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神葬世界×ゴスペル・デイ

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第一物語・後半-日来独立編-
  第四十五章 火炎の鳥《1》

 
前書き
 火炎ノ緋翼に一体何が!?
 不思議にスタート。 

 
 空は赤く光り、光は一つの鳥の姿へとなった。
 地上にいる者はこの光景に目を奪われ、空にいる者は何が起こっているか理解出来無かった。
 赤を放つのは日来の機械部が造り上げた元作業用騎神、今は準戦闘用騎神・火炎ノ緋翼だ。
 そして最もその近くにいるのは、日来機械部所属日来学勢院高等部三年一組の米田・入直。
 火炎ノ緋翼が放った流魔により吹き飛ばされ、火炎ノ緋翼を上から、空を落ちながらそれを見ていた。
 確かに聞いた、その声を。
 聞き間違える筈の無い、家族の声が耳にまだ残っている。
 マモル。
 守る、で文字変換はいいのだろうか。
 きっといいのだろう。
 入直は眩しくて、目を細めながらも火炎ノ緋翼を見る。
『入直! 聞こえてる!』
 表示していた映画面|《モニター》から、継叉が慌てたような声を出す。
 今度は継叉が増田の前にいる形で、後ろには増田とジューセンが見えた。
 横に表示してある映画面を横目で見て、
「聞こえてるさ」
『なら良かった。て言っても事態は良く分かってないけどね』
「これは流魔でいいんだね」
『その通り。普段の流魔よりかは濃度は高いけど
、害は無いから安心して』
「事態が良く分かってないなら、今分かっている範囲で教えてくれるかい」
『了解』
 一言。
 一拍置いて、口を開く。
『今分かっていることは二つだけ。
 一つは、緋翼から流魔が放たれているってこと。だけど機械には命が無いから内部流魔が存在し無い筈なんだ。だから、この状況はおかしいの一言だけ』
「なるほどねえ」
『もう一つは、神州瑞穂の流活路が僅かだけど活性化してる。丁度、緋翼が流魔を放った時と活性化のタイミングが近いから、なんらかの関係はあるかも。流活路から流魔が緋翼に少量流れ込んでるしね』
「なら結論は一つしかないだろうさ」
 にやりと笑い、入直は火炎ノ緋翼を見下ろす。
 迫る勢いで落ちていくなか、風を感じながら、
「緋翼には感情が、意思があるってことさ」
 笑みはそのことが確定的だから、か。
 流魔は意思に共鳴する。
 意思を伝える伝子を持っていることからそうなるとされ、伝子から放たれた伝波により周囲の流魔が結果的に活性化させるのだ。
 意思が無ければ流魔が活性化しない。
 例え命が無くとも、意思があったのならば。
 答えは一つ。
 火炎ノ緋翼には意思があり、その意思により流魔が活性化したのだ。
「そうだろ……?」
 問う相手が継叉か緋翼かは、意識していなかったから分からない。
 だが、継叉は答えた。
『だね。なんでかは分からないけど、そう言うしか他に無い。騎神が意思を持つなんて、同一式で意識が留められたわけじゃないのに凄いね』
「人智だけで語れる程、機械は単純じゃないってことさ」
 身に受ける風が冷たく、身体を包み込む。
 撫でるように下から上へ風は流れ、風の抵抗を受けながら入直は落下していく。
 下に見える火炎ノ緋翼。
 眩しい赤を放つ騎神に、叫んだ。
「もう一度やろうじゃないか! アンタにその気があるのなら、アタイは何時でも準備出来てる。
 どの空も、自由だ!」
 背から落ちていく火炎ノ緋翼は、同じく落ちていく入直を目で捕らえた。
 聞こえる、彼女の声が。
「何時か空を自由に飛べるその日まで、これからも練習に励もうじゃないか!」



 鳶が鳴いた。
 それは自身の操縦者に向けた声であり、戦闘再開の合図だった。
 火炎ノ緋翼がまず行ったのは、残った片腕である右の手に握った炎熱火砲による砲撃。
 空に赤の一線が走り、それが目指すものは辰ノ大花の騎神だ。
