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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第63話 戦いの序章が幕を開けるようです

Side 超

「目標、計画通り織原邸のダイオラマ球内に入りました。同時に"黒姫"ノワール、"女王"アリカの入場も
確認しました。」
「うム、まずまずネ。」

茶々丸の妹による監視を聞き、ダイオラマにつけた装置のスイッチを入れ、カシオペアの機能も作動させる。
この装置をつけるのに腕を一本失ったが、痛くは無い。何故ならば、私は―――

「超、"白帝"がいらっしゃいました。」
「……ああ、今行く。」

精々、彼にも頑張って貰おう。たとえ、裏切られようと、誤魔化されようと、流されようと。
彼の未来すら知っている私に、負けは無い。

Side out

Side ネギ

―――キンッ
「!?」
「あ。」
ドゴッッ!!
「げっぶぅ!?」

ノワールさんと格闘訓練をしている時に、妙な気配を察知する。一瞬だけ動きが止まってしまい、蹴りが見事に入る。
僕が訓練してる間、皆さんはアリカさんが相手してくれている。・・・さっきから静かなのは、考えないようにして。

「あらあら、大丈夫?どうしたのかしら。」
「い、いえ。ゲホゲホッ……何でもないです……。」
「ちょ、大丈夫ネギ!?コレ、行っとく?」
「や、やめておきます……。」

明日菜さんが首飾りを指すのを、丁重にお断りする。
それにしても、さっきのは何だったんだろう?危険が来たって言うよりは、危険が去ったって感じ・・・。

「全く、仕方ないわ―――あら、そう。そう言う事をするの。
アリカ、ちょっとだけ戻って来るわ。それと………。」
「………分かった。一応、気をつけるのじゃぞ。さて、講師交代じゃ。魔法理論から行こうかの。」
「は、はい。お願いします。」

ノワールさんが雰囲気を変え、家へと消る。
代わり、アリカさんがどこからか出したのか、黒板を使って授業を開始する。
そこに、家の方から来たのどかさんと夕映さんも集まって来る。・・・いや、今更良いんだけどね?
………
……

「さて、一端休憩しようかの。昼食は用意しとるから、勝手に食べてよいぞ。」
「は、はい………。」
「バーベキュー、バーベキュー!」
「あ、明日菜さん、元気ですねー……。」
「授業、殆ど聞いて無かったです。」

二時間の座学、一時間の基礎、二時間の戦闘訓練。(皆は基礎)
明日菜さんはアレだから仕方ないけど、他の皆の上達速度は目を見張る物があった。アリカさんも褒めてたし。

「あれー?ライター無いよー。」
「あ、はい。」(パチンッ
ボッ
「おぉ、さっすが~。」
「じゃ、あたし達は他の準備でも……。飲み物どこー?」
「勝手に家に上がったらダメだし、買って来る?」
「じゃ、わたしたちで行って来るアルよ。」

言いつつ、まき絵さん達がダイオラマから出て行く。でも、ここのダイオラマ凄いよね。
学園長先生のとこのは、二十四時間過ごしてからじゃないと出れないのに。

「お肉~お肉~♪おっにっく~♪」
「あーコラコラ明日菜。野菜も刺しなさいって。」
「いーじゃんいーじゃん。」

熱された網に乗せると、肉が良い音を立てて焼ける。けど、買い物組の皆さん待たなくていいのかなぁ?
・・・そうだよ!あっちで十分くらいだとしても、こっちで、えーっと・・・4時間じゃないか!?

「あ、明日菜さん、朝倉さん!僕が時間設定してきますから、焼くのは待ってください!」
「時間?」
「……あーーー!!ああ!そっか!!すっかり忘れてた!で、でも勿体ないし、これだけでも―――」
「数分で済むようにしますから、待ってください!」

一応言い、家の方に走って行く。
インターホンの位置に学園長室にある物と同じパネルを見つけ、こちらとあちらの時間を逆転させる。
十数秒後、買い出しに言っていた三人が帰って来た事を確認し、時間を戻す。

