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IS ~インフィニット・ストラトス~ 日常を奪い去られた少年

作者:Shine
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第09話

 
前書き
更新が日曜ギリギリになってしまい、すいません。

昨日、ちょっとしたアクシデントがありまして。

こんな話はさておき、今回の話の説明に行きたいと思います。

えと、前回の話を書いて、色々な方が読んでくださりありがたかったです。

それで、今回の話の最初はそれを踏まえ、ちょっと考えたことがあるのでそれを書きました。一応、実話です。

文字数にして千文字くらいです。

それ以降は普通の話になっています。

ですが、色々とグダグダになっているところもあります。

温かい目で見てください。

それでは、どうぞ。

 

 
普通とは一体なんなのだろう。

俺は、たかが十六年の人生を振り返る。普通の小学校に入学して、普通の中学校に入学して、IS学園に至る。最後がいきなり普通じゃなくなっているが、もしかしたら小学校から普通じゃなかったのかもしれない。

友達も個性豊かな奴らばかりだった気がする。それでも、楽しかった。

友達には色々いた。いい意味でも悪い意味でも。

親が離婚と再婚を繰り返して、情緒不安定になり性同一性障害になったやつ。再婚して本当の親じゃない母方に構ってもらえない奴。育児放棄といっても過言でもないかもしれない。肺が片方しかなくて、過度な運動ができない奴。腎臓が弱くて、一定時間ごとに薬を飲まないといけない奴。友達ではないけど、親戚には人工透析をしないと死んでしまう人がいた。

そいつらは確かに普通ではない。でも、それがハンデとかそういうわけでもなく楽しく過ごしていた。

性同一性障害の奴は、何回目かに生みの親と再婚した。それが何度目の再婚は分からなかったが、とても嬉しそうだった。俺の親が『やっぱりお母さんと一緒で嬉しい?』と聞くと『……うん』と言った。糞ババアとか言いながら、やっぱり嬉しいみたいだ。当たり前だが。今では、コンビニでバイトもしている。

親に構ってもらえない奴は、ここ最近バイトを始めたみたいで親と会う時間が減った。だけど、親と話す時間は増えたと言っていた。

肺が片方しかない奴は、家業を継ぐために農業高校に行って、必死に勉強している。大変だとメールは来るが、反面楽しいというメールも多い。

腎臓が弱い奴は、普段の生活に制限はあるものの、世間一般で言う普通の生活をしている。確かに、大変だけど毎日が楽しいみたいだ。

親戚の人工透析をしなければならない人は、家庭を持っていて、俺と同い年の息子もいる。

俺自身、出生の時に5時間くらい掛かり、ほぼ死んだ状態で出てきたみたいだ。その後、医者が必死に産声を上げさえようとしいてくれて、息を吹き返した。その後も、体が弱くて40度近い熱も何度も出した。けど、今では体が丈夫になった。類は友をよぶとはこのことか、と思ったこともある。

世間では普通でないとかわいそうだ、と言うがそれはあくまで他人からの意見であって、本人たちにとってみれば、それが当たり前なのだ。他人からどうこう言われる筋合いはない。かわいそうだとか大変だね、という言葉はこう言った普通じゃない人たちを侮辱しているようなものだ。

普通とは一体何なのだろう。自分でも良く分からないが、自分にとってそれが普通ならそれでいいんじゃないのだろうか。他人の価値観とかを無理に押し付けられても迷惑なだけで、誰も得をしない。

価値観というのは自分の中だけで成立するものだと、俺は思う。

俺の人生とか周りの奴の人生は普通ではない。けど、俺たちは生きている。それでいいんじゃないのかな。

◇   ◆   ◇   ◆

―――酷く懐かしい夢を見ていた気がする。幼稚園とか小学校とか中学校とか。そんな所を一気に駆け抜けるようなそんな夢だった。嫌なことも夢で見ていたきがするが、そんなことは気にならないくらい暖かかった。やっぱり、思い出って凄いな。

