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【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)

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05 進撃 その一

 
前書き
持病の戦闘より戦闘準備や後始末が長くなる病が…… 

 
 大陸一美しい都といわれたゼノビアも、今ではただのスラムとなってしまっている。
 スラムには都に来ればなんとかなると考えていた家族を失い、住む家も奪われた貧しい人々が集まっているが現実はきびしくごらんの有様。
 とはいえ、それを維持できていたというのは二つの事実を浮かび上がらせる。
 一つは、このゼノビアの統治者であるクアス・デボネア将軍の手腕。
 生かさず殺さずで反乱を起こさせない程度に飼い殺しているのだろう。
 もう一つは、我々に対するカードとして。
 我々がゼノビアを開放した場合、彼らをどう食わせるかを考えないといけなくなる。
 スラムなんてものは、基本統治者にとってはマイナスにしか働かないのだ。
 その解消をする為にも、手は徹底的に打たないといけない。

「ポグロムの森を攻めます」

 反乱軍本営が置かれているジャンセニア湖のエルズルムは昼夜人の流れが絶えない。
 なお、シャロームは領主のギルバルドを仲間にした事で、このジャンセニア湖こそが反乱軍が直接支配する領地となる。
 その為、兵士志願者の登録や訓練、物資輸送などをここを基点に行っているからだ。
 領地を持つという事は、恒久的収入を得るという事でもあるので、反乱軍への資金提供だけでなく、地元商人などからの軍資金前借なんてのもできたり。
 それを利用して、全兵士の装備を整える事にしている。
 もっとも多いファイター連中にはバックラー、ショートソード、レザーハット、バトルブーツを支給。
 弓を使うアマゾネス隊はショートボウ、バックラー、レザーハット、バトルブーツを支給する事に。
 鎧をつけさせたいのだが、鎧となると高いのだ。
 また、自前で鎧などをつけている兵はそれを使用して良いと伝えていたり。

「どういう事か説明してもらえるのでしょうな?」

 バトルブーツで床に音を立てつつ、プレートアーマー姿で腰にバルダーソードをつけたランスロットが説明を求める。
 戦場ではこれにアイアンヘルムをつけて戦うのだが、彼はナイトという事もあって馬上戦闘ができるのだ。
 たしかに、タクティクスオウガでは馬に乗っていた騎士いたなぁと思い出して一人納得した覚えが。
 話がそれた。

「今度の戦いはゼノビアでの決戦です。
 ポグロムの森からアンデッドが後詰に来られると色々やっかいです。
 だから、別働隊がシャロームより出撃。
 ポグロムの森を突破して、ゴヤスにいる黄玉のカペラを潰しておきます。
 合流地点は、城塞都市バイロイト。
 攻勢はこの別働隊から始める予定です」

 二両面作戦になる為、部隊間連絡がキモとなるのだが、連絡を考えるとまず連携がとれない。
 だから、別働隊は徹底的に囮として振舞う必要がある。

「デボネア将軍が率いる軍勢の兵力はおよそ一万。
 カペラの率いる兵は三千ぐらいですが、その半分がアンデッドです。
 私が五百を率いて別働隊の指揮をとります」

 私の声にデスティンが口を開く。
 腰に吊るされたのはジャンセニア湖の領主天狼のシリウスの命を奪ったルーンアックスがぶら下がっている。

「危険じゃないのか?」

「囮だからね」

 私はウインクをしながら言葉を続けた。

「こっちがゼノビアを攻めた場合、デボネア将軍が出せる兵は五千という所でしょう。
 ゼノビアにも治安維持や守備の兵を置かないといけないでしょうから。
 私がポグロムの森で暴れた場合、デボネア将軍は後詰の兵を送らざるを得ないわ。
 その時に攻めれば大分楽になります」

「しかし、貴方が前におっしゃった黒騎士からの援軍はどうなる?」

 占星術師ウォーレンがシプレの杖で地図を指しながら、私が前に口にした黒騎士ガレスの事を尋ねるが、私は即答して見せた。

「来ませんよ。彼は」

「その根拠は?」

「この戦がゼノビアをめぐる戦いだからです。
 後詰として来るならば、ゼノビアでしょう。
 そして、そこはハイランド四天王の一人であるデボネア将軍が守っている。
 彼の武人としての誇りが後詰を求めないでしょうよ。
 それに、彼はゼノビアどころの話ではない案件を抱えている」