「お帰りー。」
「たっだいまぁー!さぁ飲むぞ食うぞー!!」

宴会か、と心の中でだけ突っ込んでおいて、僕も輪に加わる。

三つある網(?)は、肉だけの串を焼く明日菜さん達・戦場網、逆に野菜だけの串を焼く千雨さん達・黙々網、
バランス型ののどかさん達。僕は堅実に、のどかさん達のまったり網で食べる事にした。

―――その後二時間以上は騒いでいただろうか。
"しめ"と言われて焼きそばまで食べ、片付けまで終わったのだけれど・・・。

「来ないねー、ノワール先生とアリカ先生。」
「ねー。どうしたんだろ?」

家(別荘?)に行ったきり、音沙汰無しの二人。呼んでみたのだけれど返事も無く、中に入るには恐ろしく。
窓から覗いても見たのだけれど、姿も見えなかった。

「うーん、仕方ないですし、今日は帰りましょうか。」
「そうでござるな。一応、あちらでも時間は立っているのでござるし。」

バーベキューセットを洗ってまとめ、砂が無い家の前へよせておく。そして、魔法陣から出て、寮へ戻る。
―――その時は、気付かなかった。ポケットの中で、カシオペアが作動した事に。

Side out


Side 愁磨

「超、準備はいいか?」
「無論、出来ていル。そちらこそ武機神は完成しているかナ?」
「誰に言っているか。」

俺がニヤリと笑うと、超も苦笑したようなニヤリで返して来る。
明日・・・学園祭三日目、世界樹の魔力が最も満ちる時。学園祭ラストから始まる計画。

「(ネギが俺の思惑通り動いてくれれば、楽しくはなるがな。)」
「して、武機神はどこに?地下に移してあるのカ?」
「いや、こっちだ。」

製造用のダイオラマ球を出し、超と一緒に入る。中に入ると、そこはいきなり建物の中となる。
コンクリートと鉄に囲まれ、そこかしこで駆動音が鳴る。
エレベーターに乗り最深部へ行くと、眼下に広がるのは、7つの巨大な機体。

「これは………。」
「全機体とも操縦方法は同じだ。全高50mの鉄――いや、伝説上の金属で構成された究極の戦術戦闘兵器。
機関銃どころか、ミサイルでも傷つかん。」

一つはUFOの様な物から足が出た、可変型の機体"デストロイ・ガンダム"
一つは巨大な顔と触手を持った、禍々しい機体"デビル・ガンダム"
一つはマントの様に広がる大砲軍を持った、蒼い王の機体"キング・ザメク"
一つは黒いマントを翻し、自身と同大の剣を持つ武者の機体"ダイゼンガー"
その横に従うは、他の機体より更に巨大な馬型の機体"アウセンザイター"
一つは黒と金の、気高き様相をした黒い王と白い魔女の機体"ガウェイン"
一つは背に己よりも大きな十字の聖剣を背負う、臣下の機体"ギャラハット"

「素晴らしい……!で、7機あるようだが、実は6機しかない。私の機体はどこかナ?」
「何言ってるんだ?もう乗ってるじゃないか。」
「なん……っ、まさか、これがカ!?」
「そう。俺が創り上げた最大傑作、全長1200m、全高3000m、重量にして500万トン。
外は電磁フィールドと非実体防護壁に囲まれ、50連誘導ミサイルポッド400機、熱感知誘導レーザー発射装置150機。
自動狙撃銃7000丁。更に……。」

手元にある端末を操作し、"これ"の全容を記した設計図を呼び出し、超に見せる。
驚いた顔から困惑した顔、苦い顔・・・と変わり、笑顔になった。
何とも珍しく、キャッキャと端末をいじるその姿は―――

「(歳、相応だな……。)」

温かいような、悲しいような気持でそれを眺めていると、見られている事に気付きハッと顔を上げる。
そして顔を真っ赤にしてコホンと一つ。
いつも思うんだが、そんな事をしても一切誤魔化せないよな。

「あ、ありがとう。それで、これをどうやって外へ出すのかナ?」
「この球、そのままやるよ。割れば、中に入った物はそのまま外へ出て来る。」
「何と、これ一ついくら……いや、アナタにとってはタダだったネ。ありがたく受け取っておくヨ。」

