もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
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龍神演義・其ノ八
前書き
最近思い切って完全版封神演義(古本屋で1~6まで)買ってみたらクソ重くて肩がちぎれるかと思った。
昔全巻読んだけど、改めて読むとやっぱり面白いね。
フェイトは時々疑問に思う。自分の義理の兄になったこの男は何者なんだろうかと。
リンカーコアは持っていない。親がいるとか家族がいるとか友達がいるとかそういった話も聞いたことがない。おまけに名前も借り物で向かう場所も帰る場所も特になし。ちょくちょく暇つぶしにフェイトと遊んでくれる以外は自室だという超大型ロストロギアに引きこもっており、そのロストロギアもどこで手に入れ何故使いこなせているのか知らないという。
戸籍、家族親族、誕生日、出身地、記憶、交友関係、目的、社会的立場、その他諸々が一切なし。テスタロッサ家になったのだっていわば無い無い尽くしの彼に設定を付け加えたに過ぎない。
そしてそれだけ何もないにも拘らず、彼は毎日に何も不自由を感じていない。不安もあまりなさそうだしどうやら学も外見年齢以上にあるようだし、とにかく彼はお気楽だ。
「自分の記憶がないのに不安にならないの?」
「いや別に?」
偶に質問してみればこれである。基本的に彼は二つ返事で明確な答えを返す。何の気負いも感じられない気軽な回答を返されてはフェイトも黙るしかない。
自分の過去に興味がないのだろうか。自分は何者なのかという不安は覚えないのだろうか。ひょっとしたら彼だって自分と似たような人造生命体かもしれない(実際彼は時々不思議な力を使っている)。探せば家族がいるかもしれない。そう言った希望も何もかも含めて、それでも彼は気にしていない。
私はそれを知った時、「光龍(当時はまだそう名乗っていた)は凄く強いな」と素直に思った。
自分なんていつもくよくよ悩んで母さんの顔色ばかり窺って、分からない事や知らないことに不安いっぱいで過ごしてきたのに。不安が抑えきれない時はアルフに頼って、自分だけで出来ない事もアルフに助けてもらって、いつも一人じゃ心細くて誰かに何かに縋りついて生きていた。
でも彼は何にも縋らないし頼っていない。彼はそんなことをいちいち気にしないのだ。何というか、器が大きいというのだろうか?
それをリニスに話したら、彼女はこう言った。
「確かに誰にも頼らず一人で生きていくのは生半可な事ではありません。ですが、それが必ずしも恵まれた事とは限らないのですよ、フェイト」
「・・・?」
強い事が良くないとはいったいどういう事だろう、とフェイトは首を傾げた。一人で出来るのとできないのなら、出来る方がいいと考えるのが普通だ。例えば唯の缶切りとビンの蓋をあける機能も付いた缶切り、形も値段も似たようなモノなら普通の人は後者を選ぶ。だってビンのふたを開ける道具を買わなくて済むし、そうすれば道具がかさばって邪魔になりにくくなる。いいこと尽くめではないか。
「本当にそうですか?確かにその方が不便は少ないでしょうが、誰にも頼らないというのは逆を言えば誰の存在も必要としないという事です」
「必要にしない?」
「ええ、例えばフェイトが何でもできる子ならばアルフは要らない子になるし、何でも自分で決められるならプレシアもいらない、魔導師として完成してれば教師の私も要らなくなります・・・どうです?そうなればフェイトは強くなっても独りぼっちです」
「そんな・・・そんなことないよ!アルフもお母さんもリニスもいらない人じゃないもん!!」
要らないなんてそんな筈はない。皆大事な家族だし、皆と一緒にいると楽しいじゃないか。そう言おうとしてふとフェイトは気付いた。
――そうか、寂しさを感じなければ皆がいないことを辛いとも”思えなくなる”のか。
「ふふ・・・あくまでたとえ話ですよ。でも考えてみてください、彼はこの『時の庭園』が応龍の角に挟まらなければ今頃私達にも出会わずにずっと次元のどこかを独りでフラフラしていたでしょう」
「・・・・・・」
「10歳前後の子供です。普通は親がいて友達がいて、学校ではしゃいでいるのが彼のあるべき姿です。独りぼっちは不安に感じる、それが当たり前です」