『なんだか分からんが動き出したみたいだな。全く、イカれてやがる』
 あんな騎神は見たことも、聞いたこともない。
 燃料が切れれば騎神は動かない。騎神に限らず、機械ならば殆どがそうだ。
 見たところ予備燃料も積んではいないが、流魔を放つやいなや動き出した。
 放出した流魔を取り込み、燃料代わりにでもしたのだろうか。
 もし日来が武装を許されていたらと、そう考えてしまった。
 きっと、日来一の技術力を持っていただろう。
『だがこっちも負けられないんだよ、準備が整うまではな』
 砲撃を避け、加速機を噴かす。
 相手の様子が変わったが、事態が変わったわけではない。
 このまま、前と変わらず倒せばいい。
 近接戦闘は経験上こちらが有利だ。
 砲撃は直線的で読み易い、恐れるに足らない。
 塵が吹き出し、青い線と共に一閃。
 イグニッションを行い加速し、それを後二回行った。
 赤の中心に青が突っ込んだ。
「緋翼!」
 入直が叫んだのは、戦竜が通った後だ。
 間もなくして双機はぶつかった。
 衝撃で赤の流魔は散り、
『決まった!』
 迫る戦竜を対処しようとした火炎ノ緋翼が、腹部に流魔刀の二撃を浴びた。
 痛みからか火炎ノ緋翼が鳴き、赤のしぶきが上がった。
 血ではなく、赤い流魔だ。
 空に散る流魔を見て、入直は息を飲んだ。
 何故ならば、流魔刀の斬撃が火炎ノ緋翼の腹部を深く裂いていたからだ。
 軽い装甲は必然的に薄くなり易く、攻撃をまともに食らったならば重傷は免れない。
 そのため代わりというように機動力を上げ、回避に徹するように設計されている。
 しかし、回避出来無かった場合は。
 紙のように薄い装甲では、たった一撃でさえ命取りになる。
「緋翼アアア――――!!」
 飲んだ息を吐くように、叫んだその声は空へと消えていった。
 まだだ。まだ、やられはしない。
 これからだ。
 これからなんだ。
 言い聞かせる。自分に向かって。
『落ち着いて! まだだよ、荒いけどまだアイカメラは作動してる。緋翼は倒れてない!』
 別に表示した、火炎ノ緋翼に設置したアイカメラが捕らえたものを映像として流す映画面|《モニター》を継叉は見てから、入直にそう伝える。
 が、当の入直は継叉の声を聞こうとはしない。
「くそっ! 腹部に二撃、傷は深い。動けるかだうかだね……。無理矢理にでも回路を繋いだ方がいいのか、それともこのままか? いや、だけどこのままだと……」
『ちょっと聞いてる!?』
「最悪、炎熱火砲のトリガーさえ引ければ。その場合は加速機の問題だが、動いてくれれば」
『ごちゃごちゃ言ってねえで……話し聞けええええええ!!』
「――っ!?」
 思考を吹き飛ばすように、映画面から聞こえた低い男性の声。
 増田が放った声が、動く入直の思考を止めた。
 ったく、と苛立ったような声を出し、
『緋翼はやられてねえって言ってんだろうがよ。何時の間にか耳悪くなったのか、お前は』
「悪くなってないさ。だけど、緋翼との繋がりが切れた。微弱にあった緋翼の意思が感じれなくなったんだ」
 先程まではあった、火炎ノ緋翼と自分を繋ぐものが。
 一心同体だったのが、流魔刀による二撃を火炎ノ緋翼が食らった時に途切れた。
 今まで感じていたものが、その瞬間にぷつりと切れたのだ。
 これを聞いて、映画面に映る増田はため息を一つ。
 落胆の意味が込もったものではなく、自分を落ち着かせるものだ。
 横にいるジューセンの肩にまだ腕を巻きながら、空を落ちていく入直に向かって言う。
『たったそれだけのもんで動揺してんじゃねえよ。お前はあれか? 親に見捨てられてかわいそうな自分を、緋翼は選んでくれたから甘えてんのか? だから繋がりが切れた途端にそうやって動揺すんのか? ああ?』
「何言って――」
 言葉を言い終える前に、
『ふざけんじゃねえぞ! お子様ごっこなら他所でやれ! 日来にはお前みたいな奴は幾らでもいんだよ。だから日来の奴らは優しくなって、そういう奴らを受け入れるんだ! 亡くなったわけでもねえのに動揺なんざしてんじゃねえ。緋翼は自分の家族だって思ってるなら、何時までもそうやって呑気に離れた場所で、落ちてるんじゃねえよ』
