やはり俺達の青春ラブコメは間違っている。
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第四章
無情にも材木座義輝の前に比企谷八幡は訪れない。
前書き
是非、気軽に感想をください。 感 想 を く だ さ い (焦)
……どうも。続きが書けないkarasunokatteです。
最近は更新停滞中。ああ、生活感が受験勉強に呑まれていく……。
ああ、それにしてもまた区切ることになるとは……申し訳ない。
焦れったい昼休みも終わり、放課後を迎えようとしているクラスの雰囲気。確か中学生の頃、僕はこの感覚が嫌いだった。何かがフッと、肩口をすり抜けるような、周りの何かに自分が取り残されたかのような、これは……言葉にするなら、まるで浮遊感を覚えたような……。そんな感傷に浸っていた。
この日もふっと肩を空気の波が撫で、さっと血の気が引いていって、僕は立ち尽くした。――でも、微かながら、自分の身に引っ掛かるそよ風を感じた。
今日が終わると明日も既に終わるみたいな毎日とは暫しの別れがあって、雪ノ下にも明日の準備があるようで、本日の奉仕部の活動はお仕舞いである。
……まあ、僕はとびきり暇だったので奉仕部の部室に向かおうと思ったわけだ。
だって、俺は基本的に一人が好きだから。基本でなく応用でも何でも、一人が好きだから。
「うぬぅうっ、遅いいぃぃぃい!何をしてるのだ、八幡はぁぁぁああ!我が折角ここでお前を待ちわびていると言うのにぃぃい!」
僕は雨上がりの煤けた青空を廊下の窓越しに見上げ、一人、酷い感傷に浸った。
静かに、穏やかに、無意味だけど健気に、無価値でも大きな青を感じながら、部室の中に立つ、暑苦しい豚の存在について考えた。――え、誰この人。自分のこと我とか言ったり、いや、そもそも声でかいし……。ってよく見たら材木寺くん、の飼ってる豚じゃないか。……え、違う?
ちょっと待ってよ、面倒くさい。これはあれでしょ?ここで話しかけて早々にご退場願うのは八幡の素敵なお仕事でしょ?どうなってんだ現実。
しかし奉仕部の一部員として、その部室に人が居れば相手をするのは当然で……。
「ガラガラガラー」
こんなのがいる教室に自然に入り込んだ俺すごい。もうコミュ症なんて言わせない。お腹回りや周囲の友達もスッキリ!
――と、俺はダイエット食品の受け売り的な発言をする。そして彼は「もふぅっ!」という中々に気持ちの悪いリアクションをとる。今時、いや今までも「もふぅっ!」なんて声を出す人間は居なかったろう。もしかしてコイツは新人類なのではないだろうか。だが、それは俺が言えることでも無いのであった。無念……。
「むぅう、何奴!」
「どこの時代の誰ですか……。あー、そのね?残念ながら今日は八幡こないよ」
「ナナッ、ナンダッテー!……八幡、我はお前との対等な決闘を望み、十年も此所で……待ち続けていたと言うのに。――は、はちまん我の味方はお前しか……orz」
「……おい。orzとか、なんかそう言うネット用語多様すんな。ってかお前いくつよ?」
つーか何で分かったんだろorz。これの発音なによ……。オーアールゼット?それともオーズ?ちなみに中学生の頃、これが人の形だと気づく以前はオーズって読むんだと思ってました。どちらにしても縦文字になったら分からんだろうが。
まあ、現実の会話には縦も横も無いけどね。
退屈になって欠伸をすると、比企谷くんとお友達らしい材木座くんはまるで、デゥンデゥンデゥン♪野生のザイモクザは逃げ出した。……と、もはやポケットには収まりきらないであろうモンスターが出てくる某ゲームで、野生のモンスターが逃げ出した時のテロップが表示されそうな雰囲気を醸し出しつつ、部室から飛び出した。
俺は何だか疲れてダルくなってしまい、足早に帰ることにした。
……まったく、今時の中二はギ○ドレインでも使えんのか。草タイプかよ。
