ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
六十話:広い世界へ
食事の最中に、私が見てなければヘンリーが割とマシな状態になることを発見したので(見てないスキにガン見されるのでかなり居心地が悪いが)。
食事を終えて、ヘンリーを後ろに連れて先に立って食堂を出ると、マリアさんに出会しました。
「ドーラさん、すみません。お呼びしておいて、話し込んでしまって」
「いえ。食事を済ませられて、丁度良かったです。洗礼を受けてシスターになられるとは、驚きました」
半分、ウソですが。
知らなければ思わないだろうということで、半分は本当です。
だって、昨日の今日ですよ?
マリアさんにしてみれば、ここに流れ着くとも知らなかったのに。
選択としては驚くほどでは無くても、決断の早さは驚きに値するでしょう。
マリアさんが微笑んで頷きます。
「ここに流れ着いたのも、神の思し召しだと思うのです。悔い改め、正しく道を学ぶ、機会をいただけたのだと。まずはここで神の道を学び、それからなにができるかを、きちんと考えようと思います」
「ご立派なお考えだと思います」
闇雲に、光の教団は邪教だなんて主張したところで、聞いちゃもらえないだろうからね。
拠って立つものをきちんと持っておくのは、いいことだ。
「ドーラさんとヘンリーさんは、もう、発たれるのですか?」
「はい」
「でしたら、これを」
マリアさんが、見るからに重そうな皮袋を差し出します。
「これは?……お金ですか?」
知ってますけど。
ていうかたぶんヘンリーが、他の荷物と一緒に運んでたけど。
「はい。兄が、持たせてくれたものです。どうぞ、お役に立ててください」
「修道院の運営も、楽なものでは無いと聞きます。手元に残しておいたほうが良いのでは?お金なら、すぐに稼げますから」
もらえれば助かることは間違い無いが、リンガーがちゃんと取っておいてくれたお蔭で、私も少しは持ってるし。
苦労するのが目に見えてる相手、しかも美女!から巻き上げるようなのは、いくら私でも。
例え、ゲーム通りでも。
しかし、マリアさんも退きません。
「それでも。なにか、お力になりたいのです。守ってもらうばかりで、私は何もできませんでしたから。マザーやシスターにも、ご理解いただきました。どうか、受け取ってください。私の、気持ちだと思って」
真摯な瞳で、訴えてくるマリアさん。
……そこまで言われたら、受け取らないと女が廃るってもんよね!
気持ちとかまで、言われちゃったらね!
マリアさんの気持ちとか、なんかバレンタインみたいじゃない!いいじゃない!!
ズシリと重い皮袋を受け取り、感謝の微笑みで応えます。
「ありがとうございます。大切に、使わせて頂きます」
マリアさんも、頬を赤く染めて嬉しそうに微笑みます。
こんな、あからさまに女っぽい格好でも有効とは。
私のニコポ力は、止まるところを知らないね!
「お母様。見付かるといいですね。いえ、きっと、見付かりますわ」
「はい。マリアさんに祈って頂けるなら、きっと見付かります」
タルの中でその辺の事情も、差し支えない範囲で話してしまいました。
私が知らないはず(聞いてない)だなんてことは、パパンと私しか知らないことなので。
マリアさんが、今度はヘンリーに向き直って言います。
「ヘンリーさんも、お元気で。ドーラさんはお強いですが、それでも女性ですから。私が言うまでも無いでしょうけれど、どうか守って差し上げてくださいね」
「ああ。マリアさんも、元気で」
和やかなやり取りですねえ。
色っぽい雰囲気の、カケラも無い。
そこはもう、諦めたけど。さすがに。
ともかく、それなりの友好関係は築かれたようで良かったよ。
会話無かったもん、最初の頃。
しかしヨシュアさんといい、この兄妹は全く。
余計なことを、お願いしないで欲しいんですが。
場合によっては、すぐにも別行動にする所存なので。
そんなこと言って警戒されたら撒きにくくなるので、言わないけれども。
マリアさんと一旦別れ、修道院のみなさんに挨拶するついでに、修道院の中を見て回ります。
家捜しは、しませんよ!
そんな、恩を仇で返すような真似はさすがに!
記念に木彫りの女神像をいただいたり、食堂のおばちゃんの幼い娘さんをまたしてもニコポで引っ掛けてしまい、離れたくないと泣かれてみたり。
わざとじゃ無い、わざとじゃ無いんだ!
フローラさんらしきお嬢様が最近まで使っていたという、特別室を見せてもらったり。
個人情報保護的なアレで、名前は教えてもらえなかったけど。
これは、フローラさんで確定だろうか。フロルスくん(仮)では無く。
……まあ、他のお嬢様かもしれないし。
決め付けるのは、いかんよね。
と、いう感じに準備を済ませ、いよいよ修道院を出て、広い世界に旅立ちます。
マリアさんとマザーにシスター、おばちゃんにまだしゃくり上げてる娘さん、みなさんに見送られて、修道院を出ます。
「みなさん、本当にお世話になりました!それでは、ご縁があれば、また。いずれ」
なんかもう狙わなくてもニコポが発動してしまうので抑え目にしたつもりだったが、やっぱり発動していることに先行きに軽い不安を感じながらも。
泣いてた幼女がなんか誤魔化されたので、まあ、いいか。と自分を誤魔化しながら。
それはさておき。
外に出たからには、戦闘の準備です。
装備を調えます。
それくらい出る前にやっとけって話だが、幼女に縋り付かれたりなんだりで、危なくて武器とか取り出せる雰囲気じゃなかったので。
「はい、ヘンリー」
鎖の鞭と、鉄の盾を差し出します。
十年前に使いっぱなしで取り上げられてましたが、リンガーあたりがやってくれたのか、きちんと手入れされた状態です。
「いいのか?」
「うん。私、こんな格好だし。後ろからブーメランと魔法で戦うから、前衛よろしく」
「こんな格好……」
ヘンリーがまじまじと私の全身を眺め、また顔が赤く、ってしまった!
旅立ちのどさくさで折角治まってたニコポ効果が、また!
「ヘンリー!ほら、魔物!」
都合良くエンカウントしたので、ヘンリーの注意をそちらに向けさせます。
ヘンリーがはっとして魔物に向き直り、武器と盾を構えて向かって行きます。
ふう、危ないところだった。
ヘンリーを無事に正常な状態でけしかけたところで、私もブーメランと皮の盾を構え、戦闘に参加します。
動きにくい服装とは言え前衛にヘンリーがいるし、ブーメラン投げるくらいならそんなに大きく動く必要も無いし。
レベルとかどうなってるのかわからないけど、十年修業した成果で私たちも強くなってるし、いっそ呆気ないほど簡単に敵を殲滅します。
シャバでの初戦闘を終えて戦利品を集めるヘンリーに、労いの言葉のひとつもかけたいところですが。
うっかり声とかかけたら、また再発しそうだよなあ……。
この格好も良くない気がするよ、ギャップ萌え的な。
動きにくいし、町に着いたらとりあえず服を買おう。
ということで適当に、お疲れー、みたいなことを言って流します。
はあ、変なとこ、気を使うわ。
オラクルベリーに着くまでの辛抱だ、頑張ろう。
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