IS ~インフィニット・ストラトス~ 日常を奪い去られた少年
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第06話
前書き
え~、少し早めの投稿です。
今回のメインは『更識姉妹、取り敢えず完結編』です。
その他、シャルルと勘違い、鈴の悩み、の二本です。
それではどうぞ。
…………………この前書きどうなんだろ。
「っと、まぁ、大体こんな感じか」
シャルルが転校してきた次の日、俊吾は簪にマルチロックオンシステムのデータを渡すために整備室に来ていた。
たった今、完成したデータを打鉄弐式にインストールし終えたところだ。テスト可動をしていないのでどうなるかは分からないが、おそらく問題ないだろう。
「うん、インストールされた……あとは、荷電粒子砲だけ…………」
「あ、荷電粒子砲もあるんだ。結構凄いな」
「でも、まだ試作段階……」
「試作か……まぁ、荷電粒子砲程のモノになれば仕方ないか」
「うん……これは、結構簡単に出来そう……」
……荷電粒子砲が簡単に出来そうか。何というか、やっぱり楯無さんの妹なんだな……。やたら高スペックだ。…………俺がいなくてもエネルギー回路出来たんじゃないんだろうか。参考書片手に操作して、いつの間にか見なくても出来るようになって……。努力で乗り越えられたんじゃないんだろうか。
だとすると、俺はその貴重な努力の機会を奪ってしまったのではないのだろうか。俺が手伝わなければ、簪さんは楯無さんと並べて自身を持てたかもしれない。そうならないように楯無さんには頼まれたが、それはそれで一つの解決なのではないのだろうか。
姉と同じ土俵に立つ。それだけで、一つの自身に繋がるだろう。それで、同じ土俵に立ち姉と向き合う。これが理想ではないのだろうか。
確かに、必ずそうなるとは限らない。だけど、簪は自分自身で成し遂げた努力と言う大きな『糧』を得る。もし、楯無さんと向き合えなくともその努力という糧のお陰で別な自身に繋がる。これも一つの完成形なのではないのだろうか。
そう考えると、自分の善意というのは全て無駄で、何もかもが邪魔で、善意ではなく偽善になってしまう。
俊吾がそんな事を考えていると、簪が口を開いた。
「ありがとう……俊吾君のお陰で……私の打鉄が完成した……」
簪は一つ一つの言葉を繋ぎながら話している。口下手な彼女にとって話すのは難しいことで、苦戦しているようだった。
「私、最初は……本当にこの子を完成させようとしていた……お姉ちゃんに対抗するために……」
簪は何かを考えるように言う。
「正直言って……それに俊吾君を巻き込んで……申し訳ないと思ってる……ごめんなさい……」
簪は続ける。
「だけど、最初に手伝ってくれたときに言ってくれた言葉……覚えてる……?」
段々と言葉と言葉の間の間が無くなってきている。本人は気づいていないが、俊吾は気づいた。
「私、あれのお陰で救われた……どうしても、お姉ちゃんに勝ちたかったから、一人でこの子を完成させようとしていた。でも、それは無理だった……。やっぱり、私はお姉ちゃんよりもダメなんだって思うと悔しくて……」
そういう簪は本当に悲しそうで、その時、本気で悩んでいたことが伺える。
「でも、俊吾君にああ言ってもらえて、私思ったんだ……。私、お姉ちゃんに追いつきたいのに何で同じ方法でやってるんだろうって……。だから、私は私なりの方法でお姉ちゃんに追いつこうって思った」
少し簪が笑った気がする……。
「私は誰かに頼って―――ううん、俊吾君と一緒にこの子を完成させたいって思った。お姉ちゃんには離されちゃうけど、それでも良いって思えた。むしろ、それが良いって思えた。お姉ちゃんと違う方法でお姉ちゃんに追いつく。そう思うだけで、私はお姉ちゃんと比べられるだけだった私と決別出来た」
簪は嬉しそうな顔になって、そう言う。
「私は、俊吾君がいたから頑張れた。私の大切な……大切な―――『友達』の俊吾君がいてくれたから。だから、その……これからも一緒に……いてくれると…………嬉しい………………」
簪は途中で、今まで自分の言っていたことを思い出し、顔を赤くした。自分で信じられないくらいスラスラと言葉が出たことに恥ずかしがっているのか。それとも、内容を恥ずかしがっているのか。その真意は分からないが、恥ずかしがっていた。
反対に俊吾はと言うと、簪の言葉を噛み締めていた。自分の中で生まれた、簪にしてきたことへの疑問。それが、今の簪の言葉で消え去った。心が軽くなった。救われた。それだけで、俊吾は自信を持てた。そして、簪の言葉に答える。