――超疲れた。
× × ×
休日、もとい散髪日がやって来た。
無駄に明るくて、無駄に清々し気な、不毛で他人事な朝だ。とっくに両親は俺のことは全て忘れて、それでも既に幸せそうに家を出たあと。父は仕事で、母は父より低賃金の余裕ある職に就いており、共働きで生活している。俺はだらだらと飯も食わずに朝を迎えた。
だらだらと制服に着替え、だらだらと余裕ある時間を食い潰す。
何事もせず、自室の時計を見つめる。
そして、そろそろ時間になるのでネームプレートを装着し、生活感のない部屋をあとにした。
ネームプレートを首にかけ、外に出ると、世界は一変。まるで掌を反したように町の皆が僕に笑顔で手を降り、小鳥はさえずり朝日はシンプルな街並みを照らす、そんな素晴らしい休日が始まる、
……な ん て 事 は 無 か っ た 。
誰も僕には気づかない。真正面でぶつかっても僕は弾かれ、素通りされ、車に轢かれないように端っ こを歩く。本能的に死なないように気を付けながら、慣れたように口笛を吹いて行く。
どうやら何の関係もない人達からではこんなネームプレートは何でもない、ただの板であるため、俺の事を気にするわけでも無いようだ。こいつは特定の状況下において効果を発揮するものらしい。
つまりはイベント回収用アイテムなんですね、わかります。
普通の戦闘だと『NO USE』とか赤文字で表記されたり、通常戦闘の時に選択するとブゥンブゥン、って鈍い効果音がするアレですね。そのくせボス戦前のムービーとかでかっこよく取り出される、ご都合主義並びに主人公補正ご用たちのアレなんですね。
何てなところで、数回信号を無視し、数回人家を通り、数回警察官に挨拶すると、そこは学校だ。
今日は休みだが、他の部活も休日練習があるため門は開いており、俺は易々と校内に入ることができた。
すぐ横にはテニスコートがあり、既に練習し、汗を流している者もいた。見れば一人の美少女がキラキラと煌めく汗を弾きながらラケットを振るっている。……あれ、女子テニスって男子テニスと練習一緒だったっけ?その少女のすぐそばには男子も大勢いて……えぇっ!?そんな!男女合同と有らば、俺もテニス部に入ったのに!
……で、よく考えたら我が奉仕部も男女は合同でした。もうやだやめてしまいたい。
昇降口を通ったあと、まずは職員室に出向く。
運良く、平塚先生を見つけるとにこやかに挨拶をする。
「おはようございます平塚先生。今日は髪を切りに来ました」
「おはよ……おい、君は学校を何だと思っている。……いや、言うまでもなく床屋だと思っているのだろうが……」
「先生、決めつけは良くありません。俺は決してこの学校を床屋だなんて思っていません。本当に、露程もです。……ここ学校は素晴らしい設備を整えてあります。俺だって流石に美容院くらいには意識してますよ」
「バカが。……それと、君に確認したいことがある。君は最近、比企谷や雪ノ下、それと由比ヶ浜結衣に対しての理解は変わったかい?」
「理解?」
俺は首を傾げる。……理解、ねぇ。
俺は心の奥底の方でつぶやき、しばらく考えてから告げる。
「理解なんか及びません。人間なんか分かりません。……いつ居なくなるのか、いつ現れるのか、何を思い、何を感じるのかも、全てが違う。だから理解は不能です。ただ、僕にとって彼らは――よく考えたら大して重要ではないですね。ただ、何だかんだで楽しい奴等です。まあ、楽しくなくても生きていけるんですけど……」
「そうか!それは良い傾向――では、ないな。感覚が麻痺してちょっとマシになっただけで軽く喜んでしまった……。それとだが桐山。お前、本当は勉強もしていないだろう」
「……どうして、ですか?」
俺は尋ね返す。普段の成績は十分に優秀ではあるはずだが?何故、そのような疑問を覚えるに至ったのだろう。おかしいだろう。なぜわかる。――だから平塚先生はエスパーさんなの?
