ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~
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双牛の乱舞
第二層も相変わらずユイのナビゲートの元、最速でボス部屋へと突き進む
敵と少なからずエンカウントしたものの、先頭のキリトが斬り、体勢を崩させ、俺、ユウキ、リーファが瞬時にその無防備な腹を斬り裂いて消滅していく
さほど時間はかからず、ボス部屋の前に到着した
「ミノタウルス?」
「それが二体か……」
第二層のボスは金の体色を持つミノタウルスと黒の体色を持つミノタウルスだった
得物は両方とも巨大なバトルアックス
鼻息荒く縦横無尽に振り回し、こちらを威圧している
「へっ、俺様が焼肉に変えてやらぁ」
そう叫んでクラインが一人でミノタウルスに突っ込んでいく
「明らかにクラインが挽き肉になる未来しか見えないんだが……」
「リン君! 変なこと言ってないで早く行って!」
気づけば俺以外の前衛がすでにミノタウルスに向かって走っていた
「へなっぷ!?」
金色のミノタウルスの一撃で地面にすりおろされているクラインは除く
「じゃあ、行くか」
一つ呟くと俺はミノタウルスに向かって走る
「やぁぁ!!」
金色のミノタウルスに初撃を与えたのはユウキ
気合いとともに剣がぶれる程の速度でミノタウルスに剣撃が叩き込まれた
しかし、硬質な音な音とともに弾かれ、上体が浮く
ミノタウルスのバトルアックスによる斬撃を剣で受け止めたユウキは同時に後ろへ跳ぶ
当然ミノタウルスの斬撃を受け止めたユウキは弾かれたように吹き飛ばされた
「ユウキ!」
俺はミノタウルスの方へ向かうのを中止
剣を鞘に納め、ユウキを受け止めた
「金ミノ、凄く硬いから注意して!」
前線を支えるキリトとリーファはユウキの叫び声に一つ頷くと再び剣を構える
俺はユウキを地面立たせ、頭を一つ撫でてから金色のミノタウルスに向かって再び走る
現在、金色のミノタウルスはリーファが対峙しているのだが、攻撃しても弾かれるため攻めあぐねている
それどころか、金色のミノタウルスの怒涛の攻撃で直撃はしていないものの、リーファは少なからずダメージを負っている
「リーファ、スイッチだ」
「わかった!」
リーファが一瞬の隙をついてソードスキルを使って金色のミノタウルスに強撃を与える
その一撃に金色のミノタウルスが怯んで動きを止めている間に、俺とリーファは立ち位置を入れ替えた
「こっちの黒ミノ、物理耐性はあんまり高くないぞ! リンはそっちの金ミノを引き付けといてくれ! 残りのメンバーでさっさと黒ミノを倒そう!」
黒いミノタウルスと対峙していたキリトがそう指示すると俺を含む全員が頷き、各自行動を始めた
「さてと……俺は俺の役目を果たすとするか」
敢えて声に出すことで、役割を再確認する
最近、ガラにもない主人公をやってきた所為かなんだか新鮮に感じるが、やはりこの立ち位置が一番俺には合っている
ステップでバトルアックスをかわしながら剣をクルクルと回して肩に担いだ
「……ちょっとだけ付き合ってもらうぞ」
後ろ向きへ、バックステップでかわしていたバトルアックスによる斬撃を反転して懐に潜り込むことで回避する
先程のサイクロプスと同じく、武器を使う巨大な人型モンスターには懐に死角が存在するのだ
もちろん、潜り込むだけで終わりではない
物理耐性が高いのならば魔法ダメージを与えればいいだけ。つまりソードスキルを使えばよい
片手剣二連撃バーチカル・アーク
物理八割、光二割
雀の涙ほどしかダメージが入らないものの、これ以上スキル後の硬直時間が長いモノを使うと間違いなく叩き潰される
俺の役割は時間稼ぎであって倒すことではない
直後に来た平手打ちをバックステップでかわし、さらに斜め上から来たバトルアックスを剣で受け流す
続いてきた足によるスタンプは後ろへバック転して回避
そのスタンプを載せての左袈裟斬りはバトルアックスの側面に剣を当て、その反動と跳躍でバトルアックスの起動上から待避する
「リン!」
「大丈夫だ。シノンは黒い方を優先してくれ」
今までの攻防で俺のHPの一割が消えている
心配そうな声を上げたシノンに返事を返すと、金色のミノタウルスの斬撃を逸らす
──最初の頃より動きが良くなってるか?──
恐らくは黒いミノタウルスのHPが減っているからだと思うが
考えながら金色のミノタウルスの攻撃をかわし、逸らし、いなす
段々と良くなっていくミノタウルスに顔をしかめながら直撃を回避していく
その時、金色のミノタウルスはいきなり動きを止めると踵を返し、黒色のミノタウルスの方へ走り出した
