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万華鏡

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第三十九話 読書感想文その十四

「ボードレールも読むんだな」
「面白いと何でも読むの」
「何でもか」
「野球の本だって読むし」
 それにだった。
「後はライトノベルもね」
「それも読むのかよ」
「ええ、結構ね」 
 実際に読むというのだ。
「そうしてるのよ」
「へえ、お固い本だけじゃないんだな」
「そうなの、ライトノベルを読むことが一番多いかしら」
 里香の意外な趣味だった、少なくとも他の面々から見れば。
「色々読んでるわ」
「じゃああたしも読んでみるか、ラノベな」
 こう話してだった、里香もライトノベルで面白そうなものを探そうと思った、そしてだった。
 五人は今は六甲おろしを演奏し歌った、それは軽音楽部の全てのグループがした、それが終わってからだった。
 先輩は笑顔でこう皆に言った。
「じゃあ今日からね」
「毎日ですね」
「六甲おろしをですね」
「そう、選手の人達の歌もね」
 こちらもだというのだ。
「歌えればね」
「歌うんですか」
「選手の人達の歌も」
「懐かしの人達の歌も」
「懐かしっていいますと」
「バースよ」
 この名前がここで出た。
「何といってもね」
「確か先輩ってまだ十代ですよね」
 美優はバースと聞いて顔を顰めさせて先輩に問い返した。
「そうですよね」
「高二よ、花のね」
 しかも留年もしていない。
「ピチピチの十七歳よ」
「それでバースですか」
「バースは絶対でしょ」
 阪神ファンにとってはだというのだ。
「世代を超えたヒーローでしょ」
「だからですか」
「兄貴もね」
 金本のことだ、広島から来たが阪神でも英雄である。
「世代を超えてるわよね、勿論兄貴の歌も歌うわよ」
「何か宇野先輩みたいですね」
「宇野ちゃん広島ファンだからね」
 広島出身だからだ、広島東洋カープは阪神と匹敵する位郷土の人達に深く強く愛されているチームなのだ。
「けれどあの娘も協力してくれるから」
「阪神の歌を歌ってくれるんですね」
「あの娘巨人以外には優しいから」 
 阪神ファンもそうだが広島ファンもなのだ。
「だからね」
「協力してくれるんですね」
「皆一日一回は六甲おろしを歌って演奏すること」
 まずこのことは絶対だった。
「そして出来ればね」
「選手の歌もですね」
「そう、歌って演奏してね」
 是非だ、そうしてくれというのだ。
「風船を飛ばしてもいいわよ」
「本当に甲子園みたいですね」
「そんな感じですね」
「八条学園を第二の甲子園にするのよ」
 先輩は五人の言葉にかえって燃えた、そのうえでの言葉だった。
「わかったわね」
「何か無茶苦茶な話の気もしますけれど」
「阪神のことですから」
「六甲おろしも好きですし」
「それなら」
「そう、皆で祈願するわよ」
 本当に全員になっていた、軽音楽部の。
「阪神の為にね」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
 こうして軽音楽部は夏休み前に一つの方針を決めた。夏休みは終わるが熱さはそのまま残るのだった。


第三十九話   完


                   2013・6・21 
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