 私の言葉に、魔術師のローブをゆらしながらウォーレンが得心する。

「アヴァロン島のロシュフォル教会ですか」

 アヴァロン島はロシュフォル教の総本山という聖地の為、島民のほとんどが僧侶で、ゼノビア王朝時代だけでなく神聖ゼテギネア帝国時代でも中立を保っていた。
 それに業を煮やした帝国は黒騎士ガレスを総大将とした軍を派遣し制圧。
 いまでは帝国軍の支配下におかれている。
 ガレスは島の僧侶たちに対して帝国に従うように要求していまるが、神にのみ従う僧侶たちはガレスの要求を拒否。
 ここまでは分かっていたのだか、この反乱が悪い方に作用してしまう。
 ゼノビアまで迫る反乱軍の勢いに、ロシュフォル教の抵抗は激化。
 教会が帝国に従わないと知ると、大神官のフォーリスを捕らえ見せしめとして殺してしまったのである。
 これに激昂したアヴァロン島の住民は全島をあげての抵抗運動を繰り広げているのをこちらは掴んでいた。

「ロシュフォル教大神官フォーリス様の殺害は、政治的大失態よ。
 帝国軍の僧侶を中心に動揺が広がっているし、大神官の後釜も探さないといけないわ」

「帝国にそんなあてはあるのですかな?」

 ランスロットの呟きに、私は即座にその人物の名前を口にする。

「ノルン。
 神聖ゼテギネア帝国の法王だった人よ。
 今は政治的に失脚してディアスポラの監獄の主となっているはず」

 後々の話になるのだが、このロシュフォル教会弱体化は復興した新生ゼノビア王国の足かせとなる。
 大神官フォーリスの娘アイーシャが大神官となるのだが、力は大神官だとしても政治力においては小娘。
 そして、神聖ゼテギネアの代わりに全土を支配した新生ゼノビア王国は実質的な同君連合国家でしかなかった。
 かくして、戦火の復興と領内政治勢力の調停は新王トリスタンとその王妃ラウニィーの双肩にかかる事に。
 その果てに記された歴史は残酷だ。
 北方の大国ローディス教国の聖地奪回をはじめとした政治的摩擦の回避に失敗し、全面戦争の果てに新王トリスタン及び王妃ラウニィーも歴史の敗者として記される。
 ため息をついてなんとなくデスティンを含めた一同を見つめなおす。
 やるべき使命があったのだろう。
 やらねばならぬ正義があったのだろう。
 その果てが国家の積み木崩しならば、私達は何の為にこの反乱を起こしたのか。
 先の事を考えると、この一戦は本当に大切な戦いなのだ。
 新生ゼノビア王国の組織作りに、ロシュフォル教大神官としてノルンは絶対に必要な駒だ。
 ノルンの下にアイーシャをつけて、次期大神官教育を施し彼女に政治を学んでもらわないといけない。
 その為にも彼女の思い人であるデボネア将軍は絶対に殺してはならない。

「話がそれたわね。
 という訳で、黒騎士ガレスはこっちに来ないわ。
 そうね。
 一週間。
 一週間たったらゼノビアを攻撃してちょうだい。
 それまでは、ポグロムの森を抜けて城塞都市バイロイトまで進んでおくから」

