ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~
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氷の城、第一層
湖の女王、ウルズがリーファに制限時間を示すメダリオンを渡して姿を消し、俺達を載せたトンキーは無事にスリュムヘイムの入り口に到着した
「前に三人で行った時、最初の単眼巨人(サイクロプス)型邪神に潰滅(ワイプ)したんだったよね……」
「あの攻撃力は鬼畜だったね……」
アスナとリーファが走りながら揃って虚空を見つめる
キリトは苦笑いをしながらユイの指示の下ロジカルトラップをガチャガチャと片付けていた
「まあ、あの時はこんなに人数はいなかったし……それに今回はいないんじゃないか?」
「なぜそう言える?」
ウルズの話はほとんど聞いてなかったからな、俺(シノンと戯れていました)
「聞いてなかったのか?動物型邪神たちを滅ぼすためにスリュムヘイムからヨツンヘイムに多数の部下を下ろしたらしいぞ」
「……なるほど」
その下りは全く聞いていなかった
「でも単眼巨人(サイクロプス)型邪神って階段を守ってなかったかな?」
アスナの呟きが風に消えるころ
俺達の目の前に現れたのは次の階へ続く階段とその前に立ち塞がる一つ目の巨人
「居たな」
「……そうだな……」
全員苦笑い
「さてと、さっさと支援魔法(バフ)かけて伸すか」
「うん、じゃあ行くね」
アスナの支援魔法によって各種強化を行った後、サイクロプスの待つ大部屋に一歩足を踏み入れた
するとサイクロプスは閉じていた一つ目を開き、こちらを一目見ると、手に持った棍棒を振り回し、鬨の声をあげた
「行くぞ、ユウキ」
「うん!」
まず飛び出したのは俺とユウキ
種族的にも能力値的にも地上での敏捷度がトップである俺達が一番前に出るのは必然
飛び出してきた俺達をその一つ目で視認したサイクロプスがその棍棒を上から下へ振り下ろした
プレイヤーより遥かに優れた身長、筋力値から繰り出されたその一撃は隕石が落ちたのかと思うくらいの威力を持ち、地面に着弾した途端、そのインパクトで地面が激しく揺れた
しかし、その着弾地点には俺とユウキの姿はない
「いやぁぁぁ!!」
サイクロプスが少しの間見失っていた間にすでにサイクロプスの懐まで潜り混んでいたユウキは気合いとともに霞むほどのスピードで剣を突き出した
その一撃はソードスキルは使っていないものの、三段あるサイクロプスのHPの一段目を一割近く削り取った
雷鳴にも似た凄まじい叫び声をあげ、棍棒から放した手で羽虫を払うような仕種でユウキをはたこうとする
もちろん、ユウキは既に離脱しており、その手は空振りに終わる
片手剣単発重攻撃、ヴォーパル・ストライク。物理三割、炎三割、闇四割
轟音を立ててサイクロプスの瞳に俺の剣が突き刺さった
サイクロプスがユウキに夢中になり、俺から意識を外していた間に棍棒から腕を登って瞳の前に移動していたのだ
あからさまな弱点に強烈な攻撃が決まり、HPが一段目の三割も一気に消し飛んだ
ユウキを狙っていたサイクロプスがターゲットを俺に変更。棍棒で俺を殴ろうと振りかぶる
「リン、下がって!」
しかし、後方から放たれた炎を纏った矢が上空から降り注ぎ、サイクロプスが怯む
体術単発重攻撃、ムーンソルト
物理八割、光二割
その隙にサイクロプスの顎をスキルコネクトでスキルとスキルの隙間を埋めた体術スキルで打ち抜いた
下方向からバック転をするように蹴りあげ、顎に当てると必ずスタンするという強力な技だが、今回は地面を蹴っていないため威力が大幅に下がっている
それでも、その強烈な反動は健在で俺の身体はサイクロプスとの距離を空ける方向に飛んだ
空中でスキルディレイから解放され、体制を立て直すと地面に着地
