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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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一部:超絶美少女幼年期
  四十九話:覚醒ドーラちゃん

 無事にキレイキレイを修得して、汚れとか色々取り除かれた結果、いよいよ気になることが。

「髪が。……焦げてる」
「……そうだな」

 なんか、気まずそうなヘンリー。
 ちなみにヘンリーの髪は、私が背中に庇った甲斐もあってか、王子様らしくお手入れの行き届いた様子で。
 汚れも取れた結果、ツヤツヤと輝いています。

 まあ、どうせ奴隷だし。
 攻略対象もいないことだし、髪は女の命!なんてほど、気にしては無いんですけど。

 焦げた状態でほっとくのは、非常に気になる。

 切らねば、なるまいね!


 ということで、みなさんが散髪用に使い回しているというナイフをお借りして。
 勿論、コイツもキレイキレイして、清潔にして!

 いざ、ひと思いに

「待て待て待て!!何をしようとしてるんだ、お前は!!」
「髪を切ろうとしてます」
「見りゃわかる!わかるが、そうじゃなくて!」

 そうじゃなかったら、なんなのさ?

「何、思い切り良くバッサリいこうとしてんだよ!!」

 それがなんか、悪いの?
 どうせ奴隷だし、この際だからどうせなら動きやすく!
 バッサリいっちゃおうと思ったんですけど。

「なんか、まずかった?」
「不味いだろ、普通に!女なんだから!」

 ああ、そうか。
 前世と違って、ショートカットとかボブみたいな、髪の短い女性はいないんだった。
 今まではしようと考えもしなかったから、うっかり忘れてた。

「そうか。……でもさ。別に、良くない?」
「何がだよ」
「どうせ奴隷だし。短いと、楽だし。そんな、こだわんなくても。私は気にしないし」
「やめろ。俺が、気になる」

 まあ、私からしたら、基本的に見えないわけだからね。
 周りにいる人間のほうが気になるというのは、一理ある。

 でも、気にならないように美しく切り揃えるとか、めんどいよね。
 誰かがやってくれたり他人にするならともかく、自分のだと。
 今まではサンチョがやってくれてたから、セルフカットの経験は無いし。

「……貸せ。切ってやる」
「ええ?」

 そんな器用な感じには見えなかったんですけど。
 お料理の手際を見るに。

「大丈夫だから、貸せ」
「うーん。なら、よろしく」

 よく考えたら、私的には短くてもいいわけだし。
 失敗されてからバッサリいっちゃえば、いいか。




「……ヘンリー。……器用だね」
「まあな」

 なのに、なぜ、料理は。

「……滑るだろ。野菜とかは。慣れてねえし」

 思考を読むなと言いたいところだが、これはこれで、慣れれば楽な気がしてきた。

 ということはつまりアレか、料理も慣れれば上手くなる可能性を、多分に秘めているわけか。
 本人にやる気があるし、舌は肥えてるだろうし。

 ……うむ!
 ますます、誰かに(なす)り付ける罪悪感が減った!

「……また、妙なこと考えてねえか」
「そんなこと無いって!」

 大丈夫!
 ちゃんと喜んでくっつきたくなるような素敵な女性を、お勧めしてあげるから、さ!
 例えば、マリアさんのような!

「……お前って、……本当に……」
「なに?」
「……残念だよなー……」
「そんな、褒めるなって」
「褒めてねえって」

 今のやり取りのどこに、そんなしみじみ残念がられる要素があったのかわからないけれども。

 大丈夫!
 隠すべき相手には、ちゃんと隠すから!

 なんか溜め息吐いてる人がいるけど、気にしない!



「おお!本当に器用だね!すごい、すごい!ありがと、ヘンリー!」
「おう」

 鏡とか無いので全体像を確認できるわけでは無いけど、手触りからして、整ってる感が!美容室帰りみたいな!
 サンチョより、上手いかもしれない!