俊吾は寝ぼけ眼で時間を確認するために、携帯へと手を伸ばす。携帯のディスプレイは6時50分を指していた。

「ん~、そろそろ起きるか……」

そう言った所で、異変に気づく。

…………何か温かいものに抱きしめられているような気がする。何か柔らかいものも一緒に。というか、携帯に手を伸ばした時に気づかないのは何でだ、俺。

俊吾は違和感の正体に気付く。楯無が体に抱きついてきているのだ。柔らかいものの正体は言わずとも分かるだろう。そこで俊吾はどうしようか迷った。

何とか抜け出すか現状維持か…………。いやいや、現状維持はないだろ。というか、今気づいたんだが寒気がしない。苦手センサーが発動していない。あれか、あまりにも密着されると苦手とかそう言ったキャパシティを越えるとかそんな感じか。と、早く抜け出さないと。…………どうやって?

「んう…………」

俊吾が悩んでいると楯無が目を覚ました。何故か知らないが、俊吾は脂汗が出てきた。

「…………あれ、俊吾くん。何でこっちのベットにいるの?」

「いやいや、ここは俺のベットです」

「ん~?…………あれ私、隣のベットで寝たはずなんだけどな……」

俊吾はベットの位置を確認する。ここは間違いなく俺のベットだということを確認して少し安堵した。さっきのセリフはぱっと出たもので本当かわからなくてちょっと焦っていたのだ。

「まぁ、別に俺のベットで寝てるのはどうでも良いんですけど、そろそろ放してくれませんか?」

「え?」

楯無は自分の状況を確認する。自分が俊吾に抱きついていることに気付ていなかったらしい。それに気づくと直ぐに俊吾から離れた。

「あ!ご、ごめん!」

そう言って、ベットから離れる。そうして俊吾はまた一つ気づいた。楯無はYシャツしか着ていない。正しくは下にはパンツを履いている。それは重要ではない。重要なのは何でそんな格好でいるのかだ。俊吾は視線を外しながら言った。

「あ、あの、楯無さん。服、着てくれませんかね」

「あ、ごめんね。ちょっと、待ってて」

楯無はそう言うと、カーテンレールに掛けてあった制服を着た。

何でカーテンレールに掛かってるんだ……。ハンガーもあるし。どういうことやねん。

「あ、そういえばシャワー浴びてないな……浴びないとな」

「あ、私も浴びてないわね」

「あ、だったら、先にどうぞ。俺は色々やることありますし」

「そう?じゃあ、先に浴びちゃおうかしら」

そう言って楯無は、シャワー室に入っていった。俊吾は学校に行く準備を始めた。

「え~と、今日は数学と古典と……歴史は教室にあるから、こんなもんか」

学校の準備を終えた俊吾は、昨日の事を思い出していた。

楯無さんに迷惑かけちゃったな……。申し訳ないや。……割り切ったと思ってたけど、割り切れてないし、情けなさ過ぎだろ、俺。…………けど、もう大丈夫だ。忘れるとかそういうことじゃなくて、心に留めておいて、墓参りに行くときには、近況を笑って話したり出来ればそれでいい。夏休みは絶対に戻って墓参りに行こう。

俊吾がそう思っていると、シャワー室のドアが空いた。

「俊吾くん、入ったらどう?」

「じゃあ、そうさせて貰います」

俊吾は、着替えを持ってシャワー室に向かおうとする。そこで気づく。楯無がまたYシャツだけなのだ。シャワーを浴びたばかりで暑いのだろうが、目のやり場に困る。俊吾は楯無に目を向けずに、さっさとシャワー室に向かう。