ガリガリと地面を削りながら止まった
「ナイス、リンくん!」
「俺様も続くぜぇぇぇ!!」
「俺もだ!」
地面を滑る俺の横を駆け抜けるのはリーファとクライン、そしてキリト
滑りを止めた俺もすぐに反転。そのすぐ後ろに続いた
「ユウキ、スイッチ!」
「わかったよ!」
キリトの声にユウキはサイクロプスの棍棒をかわした後、バックステップで攻撃範囲外へ離脱した
スプラッシュダメージで受けたダメージをポーションで回復しているのを横目で見ながら薙ぎ払われた棍棒をしゃがんでかわす
「どりゃああぁぁ!」
凄まじく野太い奇声をあげてクラインが赤い光を乗せた太刀を一閃
同時にキリトとリーファも鋭い気合いとともにソードスキルで足を切り裂く
追いついた俺が前でサイクロプスの意識を集めている間にキリトとリーファとクラインとユウキがダメージを蓄積させていく
これで三段あるHPのうちの一本目が消えた
「攻撃パターンが変わるぞ! 注意しろ!」
「気をつけて! このパターンから上から氷柱を降らせる全体攻撃と目から放つ氷結系の直線レーザーをしてくるから!」
キリトとアスナが続けて警告を発すると、サイクロプスはそれに応えるかの様に足を振り上げ、勢いよく振り下ろした
衝撃が部屋全体に及ぶ
そして、天井に吊り下がっていた氷柱が一斉に降ってきた
全員が回避に専念する中、サイクロプスのタゲを取っている俺はそういうわけにはいかず、氷柱とともにサイクロプスの攻撃もいなさなければならないのだ
本当に並列思考が使えてよかったと思う
サイクロプスの振った棍棒の軌道を上へと逸らして氷柱の盾としたり、普通に両方ともかわしたりして凌ぐ
さすがにノーダメージとはいかず、何発か氷柱が掠っているが、アスナの回復魔法ですぐに全快する
そして氷柱の雨が降り止むと、溜まった鬱憤を晴らすかの如く怒涛の攻撃を撃ち込み、あっという間に二本目のHPバーが消えた
ビームも撃ってきたのだが、予備動作が大きすぎてよく見ていれば全く当たらない
威力は凄まじいんだろうが、当たらなければ意味がない
二本目が消えるとサイクロプスが棍棒を掲げて大きく唸る
「また、パターンが変わるぞ! そして、アスナ! シノン! 逃げろ!」
キリトがそう叫ぶと同時にサイクロプスが体勢を低くし勢いよく俺の方へ走ってくる
「はっ!?」
さすがに予想外だったが、加速するのが遅かったのと微妙に距離があったため普通にかわせた
しかし、横にかわした俺には目もくれずサイクロプスはアスナとシノン……後衛の方へ徐々に加速しながら突っ込んでいく
「三段目に突入すると後衛を重点的に狙う突進攻撃を使ってくるんだよ。前回はこれでアスナをやられて全滅した」
回復役がやられてしまうと必然的にパーティは全滅する
相手の攻撃力がこのサイクロプスの様に高いとスプラッシュダメージによる蓄積ダメージでも十分落とされるのだ
事実、今までの戦いで俺を含む前衛メンバーは何度かアスナに回復してもらっている
アスナとシノンが左右に別れて回避しているのを見て俺は一息つくが、リーファが焦ったように叫んだ
「その突進、ホーミングしてくるよ!」
「えっ……?」
かわした直後に弓矢を当てようと考えていたのか、弦を引いた状態でいたシノンは予想外の事態に固まる
その前にはすでに方向転換を終え、シノンに狙いを定めて加速し続ける暴走機関車と化しているサイクロプスの姿があった
シノンは一度回避した直後であり、体勢を立て直すよりもダメージを与えることを選んだため、とても回避をできるとは思えない
「シノン、転べ!」
「っ!」
俺の声に疑問を挟むことなくシノンは弓矢を射るために力を入れていた足から力を抜き、後ろへ倒れていく
……柔道において、なぜ何十キロもある相手を投げられるのか疑問に思ったことはないだろうか?
