八条学園怪異譚

「ベッコウ飴もね」
「いいねえ、流石にわかってるね」
「あとお酒もね」
「こっちも大吟醸用意してきたよ」
「あっ、それなの」
「やっぱりこれだと思ってね」　
　口裂け女はその切れ長の目をにこにことさせてテケテケに返す。
「それでなんだよ」
「おつまみもあるわよ」
　花子さんはそれだった。
「するめに枝豆、あと揚げね」
「いいね、じゃあ食堂車の中でね」
「飲んで楽しもうね」
「だから。まずはね」
「泉のところに行ってね」
　二人は勝手に宴会の話を進める三人の妖怪達に咎める顔で注意を入れた。
「それで調べたいから」
「お酒を飲みに来たんじゃないわよ」
「何よ、それじゃあ全然面白くないじゃない」
「お酒を飲まないで何が夜よ」
「あんた達も面白くないこと言うわね」
　三人の妖怪達は二人の言葉を受けて咎める目で返してきた。
「あんた達の為にたっぷり用意してるのよ」
「たっぷりって」
「あらかじめなの」
「夜は大宴会よ」
　テケテケは笑顔のままこうも言った。
「それが妖怪の世界でしょ」
「運動会じゃないのね」
「お墓で」
「それもあるけれどね」
　することはするというのだ。
「けれどね」
「それでもなのね」
「それもあるのね」
「そう、あるわよ」
　実際にだというのだ。
「宴会がね」
「何か毎晩みたいにやってない？」
　聖花がこのことを突っ込む。
「思うけれど」
「まあ多分ね」
　やっているとだ、テケテケもそのことを認める・
「やってるわね」
「やっぱりそうなのね」
「運動会よりもなのね」
「だって楽しいからね」
　実にわかりやすい理由だった。説明不要なまでに。
「飲んで食べるのって」
「あんた達も好きじゃない」
「そう思って用意したのよ」
　ここでまた口裂け女と花子さんが言って来た。
「それも大吟醸をね」
「お豆腐系多いからね」
「まあそれは嬉しいけれど」
「こちらにしてもね」
　二人もこう返した。
「けれどまずはね」
「泉を見つけないと」
「確かめないといけないから」
　二人はテケテケ達に対して真面目に述べた。
「お酒飲むのもいいけれど」
「それからよ」
「この娘達って真面目なのね」
　テケテケは二人の話を聞いて感心した顔で述べた。
「いや、お酒やおつまみあるのに飲まないって」
「お酒飲んでお店のお料理作られないから」
「パンなんて焼けないでしょ」
　二人はそれぞれの家でやっている店のことからテケテケに返す。
「お酒飲んでトンカツ揚げるの？じゃあ」
「飲んだ状態でパン焼くとか？」
「下手しなくても大怪我よ」
「死ぬわよ、本当に」
「ううん、根っからのお店の娘ね」
「そういうことに手を抜いたら駄目だからね」
「お店やってけないから」
　二人はテケテケ以外が見ても真面目な顔で返す。