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オベローン

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第三幕その四


第三幕その四

「ただしだ。そなた等はすぐに首を刎ねる」
「それなら好きにするといい」
「私達は何時でも一緒だから」
 二人はもう覚悟を決めていた。
「首を刎ねるのなら刎ねるんだ」
「二人一緒に」
「よし、それではだ」
 太守は彼等の言葉を聞いて意を決した顔になった。
「二人をすぐに打ち首にせよ」
「はい」
「それでは」
 兵士達がそれに応えて頷く。二人はいよいよ首を刎ねられようとしている。
 二人は既に覚悟を決めている。だがシェラスミンとファティメははらはらとした顔である。はらはらとしているどころかどうしたらいいのかと慌てふためいている。しかしこの時であった。
 あの角笛の音が鳴った。すると太守と兵士達がそれを聴いてすぐに踊りはじめたのだった。彼等はその中で驚きの声をあげた。
「な、何なんだ!?」
「身体が勝手に」
「全て見せてもらいました」
 ここで出て来たのはパックだった。その手に角笛がある。
「貴方達のことは」
「えっ、君は」
「パックさん」
「いや、間に合って何よりです」
 パックは驚く四人の前に出て来て告げるのだった。
「もっとも間に合うように手筈をしていましたが」
「間に合うようにとは」
「一体」
「貴方達のその御心を見せて頂いたのです」
 こう彼等に話すのだった。踊っている太守や兵士達の間を通りながら。
 ただしだった。それだけではない。パックはさらに話すのだった。
「男と女、どちらがより貞節を守るか」
「見ていたのか」
「そうだったの」
「しかしです」
 だがここでパックはさらに言うのであった。
「途中からそれはどちらも素晴らしいということになり」
「じゃあ僕達は」
「その心は」
「そうです。そして次第により素晴らしいものを見るべきだということになり」
「私達もわかったのだ」
「その通りです」
 そのパックの後ろから出て来たのは。まるで幻想の世界から出て来た様な美しい一組の男女だった。ヒュオンは彼等の顔を見て言うのだった。
「貴方達は」
「私はオベローン」
「私はティターニア」
 二人はそれぞれ名乗るのだった。
「妖精の王」
「私は王妃です」
「王と王妃。それでは」
「そうだ。パックの主だ」
「そして私もまた」
「そうだったのですか。御二人がですか」
 ヒュオンはそれを聞いて納得した顔で頷いた。
「僕達を見ようと」
「試したのは申し訳ない」
 オベローンはまずヒュオン達に対してこのことを謝罪した。
「だがそれでもだ。その心を見せてもらった」
「僕達の心を」
「それを」
「そなた達の心は何処までも素晴らしい」
 オベローンはヒュオンとレツィアに対して告げた。
「そう、何処までも」
「男も女も同じだ」
 このことを確かに言うオベローンだった。
「そう、同じなのだ」
「同じなのですか」
「心は何処までも美しい。今も最後まで誓いを守ろうとした」
 二人共に死のうと誓ったことである。
「それがだ」
「僕達のそれを」
「見ていたというのですか」
「さあ、その言葉と共にだ」
 オベローンはゆっくりと前に出た。前に出たところで右手を軽くあげて親指と人差し指を鳴らす。するとヒュオンとレツィアの縄が解けた。シェラスミンとファティメのものもだった。
 
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