「実は書類上のお前を調べたんだ。まあ、調べたといっても、書類を見つけるのに苦労しただけなのだが……お前、この辺りでトップの学力の中学にいただろ。確か、噂だと堅苦しい校風で、七三わけの厚い眼鏡をかけたような連中が入学するような学園?……だったか」
「ああ、バレましたか。うん、別に中高一貫の学園じゃありませんよ。ただ広いだけの中学校です。確かに七三のアホみたいに分厚い眼鏡のむさ苦しい奴等もいっぱい居ましたけど、学力はそこまでじゃないと思いますよ。俺、いつも全科目一位とってましたし……。周りは納得してませんでしたけどね。俺みたいに普通の奴がいつもトップだったなんてこと」
俺は苦い記憶を思いだし、どうでもいいと思った。それに、思えばそこまで苦くなかった。
俺が固く目を瞑ると、平塚先生は声を荒げて言った。
「そいつが何で万年十位なんだ!おかしいだろう。お前の中学はもう入学しただけで学歴に色がつく特殊な学校なんだぞ!……真剣に勉強はしておいた方が良いぞ、桐山。お前が違う自分の価値観に気付き、別の人生を歩もうと思ったとき、学歴と学力は必要だ。今は価値なんかないと思うだろうが、変わったときのために、備えは必要だ」
先生の迫力に負け、俺はつい、「……っ、はい!」と返事をしてしまった。
残念だが俺が努力をしていたのは将来のためと言うより、目先の誰かのためである。だから実際、快く了解することは正直できない。
しかし、言われたのなら、それを相手が覚えているうちは、こなすしかない。
非常に面倒だが、先生は仮にも教師である。従わぬは――何だろう。何でもないではないか。
どうすればいいのか、中途半端な俺には分からなかった。
どうしたかわかったところで何でもなかった。
× × ×
一番に部室へやって来たのは意外にも由比ヶ浜結衣であった。
彼女が照れながら言うには、時間を間違えていたらしい。部屋の時計が壊れていたのか、逆に早く来てしまったという。
『……「きりや、くん」あたし、ね?「きりやくん」のこと……』
「どうかした?もしかして、暑い?顔も紅潮してるし、場所、変えよっか……?」
『あ、う、ううん!いいの。あなたのことが好きってただそ――』
「…………何?」
「……」
彼女が俺の持っていたvitaを取り上げた。
何やら不満気……。どうかしたのだろうか?
俺は黙って首を傾げて、自分には否がないことをアピールする。
彼女ハ、勢イヲヨク、僕ニ言葉ヲ畳ミ掛ケタ。
「だって桐山くんあたし来てから全然しゃべんないんだもん。挙げ句ゲームに独り言とか始めちゃうし……」
それはそれは……単純に、悪い。
確かにほったらかしにした感があるよね。普段の俺の扱いよりは良いけれど。
「……何かゴメン。じゃあゲーム返してくれる?鞄にしまうから」
「う、うん……。ってゆーか、きりゃりゃみゃ君はさあ……!」
「……くっwww」
この子、盛大に噛みよった(笑)
俯いて赤くなる由比ヶ浜さんを見ながら思う。
なにこのかわいい生き物。優しく抱きしめてしまいたい。
……ゴホン。いやぁ、それにしても噛みましたって言ったらアレしかないよね。
「いや、それはそれでとてもかわいい名前で……っていうか言い方が可愛くて、二十四時間三百六十五日、つまりは四六時中そう呼ばれたいまであって、その為に『きりゃりゃみゃ きりみゃ』に改名してしまいたいくらいなんだが、残念なことに一般的な日本人として名前を間違われると言うことは、例え舌を噛んでしまったというような不可抗力だとしても快く思わないのが常であって、まあ常識なんていう型にはまったような実に不本意な結果となってしまうんだが、しかし由比ヶ浜さん。僕の名前は桐山霧夜だ」
言い終えた達成感と共に、僕は……や、俺は期待の眼差しで由比ヶ浜さんを見やる。
「長っ!しかも変態感丸出しにしておいて常識とかどの口が言うし!」
「……え、あ、うん」
随分良いツッコミアリガトウゴザイマス……。
――え?なにこのコレジャナイ感。違和感さん、今日はお仕事ご苦労様です!