それと―――と、超にそれを渡す。呪詛から受ける痛みを軽減する、お守りを。

「…………アナタは、似合わなイ。やはり、似合わないヨ。」
「お前だって、似合わないさ。でも、やらなければならんのさ。誰かがやらないとならんのさ。」
「それもそう……だネ。私はしばらく、説明書を見ているヨ。」

端末に向き直り真面目な顔になった超に別れを言い、ダイオラマの中から出る。
昼まで数時間あるが、さてどこで時間を潰そうか。と思ったその時。

「織原先生、動かないで頂けますかな?」
「よぉジジイ、珍しいな。学園長室から出てくるなんて。いい加減日光が恋しくなってきたか?」
「フォッフォッフォ、日光が恋しくなるのはそちらじゃと思うぞい?」

目の前に、学園長室以外では終ぞ見かけないジジイが立った。

Side out

―――――――――――――――――――――――――――――
Side ネギ

シュシュンッ
「わー!ホントに殆ど時間経ってないんだねー。」
「………どういう原理なのでしょう?時空間を歪めて?それとも思考だけを加速……しかし料理に火が通る時間――」
「え、ええと。それじゃあ皆さん。色々予定があると思いますから、解散しましょう。」

ダイオラマから出ると、まだおやつ時と言った時間帯。
挨拶しておこうかとも思ったけれど、家には誰もいないようだったのでそのまま外に出て、三々五々散って行く。

「ネギ、あんたはどうするの?」
「そうですねー。この時間からなら―――」

明日菜さんとパンフレットを見ながら歩いていると、ふと気付く。いや、これは・・・あまりにも、おかしい。

「明日菜さん、静かだと思いませんか?」
「へっ?な、何言ってるのよ。確かにここ、辺り一面林ってか森だから静かだけど……。」
「それはそうですけど、違うんです。静かすぎる……と思いませんか?」

疑問が確信――と言っても、何故、と言う事は疑問のままだけど――に代わり、
困惑顔の明日菜さんの手を引いて、森をすぐに抜け出す。そして目の前に広がるのは、道、屋台・・・だけ。
更にジャンプして確認。そこに広がるのは―――無人の麻帆良学園。

「な、なによこれ。サプライズイベントでもやって、皆そっちに行ってるの……?」
「…………………違います。周囲500mに、一切人の気配がありません。
更に、そう言ったイベントをできる世界樹広場と六つの広場。そして、周辺5kmに人の姿はありませんでした。」
「つ、つまり、どういう……事よ?」
「何らかの方法で僕達は、『異世界の麻帆良学園』に飛ばされたか、あるいは――――」

それは、あまりにも荒唐無稽な話だった。
何故なら、この麻帆良祭に来ていた人の人数は、正午時点で、29万人超。そして学園関係者(生徒含め)20万人強。

「麻帆良学園に居た人……約50万人が消えたと言う事です。」

Side out


Side のどか

「ゆ、夕映、のどか?これは一体どういう事なのかにゃー……と。」
「待つですハルナ。ハッキリ言って超常現象過ぎて私では分析不可能です。
ここは、一端ネギ先生と合流して話を聞くべきです。」

森から帰った私達は、図書館島探険ツアーの係をしに行こうとしたのですが、100mも歩かないウチに、
全員がある事に気付きました。曰く、『学園祭二日目の大通りに人が一人も見当たらない。』

「そ、そ、そうだね。でも、どうやって合流するのー……?」
「電話なり何なりあるです!と言うか、早速試す時が来たです。むむむ~……………。」
「が、頑張れ夕映!あんただけが頼りだ!」
「だったら静かにしててくださいです。」

ハルナが静かになった所で、夕映が再度神経を集中させます。先程習った『念話』と言う魔法の一種。
夕映は唯一、練習で何回か上手くいったから、きっとなんとか・・・!

「ネギ先生……ネギ先生………。」
「(夕――さん、夕映さ――すか!?今――こに居ますか!?)」
「ネギ先生!」

数分唸っていると、ネギ先生から反応が返ってきた様です。と言っても、途切れ途切れですが・・・。
・・・なんで話している事が分かるのでしょうか?

