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【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)

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06 追撃 その二

 夜を徹して貿易都市バイアに兵と物資が運び込まれる。
 まあ、上空をワイアームが旋回し、城門にでんとドラゴンが居座っていたら帝国軍も簡単にはやってこないだろう。
 その隙にグリフォンやホークマンで兵を運び込むという算段。
 朝には帝国軍がこの町を攻めるだろうから、こっちも必死なのだ。

「なぁ。あんた」

 港でそんな光景を眺めていたら、男が声をかけてくる。
 ナンパではなさそうだし、予想はしていたのだが。

「何?」

「北の海のほとりに、セルジッペという町がある。
 そこに住むトードという男に渡してもらいたいものがあるんだが、頼まれてくれんかな?」

「何で私なの?」

 計算ずくで少し不機嫌そうな声で私が訪ねる。
 ちらりと上空を見ると、ワイアームは私を確認済み。
 何かあったら上空からぱっくんである。
 それを知ってか知らずか、私に声をかけた赤いローブで顔を隠した男は、卑下た笑みで口を歪める。

「そんなドレス着ていたら、あんたが上の人間だって分かるじゃないか。
 で、上の人間ってのは、金を持っている代わりに悪事に手を染めているものなのさ」

「ずいぶんな言われ方ね。
 こんな美人を捕まえて」

「自分で言うか?それを。
 で、どうなんだい?」

「いいわ。
 あるものをトードに渡してあげるわ」

 私が了承すると、男は手に小さな木箱を持たせる。
 意外と重たい。 

「では、おまえさんに『あくとくのこうろ』を預けるとしよう。
 こいつはとても高価なものだ。
 売ったりなんかするなよ!」

 このイベントはカオスフレームが59以下で発生するイベントで、カオスフレームなんてのが見えない現状どのあたりに位置しているか判断できるありがたいイベントでもある。
 やっぱり、デネブを助けたのがカオスフレーム低下に繋がっていたか。
 ゼノビア戦が長丁場になりかねないからこのポグロムの森は最短で突破しないと。

「あ、ちょっと待った」

「ん?
 何だ?」

 実は、欠けている戦力のひとつに諜報系というのがある。
 つまりニンジャ。
 多分『あくとくのこうろ』だって、ろくでもない所からろくでもない輩から守っていたのだろう。
 という訳で、彼が戦えるのは既に分かっている。
 ならば、雇うにこした事はない。

「あんた今フリー?
 だったら、雇いたいんだけど?」

「ふーん。
 あんた個人でか?
 それとも反乱軍としてか?」

 合格。
 私のドレス姿という若干判定緩いとはいえ、ちゃんと私が反乱軍のエリーと分かって声をかけてきやがった。
 アンダーグラウンド側から見ると、我々反乱軍がどの程度それを許容するか知りたかったというあたりなんだろうなぁ。
 こっちも、ゼノビア戦でスラムを掌握する必要からアンダーグラウンドには手を入れておかないと。

「どっちでもいいわよ。
 お日様の上で歩ける身分も用意しようか?
 ぶっちゃけると、今が買い時なのよ。わたしら。
 ゼノビア落とした後だと、どうしても秩序再建しないといけないし」

 私のぶっちゃけに赤いローブの男は腹を抱えて笑い出す。

「こいつぁ愉快だ。
 それを分かって、俺達に声をかけたってか?」

「そうよ。
 今ならば反乱軍は人材が足りないからどうとでもなる。
 けど、ゼノビアを落としたら、日和見していた連中が雪崩れ込んでくるからあんたらに用意する席がない。
 そして、ゼノビア再建に伴って、闇はある程度潰さないといけない」

「俺達があんたを騙したり、あんたを操ったりするという可能性は考えた事はなかったのかい?」

 気配が変わる。
 こっちを見ているのはあいつとあいつ。
 三人か。

「やってもらってもいいんだけど、所詮私は反乱軍の上層部の一人でしかないのよ。
 好き勝手するとわたしごと切り捨てられるわよ」

「よく言うぜ。『流浪の姫君』。
 あんたが居なくなったら、誰にトラブルを持って行けばいいか分からなくなって反乱軍が瓦解するってもっぱらの噂なのに。
 あんたこそ、自分の価値を低く見積もっていないか?」