いや、でもねぇ違和感さん。こんな時ばかりでしゃばって何になるんです?『ニヤニヤ動画』略してニヤ動とかヨウツーベと言った動画サイトでもちゃんとお仕事して貰わないと困りますよ!
『こんな場面でそんな急に頑張られてもねぇ……』
……と、苦笑いしつつ、半沢○樹の舞台となった銀行の職員が言うセリフみたいなことを言った手前、さすがに巨乳……すまない語弊。爆乳女子高生にこの役が務まるとは思ってなかったさ。
はてさてロリっ娘何処かにいないもんかな。……でも高校に幼い女の子――いわゆる幼女が迷いこんでいたりしたら、気持ち悪いくらいの行動力を発揮して悪寒がするほどに正確かつ迅速にご両親のもとに帰れるように手を打ったりするかも知れないが。そして、もしそんな事が起こり得た暁には、きっと女の子の名前は『○宵』であろう。
――さて、これらは戯れ言か……。
少なくとも俺は俗に言うロリコンなどではない。
それとさっきから俺の話には何たらシリーズが絡みすぎてると思う。主にめだかボックスの作者系列的に考えて。
「ま、いいや。それじゃあ由比ヶ浜ちゃん♪気合いの入ったツッコミをありがとうなんダゼっ☆」
「やばキモッ!……じゃなくて、いや、やっぱりと思うことすらなく単純に堪らなくキモいけども。何か空気読んでなかったりしたかな?」
「由比ヶ浜さんってば最近めちゃくちゃに容赦も情けもないよね。……まあ、君のそんな所が、俺は好きでも嫌いでもない、言わば電柱レベルの好感度なんだけどさ……ごめん、照れるね――」
「いや照れないよ!」
全然まったくちっとも毛ほど露程も照れてないよ。ってかあたしのことナチュラルに電柱に貶めてるし!と、続け、ふへぇっ……と、溜め息を吐き、由比ヶ浜さんは項垂れる。
「もう疲れちゃったんだけど……」
「僕は元気!^^b」
「……~っ!ムカつくっ!その顔すごくムカつく!……ってか何時にもなくいい笑顔だ!」
「…………(^^b))」
腹立つ!と、言い切り、ぷんぷんぷんぷんと、顔を紅潮させて由比ヶ浜さんは喚き散らしてきた。
気が済むまで声を荒げると、話題を変えた。
「……それよりユキノンとヒッキーは?」
む、確かに遅いな。遅刻か?ねぇ、ならもう帰らない?
「――っ」
俺がそう提案しようと息を吸った瞬間、ドアがからりと、――いや、いつの時代だ。ガラリと開いて、またしても奴がヌルリと、いや、スルリと?……擬音が間違ってる気がする。そうだ!これはドロリ!
それも違うだろ。と、自分にツッコミを入れたところで、あながち間違いでもないと気づく。
斯くして比企谷八幡はまたしてもノラリとやって来た。
「………ッス」
「あ、おはようヒッキー!」
「お、おう………」
そなたキョドり過ぎでござる……。目も当てられないのでござる。
「今日も元気。おはよう比企谷 八……面くん!」
俺は笑顔で比企谷に挨拶した。
それにしても気だるそうだ。今日は寝坊でもしたか?
俺は虚沌と首を傾げてみる。
「…………ハァ」
奴がうざったそうに溜め息を吐いたかと思うと、ふとこちらに向き直り、言った。
「桐山。俺の名前は八幡だ!比企谷八幡!……だから昭和60年代に大ヒットした某兄弟が姫を助けに行くゲームで、やたら火の玉を吐いてくる、一見カメっぽいボスが出てくるステージ名みたいに言うな!八面って何だよ!いや、何でだよ!」
「ごめん、噛んだ……」
俺は心中を吐露する。
比企谷は俺の反応を見るなり嫌そうな顔をして、眉間にシワを寄せる。
「……いいや、わざとだ!」
思えばここまで長かった……。
俺は手を横に広げ、クルリとその場で一回転した。
自分の長い前髪がフワリと風に靡く……。
そして意を決して――っ!