 顎を前に一回、突き上げるように動かす。
『緋翼にも意思があるなら、繋がりを自身で切ることも出来るだろうが』
 そんなことも分からないのかと、そう言うことだろう。
 何時も感じていたものが無くなっただけだ。消えたわけじゃない。
 勝つこと焦り過ぎて、そんなことも考えられなくなってしまったのか。
 まだまだ未熟だ。
「……そうだったね」
『勢い任せなのはお前の悪いところだが、まあ、なんだ。物事はよくも悪くも勝ったもん勝ちだ。さっさと勝って、帰ってこい。きっちりと修理してやるからよ』
 微かに、増田の口が微笑む。
『緋翼以外にもぼく達がいるに、残念だなあ』
「すまん、すまん。ついつい緋翼のことに頭が一杯になってね。後でキスでもしてやるよ」
『いらないって!』
『……照れるな……』
『照れてないって!』
『……それは、心の準備が出来てるってことか……?』
『違うよ! からかわないでよ! て、ああ、もう! 来ちゃったじゃん!』
 叫び、否定していた継叉の周りに、幾つもの映画面が表示された。
 そのどれも一つ一つに、“愛の会-I love 継叉-”と表示されたタイトルバーがある。
 映画面に映るのは皆、異性である女性のみで男性は見当たらない。
 高等部や中等部の学勢から大人、更には小等部の学勢までもが映っている。
 誰もが口々に、どういうことか、と説明を求めている。が、継叉はそれに答えること無く、頬を赤めたまま次々と表示される映画面を割っていく。
 それを見ていた機械部所属の大半の者は、一斉に舌打ちをした。
 見ていたジューセンは、一向に終わりそうに無いそのやり取りを見て、
『……身近にいる大切な者だからこそ、守りたいものだ……』
「アンタにしてはくさい言葉だね」
『……俺は一体どう見られてるんだ……』
 ふて腐れたような顔のまま、言うのだからおかしいものだ。
 そうだ。
 自分には緋翼だけじゃない。頼れる仲間達もいるのだ。
 皆、苦しみを背負いながらも笑って生きている。
 ならば、自分はそんな場所のためにも戦わなければならない。
 それが、今の自身の役目だ。
「これからは集中したいから通信切るよ」
『……分かった。なら、こちらからは通信を行わないが、いいか……』
「オーケー」
『ぶっ飛ばしてこいや!』
 増田の一言を聞き、通信を切り、同時に映画面は消えていった。
 落ちるなかで、火炎ノ緋翼の元へと向かって行く。
 流魔の放出で加護な適用範囲外に出てしまったため、今は簡易的な加護を発動して身を守っている。
 簡易的なため加護の持続時間は短く、もうそろそろで消えてしまうだろう。
 だから、入直は行く。
 火炎ノ緋翼の元へ。



 火炎ノ緋翼は腹部に流魔刀による二撃を食らい、その攻撃を行った辰ノ大花の騎神・戦竜は火炎ノ緋翼の背後にいる。
 イグニッションを連続で三回行ったため、速度を落としきれずにそのまま背後に回ってしまったのだ。
 だが握る流魔刀はきっちりと、敵の身体を捕らえた。
 反転し、敵の方へと顔を向ける戦竜は、空から落ちていく者を見た。
 敵の騎神の操縦者だ。
 大気に揺らされながらも、自身が操る騎神の元へと落下していた。
 そのまま騎神へと乗るつもりなのだろう。
 仕止め切れなかった時のことも考え、戦竜は敵の元へと加速機を噴かし行った。
 落ちるなかで入直は、下に見える火炎ノ緋翼へと手を伸ばした。
「届け――!」
 一刻も早く、火炎ノ緋翼の元へ行くために。
 相手が迫って来ている。
 落下の速度があるとはいえ、どう考えても相手の方が早い。
 相手は騎神なのだから。
 入直は戦闘に使えるような系術は持っていない。だからこうして、ただ手を伸ばすことしか出来無い。
 だが、信じていた。
 伸ばしたこの手を、火炎ノ緋翼は掴んでくれると。
『大人しくしていろ――――!』
 流魔刀を構えながら、そのまま戦竜は向かう。
 狙いは敵の騎神の腹部。
 二撃を与えた場所だ。
