オベローン
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第三幕その五
第三幕その五
「縄が」
「私達の縄が」
「さあ、二人手を結び合うのだ」
こう二人に告げるオベローンだった。告げながら二人のその手を取る。
そうして結ばせる。ティターニアはシェラスミンとファティメの手を結ばせている。
「人の心は何処までも美しい」
「それは祝われるべきのもの」
オベローンとティターニアはそれぞれ言うのだった。
「仕える神は違えども」
「愛はそういったものを全て乗り越える」
「それはいいとして」
「もう止めてくれ」
ここで太守と兵士達が泣きそうな声で言ってきた。
「もうわかったから」
「四人に対しては何もしないから」
こう言うのである。
「だからもう止めてくれないか?」
「許して欲しいんだが」
「わかった。それではだ」
「貴方達も彼等を祝うのかしら」
オベローンとティターニアは彼等に対して問う。
「そなた達もだ」
「それなら」
「わかった、祝おう」
「人の幸せを祝福するのはやぶさめではない」
「喜んで祝わせてくれ」
「よし、それでは」
パックは彼等の言葉を聞いてだ。角笛を吹いた。すると彼等はその動きを止めた。そしてバグダットの太守もまた出て来たのだった。
「御父様もですか」
「ここにお連れしました」
パックが驚くレツィアに対して話す。
「貴方達を是非見て頂くて」
「それでなのですか」
「このチェニスに」
「レツィア、よくわかった」
彼は今は優しい父親として娘に告げていた。
「御前の心はな」
「御父様、それでは」
「そうだ、許そう」
彼は堂々とした声で娘に告げた。
「喜んでな」
「有り難うございます、それでは」
「さて、それではだ」
ここでまたオベローンが一同に告げてきた。
「皆で人間の心の素晴らしさを祝おう」
「はい」
「今ここで」
「何があろうとも誓いを破らず愛を貫くその素晴らしさをだ」
他ならぬヒュオンとレツィアのことである。
「それを皆で祝おう。いいな」
「そしてあなた」
今度はティターニアがにこやかに笑って夫に話してきた。
「二組の婚礼も」
「そうだ、勿論それも祝う」
このことも忘れていないオベローンだった。
「それでは皆でだ」
「ええ、祝いましょう」
「さあ、人間の素晴らしい愛を祝って」
パックが前に出て来た。
「皆さん、杯を。そして」
「そして」
「歌を!」
魔法で一同の手に並々と葡萄酒が注がれた杯を持たせてそのうえで祝福を歌を歌うのだった。最早どちらがより貞節かなぞ問題ではなかった。その心の素晴らしさを祝うのであった。
オベローン 完
2009・9・5
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