「はぁ…………もう少し格好に気を使って欲しいな」

少しぼやきながら、シャワーを浴びる。髪と体を洗って、洗い流す。脱衣所に戻って服を着てから部屋に戻ると、楯無が制服姿でいた。

「俊吾くん。私、色々用意するものがあるから部屋に戻るわね」

「分かりました」

「じゃあ、またね」

楯無はそう言って、部屋から出ていった。

「さて……俺もご飯でも食べに行こうかな」

俊吾は何を食べようか、と思いながら食堂に向かった。

◇   ◆   ◇   ◆

朝、教室に向かうと少し教室が騒がしかった。

「どうしたんだろ…………ま、俺には関係ないだろうから無視するかな」

そう言って、席に座ると声が聞こえた。

「あ、俊吾!ちょっと来てくれ!」

声の主は一夏で、教室の後ろで女子に囲まれていた。正直面倒だが、困っているみたいで助けないわけにも行かない。俊吾は一夏の元に向かう。

「どうした、一夏」

「あ、いや、ちょっと、待った、そっち行くから」

女子をかき分けながら一夏は俊吾の元に来た。そして、耳打ちしながら言った。

「学年別トーナメントがタッグ戦になって、パートナーになってくれって言われてるんだよ」

「なるほどね……。で、誰と組めば良いか分からないから保留にしてると」

「そうなんだ。それで、今日の朝に結論出すって言っちゃって」

「…………お前さ、シャルルと組むって発想はなかったのか?」

「いや、それもあったんだけど、俊吾がどうするのか分からなかったからさ」

「俺の方は気にしないでシャルルと組め。これで問題は解決だ」

「でも、そしたら俊吾が大変になるんじゃ……」

「いいから。俺の方はどうとでもなるから」

どうせ俺の方には誰も来ないだろうから簪でも誘おうかな……。

一夏は、女子達の元に行き事情を説明しているようだった。みんなガッカリしていたが、シャルルと一夏なら仕方ないと言った感じで、納得しているようだった。そして、俊吾をチラ見して『あいつは別ないいや』と言った感じで席に戻っていった。

ま、これで問題は解決したな。さて、俺も席に戻るか。

そう思い、席に戻ろうとすると

「あ、あの、大海くん」

と呼び止められた。一体誰だ?と思いながら声のした方を見ると鷹月がいた。

「え、と、鷹月さん?どうしたの?」

話しかけられると持っていなかったので、驚きながらも何とか返事をする。

「私とタッグ組んでくれない……?」

「…………え?」

予想外すぎる言葉を言われたせいで、不抜けた返事をしてしまった。

え~と、俺とタッグを組んで……?何で俺なんだ?…………あ、なるほど、一夏は無理だとわかったから最低限専用機持ちの俺に話しかけたわけか。オーケーオーケー、了解した。

実際は鷹月は最初から俊吾と組みたいと思っていた。麻耶との模擬戦の時から鷹月は俊吾が優しくて良い人と思い好印象を持っていた。それに、昨日のISを無断使用しても鈴とセシリアを助けたと聞き、少しときめいたりした。

「あ……じゃ、じゃあ、私も!」
「私も!」

鷹月の声を聞き、数人の女子がそう言った。全員、鷹月と同じ理由で俊吾にパートナーを申し込んだ。俊吾は一旦、思考を持ち直したものの、急展開にまたパニックに陥っていた。

「あ~、いや、ごめん。ちょっと、考えさせてくれない?」

「私は別にいいよ」

鷹月がそう言い、周りの女子も納得したらしくその場は収まった。

この場は何とか切り抜けたけど、どうするかな……。さっさと簪にメールでも送るか。

俊吾は簪に『学年別トーナメント、パートナー決まってなかったら組まないか?』と送った。返信が来なかったら、面倒だが、来れば現状を打破出来る。淡い希望を胸に秘め、席に座る。

数分後、千冬が教室に来て一日が始まった。

◇   ◆   ◇   ◆

お昼休み、携帯を確認するとメールが一通来ていることに気づいた。差出人は簪で内容は『私も俊吾君と組みたかったから良いよ。俊吾君から誘ってくれて嬉しい』と書いてあった。心の中で俊吾は安堵した。

