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ニュルンベルグのマイスタージンガー

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第二幕その三


第二幕その三

「涼しい夜ね」
「そうだな」
 まずはそこから話すのだった。
「それで何なの?お話しは」
「明日どういった幸福が御前に訪れるか」
 月を見上げながら語るのだった。
「そのことを考えてな」
「私のことなのね」
「そうだ」
 また娘に語った。
「御前の心のときめきが御前に語ってくれる」
「そうなの。私の」
「そうだ。ニュルンベルグの町の皆が市民と岩誰といわず御前の前に集まり」
 彼はまた言う。
「そして栄誉の若枝を夫となるその人に与えるのだ」
「租してその人は」
「御前の選んだマイスターのその人を」
 ここでマイスターという言葉が出て来た。
「御前の心は告げないのだろうか」
「その人はマイスターでなければならないのね」
「そうだ」
 また娘に対して答える。
「それは御前の選んだマイスターだ」
「そう。私の選んだマイスターなの」
 エヴァもまたその言葉を聞いて俯いてしまった。
「その人と私が」
「そうだ。それは聞いているね」
「ええ。けれど」
 エヴァは父の言葉に応えてまた述べた。
「それは。もう一人しか」
「そうだな。それもわかっているが」
「それでお父さん」
 父に対して尋ねてきた。
「あの騎士さんは?」
「あの方か」
「ええ。あの方はどうだったの?」
「どうもな」
 首を傾げて言うポーグナーだった。
「何と言うのか」
「何とって?」
「悪くはなかった」
 ポーグナーもザックスと同じものは感じているのだった。
「しかしだ」
「しかし?」
「駄目だ。答えられん」
 首を横に傾げて言うのだった。
「どうもな。何が何なのか」
「わからあないの?」
「頭の中がこんがらがっている」
 こう言うしかないポーグナーだった。
「これでな。どうにもならない」
「そうなの。それで」
「今日はもう休もう」
 遂に諦めたかのように立ち上がるポーグナーだった。
「これでな」
「ええ。それじゃあ」
 ポーグナーは家に入って休んでしまった。しかし彼と入れ替わりのように家の裏口からマグダレーネが出て来た。そうしてまだ座っているエヴァの横に来て言うのだった。
「お嬢様」
「レーネ」
 エヴァは彼女姿を認めてすぐに問うてきた。
「何か知ってるの?」
「いいえ」
 残念そうに首を横に振るだけであった。
「失敗されたとしか」
「そうなの」
 それを聞いてまた俯くエヴァだった。父の言葉の感じからそれは薄々わかっていたのだ。
「あの人は」
「はい。そうみたいです」
「どうしようかしら」
「そうですね。ここはです」
 ここでマグダレーネは何かに気付いたかのように言うのだった。
 
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