 会議は終わりとばかりに椅子にもたれかかった私にデスティンが私に声をかけた。

「で、その一週間っていつから?」

 気だるそうに椅子に体を預けたまま、私は軽く手をふってその時を伝える。

「今、この瞬間からよ」



 二日目 

「全軍進撃!
 さぁ、ポグロムの森を一気に抜けるわよ!!!」

 反乱軍本拠地マトグロッソにて私の叫びに、歓声があがる。
 この地の住民は隣接するシャロームの姿を見ているので、早くから寝返りと根拠地の提供を打診していた。
 で、その交渉担当が私である。
 そこ。マッチポンプっていわない。
 なお、同じくシャローム隣接する貿易都市ロライマと自由都市アラゴアスもこっちに寝返った報告が。
 そりゃそうだ。
 そもそもポグロムの森は、ゼノビア城が陥落した晩に僅かに生き残った人々が森の中に逃げ込んだ逃亡先でしかなかった。
 が、ゼノビアを裏切ったアプローズ男爵率いる帝国軍に包囲され、降伏を選んだ人々に対してアプローズ男爵は森に火を掛け人々の命と共に焼き尽くしたのである。
 一夜にして燃え尽きた広大な森は25年の時を経て甦ったが、虐殺された人々の魂は、成仏できずに亡霊となって森をさまよい、森に入った生者を仲間にしようとするという過去を持つ。
 で、この地を支配するカペラは数年間に渡って、魔導師ラシュディの下で修行を積んだというラシュディの弟子の一人で、虐殺の後にポグロムの森にさまよう多くの亡霊を悪魔に捧げ、強大な魔力を得たという。
 案外、彼も一枚この虐殺に噛んでいたのではないとか疑っていたり。
 という訳で、そんな彼に統治なんてものを考えている訳も無く。
 その力による恐怖でこの地を押さえつけていたのだ。
 で、マトグロッソ、ロライマ、アラゴアスなどの諸都市は彼の力が通用しない所をまざまざと見せられている。
 仕込みはばっちり。

「エリー。
 部隊の準備は整っているわよ」

「こっちもだ。
 姫さん。
 あんたの指揮に皆従うようにばっちりとしつけているからな」

 私に与えられた戦力500の内訳はこうだ。

 ファイター及びアマゾネス隊300。
 クレリック隊50。
 ウィッチ・パンプキン隊50。
 アーチャー隊50。
 ホークマン隊30。
 ビーストテイマー隊20。
 オクトパス三匹。
 グリフォン三羽。
 ワイアーム一匹。
 ドラゴン(ぽち)一匹。

 なお、ロライマ、アラゴアスにはシャローム守備隊のギルバルドの隊から守備兵を出してもらえるように事前調整済。
 ここで説明しておかないといけないのがアーチャー隊で、弓の上手いアマゾネスがクラスチェンジしたのである。
 まぁ、シャローム防衛戦は基本弓戦だったからなぁ。

「エリー。
 そろそろ会議を始めましょ」
「そうよ。
 六日でここを突破するって大見得きったんだから、できなかったらおしおきよ。おしおき」
「まぁ、ここを六日で突破てどうする気なんだ?
 姫さん……」

 前からのつきあいだった、ヴァルキリーのスザンナ、ウィッチのオデット、ビーストテイマーのフレディは当然この場所にいる。 
 そして、部隊が増えたので新顔もこの場に居たり。

「クレリック隊をまとめる、エリナです。
 よろしくお願いします」

 凛々しい顔つきでロシュフォル教の祈りを捧げて挨拶するのがクレリック隊をまとめる事になったエリナ。
 アマゾネスに志願して、シャローム防衛戦で手当てなどをしていたら啓示を受けてクレリックになったという経歴を持つ。
 その為か、クレリックの力も強く、他のクレリックからも一目置かれていたのでまとめ役として抜擢したという次第。

「ヴェルディナ。
 アーチャー隊をまとめさせてもらっているわ。
 よろしく」

 ショートボブでロングボウを肩にかけた女性が挨拶と共に一礼する。
 彼女もまたシャローム防衛戦にてクラスチェンジしたアマゾネスで、面白いように相手の飛行ユニットを叩き落した事でみんなから一目置かれる事に。
 という訳で、新顔ではあるが彼女たちもまた私の戦友だったりする。
 で、残るのは完全新顔である。

「ホークマン隊を率いるジドゥだ。
 よろしく頼む」

 ホークマン達は人間と共存しているが多くは山奥などで独自の集落を持っている事が多い。
 そんな一族の英雄が、風使いカノープスことカノープス・ウォルフである。
 彼の反乱軍参加によって、辺境部のホークマンが反乱軍側に回ったのが大きく、こうしてホークマン達がこちらに配備できるほどに。

「さてと。
 方針を伝えるわよ。
 まずは、侵攻ルートだけど、ポグロムの森は迂回します」


「「「「「ですよねー」」」」」


 ハモるな。安堵するな。手を叩くな。
 まぁ、気持ちは私も同じだか。
 どういう事かというと、元々帝国軍根拠地ゴヤスとここマトグロッソはポグロムの森を通る街道が繋がっていたのだ。
 それが、25年前の虐殺でポグロムの森が怨霊漂う場所になったので、南側の山地沿いに迂回路が作られたという訳。
 ロライマ、アラゴアスはその迂回路によって栄えた街だったりするから、人というのは逞しいというのか。

