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ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~

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DAO:~神々の饗宴~
  第五話

 目を開けると、そこは岩石で囲われた砦のような場所だった。

 近くには色とりどりの髪が見える。

「お、やっと来たな」

 陣羽織のような服装をした赤い髪の少年がセモンに気付いた。

「お前……カズヤ?」
「おう。《赤い太陽》カズだ。よろしくな」

 《赤い太陽》。まさしく、カズヤ……カズを表現するのにぴったりの言葉かもしれない。

「ふむ……お前はほとんど現実の容姿と変わらんな」

 次にやってきたのは巫女服を男用にアレンジしたような服装の、薄緑と紫の髪に、緑と紫の瞳をもった長髪の少年だった。

「《音を運ぶ風》リーリュウ」
「あ、じゃぁ、お前が良太郎か」

 よくよく見れば、二人とも、現実世界の二人とどこか似通ったところがある。

 しかし。最後の一人だけが、ダイブ前にはいなかった人物だ。


 薄い水色の長髪を、首筋で一つにまとめた物静かそうな少年。目の色は水よりも清らかな青。服装はカズのものによく似た小型の陣羽織だが、カズがその下に出口が広がったズボンを穿いているのに対し、こちらは弓道着、というのだろうか、ロングスカートの様なものをはいていた。

 その顔は、先ほどの三人のうちのどれとも違った、芯の通った涼やかな顔立ち。しかし、セモンはこの顔に見覚えがあった。

「おまえ、もしかして……ハクガ?鈴ヶ原ハクガ?」

 すると少年はニコリと笑って、答えた。

「はい。お久しぶりです、清文さん」
「やっぱりか!うわぁ、ハクナに会った時もびっくりしたけど、まさかお前にこんなところで会えるとは思ってなかったよ!」

 鈴ヶ原ハクガは、鈴ヶ原ハクナの兄だ。とある事情で、彼の意識はハクナの二つ目の人格となっている。意識のない彼の肉体は栗原邸の専用の部屋に安置されていると聞いている。

「ハクナはこの世界にうまくなじめなくて。代わりに僕がテストプレイをすることになったんです」
「初めてリアルでガっさんにあった時さ、びびったよ。まさか女の子だったとは」
「妹ですよ、カズ。僕は男です」

 ハクガがつっこむ。息ぴったり。

「改めまして、清文さん。《蒼の月》のハクガです。以後、よろしくお願いします」
「ああ。こちらこそよろしくな、ハクガ。俺はセモン」

 すると、リーリュウが口を開いた。

「セモン、お前の《称号》はなんだ?この世界では《称号》を名乗ることは最低限の礼儀とされている」
「し、称号?そ、そんなこと言われても、俺そんなのしらねぇって……」

 するとカズが笑いながら言った。

「メニューウィンドウを開いてみな。セモンはたぶんVRMMO経験者だろ?右手の指を振れば出てくるぜ」

 セモンはSAO時代と同じその動作をとった。すると、ちりりん、というサウンドと共に半透明のウィンドウが開いた。最上部には《天命》と記された、恐らくHP。その下に《OCO》……筋力値に相当する、オブジェクト・コントロール・オーソリティとおもわれる記述。《天命》《OCO》の隣には、プレイヤーネーム……《Semon》の文字が。そしてその下に、《称号》と思われる記述が。

 ―――――《神話剣》。

 それが、セモンに与えられた称号だった。

 かつてアインクラッドで、そして今アルヴヘイムでセモンの所持するユニークスキル、《神話剣》。それと同じ名がアインクラッド時代、セモンの二つ名として使われていた。なんだか懐かしいものを感じて、自然と目頭が熱くなってしまう。

 セモンは涙をこらえると、仲間たち(おそらく)を見て、言った。

「――――《神話剣》、セモンだ。よろしく、カズ、ハクガ、リーリュウ」



                    *


 白い宮殿。

 その建物を表す言葉は、たぶんそれぐらいしかない。

 それほどまでに、『白い宮殿』としか言いようのない建造物があった。宮殿の中は明るい白い光に包まれていて、温かく光が反射し合っていた。

 しかし、宮殿の奥に進めば進むほど、空間は暗くなっていく。最奥部にはほぼ闇しかない。

 そんな闇の中に、一枚の光の画面が浮かび上がっていた。

 その前には、ぼろぼろの布をとんがり帽子とローブの様に着込んだ、薄い金色のくせっけの男――――いや、男というにはあまりにも幼すぎるだろうか。少年だ。十五歳になるかならないかの、ひどく背の低く痩せた少年。その相貌は、奥を見通せない()()

 少年は、ひどく面白そうな表情で、浮かぶホロウィンドウを見つめていた。

 その隣には、黒と茶色の混じった癖っ毛をポニーテールにした少女と、真っ白い長い髪を腰まで伸ばした少女の二人。

「何か面白いものでもありましたか?お兄様」

 白い髪の少女が聞く。

 すると、少年はつつつ、と小さく笑って、無邪気な、しかしおぞましい笑みを浮かべた。

「ああ。面白いものを見つけたよ、グリヴィネ」

 少年は、青白い画面を見つめたまま、しばらく笑い続けた。

 その隣で、くすくすくす、と、癖っ毛の少女も小さく笑う。

「楽しくなりそう?」

 その問いかけに、少年はにやりと笑ってうなずいた。

「ああ。今までにないくらい」
「すばらしいです、お兄様」

 白髪の少女も満々の笑みを浮かべる。

 はたから見れば、談笑しているだけに見えないこともない。

 だがしかし、その場にいる三人全員が浮かべる笑みの中には、底知れぬおぞましき狂気が垣間見えていた。

「さぁ、はじめようか、今度の物語を。……喜劇か、悲劇か、それとも……」 
 

 
後書き
 次回いよいよDAO編が本格始動!

 お楽しみに! 
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