「……こちらこそ、よろしく頼むよ。簪さんがいると……俺も嬉しい」
それを聞くと、簪は嬉しそうに
「うん!」
と言った。
心を開いたと、いうよりもこれが簪本来の素の姿なのだろう。楯無と言うあまりにも大きな存在の姉がいたせいで、圧縮されてきた簪本来の姿。それが俊吾と会って簪が変わったところだ。まだ人見知りではあるが、それも改善されていくだろう。
そして、二人はその後、仲良く寮に戻っていった。いつも以上に会話が弾み、楽しそうにしながら。
◇ ◆ ◇ ◆
俊吾が部屋に戻ると、予想通りの人がいた。
「おかえり、俊吾くん♪」
「やっぱり来ましたか、楯無さん。来るとは思ってましたけど」
「だったら、早く部屋に入って入って」
楯無は俊吾の手を引いて、部屋に入った。楯無は前来た時と同じようにベットに座り、俊吾も同じように備え付けの椅子に座った。
俊吾は本題に入る前に、疑問があったので楯無に聞いた。
「そういえば、楯無さん。俺の部屋変わってたのに良く分かりましたね」
「あぁ、それね。シャルル・デュノアくんだっけ?あの子が転校してきたから、俊吾くんが部屋変わりそうだな~って思って調べておいたのよ。これから部屋に来やすくなって嬉しいわ」
部屋変えたの失敗だったかな……。無理してでも、シャルルと一緒の方が良かったかも。いやでも、あのゾワゾワを感じながらの生活は辛いものがあるな……。まぁ、多少面倒でも一人部屋だから良いか。
「失礼なこと考えてない?」
「いえいえ、そんなことありませんよ」
この読心術どうにかならないものか……。あ、それとも俺が考えてること顔に出やすかったりするのか?次はポーカーフェイスを決めよう。うん、そうしよう。
俊吾はそんな決心を心の中で行った。楯無は話すタイミングを伺っているのか、少しソワソワしている。
「あの、俊吾くん。今日は話があるんだけど……」
「分かってますよ。簪さんのことでしょう?どうせ見てるだろうから、今日来ると思ってましたよ」
その台詞に楯無は一瞬呆け、そして、いつもの調子に戻った。
「そうよ~、俊吾くんは察しがよくて助かるわ~」
いつもの調子には戻ったが、直ぐに顔がいつもとは違う笑顔になる。
「……ありがとうね、簪ちゃんのこと」
そう言う楯無は、とても優しそうな笑顔をしていた。
「俺は頼まれたことをしただけですよ」
俊吾は素っ気なく返した。面と向かってお礼を言われ、恥ずかしかったのだ。
「そうね……私が頼んだんだからお礼言うのはおかしいわよね……。でも、簪ちゃんの様子を見ると、自然とお礼の言葉が出ちゃうのよね……」
どこか悲しさと嬉しさが混ざったような声で言う。
「楯無さん、俺はあくまで背中を押したに過ぎませんよ。簪さんだって、自分のやり方に疑問を持っていたわけですし。俺が何もしなくとも、一人で前に進んだと思いますよ」
「確かにそうかもしれないけど、一人で進む道が必ずしも正しいとは限らないでしょ?」
「それを言ったら、俺が別な方向に進ませるかもしれませんよ」
「それはありえないわ。俊吾くんって正直で嘘なんて言えないじゃない」
何か貶されてる気がするな……。確かに嘘は苦手だけどさ。って、俺って顔に出やすいんだな、楯無さんの言ってるセリフを考えると。それで心読まれるのか……。
俊吾が一人で解決した後で、楯無が続ける。
「私もね、どうでもいい事を考えてる人に大切な妹のこと頼まないわよ。信頼してる人じゃないと頼まないわ。この言葉の意味わかる?」
「俺のことを信頼してくれて嬉しいですけど……」
「けど?」
「……いえ、何でもありません」
初めて会った人間をそこまで信頼するってどういう事なんですか?とは聞けなかった。何故だか分からないが、その言葉が出てこなかった。
俊吾は少しネガティブになっていたので、話題を変えようと口を開いた。
「そういえば、今日も覗き見てたんですか?」
「覗き見るなんて酷いな~。監視よ監視。俊吾くんが簪ちゃんに何かしないようにね」
何かって何やねん。
「もし、何かしてたら?」
「うふ……聞きたい?」
楯無は妖艶な笑みでそう言った。
「いえ、全力で遠慮させていただきます!」
「あら、残念。ねっぷりと教えてあげようと思ったのに……」
おおう、ある程度距離が空いてるからゾワゾワこないと思ってたけど、甘かった……。寒気レベルになったよ。
「今日の簪ちゃんも見ててとっても楽しかったわ」
楯無は今日の整備室の風景を思い出しながら言う。その顔は優しい笑みで包まれている。
「あんなに喋る簪ちゃん見たのいつぶりかしら…………。凄く懐かしかったわ。それに、あんな事も言ってたしね」
……あんな事?何かあったっけか?