鷹月さん達には悪いけど、仕方ないよね、うん。…………今度、お詫びに何か奢ろうかな。いやいや、別に仲いい奴でもないんだからそんなことされても困るだけだろ。……と言うか、何で俺こんなに気になってるんだろ。ま、いっか。

俊吾は問題を一つ解決して、お昼をどうするか迷っていた。食堂で買うか、購買でパンを買って外で食べるか。俊吾はいつもその二択だ。今日は天気が良いから、パン買って外で食べようと思い、購買に向かう。

購買でパンを買った俊吾は、いつもの場所に来ていた。いつもの場所というのは、教室棟の屋上である。一夏に一夏ヒロインズの弁当試食会をやらされた場所でもある。あれから俊吾はお昼休みにちょこちょこ来てここで日向ぼっこをしている。ここは天然芝を敷いてあって気持ちがいい。しかも、人があまり寄り付かない。理由は、ここが少し遠いからだろう。それでもここに来る価値はあると俊吾は思っている。

「さて、食べるかな」

俊吾が今回買ったパンは、卵とハムと野菜のサンドイッチ、焼きそばパン、メロンパンを買った。来る途中に自販機で炭酸飲料を買ってきている。

俊吾はパンを食べ始める。IS学園の食事は全部美味しい。食堂も購買のパンもどちらも手が込んでいる。流石、国営と言うか、ある種の独立国家というか。ここは形容し難い場所である。

数分後、俊吾は買ってきたパンを食べ終え、炭酸を飲んでいた。遠くから鳥のさえずりや葉の擦れる音がしてとても落ち着く。少しウトウトし始めたので時間を確認する。十二時五十分。午後の授業は一時半からだから、四十分は余裕がある。昼寝をしようと思い、携帯にアラームをセットして、眠りについた。

◇   ◆   ◇   ◆

―――ピピピピ!