 なるほど。
 現状では私は高値をつけられている訳だ。
 そりゃ、トリスタンやラウニィーが加入していないからなぁ。

「それはお互い様という事で。
 で、あんたのお仲間は何人?
 100人までならば私の権限で助けてあげるわ」

 一つの大盗賊団規模の人員を救済するという私の言葉に、赤いローブの男が目を丸くする。
 思ったとおりだ。
 若くて、野心的で、それでいて仕事ができるか。
 おそらく仲間は30人も居ない。

「契約成立だ。
 よろしくな。姫様」

 実にいやらしい口調で恭しく手を差し出した彼にそのまま一枚の紙を手渡す。

「傭兵契約書。
 私の名前が書いてあるでしょ。
 それを使いなさい。
 あと、罪状はきちんと書いておくように。
 私の権限で減刑しておくから」

「殺人でもかい?」

「私達戦争しているのよ」

「違いない」

 彼は紙を懐にしまって私の手を握る。
 思った以上に強く握るから地味に手が痛い。

「コリってんだ。
 よろしく頼む。
 姫様」

「エリーでいいわ。
 ジドゥ。
 後の事お願い。
 朝までには戻るわ」

「お見通しって訳だ……」

 コリが私の声に上空を見ると、近くの倉庫上空に弓を構えたホークマンが。
 そして、空を飛んでいたワイアームがドラゴンを掴んで私の所にやってきたものだから、最初よろしく大騒ぎに。
 ワイアームのボイナの背に乗って、私は夜の空に飛び立つ。
 なお、当たり前だが、神聖都市セルジッペでもこの姿で大騒ぎとなった。
 味方が開放していたというのに……


「おや、そいつは『あくとくのこうろ』ですな。
 つまらないものですが、お礼として『セントールのぞう』を貴方様に差し上げましょう。
 今度会う時は、もっとマシなお礼を用意しますので、今回はこれでご容赦を」

 トードの屋敷は立派なくせに見事なまでにがらんどうとしていた。
 反乱軍が攻め込んできたので悪徳商売はここまでと見切りをつけたのはさすがである。
 とはいえ、トードもその護衛もワイアームがドラゴン掴んで夜半特攻するなんて考えていなかったらしく、更にそこから見るからに高そうなドレスを纏った女が降りてくるなんて思わなかったに違いない。

「いいわよ。
 頼まれ物だったし。
 貴方とは一度お話がしたかったので。トードさん」

「……反乱軍きっての才媛。
 『流浪の姫君』とお話ができるなんて光栄ですな」

 さすが悪徳商人。
 頭がはやい。
 ついでに揉み手をするあたりちゃんと商売であるという事を分かってやがる。

「で、あまり評判の良くない私どもにどんな御用で?」

「ゼノビアのスラムを買収したいの」

 その一言でぴんと来たらしい。
 悪徳に相応しい笑みを浮かべる。

「高くなりますよ」

「払えるだけのものは用意するけどね。
 とびきりのネタよ」

 互いに笑みを浮かべたまま。
 頭をフルに働かせて、舌戦を繰り広げる。
 ゼノビア攻略の為には、どうしてもスラムの掌握が必要になる。
 悪徳商人ならばそのスラムに顔が聞くだろうと思っていたが案の上か。

「反乱軍の赦免状では値段があいませぬな。
 我々は商人です。
 儲けがあるならば、何処にでも行くし、何処にでも去ってしまうので」

「ロシュフォル教会」

 ビンゴ!
 トードが固まった。
 各国に教会を持ち、その利害仲裁を担当していたロシュフォル教会の赦免状は絶大な影響力と信用を持つ。
 同時に、悪徳商人では絶対に持つ事ができないプラチナの信用でもある。

「ずっと悪徳で稼いでもいいけど、いずれ私達が勝つにせよ負けるにせよ悪徳で稼げる時代は終わりが来るわ。
 その時に、稼いだ金と共に歴史に悪名を刻むならばそれもまたいいけどね」

 けど、知っている。
 商人というのは、金を稼ぎきったら、今度は名誉に手をだすという事を。
 それは、恨みを買った彼らの防衛行動でもある。

「貴方がそれを用意できるというので?」

「まさか。
 あなたの言葉で返すならば、それぞ『値段が合わない』わよ。
 次期大神官候補の名前を囁くから、あとは貴方がなんとかすれば?
 私達はゼノビアで精一杯なので」