「ハニカミました!エヘッ★」
「『「 気持ち悪過ぎる――っ!!!」』」
オエオエと奇妙な擬音で悶えながら、彼と彼女らは叫んだ。
……ん?彼女、ら ……?
「おお、ちょうど来たのかな。おはよう、雪ノシシさん」
「……もしかして私のこと、バカにしているのかしら?」
どうやら朝からゴキゲン斜めなようで、何よりです。
雪ノ下雪乃は怖いくらいバレバレの作り上げられた微笑みをうかべ、仁王立ちしていた。
……毎度の事ながら迫力が半端じゃない。
――だからコイツは『覇気』纏っちゃってるじゃねえかよ。
戯言だと真面目に分かっているが、登場する世界観が間違っていると思います……。
「おはよーユキノン」
「………ごきげんよう、由比ヶ浜さん。……呼び方……ヨビカタ……」
心なしか可愛らしい物同士のやんわりとした。端的に言えば百合百合な朝の挨拶だっただろうに、何故か二回目の「呼び方……」の言い方が怖かった気がする。
いや、気のせいだろう。ゼッタイに気のせいだ。
決して『ヨビカタ……』などどホラーじみたカタカナ表記ではなかったはずだ。ましてや俺に向けた呪いの言葉でもないだろう。よく思い返せばさっきの台詞、『ごきげんよう、桐山くん愛してる♪』だった気がする。いやそれは流石に無理がある捏造だけど。
――でなければ次のシーンまでに俺が殺されてしまうまである。
だが、しかし、――ねぇ……。
「雪ノシシ……」
「……………」
あ、ごめんなさい。命乞いさせてください。強く睨まないでください。いやね、違うんです。これは僕がただ単に思い付きで『かいけつゾ○リ』の仲間である双子のイノシシのイ○シとノ○シの名前を、貴女の、いえ貴女様の御名前である『雪乃』という、まあ何て素敵な御名前なのでしょう、その御名前に、くだらない駄洒落のように掛けてみたわけでも無いのです。私こと、桐山霧夜は、清く正しい、真っ当な親切心から、貴女が大の動物好きである事実を皆様に知らせてあげようと謀った次第で御座います。
決して『ちょっと面白そうだった』とか言う軽弾みな気持ちで行ったわけではないのです。
……いや、ホント。
「………」
俺は脳内で練った文章を、ここで復唱しようと試みる。
「あ、ごめんなさい。命乞いさせてください。睨まないでください。いやね、違うんです。これは僕が……って、聞いてるの?」
「いえ、今日はどんな嘘を吐く気かしら、と」
ばっちりバレてた。
「……あ、いや。その――雪ノ下さんって動物好きかな!?」
「速効で逃げに行ったわね……。いいのよ、馬鹿らしくて怒る気なんか失せているから。……では、貴方は何を期待していたの、教えなさい」
「いや、何でもないです。ただ何となく、博識な雪ノ下さんなら、このネタ気づいてくれるかなーって……」
「このネタとは?」
比企谷がもうやめろよ、とつぶやいたが、雪ノ下は尚も俺に問い詰めてくる。
「えーとぉ、知りませんかね?イ○シとノシ○……」
「知らないわ。……もしかして空想のキャラクターの名前を掛けただけのくだらない駄洒落?」
「あ、そうです……」
「………はっ」
鼻で、笑われたっ!
『情弱め!』みたいな感じに!
……悲報。俺氏、見事に言いくるめられる。
「まあ、いいよ。今日さ散髪を切ってもらうんやがら」
「桐山くんが珍しくドーヨーしてる……」
うるせえよバカ。黙っていろ。
「ようやく大人しくなったわね……さあ、ソコの椅子に座りなさい」
雪ノ下が指差す椅子には、おわ、怖あっ!