「ん…………」

俊吾はアラーム音で目を覚ました。そのまま体を起こし、少しボーッとしていると隣に誰かいることに気づいた。

「…………シャルル?」

そこにはシャルルがいた。芝生に寝転んで昼寝をしているようだ。

「……理由はともかく、起こさないとまずいよな。時間的に」

時刻は一時十五分。授業まで十五分しかない。俊吾はシャルルの体を揺さぶった。

「お~い、シャルル~。起きないと午後の授業遅刻するぞ~」

その声があったせいか分からないが、シャルルは目を覚ましたようだ。

「んう…………。あれ、俊吾…………?」

どこか寝ぼけているようだったが、徐々に状況を確認したようで少し慌てた様子になった。

「あ!僕寝ちゃったんだ…………。起こしてくれてありがとう、俊吾」

「どういたしまして。で、何でここに来てたんだ?」

「え~と、俊吾に話があったんだけど……」

―――キーンコーンカーンコーン

授業十分前を知らせるタイムが鳴った。

「時間無さそうだし、放課後ちょっと時間借りてもいい?」

「別にいいよ。じゃ、授業の準備しないとな。行くぞ」

「うん」

二人は、屋上から出て教室に向かった。

◇   ◆   ◇   ◆

放課後、俊吾はシャルルとの話の前に鷹月たちに話をするために、教室に残っている鷹月のところに来ていた。

「あ~、あの、返事を待って貰っておいて悪いんだけど、ごめん。俺、別な人と組むんだ」

「そうなんだ…………。あ、でも、謝らないで。私が急に言うのが悪いんだから」

どこか寂しそうに笑いながらそう言った。俊吾はそれに罪悪感を覚えるが、どうしようもないので早く立ち去ることにした。

「本当にごめん。鷹月さんと組むのが嫌とかそういうのじゃないから」

それだけ言って、俊吾は鷹月の前から消えた。この一言が必要か必要じゃないかと言ったら必要じゃなかっただろう。変な期待を鷹月にもたせるのだから。

俊吾はそのまま廊下で待っているシャルルの元に駆け寄った。

「悪い、待たせたな。それで話って何だ?」

「その前に、俊吾はこれからどうするの?」

「俺か?今日は練習しないで部屋で寝ようと思ったんだけど」

「じゃあ、寮に行こっか。との途中で話すよ」

「良いのか?シャルルは練習しなくて」

「うん。僕も今日はちょっと疲れちゃったしさ」

「そっか。なら行くか」

「うん」

二人は寮に向かって歩き始めた。校舎の中では雑談をしながら歩いていた。寮の外に出ると、シャルルが話し始めた。

「……ありがとね、俊吾」

「いきなりどうした?お礼を言われるような事した覚えないけど」

「学年別トーナメントのことだよ。僕と一夏を組ませて助けてくれたでしょ?」

「ああ、あれか」

正直、俺にとっちゃあんまり助けた感覚は無いんだけどな。面倒事を解決させただけだし。

「……あはは、何か俊吾に助けて貰ってばっかりだね」

「そんな事無いと思うんだけどな。どちらかというと、一夏の方が助けてるイメージは強いけど」

「確かに直接的なのは一夏の方が多くて、みんなからの評価は高いよね」

評価高いのは一夏がイケメンだからじゃないかな。イケメンだったら何しても評価高くなりそうだし。そもそも、一夏は性格いいから余計評価高いだろ。

「でも、間接的には俊吾の方が多いよね。みんなが気づかないだけで色々と助けてくれてるし」

「気づかなければいいことも意味無いんだよ。だからといって、みんなの前でいいことしようとするのもどうかと思うけどな」

「そうだね。俊吾の頑張りは僕が知ってるから僕の俊吾の評価は高いよ?」

シャルルは微笑みながらそう言った。

あれ、何か寒気というか悪寒というか、苦手センサーがあんまり発動してないような……。気にすることもないか。

「それはありがとな」

「うふふ、どういたしまして」

そのまま二人で談笑しながら歩いていると

「シャルル。元気そうだね」

と言う声が聞こえた。二人は声のした方向を向くとそこには高級スーツに身を包んだ男が立っていた。年は30代位で、身長が高くスーツが良く似合っていた。

誰だ、このおっさん……。シャルルの事を知っているってことはデュノア社関係…………しかも、呼び捨てってことは、まさか…………!

「お、お父さん……」

やっぱりか、と俊吾は心の中で悪態をついた。来るとは思ってたけど、少し気が抜けていたのも事実だ。昨日はラウラが問題を起こし、それを解決したばかりだ。立て続けにこんな風になるとは普通思わない。

「君は……大海俊吾くん、かな?」

「あ、はい。初めまして、カルロス社長」

俊吾は男を―――『カルロス・デュノア』に対し、そう言った。シャルルの話を聞かなければ、正直興奮してどうかしていたと思う。けど、今は状況が状況だ。心の中で覚悟を決め、どんな状況でも対応できるように頭を整理する。

「社長なんてやめて欲しいな。息子の友達なんだ。普通に呼んで欲しいな」

「恐縮です、カルロスさん」

シャルルはと言うと、どこか怯えた様子で俊吾とカルロスを見ている。俊吾はシャルルに『大丈夫だ、任せとけ』と目配せした。すると、シャルルは少し落ち着いたようだった。

「シャルル、学校はどうだ?」

「楽しいよ。俊吾とか一夏とか、みんな優しいし、先生も親身になってくれるし」

「そうか、それは良かった」

少し落ち着いたせいか、不自然さはなくシャルルはそう答えた。カルロスもシャルルのセリフに何も感じなかったようで、父親の役を演じているようだった。

とにかく、今この場は、シャルルが『男として学園生活を送っている』と思わせて帰ってもらわないと。

「そういえば、もう一人の男子の織斑一夏君はいないのかな?」

「一夏なら、今日はアリーナで訓練しています。俺たちは寮に向かってるんです」

「そうか……出来れば一夏君にも会っておきたかったな」

それはどう言う意味でなんでしょうね……。単純な興味としてか、それか……。

「突然だけど、二人共。好きな人はいるのかい?」

……いきなりどうしたんだ、このおっさん。頭湧いたか?