 トードが私をじっと見つめたまま押し黙る。
 商売上つけなければならない笑顔の仮面すら取っ払って、おそらくは人生最大の山場だと彼自身感じ取っているのだろう。
 何しろ、人の足元を見て商売をしてきた悪徳商人だ。
 こっちが、トードの足元を見て商売を持ちかけているのに気づいている。
 ゼノビアを攻略できたら、反乱軍は恐ろしい勢いで拡散するだろう。
 今が、今こそが最後の、そして最大の反乱軍への『買い』なのだと。

「私は、ここまで来るのに色々とあくどい事をしてきた。
 何人もの人間を地獄に送ってきたし、それ以上の人間に恨まれている。
 そんな私が、日のあたる空を歩いていいんですかねぇ……」

 諦めにもにた諦観の言葉。
 彼とて生きる為に必死だったのだ。
 金を稼ぎ、稼ぎ、稼ぎきった果てに何があるのか知っているだろう。

「それは私も同じよ。
 このドレスはこんなに綺麗でどんなに洗っても、ついた返り血で穢れているわ。
 それでも、許されてお日様の下を歩いていけるのよ。
 あなたの罪は、私が半分背負いましょう」

 ロシュフォル教会の新大神官にに許しをえるという政治的イベントを発生させれば、それ以上の表立った追及はまず回避できる。
 これを私が受ける事で、新生ゼノビア王国誕生時に色々な悪徳を持ち込まないという裏返しでもある。

「商人に生まれた以上、なってみたいものがあるのですよ。
 それになる為に、今までがんばってきたようもので」

「何?」

「御用商人」

 いつの間にか顔につけた笑顔の仮面の下から吐き出された言葉に私が吹き出す。
 さすが人の足元を見て商売をしてきた悪徳商人だ。
 しっかりとレートをあげてきやがった。
 全面協力の代わりに、それに見合う価値を出せと暗に言っているトードに、私は最大のカードを切り出す事にした。

「ゼノビアの王子トリスタン殿下が生きていらっしゃるそうよ……」



 四日目

「おー、いらっしゃる。いらっしゃる」

 再編した帝国軍は出せる兵力のほとんどをこったに振り向けてきたらしい。
 その数は1500。
 こっちはコリのニンジャ部隊30を足した250。
 各地に防衛部隊を配置しておかないと背後を襲われてなんて目も当てられないからだ。
 半分以上はゴーストとスケルトンで締めてクレリックが一人も居ないあたり、黄玉のカペラの人徳が分かろうというもの。
 開戦前は幾許かクレリックがいたらしいが脅されたり人質が居たりとかで、こちらと戦って潰走したのを機にのきなみ降伏していた。
 大神官フォーリス殺害はこんな所にまで響いているのだ。

「姫様。
 こっちに忍び込んでいたニンジャの排除は終わったぜ」

「こっちに寝返ってくれそうな人は?」

「もちろん誘って寝返らなかった連中のみ排除したさ」

「わかったわ。
 ニンジャ連中の掌握につとめて。
 ゼノビアでは最前線で戦ってもらうわよ」

「へいへい」

 ニンジャ姿のコリが不意に警戒すると、トードが城壁から敵軍を眺める私に近づく。
 コリの反応はトードつきのニンジャに対してだろう。
 トード本人は若干腰がひけているが、それはご愛嬌。 

「凄くおぞましい軍勢ですな。
 これに勝てるとおっしゃるので?」

 コリの仕事ぶりは見事の一言。
 トードも腹はくくったらしく、こっちに残る事に。
 だからこそ、この二人の忠誠を勝ち取るために、私の力を見せ付けないといけない。

「ご安心を。
 私も担がれた神輿としてこの場に立っている訳ではありませんので」

 息を吸い込んで、眼下に広がる亡者の群れを見つめる。
 死臭による吐き気も我慢して、亡者達への鎮魂を思いながら、私は、私ができる祈りを亡者達に捧げた。

「天駆ける星々の輝きよ、我が下に集いて汚れし大地を浄化せん!
 スターティアラ!!」

 半分以上居たスケルトンとゴーストが消滅した事によって、前衛を失った帝国軍は大混乱に陥った。
 残った連中もポチの突進によって指揮系統再編ができず、ジドゥ率いるホークマンとグリフォンに背後を襲われ、ビーストテイマーのフレディ指揮するオクトパス達に蹂躙されるのみ。
 そして、スターティアラを唱えた後の私を含めたクレリック達が回復魔法をかけ続けた事で寡兵にも関わらず包囲に成功。
 生き残った連中も降伏し、こうしてポグロムの森における戦いの体勢は決した。



