ハイスクールD×D 新訳 更新停止
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第1章
旧校舎のディアボロス
第32話 帰ろう
前書き
ようやく一巻の内容終了です。
「イッセー兄!大丈夫!」
千秋が少し涙目で心配そうに訊いてくる。
「ああ、大丈夫だよ……」
「その様子なら大丈夫そうだな」
そう言いながら明日夏は肩を貸してくれる。
「一人で堕天使を倒しちゃうなんてね」
木場も肩を貸してくれながら話し掛けてくる。
「遅ぇよ、イケメン王子」
「君の邪魔をするなって部長に言われてさ」
「部長に?」
「その通りよ。貴方なら倒せると信じていたもの」
「部長!」
「用事が済んだから、ここの地下へジャンプしてきたの。そしたら明日夏と祐斗と小猫が大勢の神父を全員倒していたのよ」
「あの人数を三人で……」
俺がそう言うと、木場が苦笑する。
「何だよ、木場?」
「実は大半は明日夏君が倒しちゃったんだよね」
「マジで……」
俺は明日夏を見る。
「……何だよ?」
「いや、お前ってそんなに強かったんだ……」
「……いや、まあ、ちょっと柄にもなく感情的になっちまってな……」
そう言いながら明日夏は頬を掻く。
「完全に堪忍袋の緒が切れてたね」
「……おい、木場……」
「明日夏兄が照れてる」
「おい、千秋!」
「ハハハ」
「……何だよ、イッセー……?」
「いや、お前の珍しいところを見れたなあって」
「……イッセーまで……!」
「あらあら、うふふ。照れてるんなんて、明日夏君も可愛いところがありますわね」
「ぐッ……副部長がSモードだ……」
「確かにちょっと可愛いわね」
「……部長……」
ガチャ。
扉から小猫ちゃんがレイナーレを引きずって入ってきた。
「……マジギレ」
小猫ちゃんが明日夏を指差しながら呟いた。
「………」
あ、明日夏が黙ってしまった。
「……部長、持ってきました」
……小猫ちゃん、持ってきたって……。
「……ぐっ……」
「初めまして、堕天使レイナーレ。私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ」
「……グレモリー一族の娘か……!」
「どうぞお見知りおきを。短い間でしょうけど。それから……」
そう言うと、部長が手から黒い羽を三つ落とした。
「ッ!?」
「訪ねてきたお友達はそこにいる千秋が仕留めてしまったわ」
「ッ!?千秋が堕天使を……!?」
マジかよ……。
「しかも三人纏めてですわ」
「……明日夏もだけど……千秋も凄ぇ……」
「言っただろ。千秋一人で余裕だって。ま、部長一人でも余裕だっただろうな。確か『紅髪の滅殺姫でしたっけ?部長の異名?」
「ええ、そうですわ」
「……滅殺……そんな人の眷属になったのか俺……」
「……グレモリーの娘がよくも!」
「明日夏が貴女達の計画に気付いていたのを放置したのが首を絞める結果になったわね。大方、人間の戯れと言って私が無視すると踏んだのでしょうけど、彼はとそれなりの親交がある間だ柄なのよ」
「それに、お前はイッセーの神器を『龍の籠手』って思ってたらしいが、そいつはとんだ検討違いだぜ」
「……何……ッ!?」
「赤い龍の籠手。これだけでも分かるだろう?」
「……赤い龍……ッ!?まさか……!」
「なるほどね」
何だ?レイナーレが驚愕の表情を浮かべ、部長が何かを納得したのかウンウンと頷いていた。
「俺の神器が何だって言うんだ……?」
「お前の神器は十秒毎に力を倍にし、神や魔王を一時的に超える力があると言われている十三種の『神滅具』の一つ、『赤龍帝の籠手』」
「か、神や魔王って……」
「ま、相手がパワーアップの時間をくれたらの話だがな」
あ、欠点はあるのね。
「さて、そろそろ消えてもらうわ、堕天使さん」
「イッセー君ッ!」
「ッ!?」
「助けて!あんな事言ったけど、堕天使の役目を果たすため仕方なかったの!」
「……夕麻ちゃん……」
「お前ッ!」
千秋が弓を構える。
俺の肩を抱く明日夏の手にも力が込められていた。
……二人とも……。
「ッ!?助けてイッセー君ッ!」
俺は明日夏の手を払い除け、レイナーレに近付く。
「そうだ!これ見て!」
「ッ!?」
見せられたそれは、夕麻ちゃんとのデートの時にプレゼントしたアクセサリーであった。
「……何でまだ……そんな物持ってんだよ……」
「どうしても捨てられなかったの!だって貴方が……」
「イッセー兄ッ!」
千秋が俺の腕を取ろうとするが明日夏が止める。
明日夏が俺の方を見る。
ああ、心配要らねえよ……。
「私を助けて!イッセー君!」
「……お前……どこまで……!」
俺はその場で振り返る。
「……明日夏……千秋……遠慮は要らねえ……」
「っ!?」
ドガァッ!