俊吾は今日の出来事を思い出すが、話題になりそうな事は無かったと思った。
「……もしかして俊吾くん、分からないの?」
「わからないも何も……今日は何もなかったかと」
「一夏くんの事言えないじゃないかしら………………まぁ、簪ちゃんも言い方がアレだから仕方ないかもしれないけど……」
一夏の事言えないって俺が空気読めないとかそんな感じか?いや、俺は空気読んでるはず…………読んでるよね?
「まぁ良いわ。あとは、簪ちゃんに任せましょ」
どこか仕切り直すように楯無は言った。
「それで、俊吾くんは私に何かして欲しいことある?」
「……何ですか、藪から棒に」
「私のお願い聞いてくれたから、一つくらいだったら何でもお願い聞いてあげてもいいわよ?」
上から目線なのは気にしちゃダメですよね……。と言うか、正直言ってお願いなんて一つしかない。
「じゃあ、部屋に来ないでください」
「え~、それじゃあ私ここに来れないじゃない」
「部屋にさえ来なければ良いんですよ。別に学校内だったら会いに来てもいいですから、ここに来るのはやめてください」
俺の唯一の憩いの場なのだ。部屋に来るのはどうにかして欲しい。一人部屋になったことだし。
「そんなこと言ってると、生徒会長権限で私、この部屋に越してくるわよ」
「生徒会長権限って……何ですかそれ」
「学校のことだったら、大体の要求は通るわよ」
「そんな権限あっていいのか……」
「何だったら、権限使わなくとも、この部屋に引越ししてくる理由なんていくらでもでっち上げるけど?」
「すいませんでしたごめんなさい別な願いにするので勘弁してください」
俊吾は全力で土下座をした。負けが決まったのだ。屁理屈で教師を言いくるめるのはこの人だったらやりかねない。そう判断し、直ぐに白旗をあげた。
「そ、そんな全力で断らなくても……………私、そんな嫌われてるのかな」
楯無は俊吾の反応に結構ダメージを食らっていた。
「まぁ、これについては置いておきましょう。置いといていい気はしないけど、話が進まないからね」
こっちからすれば、早く話を進めて欲しい。何故なら、お腹減った。早く飯食いに行きたい。
「それで、お願いは決まった?」
「う~ん」
変な請求は嫌だし、何か大きい請求も嫌だし……。高校生の普通の要求でもしてみるか。別に願いに関してはどうでもいいし。
「じゃあ、一回ご飯でもおごってください」
「そんなのでいいの?」
「はい。一応俺ら高校生ですし、これくらいでいいですよ」
「ふ~ん……でも別に、そういうことじゃなくてもいいんじゃないの?」
「え?」
楯無は俊吾に近づいていき、頬に手を添えた。
「こういうことだって…………私は構わないわよ?」
楯無の顔が俊吾に近づく。キスが出来そうなくらいまで……。
「俊吾~?ご飯食べに行かない?」
「っ!?」
部屋に入ってきたのはシャルルだった。そして、部屋の中の惨状を見て固まる。
「…………」
……………………………………。
俊吾は何も言えなかった。客観的に見たら、この体勢はキスされそうな図である。弁解の余地なんてありはしない。
ちなみに、俊吾がここまで動かなかった理由は、単純に動けなかったのである。あまりの楯無の目力によって。
「あ、あはは、僕何か彼女さんとの時間、邪魔しちゃったみたいだね……ごめんね、直ぐに出てくから!」
そういってからのシャルル行動は早かった。素早く部屋から出ていき、ドアを閉め走っていった。