 五日目

「どちらにいらっしゃるので?」

「わっ!
 き、貴様は……貴様は……」

「違うじゃないですか。
 ここは、『ポグロムの森をぬけてくるとはなかなかやるな。しかし、きさまたちはこれ以上進むことはできん。なぜならここで朽ち果てるからだ』
 ぐらい言ってくれないと……」

 ついていた護衛のデビルが鎌を構えるが、リーダーであるゴエティックのカペラが既に逃げ腰である。
 あ。
 ぽちがデビル一匹を壁に叩きつけた。
 うわ。グロい……

「化け物め!化け物め!!化け物め!!!
 私の研究が……
 偉大なラシュディ様からさずかった、わしの魔力が……」

 出撃した帝国軍が貿易都市バイアにて全滅した報告はあっという間に帝国軍本拠地ゴヤスに届いてしまい、生きている連中は我先にと逃げ出したのである。
 各地に散らばっていた部隊を集め貿易都市マラニオンにて集結させた反乱軍はその日の内にゴヤスに向けて進撃を開始。
 残ったスケルトンとゴーストがまたこちらより多いとはいえ、私のスターティアラやクレリック達のヒーリングで天にかえってゆくと後は総崩れだった。
 で、その総崩れの果てが本拠地ゴヤスから逃げ出そうとした目の前にいる黄玉のカペラである。

「来るな!
 来るなぁぁぁぁぁ!!!
 地に眠る醜悪な妖精よ、そのかぐわしき息吹を大地に放て!
 アシッドクラウド!!」

 しまった。

「待ちなさい!
 げほっ!げほっ!!」

 苦しい。
 流石に体が痛くて動けない。

「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「くぎゃゃゃゃ!!!」

 あ。
 怒りに任せてポチが二匹目を踏み潰した。
 ボイナが風を撒き散らして、私に絡みつくアシッドクラウドを吹き飛ばす。
 ヒーリングで体を癒した結果、カペラの逃亡を許してしまう。

「ちっ!
 追うわよ!!
 コリ!
 ついてきて!」

「承知!」

 しかしなんで悪党の逃走路ってのはみんな地下下水道なんだろうか。
 腐臭と汚水流れる下水道をさ迷う事しばらく。
 出口が見えたと同時に、カペラの悲鳴によってこの逃走劇の幕はおろされる。
 出口の汚水に浮かぶカペラと最後のデビルの死体。
 デビルは何か強靭な獣によって噛み殺され、カペラは神聖な力が宿った斧みたいなもので切り殺されていた。

「また見事な切り口で。
 追えば捕まえられると思いますがどうします?」

 コリが死体を検分しながら私に尋ねるが、私は首を横に振った。

「やめておきましょう。
 手柄を譲ってくれるっていうんだからありがたく頂きましょうか」

 コリが胡散臭そうな目で私を見つめるが、私は臭いで鼻をつまんでそれを受け流す。
 そのまましばらく時間がたち、コリが先に目をそらす。

「わかりましたよっと!
 けど、ちゃんと教えてくださいよ!
 相手の事」

「ああ。
 ただの馬鹿よ」

「馬鹿?」

 何でだろう。
 今の私はとても綺麗に笑っていられる自信がある。

「馬鹿よ。
 あまりに馬鹿すぎて反乱軍のリーダーなんてやってしまうぐらいのね」 
 

 
後書き
オリキャラメモ

 コリ ニンジャ

 名前の由来は狐狸から。
 悪徳取引相手からスカウト。
 現在エリーのaliは低めなのでこんな交渉ができるという訳で。
 そのくせ、chaはカンストしているのだろう。プリンセスだから。 
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