「がぁっ!?」
ドゴォ!
ドッ!
「ぎゃああぁぁあああああぁぁぁあああああっ!?!?!?」
レイナーレは明日夏の蹴りで壁に叩き付けられ、千秋の放った矢がレイナーレの腹を貫いた。
「……部長……後はお任せします……」
「……良いの?」
「……あそこまで救い様が無いと、怒りを通り越してもう呆れしかありません」
「……今の一発で十分です」
二人が言った通り、二人からはもう怒りは感じない。
「……そう、分かったわ」
部長が壁に打ち付けられたレイナーレに近付く。
「っ!?」
「私の可愛い下僕に言い寄るな……吹き飛べ!」
「ああぁ…」
ドォン!
部長の魔力がレイナーレを包み、残ったのは散らばった彼女の黒い羽だけだった。
━○●○━
聖堂の宙に淡い緑色の光を放つ指輪が二つあった。
おそらく、アーシアの『聖母の微笑だろう。
部長はそれを手に取ると、イッセーの方を向く。
「これを彼女に返しましょう」
「……はい……」
「……イッセー……」
イッセーは『聖母の微笑』を部長から手渡されると、それを横たわるアーシアの指に填める。
結局、あれだけほざいて付いて来てこのザマか……。
ただ敵を倒すだけ、そんな事はバカでもできる。結局俺は何も守れちゃいねえ。あの時も、イッセーの時も、今も、何一つ守れちゃいねえ。
「……部長……すみません……あんな事まで言った俺を……部長やみんなが助けてくれたのに……俺……アーシアを……守ってやれませんでした……」
でも、お前は心は救ってやれたんじゃないのか。
この教会に来る途中、アーシアの事をイッセーから聞いた。アーシアがただ友達が欲しかった普通の女の子だと言う事を。
そんな彼女の友達になったお前は彼女の心は救ってやれた筈だ。
……何一つ守れない俺とは違って……。
「良いのよ。貴方はまだ悪魔として経験が足りなかっただけ。誰も貴方を咎めたりしないわ」
「……でも……でも……俺……!」
「……イッセー……」
「……イッセー兄……」
千秋、お前の事もこいつに救ってもらったな。
……情けない兄貴の俺の代わりに……。
「前代未聞だけれど、やってみる価値はあるわね」
部長、それって!