「…………あの、楯無さん」
「なぁに、俊吾くん」
「……どうすればいいんですかね」
「俊吾くんの好きにすればいいじゃないかしら?」
「…………あんたのせいでこうなったんだろうがぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
俊吾の叫びが寮中に響き渡った。
◇ ◆ ◇ ◆
「ああ、もう。本当にどうすればいいんだ……」
俊吾はその後、楯無を追い出し部屋で頭を抱えていた。シャルルに誤解されたことに関して大いに悩んでいた。
「だから、あの人を部屋に入れたくないんだよ……」
完全に欝であった。
楯無さんを彼女と間違えられるなんて……。って、良く良く考えたらあの人美人だったな。…………まぁ、今は関係ないか。このままだと、楯無さんが大変そうだしどうにかしないと。しかも、今日中に。シャルルの誤解を解いて、噂が流れるのを阻止しなければ。
というか、俺が頑張ろうとしてるんだ?ある意味、役得じゃないのか?普通に考えたら、あんな美人な人と付き合うことなんてありえないんだし……。
…………あぁ、ありえないからこそ嫌なのか。俺の普通さ(悪く言ったら地味さ)で楯無さんの評判が下がったらそれこそ一大事だ。他人に迷惑はかけたくない。理由はそれだけか……我ながら単純だな、俺。
「取り敢えず、シャルルを探すか……」
俊吾は部屋を出て、一夏とシャルルの部屋に向かった。
「シャルルいるといいなぁ……よし」
俊吾はドアをノックする。
「は~い」
部屋の中から声がする。一夏のこれではないからシャルルだろう。
「俊吾だけど、入っていいか?」
少し間があってから。ドアが開いた。
「……入って」
シャルルはそう言って俊吾を部屋に招いた。シャルルはベットに、俊吾は定位置になりつつある机の備え付けられている椅子に座った。
少し、間があってシャルルが口を開く。
「それで……どうしたの、俊吾」
シャルルの声はどこか沈んで聞こえた。
「ああ、話があって。……さっきの事なんだけど」
ビクッ!とシャルルが驚いていた。
何でこいつこんな驚いてんだ?さっき話するだけで、こんな驚くか?普通。まぁ、いいや。さっさと誤解を解いて飯を食いに行こう。
「さっき、部屋にいた女の人はこの学校の生徒会長の更識楯無さんなんだ」
「…………彼女さんの自慢するために来たの?」
ジトーとシャルルは俊吾を見る。
「いや、そうじゃなくて……。あの人……楯無さんは俺の彼女じゃなくてだな、相談に乗ってもらってたんだ」
「じゃあ、何で名前で呼んでるの?箒さんとか名前呼ぶのに時間かかって、未だに緊張してるのに、その生徒会長さんの時はそんな自然なの?…………僕の名前だって呼ぶのぎこちないし」
最後は何言ってるのか良く分からんが、何でって聞かれても良く分からないんだよな。まぁ、少しでっち上げて話すか。
「いやな、楯無さんは転校した初日に会って、それから親切にしてもらってるんだよ。だから、結構名前呼ぶ機会が多くて慣れたって感じだな」
「ふ~ん……」
シャルルはどこかまだ信じきってないようだ。
う~む、嘘がばれたかなぁ……。流石にそれはないか、多分。
「じゃあ、俊吾は僕が生徒会長さんを俊吾の彼女さんに間違って嬉しかった?」
……『じゃあ』の使い方おかしくないですかね。それに質問の意図が良く分からないし………。俺が楯無さんの彼氏って間違われて嬉しかったって事でいいのか?