 周りにいたみなさんも、口々に褒めてくれます。

「あらまあ。器用なもんだね」
「どうも」
「ドーラちゃん、ますます可愛くなっちゃって!」
「ありがとうございます!」
「あたしも、お願いしちゃおっかなー?伸びてきたところだし」
「いーなー、あたしもー!」
「いや、それは」

 盛り上がるお姉様方に、渋るヘンリー。
 別に、切ってあげればいいのに。
 上手いんだから。

「ヘンリーくんはまだ小さいんだから、大人を切るのは大変だろ。やめてあげなよ」
「あ、そっか。ごめんね、ヘンリーくん」
「いえ」
「そうだよ、それに」
「……あ!そっか!ごめんね、ヘンリーくん!」
「……いえ」

 そっか、そっか。
 忘れがちだが、まだ子供だもんね、私たち。
 ……それだけだよね!

 ……大丈夫!
 フラグなんか、仮に存在したとしても、叩き折ればいいの!
 散々残念がられてるし、大丈夫だって!
 存在も、してないって!!

 とりあえずお姉様方は、面白がって外堀を埋めようとするのはやめてください!!

 ……ハッ。
 敵は、そっちか!
 攻略対象外とか悠長なこと言ってないで、このお姉様方を、落として!
 早々にイケメン力を高めて、その力で、味方に付けて!

 面白がって子供たちをくっつけようとするよりも、私にキャーキャー言うような方向に、興味を誘導しないと!!

 ……よし!
 方針は決まった!
 あとは、実行あるのみ!!

「……ヘンリーが、しないなら。私が、やりましょうか?」
「え?ドーラちゃんだって小さいんだから、大変でしょ?」
「いえ。やらせてください。その美しい髪を整える栄誉を、どうぞ私に」
「……え?え?ど、どうしちゃったの、ドーラちゃん?急に」
「いえ。ただ、気付いたんです」
「な、……なにに?」

 思い出せ!私!
 あの、完成形を!
 未来の『私』の姿を!

 あの微笑みで、落とせ!!

「……みなさんの、美しさに。みなさんは、まだまだ美しくなれるという、事実に。……私に、任せてください」

 フル稼働した脳で、明確にイメージを呼び起こし、にっこりと。
 初めてのイケメン美女的微笑みで、お姉様方に微笑みかける、私。

「……!!……はい!!お願い、します……!!」

 よし!!
 これだけで落ちたとは言い切れないだろうが、掴みはオッケー!!

 私だって伊達に自分磨きに勤しんできたわけでは無いよ、自分のでなく他人の髪なら、任せろ!
 サンチョのも切ったし、褒められたし!


 呆気に取られるヘンリーを置いて、お姉様方に囲まれ、褒め殺しながらカットを開始します。

「本当に美しい、しっかりとした髪ですね」
「そ、そうかな?剛毛だし、ボサボサで、恥ずかしいんだけど」
「しっかりとした手触りは、髪が健康な証です。任せてください。少し整えれば、すぐに輝きを取り戻します。……貴女自身のように」
「……はい!!」
「ドーラちゃん、次、あたし!!あたしも、お願い!!」
「勿論です」
「あたしが、先よ!!」
「こんな美しい皆さんに先を争って頂けるとは、光栄です。でも、どうか、争わないで。私などのために、皆さんの美しさを、曇らせてはいけません。どうか皆さん、仲良く」
「……はい!!ドーラ様!!」

 ここでこうするつもりは無かったんだが、まあ仕方ない、背に腹は代えられない。

 しかしいくら完成形を知ってるとは言え六歳児では無理があるかと思ったんだが、やればできるもんだね!
 隔離されて娯楽に飢えてたせいも、あるかもしれないけどね!

 ……早目に気付いて良かった、本気で外堀埋められるところだったわ!!

 フラグなんかに、負けないよ!
 ルート回避も、諦めません!! 
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