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戦国異伝

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第百三十七話 虎口を脱しその九

 だがそれがだとだ、信行は言うのだ。
「ですがそれを為せるからです」
「わしを慕ってくれるか」
「そもそも法を徹底させ悪人を処罰することもです」
「良き者にとっては、というのじゃな」
「実に有り難いことです」
 だからこそだというのだ。
「皆兄上についていきます」
「そうか」
「そしてそれは都だけではありませんので」
 他の国もだというのだ。
「尾張や美濃のみならず」
「他の国もじゃな」
「今織田家が領地としている全ての国で、です」
 民達が信長を慕っているというのだ。
「国人達も検地や取り込みに当初は戸惑っていましたが」
「今はか」
「織田家に入り織田家の家臣となっております」
 国人達の取り込みも進んでいるというのだ、しかもこれだけではなかった。
「寺社も荘園をなくす代わりに檀家を作りそれでやっていかせていますので」
「寺社奉行も置くおるしな」
「あの奉行ですか」
「もう少し落ち着いてからな、そうじゃな」
 既に大和、特に寺社の強いこの国の寺社は治めている、だがそれだけではなく。
「延暦寺、金剛峯寺、それにじゃ」
「本願寺ですか」
「いよいよこの三つじゃな」
 寺社の中でもとりわけ力の強いこの三つの寺だというのだ。
「どうするかじゃ」
「それからですか」
「特に本願寺じゃ」
 この寺がとりわけだというのだ。
「あの寺は大過ぎる」
「確かに。あの寺の力は」
 信行も本願寺の凄さは知っている、それで言うのだった。
「恐ろしいですな」
「当家にも比肩するな」
「それだけはあるかと」
「だからじゃ」
 それでだというのだ。
「あの寺をどうにかせねばな」
「何もなりませんか」
「それに妙じゃ」
 ここで信長の眉が曇った、そのうえでの言葉だった。
「あの寺の動きにはな」
「何かがありますか」
「うむ、ある」
 そうだというのだ。
「はっきりとはわからぬが」
「怪しいものがですか」
「それに法主が関わっているかはわからぬ」
 顕如についてはというのだ。
「むしろ関わっておらぬと見た方がよいな」
「顕如殿についてはですか」
「大きな者の様じゃがな」
 それでもだというのだ。
「それに気付いているか」
「そのことですか」
「どうも本願寺にも色々な者が出入りしておる様じゃな」
「門徒といいましても一つではありません」
 信行も言う、石山寺は摂津にあるがこの摂津にいる者達にしてもだというのだ。
「古くからいる下間一族に摂津の者、加賀の者」
「伊勢や三河にも多いのう」
「それに雑賀衆にです」
 こうざっと挙げていくだけでも様々だった、伊達に巨大な勢力になっている訳ではなかった。 
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