シャルルはどこか不安そうな顔で、俊吾の返答を待っている。
「いやまぁ、あんな美人な人の恋人に間違えられるのは正直嬉しいよ?」
シャルルがどこかシュンとなった気がした。
「だけど、俺が嬉しくても楯無さんが迷惑だろ?俺みたいな平凡な奴と恋人に間違われたら。楯無さんに迷惑だけはかけたくないからさ、シャルルに楯無さんとは恋人じゃないって分かって貰いたいんだ」
「……じゃあ、さっき何でキ……キスしようとしてたの?」
やっぱりそれを突いてくるか……。これもでっちあげるか。
「あれは、楯無さんがベットから立った時にバランスを崩して、それを抱きとめて、その直後だったからあんな感じだったんだよ。実際はキスなんて出来なかったんだよ、顔が離れてたから。多分、シャルルのところからは遠近法の関係でそう見えたんじゃないのかな?」
「…………」
シャルルは俊吾をじっと見つめている。嘘か本当かを見極めてるのだろう。
「………………はぁ、俊吾が自分を卑下にするってことは本当に恋人じゃないんだね」
いや、その判断基準はおかしい。そして、何でため息?まぁ、だけど、分かってくれればそれでいいか。
「誤解が解けたみたいで良かった。そいや、シャルル。お前はご飯食べに行ったか?俺、まだだからまだだったら一緒に行こうぜ」
「僕もまだ食べてないから一緒に行こうかな」
多分、さっき俺たちを見てから直ぐに部屋に戻ったんだろう。何か、悪いことしたかな……。まぁ、悪いのは楯無さんだけどさ。
そいや、一夏がいないのはいつも通りの3人に連れて行かれたんだろうな……。多分、シャルルもそれにお呼ばれされたんだろうけど、空気読んで辞退。そして、俺のところに来たんだろうな。それなのに、あれと。少し悪いことしたかな……。
二人は部屋を出て食堂に向かった。
◇ ◆ ◇ ◆
「そういえば、さっきの話、食堂で話しても良かったんじゃないの?」
歩いている途中にシャルルがそんなことを言ってきた。
「あんまり聞かれていい話でもないだろ。食堂の誰かが又聞きして、それが噂になったら楯無さんに迷惑かかるだろ?だからだよ」
「何というか……俊吾は楯無さんが大事なの?」
……どういう質問なんだ、それは。何というか、シャルルという人間が良く分からなくなってきた……。
「まぁ、そりゃあ大事だろ。相談に乗って貰ってたわけだし」
「………………今わかったけど、俊吾って自分を卑下にしてでも他人を気にして助けるよね。何で?」
「何でって…………。まぁ、俺の周りは俺なんかよりもっと凄い人しかいないわけだし、他人を尊重するのが普通じゃないか?」
シャルルはそれを聞くと、少し怒ったようだった。
「僕はそんなことないと思うけどな。俊吾だって尊重される人間でしょ?」
「いやまぁ……ISを使える男って意味ではそうなんだろうけど、実際は一夏とシャルルの方が操縦技術は上だしなぁ」
「俊吾……それ本気で言ってる?」
「本気もなにも、事実模擬戦で勝てた試しないわけだし、そうだろ?」
シャルルとは一度、山田先生と模擬戦をした後の授業の空き時間に少しだけ手合わせをした。感想は、山田先生には劣るけど、素晴らしい射撃だった。
シャルルは『ラファールリヴァイブ、カスタムⅡ』と言って、ラファールリヴァイブの後付武装と拡張領域を広げた中々操縦が難しい機体である。普通のリヴァイブよりも武器が多いため、火力は問題ないが武器のコールが中々難しくなってくる。種類が多いだけに、イメージなどが固まらない場合が多い。
だが、シャルルは素早く武器をコールし即座に攻撃。素早いコールをラピッド・スイッチというらしい。そのラピッド・スイッチを駆使し戦うのがシャルルの戦闘スタイル。
「はぁ、一夏も大概だけど、俊吾も中々だね……」
「どう言う意味だよ?」
「俊吾ってIS動かして二週間ちょっとだっけ?」
「ああ、大体そんなもんだけど」
本当は二週間も経ってないけどね。大体、10日前後ってところだな。
「ISは起動時間が物を言うのに、たかが二週間ちょっとであれだけ出来るって異常だよ?遠距離からの狙撃だって、今はまだ荒削りな部分はあるけど僕と同等だろうし、武器のコールだって滞ることなく素早くできる。他の近~中距離の武器だってそつなくこなすし……。俊吾は自分を卑下にするのは知ってるけど、実は凄いんだよ?分かる人が見れば直ぐに分かるくらいに」
