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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──

作者:なべさん
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ALO
~妖精郷と魔法の歌劇~
  そして、英雄達は戦う

「久しぶりッスね、レン君」

夕闇(ゆうやみ)化神(けしん)》ウィルは、背中の翅を震わせて宙空に漂いながら言った。

「久し振りだね、ウィルにーちゃん」

それに応えながら、かつての六王第三席《冥界の覇王》レンは軽く首を巡らせた。ウィルの横に並ぶ、そうそうたる面子の二人を。

一人は《白銀の戦神》ヴォルティス率いるギルド【神聖爵連盟】の第三位、《宵闇(よいやみ)軍神(ぐんしん)》リョロウ。

そしてもう一人、ギルド【神聖爵連盟】第四位、《暗闇(くらやみ)瞬神(しゅんしん)》セイ。

「………まったく、僕一人を助けるために、これだけ寄こすなんてね。ヴォルティス卿は何を考えてるの?」

ため息混じりのレンの問いに答えたのは中性的な青年、セイだった。

「あの方のお考えなんて、僕達の及ぶに足るところじゃないよ。僕たちはただのコマ、卿の手足さ」

「…………相も変わらずの狂信っぷりか、セイにーちゃん」

吐き捨てるように放たれた言葉とともに、レンはスッと目を細める。

それに、セイという名のシルフは無言で淡く微笑んだ。

その隣で、ジャッ!と言う音とともにリョロウが勢いよく(げき)を払った。槍を押し潰したようなその先端が、誰もいない空間を薙ぐ。

その顔には、鋭いシワが幾重にも刻まれていた。

それをゆっくりと眺めながら、レンは口を開く。

「リョロウにーちゃん、そんなに怒ってるとカガミちゃんに嫌われるよ~」

「………………………………………」

それに、リョロウは答えない。

無言のままに、肩に担ぐようにして戟を構える。鋭く自分を睨み付けてくる二つの蒼い瞳を見据え、レンは

「いい眼だ」

一言だけ言った。

そして、ゆっくりとした動きで両手を持ち上げる。次いで、唇をしっかりと動かしてカグラに向けて短く発音する。

「カグラはウィルにーちゃんを。僕は地上で残り二人を迎え撃つ」

剣の柄に右手を軽く添えていたカグラは、弾かれたように顔を上げ、明らかに狼狽した声で言う。

「し、しかし、レン。あなたに残された猶予は────」

「一瞬で終わらせる」

レンはきっぱりと言う。それ以上の干渉の一切を拒むかのように。

だからカグラも、それ以上は言えなくなった。いや、言えなくされた、というほうが正しいかもしれない。

黙り込んだカグラを尻目に、レンは再び三人の妖精達を見た。明確な、自分の敵を。

これ以上ないほど不敵に

「さぁ………、殺ろう」

言った。










耳をつんざくほどの硬質な金属音とともに、リョロウとセイの姿が宙空から弾かれたように消えた。

それと同時に、レンの小柄な身体も音もなく掻き消える。

ザガガギギギギギッギギギギギッッッッ!!!

血の色のような閃光が空中で弾けて、それがみるみる地上へと向かっていく。人外の大激突の余波が、空間さえも浸食している。

ビリビリ、と空中で静止したままのカグラとウィルのところにも地震の揺れのような物が仮想の空気を通じて伝わってくる。

数瞬後、睨みあう両者の右斜め前辺りの地面が爆ぜたように土埃を上げ、一人の神と二人の英雄の着地を二人に伝えた。

しかしカグラとウィルは、その轟音を耳にしても眉一つピクリとも動かさなかった。ただただ、互いの瞳を真正面から睨み付け合う。

──────と

「ッッ!!」

ウィルが突如として右手を閃かせた。

攻撃のためではない。自らの身を守るために。

ガギャアアァァァンッッ!!と特大の紅の火花が両者の間で花火のように弾ける。それを苛立たしげに振り払い、ウィルはその向こうを透かし見る。

その向こうに黙って佇むカグラの右手は、いつの間にか左腰にある一.五メートルほどもある黒漆の大太刀、固有銘《冬桜(とうおう)》の柄に添えられていた。

パキリ、と言う音がウィルの手の中で響く。ちらりと視線を落とすと、手の中にある己の得物がすっぱりと重力に従って落下するところだった。

チッ!と鋭く舌打ちする。

「…………それが、あなたの武器ですか」

カグラが静かに言う。

「………………………………」

ウィルはそれに答えない。しかし、腰に一見乱暴に巻きつけられているベルトに幾重にも差してある()()を抜き出した。

その材質は、三十センチほどの無骨な鉄の塊だ。

先端は歪な立体のダイヤのような形になっていて、一点が出張っていて鋭く尖っている。

その対角線上の頂点には、同じ材質の金属の棒がくっついており、そこには包帯のように白い布が乱雑に巻かれている。その棒の先には、ドーナツ状に真ん中に穴が開いた輪が付いている。

日本の歴史の裏で暗躍したもう一つの主人公、忍者と呼ばれた者達が好んで使用した暗殺用投擲武具。

クナイ。

かなり特殊な武器だが今はなきあの鋼鉄の魔城、SAOでは珍しいがそれほど特殊と言うわけでもなかった。

クナイというとかなりユニークに聞こえるが、カテゴリ的にはただの投擲ができる短剣である。

「クナイなどで、私の斬撃を弾けるとでも?」

答えは、閃光のごとき速さで投擲されてきたクナイだった。その数は十。

カグラは心底つまらなそうな顔をし、残念です、とひっそりと呟いた。そして、おもむろに右手を柄に添える。

「《閃火(せんか)》」

ごうっ!!と灼熱のごとき過剰光(オーバーレイ)が鞘に収められた状態の刀身から溢れ出す。

次の瞬間、緋色の閃光が宙を幾千と流れ、投擲されたクナイは全て()()()()

「………………?」

おかしい、とカグラは胸中で思う。

今の一撃は間違いなくあの鉄の塊を寸断させるほどの威力だった。しかし、実際にはただ弾かれただけ。なぜ?

