ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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一部:超絶美少女幼年期
三十四話:フルートを届けに
氷の館を出てまた雪原を歩き、妖精の村に帰りつきました。
「それじゃ、急ぎましょう!」
「はい!」
村に着いた私たちが大急ぎで真っ先に向かった場所は、当然ポワン様のところ、では無く。
「すっかり冷えたし、汚れちゃったし。お風呂くらい、入っていってもいいわよね!」
「そうですよね!このまま、ポワンさまのところにいったら、しつれいですよね!」
「汚れたままで、ドーラたちを帰すのも悪いしね!」
「このままかえったら、おとうさんも、サンチョも。びっくり、しちゃいます!」
「モモの毛も、フカフカだったのに、ペッタリしちゃって。キレイにしたいわよね?」
「ニャッ!」
というわけで、モモも含めて満場一致で、お風呂に直行。
これくらい、許されると思うの!
私たち、かなり頑張ったし!
すごく痛い思いして、頑張ったし!
そこに文句付けるようなポワン様じゃ、無いと思うの!!
と、自分たちに言い聞かせるついでに、たぶん見ているだろうポワン様にも、言い訳してみたり。
「ああー……。生き返るわー……」
「あったまりますねー……」
「フニャー……ゴロゴロゴロ……」
宿屋さんで、お風呂を借りました。
必要ならお金も払うつもりだったけど、タダで入れてもらえました!
払ってもたいした額じゃ無かったろうけど、こういうのは嬉しいよね!
気持ちがね!
「いきかえるなんて、ようせいさんでも、いうんですねー……」
ていうか、異世界でも言うんですね。
「そりゃー、言うわよー……。生き物だものー……」
「そうですかー……」
温まったら、眠くなってきた。
なんだかんだで、結構疲れたしなー……。
……帰ったら、時間とかどうなってるんだろ?
ゲームだと、戻った途端にラインハットに出発だけど。
それちょっとキツいかも。
「ようせいさんのむらは、くらく、なってないですけどー……。よるには、ならないんですかー……?」
上手く時間調整して、一晩休む方向に持ってけないだろうか。
「ならないわねー……。人間界と、時間が、違うからー……。ポワン様に戻してもらえば、出てきた時間の少し後に、戻れるわよー……?」
つまり、昼間に戻るわけか。
……直行の可能性大だね!
「もう、つかれたから、よるに、もどして、もらいたいんです、けどー……」
本気でうとうとしてきました。
無理、この後このままラインハットに行くとか、マジ無理。
「そうよねー……。私だって、疲れたのにねー……。ましてドーラは、子供だもんねー……。……子供、だったのよね、ドーラって。そう言えば」
ベラがはたと、今思い出したようなことを言ってますが、眠くて対応できません。
あー……、眠、い……
「ちょ、ドーラ!寝ないで!沈んじゃう!溺れちゃうから!!」
……はっ。
うとうとして浴槽に沈みかけた私を、ベラが受け止めてくれてました。
「……ありがとうございます……」
「いいけど。もう十分温まったし、上がったほうがいいわね。無理しないで、宿で少し休ませてもらいましょう」
急にてきぱきと話を進める、ベラ。
お風呂くらいならともかく、寝ちゃうのは、どうなんでしょうか。
そうは言っても、眠すぎてまともに歩けそうに無いんですけど。
「でも、フルートを、とどけないと……。それなら、ベラさんだけでも、さきに……」
フルートを吹くところが見られないのは、残念ですけど。
「ダメよ。ドーラが取り返したんだから、ドーラに届けてもらわないと。ポワン様もそう仰るだろうし、大丈夫だから。いいから、寝なさい」
きっぱりと言い切る、ベラ。
うーん、なんかベラが、お姉さんみたいですね。
「……わかりました、おねえちゃん……」
「ど、ドーラ?寝ぼけてる?」
「はいー……。ねむいです……」
自分がなに言ってるか、よくわかりません。
「……寝ぼけてるわね。さ、上がるわよ」
「はいー……おねえちゃん……」
ベラに促されてよくわからん状態でお風呂を出て、たぶん体を拭いてる間に髪を拭いてもらって、のろのろと服を着てる間に恐らくモモもベラが拭いてくれて、その間も立ったまま寝そうになる私に適宜ベラが声をかけてくれて、その辺からもう記憶が無く。
気が付いたら、家でした。
家で、寝てました。
フルートは、しっかり道具袋に入ってました。
……持ってきてしまった!