「まぁ、俺昔からこういうのに慣れるの早かったからな……。そんな感じで今回もうまくいってるんだろ」
「そんな感じって……俊吾はもっと自信を持っていいよ。今はまだ負けることが多いだろうけど、時間が経つことにつれて勝てるようになるからさ」
「う~ん、そんなもんかな…………っと、食堂ついたな。シャルル何食べる?」
「え、僕?僕は……洋食セットかな」
「分かった。じゃあ、シャルルは先に席に行っといてくれ」
「うん、分かった」
俊吾は食堂のおばちゃんにメニューを言い、料理が来るのを待っていた。料理が来たので、それを持ってシャルルのところに向かう。
「ほい、洋食セット」
「ありがとう。俊吾は何を頼んだの?」
「ん?俺はカツ丼だな」
「わぁ~、何か日本って感じだね。その丼な感じが」
それはどういう意味なのでしょう。丼な感じってどういうことだよ。丼は丼だろうよ。……まぁ、別な国から来た人にとっちゃそういうもんか。
「カツ丼は日本生まれだからな。だけど、刺身とか焼き魚とか味噌汁とかの方が日本食っぽくないか?」
俊吾はカツ丼を食べながら、そう言った。シャルルも俊吾が食べ始めたので、食べながら答える。
「まぁ、そうなんだけど、そう言う感じの丼ものとかもフランスには無いし、日本食だな~って思うんだ」
「なるほどな……」
日本人がパスタやリゾットをイタリア料理と思うように、外国も似たような感じなのだろう。そこはどこの国でも人間は一緒ということか。世界は広いようで狭いな。
その後、二人は話をしながら食事をした。
◇ ◆ ◇ ◆
食後、シャルルと別れ部屋に向かう俊吾。丁度、部屋の前の近くに来たところで部屋の前に見知った顔があった。
「鈴さん、一体どうしたの?俺の部屋の前で」
「あ、俊吾……」
鈴はどこか浮かない顔をしている。何かあったのだろう。俊吾の予想は一夏関連である。
「うん、あの……話があって」
はぁ、結構ダメージ受けてるみたいだな。全く、一夏も何したんだか。
「そっか。じゃあ、部屋に入ってよ。お茶でも出すよ」
俊吾は部屋に鈴を招き入れた。鈴はベットに座り、俊吾は部屋に備え付けられているポッドのお湯でお茶を淹れていた。
あんまり熱くないほうがいいかな。適度な温度の方が鈴さんも落ち着くだろうし。
俊吾は早めにポッドのお湯を急須に入れ、充分に色が出てから鈴に渡した。
「どうぞ」
「……ありがとう」
鈴にお茶を渡し、俊吾は定位置の椅子に座った。鈴はお茶を啜りながら話始めた。
「今日ね……一夏にアピールしたの、だけど、全然反応してくれなくて……。むしろ、ちょっと素っ気なくて、私怒って帰ってきちゃったの……」
あの、出来ればそう言った相談は別な方にお願いします。完全に管轄外です。というか、何でそこで怒って帰ってくるんだ……。一夏に反応してもらえないのもそれが原因ではないのだろうか。
「それで怒って帰ってきちゃったから、どうしようって思ってるわけね」
鈴は何も言わずに頷いた。
何というか、鈴さんって普段強気でいるけど本質的にはこんな感じなんだろうな。何度か、こんな感じの状態を見かけたし。もしかしたら、自信がなくてそうなっているのかもしれない。セシリアさんも箒さんもかなりスタイルいいし、料理がうまい。あ、セシリアさんは違うか。
鈴さんは確かに、二人ほどスタイルは良くない。多分、そんなところにコンプレックスを抱き、何とかしようと強気でいるんだろう。それがいつも逆に出てしまって、ちょっと心に来てしまった。で、それが今の状態。
それは分かるんだけど、なんで俺に相談するんだろう。年頃の女子に相談したほうが良くないか?俺と一夏の共通点があるとしたら……男ってことだけ。つまりそういうことか。同じ男として、男目線での解決をすればいいと。はぁ、ハードルたけっ…………。まぁ、鈴さんの欠点を改善すればかなり変わると思うから何とかなるか。
「まぁ、どうにかするって言っても怒って帰ってきちゃったから、そこに関してはどうしようもないね」
俊吾がそう言うと鈴は泣きそうな顔になる。
やべやべ、早く続き言わないと本当に泣きそうだ。