それは技をかける直前に必ず相手の体勢を崩すからである
最大静止摩擦力係数が動摩擦力係数よりも大きいように止まっているものを動かすよりも動いているものを動かす方がかなり楽なのだ
俺がシノンを転ぶように言ったのもそれが理由である
「キャッ!?」
俺が腕を思いっきり後ろへ引くと、シノンが可愛らしい悲鳴をあげてこちらに飛んでくる
シノンに纏わり付かせていた鋼糸をシノンが空中にいる間に解いて回収した
そして、シノンを両手で抱き留める
「リン、ありがとう」
「礼は後だ。口を閉じないと舌を噛むぞ」
即座にシノンの首の下と膝の下に両腕を入れてその場から横に離脱
俺達がいたその場所をサイクロプスが駆け抜けていく
顔を赤くしたシノン(さすがに彼女を肩で担ぐわけにはいかないためにお姫様抱っこになってしまったためだと思う)を抱いたまま走る
もちろん、サイクロプスも後ろを追ってきている
他の面々はその速さに手を出しあぐねているようだ
「シノン、この状態で弓は射ることはできるか?」
シノンが軽く頷いたのを確認すると壁に向かうように進路を変える
「なら正面に向けて高さ2mくらいの場所に一つ。そのさらに2m上の少し左に一つ、矢を頼む」
もう一度シノンが頷くのを確認すると声を張り上げる
「全員攻撃を用意してくれ!」
口々に返事をしてくるのを背中の後ろから聞きながら壁に向かって加速する
シノンが放った弓矢が俺が要求した通りの場所へ突き刺さったのを確認し、俺は跳んだ
まず一本目、根本の方を蹴ってさらに上へ跳ぶ
俺とシノン、二人分の体重+踏み込みの衝撃に矢が耐えられるはずもなく矢が折れるがすでに俺達は上に跳んでいる
さらに二本目、矢の側面を蹴り、勢いのベクトルを上から横へ変更する
あとは軽量妖精のみが使用できるウォールランでサイクロプスの着弾予定範囲から離脱した
俺が壁に着いた際、サイクロプスとの距離がほとんどなく、サイクロプス自身の速度もかなり速かった
つまり、そのような状態で曲がりきれるはずもなく、サイクロプスは壁に激突、そして壁に埋まる
俺が攻撃指令を出していた面々がその隙を見逃すはずもなく、ソードスキルの多段攻撃でサイクロプスのHPの最後の一段が消し飛んだ
「シノン、大丈夫か?」
「う、うん……その……嬉しかった、かな」
シノンを地面に立たせると一息ついてシノンに目を向けるとかなり真っ赤だった
「シノン、一緒に行こっ!……感想を詳しく聞かせてもらうから……」
「えっ……えっ!?」
「リン君、時間が危ないから早く行くよ!」
ユウキがシノンをさらって行くのを苦笑いしながら見送り、リーファの声に軽く手を挙げて走り出す
第一層、突破
後書き
どうも、授業中の睡眠時間の長さに定評のある蕾姫です
小説の構想を練ってると意識が堕ちるんだ。仕方ないよね☆
で、今回の話です
原作ではバッサリと削除されていたサイクロプス君が相手です
サイクロプスって聞くとドラゴンクエストに出てくるあいつが出てくるんですが……この小説でもあんなイメージですw
原作だとフィールド全体に拡散する波動的つららばりくらいしか描写がないので、いろいろオリジナル設定を加えてみました
三段目の後衛狙いの無限ラリアットは我ながら思いますが凄まじく危険ですよね。本編にも書きましたがスプラッシュダメージが実装されているALOで回復職が潰されるのは則ちパーティ全滅を意味します
まあ、殴りプリなんかいたら知りませんが
対策としてはスピード出す前にこかすとか上記の通り殴りプリを大量にパーティに入れるか今回やったように壁に突っ込ませる(普通なら一人犠牲が出ます)かです
スピード出されたら小細工なんかパワーで潰されます、はい
そしてもうひとつのオリジナル技、目からビーム
このパーティに直線のビームなんて通じるはずがなく一行で処理されてしまいました
イメージ的にはミクルビームでいいですよ
最後に聞きたいんですが……
風見幽香×フランドール・スカーレットってアリですか?
次回はミノ×2戦ですね
では、感想と↑の質問の答え、お待ちしています(笑)
ではでは
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