「これ、何だと思う?」
「……チェスの駒?」
「正しくは『僧侶』の駒ですわ」
「……アーシアを眷属にするのですか?」
「ええ、そうよ、明日夏。『僧侶』の役割は知ってる?」
「確か、眷属のフォロー……」
なるほど。確かにアーシアは適任だな。
━○●○━
「我、リアス・グレモリーの名に於いて命ず。汝、アーシア・アルジェントよ、今再び我の下僕となる為、この地へ魂を帰還させ、悪魔と成れ。汝、我が『僧侶』として、新たな生に歓喜せよ!」
『僧侶の駒が紅い光を発しながらアーシアの中へと沈んでいく。
「……ぅ……」
「アーシア!」
「……あれ……?」
「部長!」
「私は悪魔も回復させるその力が欲しかったから転生させただけ。後は貴方が守っておあげなさい。先輩悪魔なんだから」
回りくどい言い方だな、部長。
「……イッセーさん。あ、あの私…」
イッセーがアーシアの言葉を遮って抱き締める。
「さあ、帰ろう……アーシア……!」
よかったなイッセー。
なんて感動的な場面なんだが、約一名のせいでちょっとぶち壊しだ。
「………」
千秋が頬を膨らませてムスっとしていた。
まあ、今回は我慢しろ。
━○●○━
「おはようございます」
俺は朝から集まりがあると言われ、いつもよりも早めに学校に来て、部室に赴いた。
「あら、ちゃんと来たわね。傷はどう?」
「はい。アーシアの治療パワーで完治です!」
「ふふ、『僧侶としてさっそく役立ってくれたみたいね。堕天使が欲しがるのも頷けるわ」
「あのぉ、部長……」
「なあに?」
俺は少し前から聞きたかった事を聞こうと思った。
「そのぉ、チェスの駒の数だけ『悪魔の駒』があるんですよね?」
「そうよ」
「って事は、俺と同じ『兵士』って、今後あと七人も増えるって事ですか。あ、でも、これ以上ライバルが増えるのわなぁなんて……ああ、冗談ッス!ほんの冗談…」
「私の『兵士』はイッセーだけよ」
「え、それって…」
「人間を悪魔に転生させる時、転生者の能力次第で消費する『悪魔の駒』の数が変わってくるの」
消費?
などと考えていると、部長が抱き付いてきた!
「私の残りの駒は『|騎士《ナイト)
》』、『戦車』、『僧侶』が一つずつ、あとは『兵士』が八つ。その八つの駒全部使わないと、貴方を悪魔に転生させる事ができなかったの」
「俺一人で八個全部使ったんですか!?」
「それが分かった時、貴方を下僕にしようと決めたのよ。それに……」
「それに?」
「明日夏が自分の命を対価にしてまで貴方を生き返らせてくれって頼んできたのよ」
「そう言えば……」
「私はその時に明日夏の事も気に入ったのよ。親友の為に一生懸命な彼を。そして、彼がそこまでする貴方を」
「部長……」
「イッセー。最強の『兵士』を目指しなさい。貴方にならそれができるわ。私の可愛い下僕なんだもの」
「……最強の『兵士』……はい!分かりました、部…」
いきなり部長が額にキスをしてきた!
って、キスゥゥゥッ!?
「おまじないよ。強くおなりなさい」
「ウオォォォッ!!部長、俺、頑張ります!」
「っと、貴方を可愛がるのはここまでしないと、新人の子に嫉妬されてしまうかもしれないから」
「嫉妬?」
どういう意味だ?
「……イ、イッセーさん……」
「な!?ア、アーシア!」
いつの間にか、俺の後ろにアーシアがいた。
なんか、目元をウルウルさせているし。
「……そうですよね。リアスさん…いえ、リアス部長はお綺麗ですから、そ、それはイッセーさんも好きになってしまいますよね……ダメダメ!こんな事を思ってはいけません!ああ、主よ、私の罪深い心をお許し…あうっ!?」
「ど、どうした?」
「……急に頭痛が……」
「そりゃ、悪魔が神に祈ればダメージを受けるだろ」
「あ、明日夏」
いつの間にか明日夏がいた。
後ろには千秋もいたが、なんか頬を膨らませていた。
「そうでした。私、悪魔になっちゃったんでした……」
「後悔してる?」
部長がアーシアに訊く。
「いいえ。ありがとうございます。どんな形でも、こうしてイッセーさんと一緒に居られる事が幸せですから」
な、なんか照れるな。
「それより、その格好は?」
アーシアはここ駒王学園の制服を着ていた。
「……似合いますか?」
「じゃあ、アーシアはこの学園に!」
「私の父はこの学園の経営に関わっているし、このくらいなんて事ないわ」
「……知らなかった」
ガチャ。
扉が開けられ、木場と小猫ちゃんが入って来た。
「おはよう、イッセー君」
「……おはようございます、イッセー先輩」
あれから二人からはイッセーと呼ばれるようになっていた。
「あらあら、皆さんお揃いね。さあ、新人さんの歓迎会をですわよ」
朱乃さんが大きなホールケーキを持って現れた。
この後、アーシアの歓迎会が開かれた。
そして部長が作ったというケーキがとてつもなく美味かった。
ちなみに明日夏は自分が作るケーキより美味いと少し落ち込んでいた。
後書き
一巻の内容終了!
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