「ああ、ごめん。いきなり言われても困るよね。単純な興味なんだ。息子が青春しているのかって気になってね」

「僕は……いないかな」

シャルルは一瞬、俊吾を見てそう言った。その視線に視線を細めるカルロス。その変化を俊吾は見逃さなかった。その場を持ち直すために俊吾は考えていた作戦を実行する。

「俺もいません……」

「そうか……。いつか出来るといいね、二人共」

「お恥ずかしながら、俺は恋愛って言うのは出来ないかもしれないんです」

「それはどういう意味だい?」

カルロスは俊吾の撒いた餌に食いついてくれた。

「お恥ずかしながら、俺は女子が苦手でして……」

「おや、それは大変だね。では、この学校自体辛いんじゃないのかい?」

「そうですね。正直、辛いなって思うときもあります。けど、最初は一夏がいましたし、途中からシャルルが来てくれましたから大丈夫です」

「そうか……。俊吾くんも大変だね」

「心配してくれてありがとうございます」

「っと、そろそろ時間だ。すまないね、ここでお邪魔させてもらうよ」

カルロスは腕時計を見て、そう言った。

「俊吾くん、シャルルと仲良くしてやって欲しい」

「はい、分かりました」

「では、僕はここで」

カルロスはそう言って、IS学園の入口に向かっていった。姿が完全に見えなくなってから、シャルルは俊吾に寄りかかってきた。

「っと、大丈夫か?」

「ごめん、ちょっと安心したら力抜けちゃって」

「……ひとまず、あそこのベンチまで行こう」

俊吾は近くにあったベンチにシャルルを肩を貸して歩いた。そして、シャルルをベンチに座らせた。

「……ごめんね、俊吾」

「別に気にするなよ。困ったときはお互い様だろ?」

「…………俊吾はそう言うけど、僕は助けてもらってばかりだよ……。さっきだって…………」

「……それに関しては仕方ないだろ。シャルルの中でカルロスがどういう風になっているかは分からないけど、かなり苦手なのはさっき分かったから。無理するな」

「……ごめん、ごめんね」

「だから気にするなって」

「僕はいつも俊吾に迷惑かけて、僕は何も返せなくて……情けないよ」

泣きそうな表情でシャルルはそう呟いた。

「……シャルル、それは違う」

「……え?」

シャルルは俊吾を見ながら、そう言った。

「確かに、シャルルは俺に何も返してないって思ってるかもしれないけど、それは違う。俺はお前が普通に暮らしてればそれでいい。お前で幸せなら、俺はそれでいい」

「俊吾、それって……」

シャルルは頬を赤らめながらそう言った。

「それに、俺がシャルルを助けてるのは俺の気まぐれなんだ。気にしないでくれ」

「……何でそこまでしてくれるの?」

先程まで頬が染まっていたが、すぐにそれは引きシャルルはそう言った。

「……俺は後悔したくないんだ。やらないで後悔するくらいなら、全力でやって後悔した方がいい。そう思ってるから、シャルルがほっとけないだよな」

「…………」

シャルルはどこか気まずそうな顔で黙っていた。それに気づいた俊吾は、慌てて言った。

「あ、いや、ごめん。何か意味深なこと言って」

「……何でそういう考えになったか教えてくれない?」

「……え?」

「僕、俊吾のことを知りたい。どこか俊吾は苦しそうだから……」

ああ、やっぱり昨日の今日では上手くいかないか……。顔に出ちゃうんだろうな、俺って。

「あんまり人に言いたくはないんだけど……それでも聞きたいか?」

「……うん」

どこか覚悟を決めた目でシャルルは頷いた。

「……結論を先に言っちゃうと、俺、去年友達が死んじゃったんだよ」

シャルルが息を飲むのが分かった。だけど、話を止めるわけにもいかない。

「事故死でさ。これから一杯、やりたいことしかなかったけど、何も出来なくなったんだ。それで後悔しかしなくて、これからは精一杯全力で生きてこうって思ったんだ」