 騎神が動かなくなれば、この戦闘はこちらの勝ちだ。
 操縦者を狙わなくて済む。
 まず黄森にバレないようにするためにも、役目はきちんと果たす。
 だが、辰ノ大花を苦しませたこと、長を追い詰めたことの代償は取ってもらう。
 辰ノ大花の皆が皆、長の救出を諦めたと思うなよ。
 彼らは、竜の逆燐に触れたのだ。
『おおお――――!』
 距離は間も無く閉じる。
 数字にして一桁に入った。
 いける、と確かに思った。
 が、
『何っ!?』
 目の前の騎神が、消えた。
 いや、上へと移動したのだ。
 二撃を与え、動きは停止した筈なのに。
 そしてあることが、脳裏に過った。
『しまった、上には操縦者が!』
 見上げた頃には遅かった。
 赤の騎神の左手には、操縦者が立って乗っていた。
 しかも、それを見て驚いた。
『なっ!? 傷が塞がっている、だと。切った筈の腕まで……一体何をしたっていうんだ』
 目に映ったのは、流魔刀によって負わせた二撃の傷と、同じく流魔刀によって切断した左腕が、元に戻っていた。
 赤い、流魔によって。
 自己再生能力を身に付けたとでも言うのか。冗談ではない。
 まずあれは騎神、機械だ。
 系術や加護でならまだしも、流魔によって機械が、それも自ら手当てをするなど聞いたことがない。
 あれは騎神の姿をした機械人形ではないのかと、そう思う。
 機械人形ならば人工知能があり、学習、経験を行う。
 それを蓄積し、応用しようとする。
 まさか、人工知能を騎神に組み込んだのか!?
 兵器目的で造ったわけではないのであれば、その可能性は十分に考えられる。
 だが、人工知能は簡単に作れるものではない。
 幾ら日来でも、それは無理だろう。
 もし作れたとして、組み込んで一体なんの得があるというのか。
 人工知能は人類でいう脳であり、必然的に感情を得ることにも繋がる。
 人工知能を組み込んで、性格に支障があった場合はどう対処するというのか。
 分からなかった。
 自分の知恵では、あの騎神を分析するには到底無理がある。
 後で報告書に書いておく必要があるな、と思いそのまま、早々に決着を付けるために赤の騎神へと向かって行った。 
 

 
後書き
 騎神vs騎神もいよいよ終わりに近付いてきました。
 火炎ノ緋翼には意思があるの?
 詳しいことはまたの機会に。
 ところで本文で流魔のことについて出てきましたので、新たに流魔のことについて。
 流魔とはこの世の元と言える祖源体と呼ばれるものです。
 流魔は繋がること以外の一切の性質を持たず、生命を持つものには全てに内部流魔と言うものが存在します。
 伝子は流魔から構成され、伝波を出して原子などにあれこれ命令します。
 伝える性質の逆である伝えられる性質も持っているため、意思が強くなると伝波によって伝子に意思が伝わり、その伝子が他の伝子へと意思を伝える。
 伝子を構成しているのは流魔ですから、実質的に流魔が活性化するということです。
 案外流魔って面倒なエネルギー体ですよね。
 ふとした時に相手の考えが読めてしまったのは、もしかしたら意思を伝える伝子が貴方の身体を構成する流魔に伝波を送ったからかもしれませんね。
 そう、火炎の緋翼はもしかしたら意思があるのかもしれません。
 例え内部流魔が無くても、意思さえあれば流魔を操作することが出来るのです。
 ちなみに流魔操作は上記の通りです。
 流魔操作で内部流魔を使うのは、最も自分と繋がりが強いものだからなんですよ。
 どっかで言った記憶がありますが……。
 繋がりが強ければ、それ程活性化の効率もよくなるというもの。
 しかし、いい面もあれば悪い面も持ち合わす。
 今、セーランくん達が生きる世界は高濃度流魔によって危機に向かって行っています。
 物語に何度か出た言葉、崩壊進行です。
 如何にして、この崩壊進行を解決するのか楽しみに待っていてください。
 それでは。 
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