ソコにあったのは椅子ではあったが、俺が知っている椅子ではなかった。何これ拷問の機械?
五重のベルトに、目隠し、おまけに腕に巻き付けるであろう手錠まで。これで轡があったら俺は死を予感していただろう。そんな事を思うくらい、ヤバめな椅子だった。
これに座ったらそりゃあどんな馬鹿でも大人しくなるだろ。
しかし、一歩間違えば大人になれないまである。何この矛盾、恐すぎだろ……。
(嘘、でしょ?)
俺は目で雪ノ下に問う。頼む嘘だと言ってくれ、ハニー。
しかし、無情にも彼女は首を振った。
比企谷の方にも視線を投げ掛けてみたが、目を逸らされた。
果たして彼は何から目を逸らしたのか。俺を救えない不甲斐なさか、それともこれから起こりうる惨劇に目を瞑る為か……。やめろ。シャレにならない。
最後の希望は由比ヶ浜結衣だ。
俺は最上級の助けてほしいサインを送る。
しかし期待とは裏腹に彼女は悲しげに俯くのだった。……おい諦めてんじゃねえよ。
無情だ。非情だ。非道だ。お前ら外道だろ。
「馬鹿ヤロウ!散髪ごときでこんな椅――ングッ!」
「つべこべ言わずに座りなさい」
あの、手、柔らかいですね……。
まあ、それでもそんな柔らかい手で会話はおろか呼吸をも阻害するのはどうかと思いますが。
そうしてナヨナヨした身体能力ゼロの俺はまんまと拷問椅子に座らされてしまった。
「止めようぜ。こんなの……」
「――ダメ」
俺は引き留めるが、コイツら聞いてくれない。
勢いのままに肘掛けに付け足された手錠を腕に掛けられる。
……ガチャリ。
つーか、手作りかよ。まあ、学校の備品を改造する訳にもいかなかったのだろうけど、
それがお前らにとって何のメリットになるのか。
何がお前らをそんなに奮い立たせるのか。――謎である。
「さすがにベルト五本は要らないと思うんだ……」
「そう……。でも私、何でもできるとはいえ、素人であることにかわりないから、動かれると失敗するかもしれないわ」
「何でもできるのでは無いのですか?」
「完璧な人間はいない……。桐山、もう諦めろ」
「………くそう。傍観者に徹しやがって!」
ガチャン。ガチャンガチャン。
三本のベルトが俺の腹部を締め付ける。
駄目だコイツら。俺を殺す気である。
「なあ、足にはベルトいらないだろ。もう三重にも腹を絞められてるわけだし。既に逃げられないよ?」
「確かに逃げられはしないでしょうけど、足をじたばたされたら手元が狂うわ……」
「いや、そんな振動で手元が狂うヤツに髪を切ることはできない!よって散髪自体を取り止めるのが自然であると反論する!」
ガチャンガチャン。
「話聞けよ!」
ヤメテェッ!脚が動かない!
コイツら外道だよ……。もう手遅れなほどに破綻していやがる。畜生。
俺は、もうほとほと嫌になってきた。
どうかしてんだろ。頭打ったのか。と、問いたくなる。
仕返しだとかは考えたくもない。理不尽すぎる。
「なあ、まだ間に合う。最初から今一度考え直さないか?ゼッタイに動かないからさ」
「そう。ならそうして――ただし、この椅子の上で」
「ああ、駄目。この人ら俺の言葉が通じない」
僕は悲しいよ。
ああもうメンドクサイ。糞みてえなイベントだな。
しかし、こんな現実今まで無かったぞ……。
じゃあなんだこれ。世界のバグ?
とにかく、バクだろうと糞だろうともう諦めた。
僕は多少イラつきながらも、最後に告げた。もしかしたら最期かも知れないけれど、落ち着いた声音で、半笑いにくだらない冗談を吐かした……。
「電流とか……流すなよ?」
「………」
…………。
「………」
…………?
「………」
「えっ、無言!?」
驚きに仰け反りつつも(全然仰け反れてないけど)慌てて三人を順々に見やる。
嫌だ。本格的に逃げたくなってきた。いや、これは逃げなくては!