まぁこれはフェイトにも言えますが、と茶化したリニスはふとその表情に影を落とした。
それは彼女の底抜けの優しさと良心、そして母性が何よりもそう思わせる考え。
「辛い日々を過ごすのは不幸な事です。でも、辛い事を辛いと思えないのはもっと不幸なことだと私は思います」
それは本人がどう感じているとかではなく、他人から見てその姿が痛ましいのだ。劣悪な環境を当然として受け止める難民や貧民が異常に思えるように、”持つ者”にとって”持たない者”の姿はとても悲しく哀れに映る。そういう意味で、シャインの強さはリニスには良い事と思えなかったのだろう。
だから、フェイトは今日もシャインの後ろをついていく。
強い彼が、不幸せにならないように。彼の不幸を無くすために。
何より、自分の家族とずっと一緒に過ごしたいから。
「何所までついてくるんだよフェイト・・・」
「どこまでも、かな?」
「・・・せめて風呂とトイレと布団にはついてくんなよ」
「え?お風呂とトイレって同じところにある物じゃないの?」
「日本では違うんだよ日本では」
だから、今日もシャインは不幸ではありません。
~
さて、今までダラダラしていた分久しぶりにちょっとは働こう。と一念発起した俺は久しぶりに応龍コンピュータールームに籠っている。途中からはフェイトとプレシアも見に来て微妙に落ち着かない。親に宿題してるか見張られる子供の気分ってやつか。
それにしても町に飛ばした式神的な札たちは今の今まできっちり情報を集めてくれていたようで俺がやることはそれほど多くないんだが。お前らスゲェ仕事できるな。きっと前任者も怠け者だったに違いない。
「ふぅむ、状況が動いてるなぁ・・・」
「シャイン、状況って何が?」
「ジュエルシードの回収事情さ・・・ほれ、今はこんな感じ」
ぱらら、と紙をめくるような軽快な音と共にモニターが表示される。そこにはデフォルメされた3人の子供と次元航行艦を簡略化したような絵があり、隣に「シード保持数」と書かれている。
高町なのは・・・シード保持数 5
凰苗 ・・・シード保持数 1
高町黒衣 ・・・シード保持数 6
管理局 ・・・シード保持数 6
未回収 ・・・ 3
・・・うん、真ん中の二人誰だ。しかも苗という奴は自分の所有している剣が勝手にシードの力を取り込んだみたいでとっくに回収不能のようだ。クロエという子供は絶対原作に居なかったよね。幾ら原作見てない俺でも高町家の家族構成位は覚えてるよ?
転生者・・・なんだろうか。画面越しに見た感じでは苗の方は可能性が大いにある。クロエの方はちょっと微妙。そもそも転生者が何人いるかなんて知らねーし?そもそもクロエ率いる小学生軍団の中に知った顔が20人ほどいたし?ちょっと分からないところだ。
っていうかおい沖浦少年。お前確かメガテンⅢのドラマCDに出て来たやつだよな?てめーの存在に気付いて慌ててミロク経典がないか探しまくったわ。・・・結論から言うとガイア教は無かったし氷室もいなかったから良かったけど。あったら世界滅んでたところだぞ・・・
「後は残り三つのジュエルシードが回収されて、管理局が残り3人を説得できれば無事解決ってわけね」
「船を襲撃しちゃったけどバレなきゃ問題ないよね!」
「おうともさ!世の中バレなかったもの勝ちよ!」
HAHAHAHAHAHAHA!!!と3人で笑い飛ばせる程度に悪くない状況だ。苗って子はひょっとしたら最後まで存在がばれないかもしれないが・・・まぁ面倒事になったら無限力の応用で彼女が取り込んだ分・・・シリアル16を複製して目のつくところに転がしてやればいい。俺が働かなくてもチートが勝手に仕事してくれるとかマジ楽だわ。
原作に大胆介入しつつもこれだけ平和とは・・・素晴らしきかなこの世界。
俺達、この一件が落ち着いたらミッドに旅行に行くんだ・・・ぶっちゃけた話、アリシアと夫さんの墓前に手を合わせに行くんだけど。無限力の中にいるとはいえ、その辺はやはりきっちりした形で締めておきたいそうだ。
ついでに墓前で新しい家族の紹介をすると言われれば、流石の俺も断れない。
いやぁ、何か独りじゃないっていいね。この温もりが願わくばずっと続きますように・・・
おまけ
「それで・・・結局何で君たちはスクライア一族が嫌いなんだい?」