その答えは、カグラの人並み外れた動体視力によってもたらされた。

弾かれたクナイが力なく地上へと落下していく。その刀身には、それ自体が発光しているのかと思えるほどに、強い青緑色に発光していた。

「心意ですか。なるほど、さすがは《六王》第一席の右腕を任されているだけはありますね」

静かに一人ごちるように言うカグラ。

その声に、初めて感情という名のものが混じる。

それは、興奮という名の。

「行くッスよ!!」

ウィルは無言で勢いよく両手を前で合わせた。それだけで、パァン!という軽い爆竹のような音が辺りに響き渡る。

ウィルがその両手をゆっくり広げると、まるで安っぽい手品のようにそこに幾つものクナイが糸にぶら下がっているように現れる。それらはウィルが手を当てていないのに、空中に静止した。

そのうちの一本を手に取り、ウィルは高らかに叫ぶ。

速事風如(はやきことかぜのごとき)ッッ!!!」

途端、ウィルの手の中にあるクナイの刀身が強烈な緑の光を帯びた。

あまりの光にカグラは思わず目を細める。

辺風嵐如(あたりのかぜはあらしのごとく)ッ!」

同時に、ウィルを中心に身体がふらつくほどの突風が吹き荒れた。風速にすると、約五十メートルはあろうか。宙で静止しているカグラの身体が、堪らえきれずに体勢がぐらりと崩れた。

その隙を逃さずに、ウィルは鋭い呼気とともに二つのクナイを投げた。その速度は先刻のそれと桁が違う。

まるで空気の抵抗など受けていないように、瞬きする間もなくカグラに肉薄する。

───ま……ずっ!この速度は!!?

辺りに、閃光が撒き散らされた。










レンとリョロウ、セイが鍔迫り合いをしつつ落下したのは、アルン高原の所々にある森林のど真ん中だった。

がさがさっ!と派手な音を立てながら、しかし柔らかく降り積もった腐葉土のおかげで心配するほどのHPの減少をせずに、レンは不時着した。

普段のレンだったなら、たとえALOの高度限界から落下したとしても、音もなく着地ができるが、今は事情が違う。

先程から頭の芯にこびり付いて離れない、きりきりと絞り上げるような鈍痛。痛みは集中力の低下を促し、集中力の低下は肉体(パフォーマンス)にも技術(テクニカル)にも影響を及ぼす。

───痛ッッ。やっぱカッコつけてあんな大技出さなきゃよかったな。

体が重い。

四肢はとっくの昔に音を上げて、激しい残業の対価を要求している。

だが、意思だけは音を上げてはならない。それだけは絶対に、何があっても。

ゆっくりと身体を起こしたレンの視界を、見上げるような巨大な木々が塞ぐ。

そういえば森に落っこちたんだっけ、と他人事のようにレンは思う。

索敵をしようにも、これだけ集中力が削がれた状態では《超感覚》も上手く働かない。

まいったな、とレンが立ち上がったときに、背後からガサリ!という音。

なかば本能で、全力でレンは地面を蹴った。足元にあった木の葉が舞い散り、それが────



全て分断された。



「…………………ッッッ!!!」

右手が掻き消えるように振るわれ、背後から奇襲しようとしていた者の命を刈り取らんと鋼糸(ワイヤー)が展開される。

それとほとんどタイムラグなどなく、腐葉土の柔らかい地面に轟音とともに刻み込まれる深々とした傷跡。だが、手応えは全くない。

舌打ちとともに左腕も振ろうとしたが、その間にも九時の方向から目にも留まらぬ速さで人影が現れた。やむなくそちらに標的を変更し、左手を振るう。

ギャリアァァァァアンンンッッ!!!

交錯する刹那に、闇の中に飛び散る火花。それに照らし出されて、互いの顔がはっきりと解かる。

照らし出されるはやけに無表情な、能面のような中性的な顔。

「はっ!!さすがは《瞬神》サマだねェッ!」

ザガギギギャッッ!!と宙空で数百とも言える手数を交錯させる。

闇が引き裂かれ、辺りを真昼のように照らし出す。そして、その中でこちらに飛び上がってくる影。

《宵闇の軍神》リョロウ。

「させないよ、レン君ッッ!!」

普段の彼からは想像もできないほどの鋭い言葉とともに、手の中に握り締めていた(げき)を一度頭の上で一回転させてから、横薙ぎに振るってくる。

咄嗟に過剰光を身体の前に集めるが、そのスピードは普段から見ても明らかに遅い。更に言えば、その輝きも通常のそれから見ても弱々しく、時々頼りなく明滅している。

───ま……ずいッッ!間に合わな………ッ

直後、森中どころか辺り一帯に響き渡るほどの轟音が轟いた。 
 

 
後書き
なべさん「はい、始まりました。そーどあーとがき☆おんらいん!」
レン「いよいよ銭湯に突入か」
なべさん「戦闘な、戦闘。風呂行ってどーする」
レン「当然ながら全員心意扱えるって訳か」
なべさん「そだね。今のレンくんには通常技でも、いい使い方をすれば勝てる確率も見えてくるけど………」
レン「カグラかぁ……」
なべさん「まぁねぇ~。なんだかんだ言って、あの人六王並みの実力持ってんだもん」
レン「そりゃあ、ウィルにーちゃん達もチートにならざるをえない訳だ」
なべさん「はい、自作キャラ、感想を送ってきてください!」
──To be continued── 
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