「させるか」
一瞬呆気にとられ、硬直してしまったがすぐに立て直し、走り出した金色のミノタウルスの足を鋼糸で掬い取る
するとミノタウルスは盛大な叫び声をあげて転倒。地面に転がった
あちらに目を見遣ると黒色のミノタウルスのHPがレッドゾーンに突入しており、金色のミノタウルスがそちらに向かおうとしたのはそれが理由だろう
憎悪値(ヘイト)を無視して向かって行こうとしたことから察するに行動の優先順位がヘイトよりもより上位に設定されていることがわかる
つまり、防御などあまり考える必要は無く全力で攻撃をしてもよいというわけである
戦闘スタイルからもわかると思うが、俺の精神力は強靭だ
少しタイミングがズレても、少し剣を振るうタイミングがズレてもアウトな戦い方を続けようとも、それに堪えうるくらいはある
しかし、それでストレスが溜まらないかと言えばそうでもない
俺だって人間であるし、苦難を受けつづけて喜ぶ様なマゾヒストではない
故に今までの防戦で溜まったストレスを今からの攻戦に篭めよう
システム外スキル、スキルコネクトを用いた多重スキル攻撃
防御を考えず、金色のミノタウルスに対して有効な魔法ダメージの配分が多く、のけ反り効果の高いソードスキルを俺の持つ多数のオリジナルソードスキルから選択し、組み合わせ、繋げていく
金色のミノタウルスは起き上がることもできず、地面をのたうちまわるだけになってしまっている
やがて、黒色のミノタウルスが砕ける音が聞こえ、それから十数秒後、後を追うように金色のミノタウルスは砕け散った
「ふぅ……」
スキルコネクト時に集中していた意識を弛緩させ、一つ息を吐いた
そして、黒色のミノタウルスが居たであろう場所でこちらを凝視する面々を目にして苦笑する
「リン……ハメ技は酷いと思うんだけど……」
「あははは……」
「にぃは凄いです!」
後衛のアスナとシノン。アスナの肩にいたユイが寄ってきて、アスナとシノンは苦笑い。ユイは純粋な瞳をキラキラと輝かせて飛び掛かってきた
飛び掛かってきたユイを手の平で受け止めて、肩に乗せてから頭を撫でる
「なんか、リン君が段々理不尽な存在になって来てる気がするんだけど……」
「俺は小技の引き出しが多いだけの脇役だ。今までもそうだし、これからもそうであるつもりだな」
俺のその言葉を聞いてアスナとシノンは苦い顔をした
「自分を過大評価するのはダメだけど、過小評価するのもダメだと思うよ? リン君はもっと自分を誇っていいと思う」
「私もそう思う。実際にリンは私のことを救ってくれた。リンは脇役なんかじゃない」
真剣なアスナとシノンの顔を見て苦笑いを浮かべる
俺はそんなに大物ではないはずなんだが……
「わかった。もう一度自分の評価を考え直してみようと思う」
「……わかってない気がする……」
俺の目を凝視してくる二人
なんだかいたたまれなくなったため話題を強引に変えることにする
「クエストの時間も圧しているし、早く行かないといけないんじゃないか?」
「……わかった。じゃあ、今夜、時間を作ってね。その時にゆっくり話し合お?」
どうやら逃げ切れないようだ
……初めて舌戦で負けた気がする
女性とはこんなにも怖い生き物だと初めて知ったんだが……
後書き
どうも、蕾姫です
今回は原作にもあった金&黒ミノ戦でした
前回のサイクロプスより苦戦してない……
金ミノとか無限スキルコネクトできるリンには勝てるわけないんで……
地面に転がして上から無限乱舞……起き上がろうにも、まずは上からの圧力を取り払わねばならないのに、俯せに転がってるもんだから攻撃が届かない……
文字通り瞬殺でした
で、圧倒的脳筋パーティであるキリト御一行様の前では魔法耐性が高いが物理耐性がそれほどでもない黒ミノなんかもはや敵ではない
金ミノ最大の敗因はリンに背中を見せたことだ!(バン
その後、少しだけ会話を混ぜました
リンは脇役だと思っています。私もそう考えて書いてます……がGGOのときのリンは確実に主人公だったため反論できず
リンの意識を変えるべくシノンのOHANASHIフラグが建ちました
というか夜にOHANASHIって一体どこでやるんでしょうねー(棒)
ご褒美と合わせて物理的に一肌脱いじゃう感じになるのではないだろうか
そういえばここってR18でも投稿できたっけ……
……まあ、ヤるかもしれんがやらないけど
いろいろと危険なフラグを建設しつつキャリバー習得まで突き進んで参りましょう
感想その他ポイントもよろしくお願いします
次は百足巨人だっけ? ヘカントケイル?……次回もよろしくお願いしますね
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