ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
五十九話:シスター・マリアの洗礼式
修道院で用意してくれた質素な服に着替え(着替えて寝たらシワになるし、奴隷の服はキレイキレイで清潔にしたので、奴隷の服で寝てました)、身嗜みも整えて、来客用の二階の部屋から一階に下りて、礼拝堂に入ります。
既に洗礼の準備は整っていたようで、私を認めた院長がにっこりと微笑んで頷き、マリアさんもこちらを振り向いて微笑み、マザーに向き直って壇上に向かいます。
なんか言う雰囲気では無さそうなので、私も黙って、ヘンリーの隣に並びます。
ヘンリーがこちらをちらりと見て、なんか目を瞠ってますが。
そんなことより、今はマリアさんの記念すべき時を見届けないと!
目の前に進み出て跪いたマリアさんに、マザーがルビー色の液体を振りかけます。
……あれ、なんなんだろう。
前世の某メジャーな宗教なら、ワインとかなんだろうけど。洗礼には使わなかった気がするが。
そっちはともかく、こっちならワインてことは無いよなあ、魔法的な何かだろうか。聖水に近いような。
ところで私だって女なんだから、形だけでも洗礼受けとけば、そのまま塔の扉を開けたりは……しないな。
全く、できる気がしない。
と、どうでもいいことを考えながら、美しくも神秘的な光景に見入っている間に、洗礼の儀式は終了したようです。
これで、マリアさんもシスターか。
シスター・マリアか。
神の、花嫁か。
私的にはそんなマリアさんも素敵でいいと思うけど、女としてはどうなんだろう。
私とヘンリーがこんなんじゃなかったら、王兄妃として、愛されて華やかな生活を送る未来があったのに。
コリンズが漏れなく付いてくるので、私ならイヤだが。
儀式を終えて、マザーやシスターと何事か談笑するマリアさんの表情は明るく晴れて、私の心のしこりを笑い飛ばしているかのようです。
……うん、彼女の幸せは、彼女が決めて、選ぶことだよね。
ここに本当に決めてしまうのかは、まだわからないけど。
ヘンリーでは無かったんだ、きっと。
「……マリアさん。綺麗だね」
別にお勧めしようとかではなく、外見に滲み出る彼女の心のありようなんかも含めて、心からそう思って、口に出したんですが。
「……そうか?」
やはり空気を読まないダメなイケメン、ヘンリーくん。
……おかしいな、コイツはきっと前世もイケメンだったんだと、確かそう思ったはずなんだけど。
あれは、王子様キャラの続きだったんだろうか。
勘違いだっただろうか。
「ドーラ。お前、さ。その服」
そして全く関係ない方向へ、話を変えてくるヘンリー。
「これ?質素だけど、なかなかいいよね。戦闘には向かなそうだけど」
いかにも女性らしい、裾の長いワンピースなので、日常生活ならともかく、戦闘中は非常に動きにくそうなんですけれども。
シンプルながらキレイなラインで、着てみると意外と映えるんですよね!
磨き上げた私のスタイルの良さのせいも、あるかもしれないが!
「……似合うな。綺麗だよ」
……驚、愕。
なぜ、ここで、正しいイケメンみたいな対応をする!
それを、マリアさんに、マリアさんの前で!
発揮してくれれば、フラグの一つや二つや三つくらい、余裕で立っただろうに!
私に、やってどうする!!
が、褒められたからには一応は人として、礼のひとつも言わねばなるまい。
不本意だけど。
「……ありがとう」
「……全く、嬉しくなさそうだな」
お礼よりも、本音はむしろ愚痴りたい。
が、まあ別に?
コイツの嫁探しに私がそこまで心を砕く必要も、無いわけですし?
城に戻れば、いいとこのお嬢様が、掃いて捨てるほど寄ってくるんでしょうし?
ここは素直に、喜んでみてもいいか。
十年ぶりにまともな服を着られて、それを褒められて、嬉しいことは間違いないしね!
「そんなことないよ。嬉しいよ、ありがとう」
普通に、笑顔でお礼を言ってみましたが。
「……!……お、おう」
なんだか赤くなって、顔を背けるヘンリー。
……これは!
私のニコポ力は、残念な中身を知り尽くしているはずのヘンリーにすら、有効なのか!
美女ってすごい!もはや、怖い!!
いかんいかん、これは気を付けないと。
今さら、フラグとか立ててる場合じゃないから!
「それより、ヘンリー。寝てないなら、今からでもちょっと休ませてもらったら?要るなら、ラリホーもかけるし」
「いいよ。さっさと出よう」
「でも。顔色が……って、あれ?」
赤くなったせいか、顔色の悪さが、目立たなく。
クマはすごいが。
「うーん……?ホントに、大丈夫?」
「ああ。メシ食ったら、出ようぜ」
「うん。じゃあ、回復だけするね」
ということで、見た目上あまりにも気になる目の下のクマに手を当てて、ベホイミをかけます。
あ、結構目立たなくなった。
「なっ……!」
そしてまたヘンリーが、赤く。
え?
……ナデポ?
また、やっちまったの?私。
でも回復するくらいのことで、まさかそんな。
「……あのさ。ヘンリー」
「き、急に顔とか触るからだろ!仕方ねえだろ!」
まだ何も言ってないが。
そんなんで少しの間とは言え、二人っきりで旅とかできるの?
もう、別行動でもいいんじゃね?
とかそんなこと言おうと思ってましたが。
「大丈夫だから!行くぞ!」
手を引っ張られて、たぶん食堂のほうに向かって歩き出します。
さっきの今で手とか握れるなら、まあ大丈夫なんだろうか。
耳真っ赤ですけど。
もうフラグなんだかそうで無いんだか、わけがわかりませんけれども。
しかし一昨日までなんも無かったのに、外に出た途端に、なんだこの反応。
「ていうか。ヘンリーも、まだ食べてないの?」
早起きというか、徹夜なのに?
「……タイミングがずれると、色々面倒だろ」
まあ、そうですけど。
お腹空くタイミングがずれるとか。
けど別に間食で補えばいいし、大した問題でも無いような。
「お腹空いてるだろうに、待っててくれたんだ。ありがとう」
「……別に……!面倒なだけだって!」
ああ、また耳が赤みを増して。
人として普通の対応をしているだけなのに、何をやってもフラグみたいになる。
どうしろと言うんだ。
……やっぱり、早いとこ別れるしか無いか!
と、今さら確認するまでも無い決意を固め直しながら、食堂にたどり着き。
修道院に住み込んでるおばちゃんに、食事を分けていただき。
ヘンリーと向かい合って食卓に着いて、食事を取りましたが。
時間が経ってやや落ち着いたものの、やっぱり赤い顔で、目は合わせようとしないくせに、なんかこっちをチラチラ見てます。
……なんだよ、ホントに大丈夫なの?これ。
ダメじゃね?
「……大丈夫だから!」
碌に見てないのに、なんでそういうのはわかるんだ。
まあ、そのうち落ち着くかもしれないし。
本気でダメそうなら、出先で別れればいいか。
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