とある星の力を使いし者
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第82話
竜也達と別れた麻生は街を適当に歩いていた。
秋葉は麻生なりの予定があるのだ、と言っていたが麻生自身そんな予定など全くない。
上条達が追っている魔術師を捕まえるのも今は手伝う気はない。
なので、今はぶらぶらしている。
これからどうするかを考えながら歩いていると、美琴と白井とインデックスという珍しい組み合わせがこちらに向かって歩いていた。
麻生自身は無視して行こうとしたが、白井が麻生の姿を捉えるとこちらにやってきた。
「あら、麻生さん。
お久しぶりですわね。」
「まぁ、久しぶりだな。
早速質問だが、お前は何で車椅子に座っているんだ?」
「あら?知りませんでしたの?」
「俺が常盤台に一時編入した時には入院しているというのは聞いたが、理由はさっぱりだ。」
今の白井は、一般の車椅子とは違いスポーツ用の車椅子に座っていた。
「前に風紀委員の仕事で少し強力な能力者と戦っただけですの。」
白井と話をしていると、美琴とインデックスも麻生が居る事に気づき、近づいてきた。
「それともう一つ。
どうしてインデックスがお前達と一緒にいるんだ?」
「ああ、それね。
あの馬鹿が馬鹿な事をしたのが始まりよ。」
あの馬鹿とはおそらく上条の事だろう。
魔術師を追わなければならないのに何をやっているんだ、と麻生は呆れる。
どうやら、上条がインデックスのお腹にほっぺたを当てていたらしい。
さらには、インデックスが着ているチアガールのスカートを奪うという、事もしでかしたらしい。
白井と美琴はとりあえず制裁を加えようとしたが、上条が逃げ出してしまい、とりあえずインデックスの破れたスカートを補修する為に一緒にいるという訳だ。
インデックスも話を聞いてその場面を思い出したのか、顔を赤くする。
「そうそう、ちょうどいいわ。
アンタ、この子の面倒を見てあげて欲しんだけど。」
「は?
何で俺なんだ?」
「私はこれから母さんを探して、競技時間が変更になった事を伝えないといけないの。
それにこの子は関係ないでしょ。
だから、あの馬鹿と同じクラスなのだからアンタが面倒見た方が良いでしょ。」
「わたくしはそのお供をしますので。」
さて、面倒な事になってきた、と麻生は思った。
そしてこの答えに行きついた。
「インデックス、次に当麻が出場する協議と時間と場所は分かるな?」
「うん、全部覚えてるよ。」
「よし、それなら・・・・」
そのまま麻生は回れ右をすると。
「後は自分で何とかできるだろう。
じゃあな。」
そのまま来た道をダッシュで走り抜ける。
麻生が出した答えは簡単。
逃げるという事だ。
「ちょっと待ちなさいよ!!
本当に置いていくなああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
後ろから電撃が飛んでくるがそれを能力で防ぎつつ、麻生はその場から逃げるのだった。
どうやら逃げ切れたようだ。
麻生は念には念をと裏路地などを通った。
追手が来ていない事を確認して、足を止めてため息を吐いた。
そして、携帯電話で今の時間を確認するともう一度麻生はため息を吐いた。
次に出場する協議が始まる時間が迫っていた。
今の位置を携帯のGPSを使って確かめる。
(この位置だと、裏路地を使わないと間に合わないな。)
三回目のため息を吐いて、止めた足を動かす。
さぼってもいいのだが、竜也達が来ていて制理もいるこの状況でさぼると後々面倒な事になる。
裏路地を走っていると、突然麻生は足を止めた。
(この匂い・・・・血か。)
裏路地を走っている麻生の鼻が血の匂いを感じ取ったのだ。
此処は裏路地。
不良達が喧嘩した影響で血の匂いがするのかもしれない。
だが、麻生の鼻で感じ取った血の匂いは不良達が喧嘩で流す血の匂いとは比べ物にならないくらい強烈だった。
その匂いが気になったのか、匂いのする所に向かう。
麻生のいた位置から少し歩いた所に、人混みが出来ていた。
その人混みに近づき人と人の間を通り抜けていく。
狭い路地だった。
暗い裏路地が、より一層暗い赤色によって染め上げられている。
そこには小萌先生と上条とステイル、そして血で染められた地面に黒い髪を浸している姫神秋沙。
顔から手足の先までが、真っ青に色が抜けてしまっている。
体操服の上半身の部分がズタズタに破られていた。
その上から包帯が巻きつけられていた。
鎖骨の辺りから、おへその少し上まで・・・ほとんど全部だ。
麻生は医学の知識も持っているので、その包帯の巻き方は完璧に仕上がっているのが分かった。
だが、そこからにじみ出る液体で包帯は真っ赤に色を変えていた。
血だまりの中に、ゆで卵の殻剥きに失敗したような、皮膚の張り付いた小さな肉片が沈んでいた。
