【新約】魔導循環~Magical circulation~
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Πέμπτο ιστορία /νύχτα
前書き
《新魔術師》の側のお話。オートマトンのデザインにジョニー・ケィルヤ技術中尉のご協力を仰ぎました。ありがとうございました!!
オートマトン。
それが、《僕》という存在を説明するたった一つの言葉だ。
僕はオートマトンの内の一機でしかないし、外見はいかに人間に似ていても、その正体は人ならざる人形――――
感情も、肉体も、何もかもが模倣。
そう。僕が自分の主に向ける、この温かい愛おしさも。
***
新暦1300年現在で、オートマトンの開発技術は格段に上がった。
《新魔術師》と呼ばれる、《人工魔術回路》によって誕生した新時代の魔術師たちが、過去の《旧魔術師》達が禁忌として忌避してきた《機械技術と魔術の融合》を研究のメインに進め、未開であったその技術を会得した。
その結果、生み出されたのが《オートマトン》。
《傀儡術》と呼ばれる技術を応用し、誕生した《機巧魔術》。ホムンクルスやゴーレムとは似て非なる存在を作り出すその技術が、オートマトンを作り出している。オートマトンには心臓の代わりに《アヴィケヴロン》と呼ばれる炉心が搭載され、感情を模倣し、蓄積していく学習プログラムも開発された。
初期の頃、人型オートマトンには基本的な《ファイター》型と《ノンファイター》型の二種類しかいなかった。オートマトンと言えば機械的な存在で、ゴーレムと大差ないものであった。
現在では始祖とあがめられる《アルバート初号機》および《アリス初号機》によって培われた技術は、後の世の《ナイト》をはじめとするオートマトンたちに引き継がれている。
既に《アルバート》《アリス》および同系列骨格型の人型オートマトンは生産をストップし、それらの技術は新型のオートマトンへと受け継がれている。
アヴィケヴロンシステムも年々新たな技術が開発されて、今や過去の《炉心》とはかけ離れた、どこかサイバーチックな外見となっている。
オートマトンにはアヴィケヴロンのほかに、やはり人口魔術回路が備えられている。これには《魔術基盤》といういわば《体外魔術回路》と同じ役割を果たすものが刻み込まれており、それがそのオートマトンに使えるたった一つの魔術となるのだ。
とはいっても、その魔術は魔術の方向性を少しばかり固めるものであり、中には強力な複数属性を操るオートマトンもいるという。
さらに、人口魔術回路に頼って魔術を使う《新魔術師》達の弱点である《使える魔術が偏っている》という問題もこれで解決できる。どのオートマトンにも《完全神導体》と呼ばれる、《魔術基盤に刻まれた魔術をつながっている相手にも使用できるようにする》という術が施されているのだ。
さて、今や一般市民にも流通したオートマトン。メイド型や執事型、家政婦(夫)型をはじめとする非戦闘系から、《ナイト》《ウォーリア》《バーサーカー》《ガードナー》《ランチャー》をはじめとする戦闘系まで多岐にわたるオートマトンが開発されてきた。そして今や、その知能レベルや外見はほとんど人間とそん色がないほどに発展した。
この物語は、主の少女と相思相愛であることに苦しむ《ナイト》の少年を主人公に迎えた物語。
***
僕の機種は《ナイト》という。僕の本当の名前は《KnightUnitthreetype1364BuildNo.132899693》。それが僕の正式な名前だし、本来僕にそれ以外の名前はない。
だけど僕を買った主は『それじゃぁ長いでしょ』といって、勝手に僕に名前を付けてしまった。
――――だから、僕は主……リィナにもらったこの名前で、僕自身を名乗ることにしよう。
初めまして、この物語を読んでくれているみなさん。
僕の名前は、《ホワイト》と言います。
+++
僕の主であるリィナの本名は、リィナ・フォン・クルスフィォーレという。もとは名の知れた貴族の一派だったらしいが、今は没落貴族と言うのだろうか、その様なものになり下がっているらしい。
リィナは十五歳。年ごろの彼女には常に僕と、もう一人《バトラー》という機種のオートマトンが付いている。彼につけられた名前は《セバ=スー・チャン》。ちなみに《八極拳》という武術の達人で、これでも一応戦闘特化型の僕が、全力を出しても勝てない。とてつもなく強いおじいさんだ。ちなみに1310年造だから外見的にも年齢的にも高齢。
《バトラー》の機種はかなり古い時代から存在する機種だ。祖たる《アルバート》《アリス》系の流れをくむかなり最初期のシリーズで、彼らの技術は僕ら《ナイト》や兄弟機の《ウォーリア》にも受け継がれている。
僕の機種《ナイト》は、現在世界で最も流通しているオートマトンの基礎フレームだ。
オートマトンは購入時は《基礎フレーム》とよばれる基本的な殻しかない。それに改造を加えたり、外装を強化したりして、世界にたった一体だけのオートマトンが作り上げられるんだ。人型のフレームのオートマトンは、最終的には人とほとんど見分けがつかないほどの姿になるため、必ず目の下に《コード》と呼ばれるマークをしるすことが法律で義務付けられている。特に《ナイト》系列の機体は本当に人間にそっくりだ。一体として同じものは存在しない。
オートマトンには必ず《魔術基盤》が搭載されている。これに記された魔術を、好きなように使えるのだ。
僕こと《ナイト》の《ホワイト》にもこれはきちんと搭載されているけど、それがどんな機能の魔術なのか、紹介するのはまた今度。
僕の外見は、大体十七歳くらいの人間の青年の姿をしている。外見上、目の下のコードマークを除けば、僕をオートマトンと見分けることが難しいほど、僕の外見は人間にそっくりだ。
それじゃぁまずは、僕とリィナが出会った時の話をしよう。
後書き
どうも、お久しぶりです。次回はホワイトとリィナの出会いをかこうと思います。
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