もう手遅れだが、急ピッチで手錠やベルトやらを外しにかかる。……硬い。駄目だ。外せない。
……俺、諦め速すぎる。
「さすがにそんな酷いことしないわ。――ああそれと、忘れてたわ。はい、これを……」
がくりと項垂れようと思ったけど固定されてて動けない色々絶望的な俺に、雪ノ下は一切れの布を手渡してきた。
何だろう。膝の上に置かれたそれを見つめてみる。
目隠しにしては長いし、太陽の光に晒され、僅かに透けている。何かしら文字が記されているわけでもなし。
皆目検討も付かない代物であったが、この状況に限り、俺の優秀な頭脳は常識的には大きく間違っているであろう正解を叩き出した。
「これは……まさかとは思うけど、違うよね?」
「……?何と思ったかは聞かないわ。――それを口に……ああ、手錠を掛けてあったわね。いいわ。私が巻いてあげる」
「…………………むぐっ」
やっぱ轡もあるじゃねえか!もうやめてくれぇっ!
身動きが取れぬままひたすらに暴れようと呻くけれども、その労力は無意味だった。
「……んー……んー……(やめろ。これ人権の侵害だ!身体の自由を奪った!おい目隠し着けるな!)」
暗い!何も見えない!未来も見えない!
お先真っ暗とはこのことである。
「んーぐっ――(由比ヶ浜さん助けてよぉっ!)」
「桐山くん。もうちょっとの我慢だから!」
その純粋さは間違っていると思った。
全てドッキリでしたと言ってくれ。ドッキリしたから。心臓停まりそうだったから。
だからお願いだ雪ノ下……タスケ――。
――バリィッ。
『この大嘘憑きめぇっ!』
今『バリィッ。』っていった!なにその音エグい!目隠しをされて視界を奪われているためハッキリとそれが何かは分からないにしろ何かしら、電気を流すもの特有の音がした!
そしてそれはきっと黒くて長方形の形をした護身などの目的で利用される携帯可能な小型兵器。
――その総称はそう、『スタンガン。』!
その電撃は合法の範囲内であり非殺傷性を持つものの、女性の手ですら成人男性の意識を刈り取るには充分!
だが、その使い方を間違えば尊い人命を奪うことも容易では無い。普通の常識ある女子高生なら絶対に携帯すべきでない危険な代も――ギャ%ア;(;(#<);アァ$|ガ?+>グ*@{}^¥&!!!
……ただ一つ言えるのは、こんな青春間違ってるってことだ――。ガクッ。
後書き
彼女も友達もできなくて、努力もできないし何かもう、珈琲でも飲みますか……。
あの、テニスコートの女子……。とつかだって分かました。
描写もお粗末でしたし、まだ分からなかったと思います。もし分かったら戸塚士資格2級を差し上げます。
……うわあ、超いらねえ。と、思った方多数。
それにしても今回は散髪回に見せかけた監禁回でしたけど、どうでした?タイトル間違ってる気がします(笑)
最後に自分で言うのも何ですけど、もうちょっとくらい上手く書けたんじゃないかな、と。
ところで面白い小説のオススメって何かあります?ジャンルは問わないんで。
感想欄とかメッセージなどなど、もしくはつぶやきからでも是非。
ちなみに、全然関係ありませんが、こちらは数年間、伊藤計画氏の『虐殺器官』『ハーモニー』を薦めてます。あれを越える衝撃は未だに御座いませんね。……本当にいつまでも悔やまれます。
あとは伊坂幸太郎の『ラッシュライフ』くらいですかね。
全て有名どころです。
いつか自分もそんな小説をと常々……いや、無理か。
さあ、現実を見よう。今日の夜、珈琲を飲む僕の隣には何があった?
――また会ったね。おはようロデオボーイ2……。
其れでは次回。『やはり彼らの青春は歪み始める』で、また。
さあ、この回はだいたいオリジナル展開だ。どうなる予定されたオリ回のアイデンティティー!
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