激突部活動!! バトルク☆LOVE
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一章 希望と絶望のセレモニー⑥
ブーーー!!
しばらくして、今から映画でも始まるのかという雰囲気のブザー音がこの暗くざわめきに満ちた空間に鳴り響く。
どうやらもうすぐ始まるようだ。
これを聞いた各生徒達は点々と私語を辞め、徐々にメインホールはゆっくりと静まり返っていった。
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
ホールの上部四方から四筋のスポットライトの線が中央ステージに一斉に当てられた。と同時にある人物の姿が照らし出される。
各モニターにもその人物が映し出されており、よく整えられた白髪頭に品の良さそうなスーツ姿、手には白い手袋をしている英国紳士のような初老の男性、しかしながらその表情は非常に堅い印象。
彼のことは学園生徒なら誰もが知っている。
この如月学園のNo.2にして政府から派遣されている人物の一人、副学園長の法院久ノ助(ホウインヒサノスケ)だ。
こういった大きな集会では彼が決まって司会を担当している。
「部活動関係者の諸君、ご機嫌様。これより全部活動対象の特別集会を開始する」
低く貫禄のある声が、彼の手にしているマイクにより館内に響き渡る。
ここまでくると流石に学生間の私語は全て消えていた。
「本日は学園長が多忙の為、私が代理として進行させてもらう。此度の件は諸君にとっては実に大事なことなので聞き漏らしのないように」
彼の話し方はその表情と比例しているように非常に堅苦しく聞いてるものに自然と切迫感を与える。
「京ちゃんそろそろ起きないと怒るよ?」
『…あぁ?なんだ?もう始まったのか?』
この広い空間の点のような一カ所にいる二人の男女、この段階になようやく京介は目を覚ました。
大きく伸びをし眠そうに目をこする。
それを見た小春もやれやれと一安心したようにホッと胸を撫で下ろす。
「今どういう状態だ?」
ホントに何も聞いていなかったようで、今更ながらな質問をしてくる。
「今から本題に入るみたいよ?」
『あ、そう・・・てかあれ副学園長じゃん!あの人の話し方あんま好きじゃないんだよなぁ~』
「こら!黙ってて!」
些細な会話を経た二人は再び中央に視線を戻す。
「今回日本政府からある要望が我々の元に届いた」
他の学校では考えられないような話の切り出し方だ。
「君達は勉学はもちろん部活動においても大変優秀な成績を収めており、我々教職者の立場としては非常に喜ばしく思う。そしてこのことを高く評価した政府は、この度これまでの選考内容に新しく部活動の項目も加えることを決定した。よって取り急ぎ有望な部活動を決めて欲しいとのことだ」
生徒たちはこの主旨がよく分からず会場内にどよめきが広がる。
「要はこの学園内で最も優秀な部活動を決めてくれということだ。詳しい説明はこれからする」
その空気を感じ取ってか副学園長も短く簡潔にまとめ話を続ける。
「諸君も知っての通り我が学園は政治や経済、はたまた軍事に至るまでありとあらゆる分野で活躍できるエリートを輩出し続けてきた。今までも当然君達のデータは国に渡し続けてきた」
これはあまり世間では触れられてはいないが学園内では全ての生徒が知っている暗黙の事実。
政府が管理している学校なだけあって生徒の成績や体調などのデータは情報管理されており、その情報は最終的に政府のとある機関に渡され保管されている。
しかもそのデータの内容次第では将来の地位や安寧は保証されているといっても過言ではないくらいの影響力を持っているのだ。
「これまではそのデータの内容は基本的に勉学や日頃の生活態度、運動神経テストといった学生としてはごくごく当たり前のものだった。しかしこれからはこの中に新しく部活動による評価も加味されることとなった」
「おぉ!」と一瞬館内に喜びに似た歓声が起こる。
それも無理はない、今までは頭のいい一部の生徒だけが卒業後に美味しいところを持って行って、それ以外の生徒は羨ましくそれを見ているだけだった。しかし今回の件がもし施行されるのならば、学力の関係ない部分で一流企業に就職出来る可能性も、軍隊の指揮官にもなれる可能性も考えられ各々の胸に様々な期待が巡る。
しかし一つ気になることがある。
「その評価対象の部活だが、普通なら獲得した賞の多い部活や大きな功績を収めた部活が対象になるだろう。・・・しかしながらその決定権を持つ学園長はそれを良しとしていないのだ」
そうそれは判断基準。いったいどのような基準で決められるのだろうか。
再び館内に静寂が戻り、副学園長の次の言葉にその空間にいる者たちの注目が集まる
「『運動部ならその中でも最も優秀な部を、闘技部ならその中でも最も最強な部を、文化部ならその中でも最も賢明な部を』これが学園長のお考えだ。だから今回種目やルールを超えて君達同士で競い合ってもらおうということで意見がまとまった」
中央巨大モニターに映し出される法院久ノ助副学園長の顔は開始時から一切表情を変えることはない。
ただひたすら一点の空間に目を据え、淡々と話し続けている。
なにやら面倒なことが起きようとしている、その光景をみて京介は直感的にそう察した。
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