姫神は動かない。
だが、浅い呼吸音が聞こえるのでまだ死んではいない。
麻生は目の前にいる生徒達の事など考えず、そのまま押し退けるように前に進む。
その一人の男子生徒が、麻生の行動にいらついたのか麻生の肩を掴んでくる。
「おい、何か一言くらい言えないのかよ。」
そのまま男子生徒の方に振り向く。
「ひっ・・・・」
麻生眼を見た瞬間、声をあげた。
その眼は冷たく、そして怒りのような感情が含まれていた。
男子生徒はそのまま手を離す。
「麻生ちゃん?」
小萌先生の声に上条とステイルが人混みの方に眼を向ける。
「恭介、何でお前が此処に・・・」
「そんな事は後だ。
それよりお前達は耳を塞げ。」
「え?」
「いいから、さっさとしろ。」
麻生に言われ、ステイルと上条と小萌先生は言われた通り耳を塞ぐ。
そのまま麻生は人混みの方に振り向いて、指を鳴らした。
瞬間、キーンという音が鳴り響く。
その音を聞いた生徒達はピタリ、と動きを止める。
「今すぐこの場から去れ。
そして、この事は忘れろ。」
その言葉に従うように人混みはぞろぞろと解散していく。
「何をしたんだい?」
奇妙な光景を見たステイルは眉をひそめて麻生に聞く。
「音を触媒にして、あいつらの脳に接触した。
俺が命令すればその通りに動いてくれる。
姫神には効かないようにある一定上怪我をしている人には通用しないように設定した。」
そして、麻生は小萌先生に近づく。
小萌先生のほっぺたも、チア衣装のタンクトップやミニスカートも、こすり付けたような赤黒い血で染まっている。
「何でですか。
さっきまで姫神ちゃんと話をしていたのですよ。
麻生ちゃんや上条ちゃんとナイトパレードを回りたいって。
色々予定を建てていたのに、それなのにどうしてなのですか。」
小萌先生の独り言を聞いて麻生はピクリと反応する。
しかし、顔には出さずに小萌先生に言った。
「先生、救急車には連絡しましたか?」
「はい、ちゃんとしたのです。」
「なら、この路地から出て入り口で救急隊員の人を迎えに行ってください。
この位置だと分からない可能性があります。」
「姫神ちゃんはどうするのですか?
このまま放っておくのですか?」
麻生は一度だけ地面に倒れている姫神を見る。
「秋沙の怪我は俺が治します。
だから、先生は一刻も早く救急隊員を連れてきてください。
さっきは治すと言いましたが完璧に出来るかどうか分かりませんから。」
「・・・・・・・分かったです。
麻生ちゃん、姫神ちゃんを助けてあげて下さい。」
涙を流しながら小萌先生は走って裏路地を出て行く。
そして、麻生は血の海の中で倒れている、姫神秋沙に近づき、しゃがみ込む。
左手を姫神の額の上に乗せて目を閉じた。
(まずは、痛んだ細胞を再生、修復。)
麻生の脳裏には姫神の体内が見える。
細胞や血管、神経など細かく見える。
傷ついた血管や重要な神経なども治していく。
最後には身体についている傷を治して眼を開けた。
先程と違い、聞き取りずらかった呼吸だが、今ははっきりと聞こえる。
「傷は治した。
失った血も増幅させたから命に別状はない。
後は病院の医者に任せれば問題ないだろうな。」
そう告げて、麻生はその場から去ろうとする。
それを上条が肩を掴んで止めた。
「何だ?」
「お前はこれを見て何とも思わないのかよ!」
二人のやり取りをステイルは黙って見ている。
「何がだ?」
「姫神はこのくだらない騒動に巻き込まれたんだぞ!
お前のおかげで怪我は治った。
けど、それでおしまいって訳じゃねぇだろ!
「使徒十字」が発動すれば、この姫神の怪我もローマ正教の都合の良いように改変されるんだぞ!!」
上条は麻生に向かって叫ぶ。
麻生は自分の肩を掴んでいる上条の手の上に自分の右手を乗せる。
瞬間、上条の身体は空中で一回転して地面に叩きつけられる。
その衝撃で上条のポケットから携帯が飛び出して、地面に転がる。
「いいか、もし秋沙が死んでしまったのなら俺は何が何でもオリアナを殺す。
そのリドヴィアって奴も殺すし、「使徒十字」も破壊する。
だが、秋沙は生きている。
それで充分だろ。」
地面に倒れている上条を見下ろして麻生は言った。
そして、前と同じように上条達に背を向ける。
「お前は・・・それでいいのかよ。」
上条は地面から起き上がりながらも麻生に言う。
「姫神は俺達とナイトパレードに行きたいって小萌先生が言っていた。
楽しみしてたんだぞ。
それを「使徒十字」なんかっていうモンに邪魔されたんだぞ。
お前は何とも思わないのかよ。」
それを聞いた麻生は足を止める。
足元に落ちている上条の携帯を掴むと、そのまま上条に投げ渡す。
「俺は俺の為に戦う。
ただ・・・それだけだ。」
そう告げて麻生は裏路地を出て行った。
後書き
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