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万華鏡

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第三十七話 夏祭りその二

「聞くだけで涎が」
「だったら日本酒だよ」
「一択っていうのね」
「そうだよ、それにな」 
 それに加えてだというのだ。
「最初はお好み焼きな」
「それなのね」
「最初はこれがいいだろ」
「ううん、やっぱり焼きそばじゃないの?」
 琴乃はあくまでこちらを推す。
「お祭りで最初は」
「そうなるか?琴乃ちゃんは」
「私的にはね」
「そうか、あたしはお好み焼きなんだけれどな」
 美優はこちらにこだわりを見せる、だがだった。
 結局だ、こう言うのだった。
「まあ順番はいいな」
「食べればっていうのね」
「ああ、それでいいだろ」
 こう言ったのである。
「とにかくお祭りに行ってな」
「それからよね」
「食べて飲んでな」 
 そしてだというのだ。
「楽しもうな」
「とりあえず全部買いましょう」
 景子は最初を決めないことにした、それでこう言ったのだった。
「もう焼きそばでもお好み焼きでもね」
「あっ、そうすれば最初がどうかとか言わなくてもいいわね」
 彩夏は景子のその話を聴いてそれで気付いた。
「そうよね」
「じゃあいいわね」
「うん、私はそれでいいと思うわ」
 彩夏はにこりと笑って景子に賛成だと言った。
「まあ私もビールかな、とは思うけれど」
「仕方ないから、そこは」
「お米最強なのね」
「神道だからね」
 米は一番尊いというのだ。
「御神酒だから」
「そうなるのね」
「ビールはどうしてもね」
 麦であるこちらはだというのだ。
「残念だけれどね」
「お供えにされてもなの」
「そうなの、仕方ないから」
 議論はまだ続いているというのだ、そうした話をしてだった。
 景子の家を出てそうして八条神社に向かった、神社に行くとだった。
 もう神社は境内とその前の道の左右に出店が並んでいた、そこを行き交う人々で満ちていた。
 出店は色々だ、食べ物も売っていればおもちゃも売っている。
 金魚や雛、亀も売られている。無論射的もある。
 その射的を見てだ、里香が他の四人に話した。
「実はお父さんとお兄ちゃんが射的好きなの」
「それでいつも景品を当てて来るとか?」
「そうなの?」
「それがね」
 どうかとだ、里香は苦笑いで述べた。
「二人共射的はなの」
「下手なの?」
「そうなのね」
「当てたことがないの」
 二人共だというのだ。
「一度もね」
「射的ってそんなに難しいの?」
 琴乃は里香の言葉に首を傾げさせながら言った。
「そうなの?」
「難しいみたいだけれど」
「私も射的好きだけれど」
「そうなの」
「結構当ててるけれど」
「じゃあ今の射的も?」
「ええ、それもね」
 今目の前でやっているその射的を見ながら里香に話す。 
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