「だけど、鈴さんがあることをすれば直ぐにそんなの関係なくなると思うよ?」
さっきまで泣きそうだった鈴は顔を上げる。
「いつもよりも素直になればいいんだよ。いつも、ツンツンしてる感じだから素直な一面を見せればギャップで一夏も少しは意識してくれるんじゃないのかな」
「…………具体的には?」
「まずは、怒ってごめんって言って、何で怒ったのかを素直に言う。注意すべき点は一夏の鈍感さだね。鈴さんも分かってるだろうけど、一夏の鈍感さはかなり酷い。今までの経験をいかして、ある程度の酷さを頭に入れながらやること。怒りそうになっても、我慢して素直に思ってることを言う。そうすれば、何とかなると思うよ」
鈴は少し考えていた。どのように一夏に会うのか考えているのだろう。少し経つと、いつもの明るさを取り戻した鈴がいた。
「……うん、分かった。それでやってみるわ」
「まぁ、上手くいく保証は無いけど、頑張ってね」
「ありがと。ごめんね?いきなりこんなこと相談しちゃって。変にナイーブになっちゃって」
俺からすれば、こんな相談は出来ればして欲しくない。何故に他人の恋路を手伝わなきゃならんのだ。さっさと誰かが一夏とくっついちまえ。
俊吾は心の中を悟られぬように笑顔で言う。
「誰にでもそんなことあるから気にしないで。上手くいくことを祈ってるよ」
「…………あんたは優しいわね。察しもいいし、気が利くし。はぁ、一夏もそれくらいだったらなぁ……」
何故に俺にそれを言う。一夏に言えばいいのに。そう簡単に行くとは思えないけど。
「だけど、鈍感でも一夏が好きなんでしょ?」
はぁ、何で俺ってこんな損な役回りなんだろ…………。思ってもないこと言って、相手を気遣う。でも、勝手に言ってしまうんだから仕方ない。
「まぁ……うん」
あれ…………?何か歯切れが悪い。大体ここで照れながら『…………うん』って頬染めながら言うだけどな。一体どうしたんだ?
一夏が相手を攻略する達人だが、俊吾も恋愛相談する相手を気遣いながら解決策を生み出すプロになりつつある。もちろん、相談後の相手のメンタルケアを忘れない。この事実に俊吾は気づいていない。
鈴はチラチラと俊吾見ている。
俊吾は頭の中に『?』を出しながらその様子を見ていた。そして、部屋の中にある時計を見て気づいた。
「あ、鈴さん。消灯時間近づいてるから戻ったほうがいいじゃない?」
時刻は十時を過ぎ、消灯時間が近づいていた。それを聞いた鈴は
「そうね、もう戻るわ。相談乗ってくれてありがと」
「いやいや、気にしないでいいよ。困ったときはお互い様でしょ?」
それを聞くと鈴は、微笑みながらドアに向かっていった。
あれ、そいや困ったときはお互い様って言ったけど、俺は相談とは乗るけど乗ってもらったことってないな。………………気づいたら悲しくなってきた。気にしないようにしよう。
ドアを開け、外に出た鈴だったが足を止めた。そして、振り返り俊吾に
「…………あんたって好きな人いるの?」
と言った。
「え?」
「い、今の、忘れて!」
鈴は俊吾にそう言って、通路に消えていった。
「…………今のどういう意味なんだ?………………まぁ、いっか。今日も疲れたし寝よう」
その後、シャワーを浴びている時間や寝る前の時間まで鈴の質問の意図を考えていたが、ベットに入ると睡魔が勝り、その疑問は眠りとともに落ちていった。
後書き
今回の楯無さんは俊吾の事をからかっているだけです。
実際、評価もしているし事情も知っているわけだけど、年下でウブな子がいるからからかう、といった感じです。
あと、楯無さんは簪のことでは完全に消極的なので俊吾を頼りました。原作では一夏ですけどね。
自分の中では、俊吾は年上にモテる(好まれる)といった感じです。ただし、恋愛感情かは分からない、です。
あと、書く事と言ったら鈴ですかね。これも完全にイメージです。
気に食わないなら、感想にて文句は受け付けています。直すかはわかりませんが。
さて、これくらいにしまして、次回の更新についてですね。
次の更新は土曜日か日曜日にはしたいと思っています。
それではその時までさよなら。
感想もじゃんじゃんお待ちしてます。
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