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