「(分か――した。僕はまき絵さんと――れて行きますので、さっきの家で――ち合いましょう。)」
「(了解しましたです。)……のどか、ハルナ。さっきのログハウスに戻るですよ。」
「うぅっ、また森の中歩くのか……。」
「いいえ、走るです。」

文句を言うハルナを尻目に、夕映は森へと軽い駆け足で向かいます。私は慌てて追って、ハルナは後から
渋々追って来きます。1kmもないので、探険部である私達にとってはそこまで苦労は無く、
この分だと5分ほどで戻れるだろうと思った―――その時。

―――ズズゥゥン!!
「キャアッ!?」
「ちょっ、なになに?!」

私達の前に、何かが降って来ました。
着地した衝撃で土煙と木の葉が舞い、それが晴れた時に、居た、のは・・・。

「クぅぅハハハハハハ!まぁぁさかと思って来てみればぁ。こぉんな小娘共がぁ、残っておぉるではないかぁ!
やぁれやれ、天才だろうがみぃ来人だろうがぁ!所詮彼奴も小娘とぉいぃう事かぁ。」
「へぅ…………。」
「の、のどか!?しっかりしてよ!」

まるで、この世の闇を全部押し込んだような、禍々しい男性。真っ黒な鎧、真っ黒な瘴気、真っ黒な刀。
そして、それだけで人を殺せるのではと思うほどの、真紅の眼光。

「なんともつまらんんんなぁ……。安心せよ、虐げる趣味はぬぁあい。
なぁにもかも一切合財、一撃で粉砕してくれようぞ。」

刀が、掲げられる。腰が抜けて座り込んだ私達には、逃げる事もままならず・・・
それが振り下ろされる――瞬間、影が飛び込んで来る。

ガギィィィィ―――――ン
「ぬぅぅぅぅ!?」
「いたいけな少女相手に何やってんだ?信っち。」
「せん、せー……。」
「なんで生きてるか、甚だ疑問ではあるが……。とりあえず、死ぬ気が無いなら逃げてくれ。」

私達を庇って立っていたのは、真っ赤なコートを着て2丁の大きな銃で刀を止めた、愁磨先生でした。

Side out


Side ネギ

―――ィン! ガギン ギィィン!
「ネギ、急いで!」
「分かってます、けど!流石に重いですし走りづらいんですよ!」

まき絵さん達を見つけて、家へ戻っていた僕達だったけれど、途中から切り結ぶ音が聞こえ、
僕が明日菜さん・まき絵さんを、長瀬さんが古菲さんを抱えて、急いでその場所へ走る。

「む、あれは……!?」
「のどかさん達、と………愁磨さん!?」

見えて来たのは、座り込んで動けない三人と、それを守っている黒い服の愁磨さん。
そして、愁磨さんと切り結んでいる、何者か。でも、あの真っ黒な感じは以前どこかで――――

「長瀬さん!二人をお願いできますか!?」
「いや、しかし……!………相分かった。拙者が行っても力になれんでござろう。」
「お願いします!!」

半ば放る様に二人を任せ、五人の傍に走る。と、愁磨さんがチラリとこっちを見て、叫ぶ。

「4秒だ!それ以上は持たん!」
「分かりました!!」
「"Act うんめいのうつくしきせかい"『限定発動 牢獄』!!」
ガゴォン!!
「ぬぅぅ、こぉしゃくなぁぁ!!」

闇色の水晶が、三人を襲っていた何かを閉じ込める。
それもほぼ一瞬で壊されるけれど、その一瞬の間に、更に水晶が重ねられる。
僕はその間に三人を脇に抱えて、一目散に家へと走る。

「ネギ、早く!!」
「ぁあああああ!!」

もんどり打つ様に家の中に飛び込むのも束の間、後ろで破砕音が聞こえる。
急いで立ち上がり、ダイオラマ球の中へと逃げた。

Side out
 
 

 
後書き
試験的に改行を少なくしてみました。
こちらの方が読みやすいと言うのなら以降はこの形で。
+更新は4日に1話な感じで。ストックが無いのです。 
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