やっぱり、言葉は少し出づらいけど、昨日ほど感情に任せて全部吐き出したりしない。気持ちの整理が出来たって事だよな。

「今回もシャルルが困ってて、もしかしたら一生会えなくなるかもしれないから、後悔しないようにって感じだ。まぁ、理由はこんな感じかな」

「…………」

シャルルは黙って話を聞いていたが、全てを聞き終わってどこか申し訳なさな顔で俊吾を見ていた。

「何て言えばわからないけど……話してくれてありがとう。俊吾もこんな話ししたくないのに」

「いや、話すことは別にいいんだよ。気持ちの整理は付いたから」

「そうなんだ…………。変なこと聞くけど、その整理を手伝った人っているの?」

「え…………まぁ、いるけど……」

「誰か教えてくれない?」

「いや、まぁ、良いけど……」

シャルルのやつどうしたんだ?いきなり真剣な顔で……。まぁ、別にこっちは言いにくことじゃないから言うけどさ。

「生徒会長の更識楯無さんだよ」

「やっぱり……」

シャルルの呟きはとても小さく、俊吾には聞こえていなかった。

「ねぇ、俊吾……」

どこか深刻な顔でシャルルは言った。

「俊吾にとって楯無さんってどういう人?」

「どういう人って…………そりゃあ、大事な人だよ。色んな相談してもらってるし、今回の件もあるしな」

「その大事な人ってどう言う意味で?」

「どう言う意味でって……その言葉そのままの意味だよ」

「本当に?」

「本当だよ。というか、シャルル一体どうした?変だぞ」

「変、か。……確かにちょっとおかしかったかも。ごめん、忘れて」

「ああ、分かった。っと、そろそろ体も大丈夫になったか?」

「うん、大丈夫だよ。じゃあ、戻ろうか」

シャルルがそう言って。二人は寮に戻っていった。

◇   ◆   ◇   ◆

「ふ~、今日も疲れたな……」

自室に戻ってきた俊吾はベットに座りながら、そう言った。

「……さっきのシャルルは一体どうしたんだろうな」

先程のシャルルの様子を思い出す俊吾。

楯無さんの名前が出てきたあたりから、どこかおかしくなったような……。まぁ、結局いつものシャルルに戻ったから問題ないか……。

シャルルのことは完結したが、一つシャルルに言われ、自分の中で引っかかっていたことがあった。

楯無さんは大事な人だよな……。恩人って意味でも頼れる先輩って意味でも。それ以外の感情はない……はずなんだけどな。どうも、納得しきれない自分がいるんだよな……。…………良く分からん。よし、分からないことは分からないんだから、気にしないことにしよう。うん、そうしよう。あ、そういえば、カルロスのおっさんが接触してきたことを楯無さんに方向したほうがいいよな。

俊吾は携帯を取り出し、昨日楯無からメールを受けたアドレスにメールを送る。

「っと、今日は早めに飯食って寝ようかな……」

その後、俊吾は早めに夕飯を食べ、早めにシャワーを浴び、早めに布団に入った。そのまま、ウトウトし始めて眠りについた。



 
 

 
後書き
今回は、ちょっと人間関係に変化がありましたね。

それが今後どうなるかは実際俺にも分かりません。

楽しみにしておいてください。

それはそうと、この小説開始から一ヶ月が経ちました。

一ヶ月で十話(一話プロローグ含む)って早いんですかね?

出来ればもっと短い期間で話を提供したいのですが、色々と考えているせいで上手くいきません。

何はともあれ、みなさんのお陰でここまで書いて来れました。

ありがとうございます。

そういえば、俺自身忘れてたんですが、俊吾君と黒天慟弐式のスペックって書いたほうがいいですかね?

一応考えてあるんですが。

書いて欲しいという要望がありましたら書こうと思います。

え~、誤字脱字などありましたら報告お願いします。

それでは、また次回まで。 
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