ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
DAO:~神々の饗宴~
第六話
「さて……今日のテストプレイは……」
カズが右手を振ってメニューウィンドウを呼び出す。
「お、あったあった。え~っと……《縛鎖の城》の調整だな。師匠と落ち合うのは向こうか……」
「師匠?」
《縛鎖の城》という恐らくダンジョン名と思われる単語も気になったが、それよりも《師匠》が気になった。
カズはセモンに向かってにやりと笑うと、自慢げに答えた。
「俺の師匠さ。刀使いで、すっげー強いんだぜ!」
「へ、へ~………」
いまいちよくわからない。
いや、《刀使い》《カズの師匠》といった情報ならあるが、セモンが聞きたかったのはそれじゃなくて……。
すると、リーリュウが詳しく説明してくれる。
「――――コクトさんって言うんだ。漢字は《黒兎》って書く。武器はさっきカズが言ったように刀。名前は《冥刀・凍》」
「め、冥刀……」
随分と物々しい名前だ。
「珍しくないぜ。……まぁ、珍しいっちゃ珍しいのかな……」
「《冥刀》というカテゴリは、刀系の武器の中でも強力なものを指すカテゴリなのです。この世界では現在、《冥刀》が23本確認されている設定になっています。それぞれ名前は《東血桜》《西肌雪》《紫雲刃》《大地讃頌》《断裁》、そして《凍》。残りは僕たちも名前を知らされていません。」
「ふ~ん……探すと見つかるものなのか?」
セモンの素朴な疑問に、ハクガが丁寧に答える。
「う~ん……そうですね……そういうものもありますが、《凍》の場合は違いますね」
「あれは《ギア》だからなぁ……」
「《ギア》?」
するとカズも話に絡んでくる。
「ああ、セモンは《ギア》を知らないか」
「この世界では《六門魔術》と呼ばれるものが普及しています。僕たちのレベルはそれのレベルアップに伴う形で増えていく……というか、レベルが上がると魔術の階梯も上がるというか……とにかく、《六門魔術》にはレベルがあるんです。で、その六門魔術の階梯が、見習いから一人前になったことを表すために与えられるのが《ギア》です」
「《ギア》は人それぞれ違う。レベルが上がると、複数の条件からいくつか選んで、そこにポイントを割り振れるんだ。その中に《ギア》っていうのがある。《ギア》のレベルを上げていけば、《ギア》はどんどん強力になって行くんだ。最初の頃、《凍》も《涼》って言う名前の小さい刀だった。ちなみに俺の《ギア》はこれ」
リーリュウが指を立てて、複雑な模様を描く。
すると、そこに魔方陣が展開し、和風な笛が出現した。
「……?」
「《暁を呼ぶ笛》。俺の《ギア》だ。ちなみにレベルは31。階梯は2だ」
「では僕のも紹介しましょう」
ハクガは足で地面に弧を描く。すると、それに呼応するようにハクガの足が青白い燐光を纏う。
しゃらん、という涼やかな音と共に羽を広げ、翼の生えた靴がハクガの足に装着されていた。
「《空を掛ける靴》です。僕の階梯も2です。レベルはこれもリーリュウと同じ31」
「じゃあ次は俺か!」
カズが虚空をつかむ動作をして、一気に《それ》を引く。
すると虚空からずるり、と、カッターのような刃をもった大剣が出現した。
「《切り裂く剣》だ。俺の階梯は2だけどな、俺はこいつらよりレベルが一高いぜ!」
「カズがか弱い生物たちを乱獲するからでしょう。そんな子に育てた覚えはありませんよ」
「知るか!か弱くねぇだろありゃ!あとお前は俺のかーちゃんじゃねぇだろ!?」
「え、え~っと?」
セモンが話に絡めず苦笑いしていると、リーリュウが教えてくれる。
「カズとハクガが二人で行ったミッションの時の話だな。東側の方に『紅日』というエリアがあるんだが、そこに結構強い精霊族がいる。サイズが二頭身だからマスコットにしか見えない」
「へ~。本物のMMOみたいだな……」
「小波さんは結構こだわったからなぁ。すごいぞ、サイズ的にはあの《ソードアート・オンライン》に匹敵するとかしないとか」
「え、SAOに!?」
SAOに匹敵するのか、とセモンが驚愕の叫びをあげると。
カズとリーリュウが高速でこちらを向いた。
「な……?ど、どうした二人とも」
「……あ~……セモンさん、その、すみません。彼らはあなたがSAO帰還者だというのを知らないと思います」
「せ、セモンはSAOサバイバーだったのか……」
「どうりで小波さんが優先的に採用するはずだ。なるほど、ならこの世界に適応するのも早いかな……」
「セモン、ステータスデータをもう一回確認してくれないか」
言われるままにセモンはメニューウィンドウを呼び出す。
「え~っと……名前は《セモン》、称号は《神話剣》、あ、《六門魔術》ってこれか。階梯は1。レベルは……12、だな」
「やっぱりか……小波さん結構優遇したな」
「初陣に《縛鎖の城》を選んだ理由がわかった気がする。あそこは特訓にはちょうどいいからな……」
「しかし一歩間違えば大変なことになってしまいます。できるだけ慎重に進みましょう」
カズとリーリュウがハクガの言葉にうなずき、岩場を降りていく。
「それではセモンさん、行きましょうか」
「お、おう」
*
「……どう言うつもりだ小波。《縛鎖の城》を初陣に選ぶなんて……今あそこは《実験機》を配備しているんだろう!?」
「大丈夫だって、千場」
「何を馬鹿な!《実験機》が暴走したら俺にもとめられん!ましてやあの兎野郎を……」
「いいじゃん別に。黒兎はきちんとやってくれるよ。それに……」
スロー再生されるDTL世界内の画像を眺める小波。
そこには、セモン達の姿が写されていた。
「清文ならあんなの無いに等しいよ。大丈夫。あの子は強いからね」
にやりと笑う小波。
「さぁ清文、姉ちゃんにかっこいいとこ見せてくれ」
後書き
お待たせしました!
神話剣DAO編第六話をおとどけしました!
ここで説明。
《エオス》はギリシャ神話に登場する『暁の女神』。
《ヘルメス》は同じくギリシャ神話の旅人と盗賊の神です。ローマ神話ではメルクリウスと呼ばれます。
《ノートゥング》は《グラム》もしくは《バルムンク》のもう一つの呼び方。ALOのものとは別物です。
更新は非常に遅くなりますが、次回もお楽しみに。
それでは!
ページ上へ戻る