ニュルンベルグのマイスタージンガー
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第三幕その八
第三幕その八
「さあ、次にはアップゲザングです」
「それはどういうものですか?」
「成功したかどうかは一組の夫婦が子供達に現われるのです」
「子供達とは!?」
「シュトルレンと似ていますがそれと全く同じではなく」
こういう意味であった。
「固有の韻や旋律に豊かです」
「だから子供なのですか」
「その通りです」
ザックスはわざと家族に例えて教えてみせたのである。
「そして自立しすくすくと育てばです」
「そうです」
「それが両親の喜びなのです」
こうも説明するのだった。
「これで貴方のシュトルレンも結末がついて何も欠けることがないようになります」
「はい。それではそれを活かして」
「またどうぞ」
「それでは」
ザックスの言葉を受けてまた歌いはじめる。それは。
「我が妙なる奇蹟を語ろう。見も得ざりし美しき乙女」
「美しき乙女」
今書き留めている。
「我が傍らに立てり。彼女は花嫁の如く我が身体を抱き眼差しも語り掛け」
「そう、その調子です」
「白き腕もて示すはかの生命の大樹に実った我がひたすら望みし尊き美味の果物にてありき」
「これなのです」
ザックスはここまで聴いて会心の言葉を出した。
「これが本当のアップゲザングです」
「これがですか」
「そうです。完全なパールが出来上がりました」
こうまでヴァルターを褒め称えるのだった。
「旋律は少し自由に過ぎますが」
「はい」
「私はそれが誤りだとは思いません」
「誤りではないのですね」
「ただしです」
しかし言葉を付け加えはしてきた。
「覚えるのが難しい歌ですので私達のうちの幾人かはそれを怒るのです」
「そこをですか」
「そこは御注意を」
「わかりました」
またザックスの言葉に対して頷いて答えた。
「それではここは」
「はい。そしてです」
ザックスはさらに彼に促してきた。
「第二のパールをです」
「第二のですね」
「そうです。そうして第一番がどうであったかを」
このことについて話すのも忘れてはいなかった。
「皆に判るようにさせるのです」
「皆に」
「マイスタージンガーだけではなく」
このポイントを強調するのだった。
「判るようにです」
「わかりました」
「今までの所は上手く韻がついていましたが」
「はい」
「全体に何を夢見、何を詩作したのか」
言う部分は細かかった。
「私にもまだわかりませんから」
「だからなのですね」
「はい、お願いします」
また歌うように促す。
「是非」
「では」
こうしてまた歌いはじめるヴァルターだった。構えて歌いはじめる。
「夕となれば空は火と消え日は私を残して去りゆく」
「そうです」
「彼女の瞳より歓喜を吸わんとひたすら願い抑え難く」
歌は続く。
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