うん。
妖精の村の宿屋さんで寝たはずが、起きたら家だった!
あれは、まさか夢だったの?っていう。
ファンタジーらしい、そういうシステムだったね!
いつも通りに身だしなみを整えて、いつも通りに朝食を摂り。
帰ったらすぐにラインハットに出てもいいように、必要な準備も済ませて。
チートの書は壺にきっちりしまいこんで封印して、前々から掘って準備してあった穴に埋めて隠して。
奴隷ライフで没収された後、万一にも戻ってこないと困る、私の分のビアンカちゃんのリボンも一緒に。
モモを連れて何食わぬ顔で地下に下りると、ベラがいました。
「あ、ドーラ!おはよう!よく眠れた?」
何事も無かったかのように、笑顔で挨拶されてしまいました。
……嫌味のひとつくらい、言ってくれてもいいのに!
「……おはようございます、ベラさん。はい。よく、ねました。……すみませんでした」
昨日でもう、終われた話なのに!
眠いんで、春呼ぶの一日待ってくださいとか!
私が希望したわけでは無いけど!!
「謝ることないわよ。あんなにすぐに取り返してもらえるなんて、ポワン様も思ってなかったんだから。むしろ、褒められちゃったわ!フルートを取り返したことも、ドーラをちゃんと休ませたことも!」
ベラが、嬉しそうです。
わりと居たたまれないんですが、そういうことならまあ、良かった、かな?
……良かったと、思っておこう!
「……それに、可愛かったし!やっぱりドーラも、子供なんだなってね!」
どういう状態だったか、あんまり覚えて無いんですが。
この反応なら、ボロは出さなかったと思っていいのかな?
「それじゃ、行きましょう!ポワン様に、フルートを届けに!」
散々、お待たせしてしまったしね!
そうしましょう!
また光の階段を登って光のトンネルをくぐり、相変わらずの銀世界な妖精の村の様子に少々後ろめたいものを感じつつ、凍った池の蓮の道、大きな木の家の水の階段を通って、ポワン様の元に到着します。
ポワン様も、笑顔で迎えてくれます。
「お帰りなさい、ドーラ。よくやってくれましたね」
「ポワンさま。おまたせして、ごめんなさい」
全く怒っては無さそうですが、一応、謝っておきます。
うやむやにしてると、かえって心苦しいし。
「いいのですよ。子供なら、当たり前のことです。無理をさせてしまって、こちらこそごめんなさいね」
確かに、普通の子供にはかなり厳しい事件でした。
個人的には、妖精に繋ぎを作っとく意味でも、戦闘経験を積む意味でも、来たかったから良かったんですけど。
「いいえ。わたしを、よんでくれて、よかったです!……あの。ポワンさまは、わたしのこと……みてたんですか?」
今聞かないともう聞けないかもしれないので、引っ張って申し訳ないけど聞いてみます。
にっこりと、安心させるように微笑むポワン様。
「心配いりませんよ。私が見られるのは、本人の同意を得て遠見の魔法をかけた、私の部下の目を通してだけ。ドーラのことは、占いで知ったのです。今、私たちを助けてくれ、いずれは逆に私たちの力を必要とする方が、あの村にいると」
これもお見通しですか。
それなら、安心ですね!
……あれ?
でもそれって、つまり。
ベラは、自分の行動が見られてるって、知ってたんじゃね?
……ベラだからね!
仕方ないね!
安心したところで、心置きなくフルートを差し出します。
フルートを受け取り、構えるポワン様。
「ここは、季節の中心。妖精の村が春を迎える瞬間は、それはもう美しいものなのです。よく、見ていてくださいね」
たぶん一生に一度の機会ですからね!
よく、目に焼き付けておきますとも!
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