そのクロノの一言にクルト、ニルス、マリアンの3人が露骨に嫌そうな顔をして同時に黙る。・・・そんなにいやなことがあったのか。やがてニルスがぽつぽつと概要を語りだした。
「その、ね?僕たち一度スクライア一族の物品保管倉庫を調査させられたことがあるんだけど・・・」
「だけど?」
「スクライア一族って大人から子供まで皆研究者肌でさぁ・・・人並み以上に好奇心旺盛なんだよ」
「はぁ・・・まぁそうでなければ有名になってないだろうな。それで?」
「そんな連中が研究対象であるロストロギアおよびその他の発掘物を目の前に何もしないだろうかねぇ?」
「・・・まさか」
「そう・・・!彼らは管理局に報告していないロストロギア及び発掘品をそれはもう沢山保管してたんだよ・・・!!自分の研究用だったり観賞用だったりで本当に多岐にわたっていたよ。中には「発掘や解析の役に立つから」ってそのまま現場で使われてる聖遺物まであってね!?僕はもう何が何だかわからなくて責任者の頭をはたき倒してしまったよ!!」
目の前に研究対象があるならば研究するしかない!と言わんばかりにスクライア一族はロストロギアを調べ尽くして調べ終わったものの多くを自分たちの倉にため込んでいたのだ。簡単に言えば横領みたいなものである。その数と研究対象の調べ上げたるや、ロギア管理課の連中に見せたら余りのち密さに感涙するであろう完成度だった。
血反吐を吐き出すように一気に言い切ったニルスはそのままがっくりと肩を落として動かなくなった。入れ替わる様にクルトが会話を続ける。
「前任の監査官には賄賂を握らせてたみたいだ。ニルスに懐いたスクライアの子供が大方全部喋ってくれたよ・・・あいつら10代から子供に仕事をやらせててな。危機管理も機密保持も無かったよ」
「そ、それはまた・・・何でそれまで発覚しなかったんだい?」
「あー、今までロストロギアの受け渡しは完全な義務じゃなくてな・・・チェックも甘かったことと前任者が悉く天下り組だったことも相まって発覚しなかったそうだ」
「本当に研究以外には頭が回らないのよね。内情を喋った子どもと責任者の危機感がどっこいどっこいだったし」
ふぅー、と深いため息をつくマリアンもどこか遠い目をしており、クルトに至っては目頭を押さえている。
そんなザルすぎる管理体制が最近引き渡しを請負契約とするよう契約内容が変更されて、3人がその確認も兼ねて調査に行ったら・・・そうなっていた。中には触れた相手を洗脳する類のロストロギアや持ち主の生命力を吸い取るロストロギアなど危険極まりないものもごろごろ存在し、3人は余りの契約履行の杜撰さに呆然としたという。
「完全な義務じゃないからスクライアに罰則はなかったが、賄賂を受け取った側はもれなく首をきられたよ。ついでに事件を報告した俺達が危機管理体制を整えることになる始末・・・分かるかクロノ!丸々1か月近く連中にあーでもないこーでもないと延々教え続けた俺達の苦労が分かるか!!俺達はガキの引率じゃねぇんだぞ!!」
「スクライアの常識や倫理はミッドのそれとはずれてるから余計に大変だったわ・・・何が楽しくて子供が3,40代の人間に常識を教えなきゃいけないのかしら・・・」
「大体ねぇ、重要度の高い荷物は必ず4人以上の人員で行う事ってきっちり教えたのに今回の事件での見張りが1人!?1人ってどういうことなの!?」
「そんなこと僕に言われても・・・」
彼らの愚痴はその後1時間続いた・・・
後書き
光龍改めシャインの物語ももう既にあまりやること残って無かったり。後はアレしてコレしてそうなれば終わりだねぇ。
由良君がいる世界も大概ヤバい事は誰も気づいていなかったりするのでそのうち新宿になんか降って来るかも。オガーザーン!!
そして実は今まで感想で「更新頑張って」というコメを受け取ったことがあるのですがここでぶっちゃけます。
私はこの「もしもチート」シリーズで頑張ったことは一度もありません。マジで気分で書いてます。この作品は8割の気分と1割ずつの構想と思いつきで出来ているのです。なのであまりクオリティが低くなり過ぎないように、という部分以外は何の気負いもなく書き進めています。よーしパパ頑張らない事を頑張っちゃうぞー!
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