ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
五十三話:十年目の出会い
突然ですが、十年経ちました。
色々あった十年も、過ぎてしまえばあっという間でした!
色々な部分を簡単に言うと、労働環境面では、徐々に信者の人間が送り込まれてくるも、人間ぽいヤツら(魔物)よりも上のポジションに置かれたので、作業の指示はその人間の方々が出してくれるようになって、私が楽できるようになったこと。
作業の現場は相変わらず馬鹿可愛い魔物たちが牛耳ってるので、演出された苛酷な労働環境も相変わらずです。
たまに魔物も新入りが来ますが、これも相変わらずの馬鹿っぷりで。
早々に私に引き合わされて、傘下に引き入れることで事なきを得てます。
私は合体魔法を無事に修得して、各種便利魔法もきっちり覚えて。
労働で体も鍛えられたし、そこそこ強くなったヘンリーとの打ち合いで、技術もそれなりに上達したし。
旅立つ準備は、万端です!
そして、今日!
とうとう、待望のマリアさんが、奴隷に落とされてやってきました!
「ヘンリー!マリアさんだよ!マリアさんが、来たよ!」
「そうだな」
何、その気の無い返事は!
君の運命の出会いが、訪れたというのに!
この日のために、いつ婿に出しても恥ずかしく無いように、鍛え上げてきたというのに!!
……まあ、会っても無いのに好きも嫌いも、みたいなこと言ってたし。
これから、これから!
「とにかく、彼女と関わらないことには、脱出もできないんだから。行くよ!面識を作りに!」
「おう」
というわけで、ヘンリーを引き連れて、マリアさんの元に向かいます。
例によって例のごとく、世話好きなおばちゃんが近くでお世話してるのに、軽くご挨拶して。
「あら、ドーラちゃんに、ヘンリーくん。ちょっと聞いとくれよ、このマリアちゃんは、教団の信者だったのに。お皿を割ったくらいのことで、奴隷にされちまったんだよ」
知ってるけど、知ってたら不自然な情報のご提供、ありがとうございます!
「そうなんですか。私たちは、訳もわからないまま、奴隷にされてしまいましたけど。信者まで奴隷に落としてしまうとは、酷い話ですね」
私が落としてしまってはいけないので、当たり障り無い感じに気遣いながら、マリアさんを観察します。
うん、やっぱりマリアさんも、かなりの美女ですね!
ビアンカちゃんよりはやや濃いめの色合いの金髪に、これも濃いめの青い瞳は、着飾ったら映えそうです!
未来の王兄妃に相応しい、ゴージャス感ですね!
私にそんな観察をされているとも知らず、マリアさんは物憂げに目を伏せ、答えます。
「いいんです。最近、教祖様のお考えには、ついていけないところがありましたから。それに、こんなにたくさんの人たちが、教団のために奴隷として、無理矢理働かされているなんて……。全然、知りませんでした……」
悲しみに沈むマリアさん。
……よし、今だ!
行け!ヘンリー!
と目配せしてみるも、何の反応も示さないヘンリー。
……おい。
「ちょっと、ヘンリー。こういうときはなんか言って励ましてあげるのが、いい男の役目ってもんでしょ!(小声)」
「なんだよ、それ。知らねえよ、そんなの」
なんだと!?
イケメンの風上にも置けない、なんという空気読めない発言!
「お母さんは、そんな子に育てた覚えはありませんよ!(小声)」
「誰がお母さんだよ」
「もういい!ヘンリーがやらないなら、私がやる!(小声)」
いかに、運命の相手と言ってもね!
マリアさんを幸せにしようという気概の無い男に、彼女を任せるわけにはいきませんよ!
これなら生涯神に仕えるなり、別の男を探すなりしたほうが、彼女も幸せってもんですよ!
「そう、気を落とさないでください。あなたが知らずに信じて、仕えていた教団の実態は、確かに酷いものですが。知らなかったことを罪として恥じるよりも、知ってしまったこれからを、どう生きるかが大切なのではないでしょうか。あなたも、私たちも。少なくとも、生きているのですから」
まだヘンリーとくっつけるのを諦めたわけでは無いのでね、表情的にはあくまでも真面目に、真摯な感じで。
落とそうとかそういう色気は出してないので、特に顔を赤らめることも無く、はっとした様子で、マリアさんが顔を上げます。
「……そうですね。ひとりで自分を責めて、自己嫌悪に陥っても、結局はひとりよがりなだけでした。ここでなにができるかはわかりませんが、まずは奴隷のみなさんの苦しみを、身をもって知らなければ。ドーラさんでしたか、ありがとうございます」
実は言うほど苦しい感じでも、無いんですけどね!
まあ不自由ではあるからね、それなりに苦しんでると、言えなくも無いけれども。
しかし、現状のこの環境で、マリアさんがムチ打たれて云々という展開はあるんだろうか。
演技でそんなことさせるのも、気が引けるしなあ。
さすがに、打つフリだけで誤魔化せるものでは無いだろうし。
普通にマリアさんと親睦を深めて、マリアさんのお兄さんのヨシュアさんに存在をアピールして、ムチ打たれるまでも無く脱出の同行者に選んでもらうような展開が、望ましいけれども。
そんな上手くいくかわからないけど、とりあえずそういう方向を狙って、接していきますかね!
という感じで、作業に入ったわけですが。
親睦を深めようとは言っても、体力の無いド新人の女性と、積極的に鍛えてきたおかげで(プラス私は経験値ブーストで)ベテラン奴隷の中でも突出して体力がある私たちが、同じ作業をするのもなかなか難しいわけで。
どうやって近付こうかなあ、とか考えつつ、今日も大岩を運んでいると。
奴隷監督の魔物の一匹(人間に擬態)が、焦った感じで駆け寄ってきました。
「おい、お前!急ぎの仕事だ!ついてこい!(ドーラ様!緊急事態です!ご足労ください!)」
「は、はい!すぐに、行きますから!(何!わかった、とりあえず行くわ)」
十年の付き合いは伊達では無いのでね、もはや演技を通して本音を伝え合うのも、余裕ですよ!
とは言え、詳細はさすがにはっきり言ってもらわないと無理なので。
移動しながら、小声で状況報告を受けます。
「今日、配属された魔物が、上の人間の指示で、そのまま現場に投入されていたようで。ドーラ様に引き合わせる前に現場に入ることになって、奴隷の女が暴行を受けています(小声)」
「わかった、報告ありがとう。あとは、こっちでなんとかする(小声)」
手間が省けて良かったと思うべきか、隙を突かれて痛い思いをさせたことを悔やむべきか。
どちらにしても今できることは、早急に救助に向かうことだけですね!
と、現場に駆け付けると、ヘンリーも丁度到着したところでした。
良かった、これで動かないようなヤツなら、本気で見損なうところだったわ!
「ドーラ。あれは、演技じゃねえよな?」
「うん。手違いで、まだ会ってないヤツ。とりあえず叩きのめしてから、あとのことはするから!」
「わかった。行くぞ」
「うん」
というわけで、ヘンリーもそれなりにやる気を見せてくれてるところなので、然り気無く一歩引いて、最初にヘンリーが助けに入った状況を演出してみます。
こういう小さな積み重ねって、やっぱり大事だと思うの!
ヘンリーから行くぞって言ってきたしね、ウソじゃない、ウソじゃないから!!
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