「マトグロッソ手前のロシュフォル教会に防衛線を引きます。
 指揮はオデットにお願いするわ。
 教会の中ではしないでよね」

「えー」

 露骨にいやそうな顔をするオデット。
 やっぱりかよ。

「クレリック隊、アーチャー隊もここに配置します。
 オデットの指揮に従うように」

「わかりました」
「了解」

 作戦は簡単。
 ロシュフォル教会まで敵軍を引き付けて、リーダーのみ叩く。
 その為の囮であるパンプキンヘッドであり、アーチャーである。

「ホークマン隊にはグリフォンも預けます。
 まずは、ファイター及びアマゾネス隊とクレリック隊から100人を選抜して、貿易都市ロライマと自由都市アラゴアスの防衛に回すわ。
 それが終わったらこっちに戻ってきてちょうだい。
 防衛指揮はスザンナに任せる。
 少数だと思うから敵を撃退するだけでいいわ」

「わかった」
「了解っと」

 そして、私は窓の外から見える一隻の船を見つめる。

「残りは私が率いて一気にゴヤスを目指します」


 三日目

 戦いそのものは、ほぼこちらの想定した通りに進んだ。
 朝方、ロシュフォル教会手前で罠を張っていたこちらに帝国軍のアンデット部隊が殺到。
 パンプキンヘッド50体が犠牲になった代わりに、ウィッチの魔法とアーチャーのスナイプによって指揮官ユニットを多数失い潰走。
 自由都市アラゴアスの防衛も敵が少数だった事もあり撃退の報告が届いていた。

「しかし便利よねー。
 これ」

「姫さん。
 ……こんな発想を生み出したあんた何者だ?」

 私が居るのは洋上。
 貿易都市ミナスシェライスを出た所で、私の手にはミナスシェライスで得たしんぴのメイスが握られていたり。
 風が気持ちいいが、この船にはその風を受ける帆がない。
 オクトパス三匹によって引っ張らせているのだ。
 帆を無くして、船首から船尾にかけて一枚板を張り凹凸を無くす。
 それによって、ワイアームやグリフォンなどの大型飛行ユニットの運用が可能になったのだ。
 そう。発想の元は空母である。
 だが、その破壊力は強烈だった。
 敵は洋上に出た私達を補足しておらず、主力は潰走中。
 ミナスシェライス陥落の報告は届くだろうから、貿易都市バイアあたりに防衛線を引くのだろうがそれでは遅すぎる。
 航空ユニットの凶悪すぎる移動力を敵は理解していなかった。
 アラゴアスに部隊を送り届けたホークマン隊とグリフォンが次々と船におりて翼を休める。

「休ませたら、神聖都市セルジッペに部隊を送り出して頂戴。
 私は、先行してバイアの方に行っておくから。
 じゃあ行きましょうか。
 ぽち。ボイナ」

 ワイアームのボイナの背に乗り、ボイナのかき爪がしっかりとぽちを掴んで空に上がる。
 ドラゴンとワイアームで組ませるとおおぞらタイプになったから、いけるかなと思ったがこうやっていたのか。納得。
 こうして、その日のほぼ同時刻に神聖都市セルジッペと貿易都市バイアは反乱軍の手に落ちた。 
 

 
後書き
オリキャラメモ

エリナ クレリック
 アマゾネスに志願して、シャローム防衛戦で手当てなどをしていたら啓示を受けてクレリックになったという経歴を持つ。
 その為か、クレリックの力も強く、他のクレリックからも一目置かれていたのでまとめ役として抜擢。

ヴェルディナ アーチャー
 彼女もまたシャローム防衛戦にてクラスチェンジしたアマゾネスで、面白いように相手の飛行ユニットを叩き落した事でみんなから一目置かれる事に。
 なお、アーチャー職はタクティクスオウガより登場。

ジドゥ
 風使いカノープスことカノープス・ウォルフの反乱軍参加によって、辺境部のホークマンが反乱軍側に回る。
 そんな彼に憧れて参加したホークマンの一人。 
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