BLUEMAP 改訂前

　遥か昔より続く、果てしなく広がる空と海。そこには宙を泳ぐ船があった。その船は帆のない船だった。
　その形容を言葉にするならば、“魚のような形”という一言が思い浮かぶ。その船は、飛行船のように膨らんだ部分で鉄の体を浮かせ、何本ものオールの舟をこぐような動きで進んでいた。赤茶色に金の装飾といったデザインで、雰囲気はアンティークの部類といったところだろうか。この船を見た誰もがきっと、不思議な感情を抱くだろう。そんな不思議な船が空を飛ぶ世界――
　この物語の舞台となっている、とある世界。大陸は大きく分けて５つか６つ程あり、それをつなぐものは青い海であった。
　かつて世界に、海賊が猛威を振るっていた時代があった。今はそれは終わり、文明は進み、商業・工業は発達し続けていた。
　波乱に満ちた時代を生き抜いた、かの偉人はこういったそうだ。
『地球は青い地図である。それはこの手の中にある』
まるで、“世界は我のもの”とでも言うかのように。
　しかし、海賊の時代が終わった今、海賊はいわゆる『盗賊』というものに変わっていった。
――そして、かの偉人の孫は、とある盗賊団を率いる人物となる。

　腰かけに体を預け、その人は足組みをしていた。長い背もたれの、揺り椅子に揺られながら外の景色を眺めていた。
「今日も空は快晴、海はあお！」
左目に眼帯をつけたその人は目を閉じ、開いた窓から吹いてくる風のにおいを楽しんだ。
「ん～、風のいいにおい♪」
シャギーの入った銀髪が、ゆらゆらとなびいた。
　その人は、地球を模した球体を手のひらで弄ぶ。その様はまるで、この世界はこの手の中にある、とでもいったような風だった。その地球義は手のひらでゆっくり回りながら、浮かんでいた。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　－第三幕へ－